2023年12月

ハワイ島からオアフ島へ10日ぶりの上陸

 前回も言ったようにピースボートのWifiは弱くて高い。たぶん1000分で2万円です。でもWifiがないと困ることは山ほどあるので、Pocket Wifiを使って自由に使える寄港地に着くのが楽しみです。23日には初寄港地のハワイ島のヒロに着きました(写真1)。でも全乗客1800人(2/3が日本人で、残りの1/3が中国人でシンガポール、中国本土、台湾、香港と多彩で、あとは韓国人と欧米人がわずか)で4~5時間かかる入国手続きを済ませるための寄港だったみたいで、僕たち夫婦は健脚なので、ダウンタウンまで3kmの道を歩いて往復しましたが、十分な観光時間があれば、活火山のキラウエア火山に登ったり、ダイビングを楽しむことができたと思います。でも19時には出港するので、自然を満喫するツアーは時間がかかるので行けず、お土産屋さんや小さなスーパーマーケットを回って、円安の影響でハワイの高い物価を確認するくらいで終わってしまいました。でもこの島に来たことによって船内のビュッフェスタイルのレストランで、久々にバナナやマンゴー、西瓜を食べられるようになりました(写真2)。

 翌日のクリスマスイブはホノルルのあるオアフ島に午後に到着、初日はお決まりのワイキキビーチ、ダイアモンドヘッドを見て、お土産屋さんを散策。ホノルルは40年前にホノルルマラソンを白鷺病院の友人と一緒に走って以来です。当時のワイキキビーチ付近は完全な観光地で、すべてのお店の店員が日本語を話す、「まるで熱海のよう」なところなので、ホノルルマラソンは楽しめたけど、外国に来た感じがしないので、オアフ島をあまり好きにはなれませんでした。でもそのあとに訪れたマウイ島は自然満喫で天国のような場所でした。

 ホノルルでの観光客の移動手段はバスですが、バスの運賃は3ドルで、1人だと1ドル札3枚必要ですが、両替機なんてバスには装備されてないし、SUICAカードのような便利なシステムもないので、ホノルルに着いてまず1番にやるべきことは100ドル札を両替すること。ATMでは20ドル単位でしか下せません。ABCマートのようなコンビニで一番安い水でも3ドル(420円くらい)と高いのですが、店員が優しければ、何も買わなくても両替してくれます。日本のコンビニでは「両替禁止」となっていますが、ハワイのバス事情のことを考えると、コンビニで20ドル札を5ドル札と1ドル札に両替してもらうのが一番いい方法でした。

 

トラブルだらけのホノルル2日目

 2日目のホノルルは電動自転車(といってもほぼ電動の原付のスピードが出ます)に乗って8時間のサイクリングを前もって予約しました(写真3)。ダイアモンドヘッドは25日は入山禁止なので、ふもとの丘まで上がり、山の裏側を見学、その後、カハラホテルという5つ星ホテルに行ってイルカを見て、マノアの滝に向かおうとしましたが、帰り道で妻の自転車がパンク。「どうしよう!」と思いましたが、レンタサイクルの店に電話すると1時間足らずで、車で新しい自転車を運んできてくれました。その後はマノアの滝に行く予定だったのですが、Pocket Wifiの調子が悪く、Google Mapのナビ機能がうまく使えないという緊急事態が発生。あらかじめダウンロードしておいた地図のナビを使うしかなく、これは自転車や歩行者のナビではなく、車のナビしか使えないことが発覚。そのナビに従って行くと高速道路のような自動車専用道路に入ってしまったり、慣れない右側通行のため、かなり危険な目に遭ってしまい、妻が精神的にギブアップ。Wifiの調子さえよければ滝を見に行ったり、海岸を走ったりで1日中、楽しめたはずのですが……。25日はターゲットやウォルマートといった米国で有名な安売りスーパーもクリスマスで休み。米国のクリスマスは年に1回家族が集まる日本の正月・元旦と同じで主要なところはやっていないのです。ということで2日目はとても残念な1日でした。

 

結構楽しめたホノルル3日目

 26日はホノルル最終日、ワイキキでアオウミガメと泳ぐタートル・シュノーケリング・アドベンチャーに参加。アオウミガメのほかにも、水族館にいるみたいにカラフルな魚の群れや海のギャング・うつぼや優雅な泳ぎ方をする太刀魚を見ることができました。生涯のシュノーケリング経験では①西表島、②ワイキキ、③ケアンズのグレートバリアリーフ(ただし雨天空けでした)の順に楽しめました。帰りの船はダイアモンドヘッドの近くまで行ってくれて(写真4)、サービス満点。最終日がよかったから、「ハワイは結構楽しかった」としておきましょう。帰りにターゲットによって500錠入りのアセトアミノフェン500mgを購入。ターゲットブランドだと驚くほど安い!2005年にオレゴンにいたころは鎮痛薬は棚に並んでいたけど、今は鍵付きのケースには入っている(写真5)。

