2019年10月

20191008_1.jpg 学会最終日の14:15~14:35の間、第1会場で理事長講演を急遽やることになりました。テーマは「腎機能評価の10の鉄則~最新版発表~」です。月間薬事10月号で、「ピットフォール事例に学ぶ腎機能に応じた投与設計」が特集され、腎機能の正確な評価が薬剤師の職能の1つとして認識されつつあります。超高齢者社会になり筋肉量が減少した長期臥床高齢者の腎機能の評価に悩んでいる先生方も多いのではないでしょうか?
 私のブログで「腎機能評価の10の鉄則」を掲載していますが、2017年11月に第6版が掲載されたまま、更新できていません。これは現在実施中の腎機能評価の臨床研究の論文がまだ完成していないものがあるためなのですが、既存あるいは新規論文を精査して、今までの臨床研究成果も加えてより正確な情報をお伝えすることはできると思いますので20分間の短い時間ではありますが報告させていただきたいと思います。詳細は後日、熊本大学薬学部臨床薬理学分野のホームページでアップさせていただく予定です。

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腎機能評価の10の鉄則はコチラから

薬学部臨床薬理学分野のHPはコチラから

『腎機能評価10の鉄則』のテキスト(PDF)ダウンロードができます。

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 2006年に熊本に来て、抄読会のメリットを伝えたかった。毎週火曜日の夜7時半には必ず抄読会か育薬セミナーがあるのが普通になりました。12年間でほぼ500の論文を読んだことになります。昨年までは月間薬事に毎月2つの論文の要約とコメントを連載していました。

抄読会の効用は
① 英語力(医学・薬学英語)が身に着く
② 飛び切り最新の情報(ガイドラインが作られる前の生の情報)が身に着く
③ 知りたい情報を検索して、自分で解決する能力が身に着く
④ 文献に対する評価・批判が身に着く
 (この論文はここがすごい、この論文は方法をこうしたらもっとレベルの高い論文になるのに…などです)
などがあげられます。

 ③に関してはPubMed検索して、入手できる論文はPDFで入手し、カテゴリー別に分類保管し、学会発表や論文を書く時の引用文献になるかもしれませんし、新しい研究テーマにつながるかもしれません。この先々、プレゼンで使える図表をパワーポイントで作成したり、入手できないものは抄録だけでもコピペして訳す。これで速読術も身につき、白鷺病院時代には100本のPubMedの要約を60分間の通勤時間で訳せるようになりました。とにかく、薬剤師として1つの壁を乗り越え、確実に実力が身につきます。それと僕らの世代では習っていない⑤ 統計学が身につきます(僕はあまり得意ではありませんが、今でも少しずつ進歩していると思います)。
 ただしこれらはすべて継続していればのことです。熊大でやっていた抄読会に参加した経験のある方は非常に多いです。すっごい意気込みを持って「参加したい」言ってくる先生方もいらっしゃいますが、ずっと続けて参加していただけた先生方はわずかです。自分からプレゼンしてくれる先生はやはり違います。その中に温石病院の森 直樹先生がいらっしゃいます。この先生は12年以上前からずっと参加してくれています。今や誰もが認める立派な薬剤師ですね。僕も気が付けば40年以上、途切れることなく抄読会に参加してきたことになります。まさに「継続は力なり」だと思います。

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写真:おそらく500回目?熊大最後の抄読会

 先生方、抄読会って知っていますか?参加されたことはありますか?僕がいまここまで頑張ってこられたのは抄読会のおかげといっても過言ではありません。大阪の白鷺病院に就職した直後、これまで使われていた酢酸透析液から、世界で初めてアセテートフリーの透析液を使って多人数同時透析を行いました。その当時の白鷺病院はLの字の形をしていて、スタッフから見て左側20人くらいは従来の酢酸透析液、右側の12人は重曹透析液を使ってい始めたのです。その当時の透析は膜の性能が良くなかったために中空糸型透析器で5時間、古いタイプのコイル型で6時間かかっていました。朝の8~9時に穿刺して食事時の12~13時になると酢酸透析液側では酢酸不耐症でしょうか、嘔吐する人が多発し、洗面器に入った吐物を処理するために新人である僕はトイレと透析室の間を走り回っていました。かたや重曹透析液ではみんな安らかに眠っており、明らかに患者さんの負担が軽減したなと感じました。15457686_s.jpg
 重曹はもちろん酢酸に比べ生理的ですが、でもなんで酢酸を使うと血圧低下やショック、嘔吐が起こるのかの理論武装はできていなかったのです。そこで新人で、数少ない大学卒の僕たちは抄読会で酢酸に関する論文をありったけ集めて訳させられました。これが白鷺病院の抄読会の始まったきっかけでした。当時の院長から「平田の訳は日本語になっとらん!」とよく叱られたものでした。これが僕の抄読会のデビューでした。
 英語が楽に訳せるようになったのは、翌年、自分で初めて臨床研究し、学会発表した時です。僕は薬学系の学会に初めて参加したのは40歳になってからですので、卒業したての頃は医学系の学会で発表していましたので、医師からどんな質問が来るのか怖くて、そのテーマに関する英語論文20本を取り寄せ、毎日1つずつ訳していきました。英語の苦手な僕には大変ですから、1語1語、辞書で引きながら全訳していたので、1つの論文を読むのに0時過ぎまでかかっていました。でもなんと不思議、同じようなテーマの論文を読んでいくと辞書が要らなくなるので数日後には11時、1週間後には10時には帰れるようになりました。こんなふうにして英語力は身に付くものだと知りました。おかげで、英語論文や外人の英語の講演などは自分の得意分野であれば100%理解できるようになりました。もちろん日本語でもさっぱりわからない分野の話は当然、日本語でも英語でも分かるわけがありません。今でも新聞や小説、雑誌はほとんど読めませんし、映画やテレビは内容によって50~80%くらい、学会でも英語の質疑はわからないことがあります。プロ野球での外人選手のインタビューもほとんどわかりませんが、不思議とラミレス監督の英語や、トランプ大統領の英語は非常にわかりやすいです。Native speakerと医学用語を話すと外人さんの方が医学用語を知らないので、僕はずいぶん偏った英単語のみよく知っているのだと思います。
 11190496_s.jpg抄読会は医局のドクターはみんな経験しているものです。その医師の抄読会に入ろうとしても聞くだけでは仲間に入れてくれないかもしれませんが、自分も順番の中に入って訳すといえば、抄読会はたいてい当番制なので、みんな自分の当番が回るのが遅くなるためいつもウエルカムでした。受け身じゃダメなのです。参加するだけではなく自分も訳してプレゼンしなくては!だから白鷺病院だけでなく、大阪市立大学の内科や泌尿器科、府立病院の腎臓内科などの抄読会にもよく参加させてもらったものでした。「薬剤師だからだめなんだ」と言われたくないから、とびっきり新鮮で面白い論文を探して訳したものでした。医師の抄読会は医師の考え方が分かるからとても新鮮で勉強になりましたし、それは今でもよい経験だと思っています。40歳になって病棟業務ができるようになってからは白鷺病院の医局と薬剤科と両方で抄読会・症例検討会に参加していました。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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