モーリシャスを看護師Annと廻る~人命救助に関わった~
インド人看護師のAnn(写真8)と知り合ったのは僕が「糖尿病の食事と血糖管理」の講演後のことでした。「内容は素晴らしいのに、なんで日本語だけなの?ピースボートの英語通訳をつけたらいいのに」と言って話しかけてくれました。その後、Annは日本語通訳をつけて英語で講演をしたのですが、いくら英語の堪能な通訳でも「ヘモグロビンA1c」とか「血清クレアチニン」「インスリン抵抗性」などの語句は分からないので、おかしな翻訳になっていました。そこで僕が代わりに通訳をしたのです。彼女はインド人なので、インド訛りの英語は僕は得意ではないし、僕は英語新聞も小説も読めないし映画も字幕がないとほとんどわかりませんが、医学用語に関しては国際学会などで腎臓病や糖尿病の英語講演でもほぼ100%分かるので、問題なく翻訳することができ、親交が深まり、一緒に食事もするようになりました。
聞くところによると彼女は西ドイツで看護学を学び(これだけで年齢がだいたい予測できますね)、その後、カナダで心理学の学士号を取得し、そのままトロントに住んでいるそうです。彼女はモーリシャスに行くにあたって、僕に一緒に行かないかと誘ってくれました。なぜかというとモーリシャスにはインド人がとても多く、現地の人と間違えられるのが嫌だから日本人のスミオと行きたいんだということでした。もちろん僕の妻も一緒に3人で行く予定でしたが、突然の下痢・嘔吐で行けなくなったので、他の日本人4人とともに滝、7色の砂、ビーチ、ポートルイスのショッピングモールに行くことになり、6人なので1人20USドルという格安で7人乗りのトヨタのタクシーに乗りました。モーリシャスのビーチはとてもきれいな海でしたが、魚は全く見えず、69歳にしてスノーケリングではなく、ただの海水浴だけをすることになるとは・・・・。ああ~、疲れました。
ショッピングモールでタクシーを降りて、1人20ドルずつ集めていた時に、運転手が何かに気づき、海岸に走っていきました。そこでは誰かが溺れていたらしく、男の人たち数人で引き上げているところでした。この時のAnnの行動は素早く、横向きに寝かせて背中をたたくと(図1)、救助された男性の口や鼻からおびただしい量の海水が出てきました。そして仲間のバスタオルを借りて枕にして、「Call the ambulance!」と、群がる人たちに救急車を呼ぶように指示。僕は溺れた人の救助法は知らなかったのでAnnの指示に従い、頸動脈、手首で脈診があるのを確認、呼吸も正常でしたが10分経っても口や鼻から海水が出てきており、大声で耳元で「Are you OK?」と繰り返しましたが意識はなさそうです。救急車がかなり遅れて到着すると救命救急隊員がSpO2を測るためにパルスオキシメータをなんと親指に装着。「何やってんだ」と人差し指に付け替えるとSpO2は98%と出て、Annと「よかった。大丈夫だ。」と笑顔になり、あとは救急隊員に任せました。後で聞くところによると海水に転落した人は海上の警備員で、海に落ちないようにつないである鎖(写真9)に腰掛けようとして、後ろ向きに海に転落したのだそうです。
モーリシャスは17世紀に絶滅した飛べない鳥「ドードー」がいた島として有名です。ドードーの祖先はアフリカ大陸やマダガスカルから飛んできたらしいのですが、この島には天敵がいなかったので、どんどん大型化して飛べなくなってしまったのだそうです。大きさは七面鳥ぐらいで、体重が25キロもあったらしいです。ヒトが絶滅に関与した鳥として有名なニュージーランドに生息していた飛べない大型鳥ジャイアントモアは、最大で約3.6m、体重は250㎏ほどあったとされていますが16世紀か19世紀にマオリ族による乱獲によって絶滅したと言われます(図2)。モーリシャスはマダガスカルから近いのに、アフリカでは有数の豊かな国で、治安もよかったです。それに急角度の勾配の山が多く、トレッキングを楽しむにはとてもいいところですが(写真10)、滞在時間が短く、十分な時間が取れなかったのがとても残念でした。
インド洋を東に行き、マレーシア、シンガポール、深圳から日本に
モーリシャスのポートルイスを出るとインド洋を通ってマレーシアのペナン、シンガポール、中国の深圳に寄港しますが、これらは乗客が降りるための寄港と考えてもいいでしょう。だってこれらの中国系の乗客の方々は500人以上はいますので。
神戸から出発してこれまでの期間、僕は「平田の健康長寿塾(写真11)」と「ギター弾き語り‘70(写真12)」をそれぞれ、10回以上開催し、どちらも好評を得ました。ギター弾き語りをやる日本人はかなり多いのですが、塚本さんとぼくの特徴は英語の持ち歌が多いので、Simon & Garfunkel SpecialやThe Beatles SpecialやEnglish songs Specialなどで1時間のライブで約20曲を演奏し、これらはシンガポール、マレーシア、香港の英語を話す中国系の方々に大好評でした。The Beatlesに関しては30曲以上のレパートリーがありますので、リクエストに応えることもできるようになりました。僕はギターも歌も自信がなかったのですが、偶然、高音部・低音部で覚えている曲はうまくハモれることもあり、リードギターを弾きながら、渋い声で歌う師匠の塚本さんとやっていると、僕もギターや唄がうまくみえるらしく、「今日のライブ、よかったですよ」と声をかけてくれる人たちがいてくれて、うれしくなりました。
ということで106日間の長い世界一周の旅が3月28日の神戸で終えることになります(図3)。この間に論文をメールを介して4本書きましたし、3月31日には早速、横浜での薬学会で企業セミナーで「透析導入を防ぐための薬剤師の役割」についての講演です。帰国したらスイッチを音楽から薬剤師に戻して頑張ります。でもギターも続けようと思います。また六甲山に登りたいし、神戸の街を2~3時間かけてゆっくり走りたいです。
◆ 平田純生: 腎疾患におけるTDM. 臨床検査2024年4月増大号「AKI・CKDの診断・治療に臨床検査を活かせ」2024
◆ 平田純生: 7.便秘症. 月刊薬局 ストップCKD「腎臓を守る包括的な視点」月刊薬局2024年4月号
◆ 平田純生: 腎障害患者へのNSAIDs,アセトアミノフェンの考え方. 月間薬事「“何となく”では終わらせない 病棟で出合う疼痛への薬物療法」月間薬事2024年6月号
◆ 平田純生: CKD患者の鎮痛療法の新時代. 扶桑薬品BP.up-to-date新連載「透析導入を防ぐための薬物療法について考える」全12回の第1回. 2024年6月掲載予定