NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
16日目 ワルファリンとNSAIDsを併用してはいけない本当の理由
医師、薬剤師を含め多くの医療人が、ワルファリン服用者がNSAIDsを併用することによって重篤な消化管出血が起こる原因は、ワルファリンの抗凝固作用とNSAIDsによる胃障害・抗血小板作用による出血、つまり薬物動力学的相互作用と思っているかもしれません。これは確かにあります。また一部の薬剤師はワルファリンの蛋白結合率が99%以上と高いため、同様にほぼ90~99%以上の蛋白結合率で高用量のNSAIDsを併用することによって、ワルファリンの遊離型分率が上がるためと考えている方もいるかもしれません。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
15日目 NSAIDsのパップ剤や全身作用する貼付薬は安全?
モーラスⓇテープなどのいわゆるNSAIDsの貼付薬ではどうなのか?これについてはよく質問を受けますので考察してみましょう。医学中央雑誌ではロキソプロフェン×AKIで88件ヒットしましたが(2021年8月12日の調べ、以下も同じ)、パップ剤に関しては間質性腎炎を含む報告が少数例あるのみです。ロキソプロフェンテープ×AKIは0件でロキソプロフェンパップ×AKIは0件。ただし局所パッチ剤での間質性腎炎の症例報告がありました(Int Med 53: 1131-1135, 2014)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
14日目 経口NSAIDsを使うとしたら腎障害の少ないエビデンスレベルの高いものは何?
経口NSAIDsとして使うとしたら腎障害の少ないものはあるのでしょうか?プロドラッグで腎におけるPG阻害の程度が他のNSAIDsと比べ軽いといわれていたクリノリル?(腎組織において再度非活性型に変換されるため、腎機能障害が少ないとされていた)やCOX-2選択性が高いとわれていたハイペン?などが、AKIを起こさないという確たるエビデンスがないのに、メーカーに騙されて使っている医師が多かったようですが、これは今も続いているようです。COX-2選択性阻害薬のセレコキシブに関しては腎障害が少ないという報告は筆者が検索しただけでも少なくとも6報ありました。腎障害患者にはアセトアミノフェンと並んで推奨できる可能性のある唯一のNSAIDとなるかもしれません。今回はそれらの論文を精査してみましょう。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
13日目 NSAIDsの腎障害は腎前性腎障害(腎虚血)だけじゃない
~ 4種類のAKIと1種類の慢性腎不全 ~
薬剤性AKIの原因薬物のワースト3はほとんどの報告でNASIDs、抗菌薬、抗がん薬で、その中でもNSAIDsは抗菌薬と常に1位、2位を争うほど薬剤性AKIの原因薬物として頻度が高いのです(図1)1)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
12日目 Triple whammyによる脱水を早期発見せよ
Triple whammyによる腎機能の悪化は脱水の早期発見で悪化を食い止めることが可能です。ではどうやってこれらの腎前性AKIの診断をしているかというと、血清クレアチニン値の上昇、尿量の減少はすべてのタイプのAKIの診断基準ですが、最も正確な腎前性AKIのマーカーは尿中Na排泄分画(FENa: fractional excretion of sodium米国人はフィーナと発音する)が1%未満、あるいは尿中Na濃度の低下、
尿浸透圧の上昇などで鑑別できるという検査です(表1:このような一覧表はこのブログのカテゴリ→育薬に活用できるデータベース→薬剤性腎障害で印刷も可能です)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
第6回 基礎から学ぶ薬剤師塾 10月5日(火)18時から20時(予定)の申し込みを始めます。
第6回のテーマは「NSAIDsの腎障害 ~アセトアミノフェンに腎障害はある?~」です。現在ブログ「平田の薬剤師塾」で連載中のテーマについてですね。
RAS阻害薬+利尿薬+NSAIDsのTriple Whammy処方はとても危険ですが、RAS阻害薬と利尿薬はそれなりの有用性があります。しかしNSAIDsに関しては痛みを抑える以外で何ら得をすることのない薬だと平田は考えています。では腎障害だけじゃなくってどんな副作用が怖いの?どうやって痛みを抑えるの?外用薬は安全?NSAIDsの中で一番、胃障害や腎障害の少ないものは何?代替薬のアセトアミノフェンは本当に効くの?アセトアミノフェンは危なくないの?について考えてみたいと思います。
参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。
薬剤師塾への参加者はどなたでも構いませんが、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書き、海外の学会で発表し、英語論文をまとめて博士号を取るんだというような大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
11日目 薬剤師の服薬指導でTriple whammyを防げれば
無駄な医療費78億円セーブできる?