 電動自転車やシュノーケリングなどのツアーを楽しむコツは出発前にベルトラ、TripAdvisorやトリバゴなどのサイトでおもしろそうでコスパの良いもの、そして評価が5つ星に近いものを選んで、あらかじめ自分で予約すると安くつきます。博物館やパールハーバーなどの文化的な施設は勉強にはなるかもしれませんが、評価は4つ星程度でエキサイティングではありません。

 場合によってはツアーだけでなくホテルや飛行機の予約も自分でします。ピースボートのツアーの1/3程度の価格になりますが、英語のガイドなので、自転車のパンクの時のように、緊急時に英語で電話できる語学力は必要です。僕は英字新聞は読めないし小説も読めない、映画も字幕なしでは半分も分からないのですが、医学論文は辞書なしで読めますし、英検準1級を持っているので、旅行英語くらいは問題ないと思います。明日からまた約1週間の船旅でフランス領ポリネシアのタヒチ島にある首都パペーテに向かいます(写真6)。

 12月13日に神戸港を出発してから1週間を過ぎ、船は太平洋を南東に向かって走っています。これからの人生を楽しむためにピースボートという世界一周のクルーズ船旅行に来ています。

 ピースボートでは暇を持て余すことはありません。朝からラジオ体操、ヨガ、サルサ、太極拳、ズンバや社交ダンスなどの運動系や、水彩画教室、講演、映画、そのほか、ありとあらゆる種類の趣味の集まり、地域の集まり(僕は広島県人会に参加)などの会合が開催されています。何を選んだらいいのか毎日迷いますが、前日に配布される船内新聞を見ながら妻と一緒に毎日のスケジュールや食事場所(和食、洋食レストランとビュッフェスタイルの3件)を決めています。妻はもっぱらヨガ、サルサ、ズンバ、ジムなどの運動系、僕は楽器演奏広場、ランニング、水彩画教室などに参加しています。

 

まるで大学入学時みたい

 僕のいつものライフスタイルは芦屋のI&H本社に出勤し、デスクワークがほとんどで、夢中になるといろんな論文を読んで、新しい本や新しい講演のためのスライドを作りたくなるので、家に帰るのは午後9時過ぎがほとんどですが、ピースボートではネットがつながらないので(Wifi使用料が高くてつながりにくい)、新しい論文を見れません。だから授業ではなく自然とクラブ活動ばかりやっていた学生時代と同じような自由な生活になっています。

 

僕の趣味はギターとランニング

 マーチンのバックパッカーというスリムなギターを持参したので、僕の日課はもっぱら「楽器練習ひろば」に集まる音楽好きの人たちと一緒にビートルズやE.クラプトン、サイモン&ガーファンクル、フォークやポップスを一緒にセッションして楽しんでいます。埼玉の歌もギターもうまいギタリストのTさんに弟子入りして、一緒にHere comes the sun、Scarborough Fair、April comes she will、Tears in Heaven, Hey heyなどをレパートリーにしてステージに出ています。この中にトランペット、フルート、打楽器や

オカリナの人たちも入ってセッションすることもあって、これは毎日の楽しみでもあります。20日はペアでビートルズのHere comes the sunをステージで披露。結構、受けました。明日からはE. ClaptonのUnpluggedをやってみようと思っています。そのために20歳代の時以来、久しぶりに左指が痛むくらい一生懸命、ギターの練習をしています。

 ランニングは12階にあるトレーニングジムにトレッドミルが10台以上ありますが、通常の時間帯だと混んでいて、使えないときは7階のウッドデッキで、船の周り1周500mを競歩のように速く歩いています。マラソンランナーはガーミンというGPSウォッチ(走行速度や心拍数などが測定できる優れもの)を身に着けていますが、船の上では、僕の走る速度と関係なしに船の速度が影響するので、1kmを2分足らず、10kmを20分足らず、ハーフマラソン(実は5kmちょっとしか走っていない)をほぼ40分で走り、ガーミンウォッチが「新記録!(実はすべて世界記録だ)」を連発してくれる。ちょっと困ったものです。船は東に向かっているので、ほぼ毎日のように1時間、時計を早める必要があります。電波時計を持ってきた人も使い物にならないと嘆いています。僕は持参したカシオの安い時計(でもカシオの性能はすごくいいんだよね)を代わりに使っています。

