2015年11月

 12日目です。連載はまだまだ続きますが最後の鉄則となりました。腎機能評価は大切と言ってきましたが、安全域の広い薬物ではCCrを用いてもGFRを用いても大きな問題はありません。問題は抗がん薬や低血糖を起こしやすい薬物、抗凝固薬・抗血小板薬などの超ハイリスク薬、あるいは通常の薬物でも腎機能が低下するとハイリスク薬になってしまうような尿中排泄率の高い薬物(バンコマイシン、ピルシカイニドプレガバリン、H2遮断薬など)の投与設計時には腎機能の正確な見積もりが必要になります。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 11日目です。いよいよシスタチンCの登場です。腎機能を推算するために汎用される血清Cr値の測定費用は安価なものの、腎機能の影響だけでなく筋肉量の影響を受けるという致命的な欠点がありました。シスタチンCは小児から高齢者まで簡便にGFRを予測することができます。ただし3か月に1回の測定しか保険適応になっていないなど様々な問題点もありますが、筋肉量の少ない患者の腎機能予測をしたいが、蓄尿は大変という場合には一番頼りになる腎機能マーカーになると思われます。そして軽度~中等度腎障害では血清Cr値はすぐには上がってくれません。このような時にも頼りになる腎機能マーカーとも言えます。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 いよいよ10日目になりました。今回は偽性薬剤性腎障害の話です。つまり腎機能は全く悪くなっていないのに血清Cr値が20~30%上昇してしまったということがトリメトプリムやシメチジン投与後によく見られます。当然、CCrは低下しますが、GFRは変化しません。ということはCrの尿細管分泌をこれらの薬剤が阻害したということになります。この時に得られる実測CCrはGFRに近似するため、イヌリンを投与しないでGFRを測定する方法として使えるという報告もあります。ただしこれらの薬剤によってCrの尿細管分泌を100%抑えていないとGFRとして評価できませんが・・・・。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

  9日目です。これまで血清Crが低い痩せた高齢者では腎機能を過大評価してしまうという話をしてきましたが、今回は血清Crが低いけれども痩せていない若年者(論文では50歳以下と書かれていますが、実際には60歳以下でも十分にみられます)の話です。全身熱傷などでICUに入院した患者でよくみられることですが、大量輸液や血管作動薬の投与によって腎血流が増加しGFRが高くなっているためと考えられるため、この場合には血清Cr値が低いことは素直に腎機能がよいと考えていい場合が多いのです。

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 8日目です。推算CCrは肥満患者の腎機能を過大評価することを鉄則4で述べましたが、今回は逆に痩せた患者ではeGFRが過大評価してしまうということについてです。これは体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2)でも未補正eGFR(mL/min)でも同様の傾向を示します。この場合も蓄尿して得られる実測CCrに0.715をかけてGFRとして評価することができる非常に正確に腎機能マーカーになりますが、そこまで出来ない場合、血清Cr値が0.6mg/mL未満の場合には0.6を代入すると予測性が高くなることがあり、ラウンドアップ法とよばれています。シスタチンCを測定してeGFR(mL/min)を算出するのもよい方法ですが、これについては後述します。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

  7日目です。腎機能推算式はほとんどが血清Cr値(例外的にシスタチンCもありますがこれについては後述します)を用いて腎機能を推算しています。Crは筋肉を構成しているクレアチン(体内に約120g程度存在します)から筋肉で代謝されて1日約1%が老廃物であるCrが産生されています。Crは代謝されず血漿タンパクと結合しないため、100%糸球体濾過され、再吸収もされませんが、20~30%程度尿細管分泌されるため糸球体濾過量(GFR: 正常値100mL/min)よりも高く、CCrの正常値は120~130mL/minになります。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

  6日目です。前日のイントロでも触れましたように臨床上、Cockcroft-Gault(CG)式は最も優れたCCr推算式と言えます。ただし肥満患者では腎機能を過大評価するため、薬物投与設計にCG式を用いると過量投与の原因になるため、「肥満患者では理想体重または標準体重を入力する必要がある」というルールを認識していない医療従事者が多いので、これは要注意です。標準体型の方にCG式はそのまま用いて構いませんが、明らかな肥満患者ではCG式には理想体重または標準体重を代入しましょう。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 5日目です。CCr推算式は多くの専門家によってかなりの種類のものが作成されていますが、Cockcroft-Gault(CG)式はその中で唯一、現在でも使われ続けています。ということは、臨床上、最も優れたCCr推算式と言えるかもしれません。ただし肥満患者では理想体重または標準体重を入力する必要があり(後述)、高齢者では低く見積もられるのが問題と思われます。

 入院患者では入退院を繰り返すような虚弱(フレイル)な高齢者が多い、そしてそのような患者では腎機能が低下しやすい、そして栄養状態が悪く免疫能の低下した患者が院内感染に罹患しやすく、腎排泄性薬物の多い抗菌薬の投与設計に適していた。これらは私の推測ですが、これらの理由からCG式が高齢者に適合しやすい理由かもしれません。確かに長期臥床の痩せた高齢者ではeGFRよりもCG式のほうが腎機能の予測性が高いことがよくあります。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 4日目です。添付文書の腎機能は多くはCCrで表されていますが、実はこの添付文書のCCrは我々が日常使っているCCrとは異なるのです。そのためこの違いに気づいていないと、抗がん薬のカルボプラチンによる血小板減少、TS-1による骨髄抑制、ダビガトランによる出血といったハイリスク薬による重篤な副作用を招くことになります。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 3日目です。いよいよ鉄則1です。検査せんに最近載るようになってきたeGFR(mL/min/1.73m2)は薬物投与設計には使えません。なぜかというと・・・・ この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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