再びTriple whammyに関する論文について触れさせてください。降圧薬のユーザー487,372人のコホートを平均5.9年追跡して、2,215例のAKIが確認されたというカナダのLapiら1)の報告によると、利尿薬のみを対照とすると、利尿薬+NSAIDsのDouble whammyでは有意なリスクになりませんでした。RAS阻害薬のみを対照とするとRAS阻害薬+NSAIDsのDouble whammyでも有意なリスクになりませんでした。しかし利尿薬+RAS阻害薬のDouble whammyを対照とするとNSAIDsを加えたTriple whammy処方だと有意にAKIリスクが上昇することを明らかにしました(図1)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
10日目 イナーシャになっていませんか?
数年前から、薬剤師の間で、ナラティブ・ベイスト・メディスン(Narrative-based Medicine:物語に基づいた医療)、つまり患者さんとの対話を通じて、病気になった理由や経緯、病気について今、どのように考えているかなどの患者さん個人個人が持つご自身の「物語」から,医療者が病気の背景や人間関係を理解して、患者さんの抱えている問題に対して全人的(身体的、精神・心理的、社会的)にアプローチしていこうとする臨床手法が浸透しつつあります。ナラティブ・ベイスト・メディスンは患者との対話と信頼関係を重視し、サイエンスとしての医学と人間同士の触れあいのギャップを埋めることが期待されています。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
9日目 降圧薬処方に対して薬剤師らしい服薬指導やってる?
高齢者の腎機能を悪化させるのはTriple whammyだけじゃありません。高血圧の是正も重要なのです。糖尿病性腎臓病、CKD患者の目標血圧はご存知でしょうか? 各患者様に単に「血圧の薬です」「血糖値を下げる薬です」とだけ言って渡していませんか?これって服薬指導といえますか。薬剤師だったら1歩踏み込んで、指導しなきゃいけないと自覚していますでしょうか?
忙しすぎる?時間がない?患者さんが聞いてくれない?患者さんは医師の前ではいろんなことを訴え、いろんなことを学んでますよね。なんで薬剤師の前では「時間がないから早くして」としか言わないのでしょうか?こんなおかしな状態を1つ1つ薬剤師自身が変えようと思わない限り、何も変わりません。何度も何度も挫折しながらでも、繰り返すことによって少しずつでも変えていこうと思いませんか?薬剤師がまともな情報を発信し続けたら、少しずつ患者さんの薬剤師に対する見る目も変わってくるはずです。少なくとも「できる薬剤師だな」と感じた患者さんはその薬剤師を頼りにしてくれるようになるはずです。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
8日目 利尿薬の利点・欠点
~Triple whammy処方のシックデイ対策、していますか?
利 点
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018 1)ではCKDステージ全域でサイアザイド系利尿薬・ループ利尿薬は、浮腫を呈するなど体液過剰の症例に推奨されています。またサイアザイド系利尿薬は血清Ca濃度を上げるため、高齢者に高頻度で見られる骨折リスクを予防効果が報告されています2)。さらにALLHAT試験ではHFpEF(拡張不全)による心不全入院率はアムロジピン群,リシノプリル群に比べてサイアザイド系利尿薬のクロルタリドン群で有意に減少しています3)。だから利尿薬は日本での処方率は低くても第1選択薬から離れないのだと思います。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます