特別講演2「心腎連関とBNP」
熊本大学大学院生命科学研究部 腎臓内科学分野 教授
向山 政志先生
肝機能であればALT、腎機能であれば血清クレアチニン値のように心不全のバイオマーカーとしてBNPは今でこそ認識されていますが、1990年代の平田は「生理機能検査なしで血清濃度を測るだけで心機能が分かるなんて、すごく便利な検査ができるようになったものだ」と感心していました。ANPやBNPの抗体を作成してそのアッセイ系を確立したのが京大時代の向山教授であり、これによって前述のようにヒトでは心不全の重症度によってBNP濃度が変化することを突き止め1)2)3)、さらにスタンフォード大学でアンジオテンシンⅡ受容体のクローニングに成功したすごい先生なのです。
そもそもCKDという病名が生まれたのは2002年のことです。循環器医が腎機能の低下した患者ではなぜか心筋梗塞が起こりやすい、心不全が増悪しやすいことに気づき、心機能と腎機能は密接に関与していることを明らかにしたのです。CKDはCVD(脳心血管病)の独立した危険因子であること、一方でCVDもCKDの危険因子であることが報告され、心腎連関として注目されています。米国ではCKD患者は透析導入に至る前に、むしろCVDで死亡する確率が高いことも報告されました。だからchronic renal failureという米国のnative speakerにもわからない病名に代わり「chronic kidney disease: CKD慢性腎臓病」という一般人でもわかりやすい病名が作られたのです。
心腎連関の分子機序としては交換神経系、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が心臓・腎臓の上位で関わっていますが、心臓で分泌されて腎臓に作用するANP・BNPファミリーも深く関わっています。これらのシステムを制御することによって心不全・腎不全の合併を防げますし、逆に制御できなければこれらの調節の破綻が生じてしまいます。日腎薬熊本大会の11月17日(日)の特別講演では心腎連関とBNPについて向山先生からわかりやすく教えていただきたいと思います。
1) Mukoyama M, et al: Increased human brain natriuretic peptide in congestive heart failure. N Engl J Med 1990; 323 : 757-758
2) Mukoyama M, et al: Human brain natriuretic peptide, a novel cardiac hormone. Lancet 1990; 335 : 801-802
3) Mukoyama M, et al: Brain natriuretic peptide as a novel cardiac hormone in humans. Evidence for an exquisite dual natriuretic peptide system, atrial natriuretic peptide and brain natriuretic peptide. J Clin Invest. 1991; 87: 1402-1412
HPはこちらから → 第13回日本腎臓病薬物療法学会学術集会・総会HP