2013年12月

sokisonin01.jpg2013年11月20日CKDチーム医療研究会での佐中孜先生(社会福祉法人仁生社江戸川病院生活習慣病CKDセンター長、元東京女子医科大学東医療センター腎臓内科教授)と話して

佐中先生:「平田先生、OTC薬のネット販売、この中にはロキソニンSというNSAIDも入っているけど、どう思うかね?」

平田「まあ、離島の人もいますからね。必要性はあると思います。」

佐中先生「しかしOTC薬といっても痛みのある高齢者が毎日、ロキソニンSを3錠、欠かさず飲んだらどうなります?」

平田「高齢者だと虚血腎になり、腎機能が低下しますね。私も透析導入になった人の導入原因を探していると、腎炎も糖尿病もない、悪性の高血圧もない。なんでこの人は透析導入になってしまったのだろうと調べてみると、整形外科の処方のNSAIDを2~3か月毎日飲んだために急性腎障害になって、それが慢性化したということはよく経験しましたね。高齢者の膝関節症などで単なる痛みどめ目的で、いきなりロキソニン3錠を30日分投与して、血清クレアチニンをモニターしないのは問題ですね。」

佐中「多くの腎臓内科医や透析専門医が経験していることです。特にNSAIDを2~3か月毎日連用した人が『最近食欲がなくて全身倦怠感がある』と訴えて内科医へ受診したときには『透析しなくちゃいけない』ってことはよく経験します。」

という話をした。

高齢者だけならまだしも、高齢者でACE阻害薬やARBなどのレニン-アンジオテンシン系阻害薬や利尿薬を服用している患者(これらも腎虚血原因薬物)、高血圧患者・糖尿病を合併した患者(動脈硬化を併発し腎不全になりやすい)ではNSAIDsを連日服用すると急性腎障害になってしまう患者は必ず現れます。

1回のネット販売量を規制し、連続した購入を規制できるシステムができたとしても楽天とDeNA、アマゾンと3社から同時購入した場合、相互のチェック機能がない限り、ロキソニンSのようなNSAIDをネット販売することは、非常に危険だ。

ガスター10でも腎機能が低下している人が胃がよくならないからといって1日2錠飲むと汎血球減少を起こすことがあることはよく知られた話です。適正使用しなければ生命を脅かす可能性のあるOTC薬はほかにもあるはずです。

適切な情報も与えられずにネット販売で購入したOTC薬によって死に至ったら、楽天の三木谷社長は全責任を取ってくれるのでしょうか?

離島や無医村の人たちのことを考えると私は必ずしもOTC薬のネット販売に反対ではありません。しかし腎臓病薬物療法学会理事長として、適正な情報なしに腎機能を悪化させる薬や、腎機能の低下した方が中毒性副作用を起こす可能性のある薬をモニターできる体制ができていないまま、他社から少しずつ購入できて、結局いくらでも購入できるシステムであれば問題と考えます。「何か体調に変化があったらすぐに薬局に問い合わせてくださいね」という対面販売はやはり必要だと考えます。

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プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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