 

まったく暇ではない

 こんな風に毎日、いろんなプログラムに参加し、新しい趣味の仲間や友人ができる。食事は、たいてい妻と行くが、相席になるとほぼ必ず初めて会った人たちと、自己紹介をはじめ、いろんな話をする。午前中は楽器練習広場で午後の発表会で披露する曲の練習、暇があればサルサやヨガ、午後は水彩画教室、英会話上級コースなど。そしてその間を縫ってランニング、ウォーキングがあるので、決して暇ではありません。それと自主企画プログラムが増えてきたので、僕も「健康長寿講座」のような講演をしようかなと思っています。

 

今後の予定

 23日にハワイ島のヒロで入国手続きを済ませて散歩、24-26日はオアフ島のホノルル、そして、正月にはタヒチのパペーテに行き、イースター島、ペルーのマチュピチュ遺跡などを回り、南アメリカ、アフリカの各地を回る予定です。船内の日本語ツアーは高いので、自分で英語ツアーを予約していく予定です。

 平田は今日も1日平均、15,000歩歩くとても健康的な生活を送っており、元気です。まずは近況まで。

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『腎の構造と機能から学ぶCKDの病態』の目次です。

1日目体内水分量と電解質の調節:

2日目ヒトは細胞内液に原始の海を細胞内液には太古の海を持っている:

3日目:腎臓の構造について学ぼう

4日目:なんで腎臓病は良くならない?

5日目:最終的にアルブミンを漏らさない糸球体の濾過障壁は何?

6日目:糸球体の仕事をまとめ、糖尿病性腎症の進展について考えてみよう

7日目:腎臓のできることと限界

8日目:輸液療法

9日目:CKDの降圧療法はどうあるべきか?

10日目:蛋白尿(-)のCKD患者の血圧の下げすぎには要注意

11日目:薬剤師の皆さん、イナーシャになってない?

12日目:尿細管の名称と機能を知ろう

13日目:近位尿細管の機能

14日目:傍糸球体細胞による糸球体内圧の維持とレニンの役割

15日目:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬の使い方

16日目:かなりあくどいアルドステロン

17日目:non-steroidal MRAフィネレノンの快進撃

18日目:集合管は尿量を最終的に決める~主役は水を保つADH~

19日目:水利尿薬としてのサムスカⓇ(トルバプタン)の作用機序と使い方

20日目:ナトリウム利尿ペプチド

21日目:サクビトリル/バルサルタンってどんな薬?

22日目:Fantastic Fourの効果と使い方

23日目:利尿薬について誤解していない?

24日目:サイアザイド系利尿薬再び

25日目:フロセミドは浮腫改善作用を持つ利尿薬であり、サイアザイドは利尿降圧薬

26日目:アルドステロン分泌異常疾患、ADHの分泌異常疾患による血清Na値異常

27日目:発汗によって脱水になったら、どうやって水分の喪失を防ぐ?

28日目:最終回『まとめの理解度テスト』

腎の構造と機能から学ぶCKDの病態

28日目(最終回):まとめの理解度テスト



  問  題  

問1.Naを保持して体液減少を防ぐのはなに?1つだけ選べ
①アルドステロン ②抗利尿ホルモン ③Na利尿ペプチド

問2.水を保持して体液減少を防ぐのはなに?1つだけ選べ
①アルドステロン ②抗利尿ホルモン ③Na利尿ペプチド

問3.体液量減少を感知して血圧を上げるために分泌されるものは?1つだけ選べ
①レニン ②アンジオテンシンⅡ ③アルドステロン

問4.Naを保持して体液減少を防ぐホルモンを抑制して利尿作用を示す薬はなに?

問5.水を保持して体液減少を防ぐホルモンが作用する受容体に拮抗して尿量を防ぐ薬はなに?

問6.高カルシウム血症による脱水には以下のうち何を摂取すべき?1つだけ選べ
①水を飲む ②OS-1を飲む

問7.フルマラソンに参加し完走した市民ランナーによる脱水には以下のうち何を摂取すべき?1つだけ選べ
①水を飲む ②OS-1を飲む

問8.ネフローゼ症候群によって血清Na濃度が132mEq/Lに低下した。この時の治療法は?

問9.ARNIとACE阻害薬の併用はあり?

問10.①血漿、②間質液(細胞間液)、③細胞内液、④体内水分量、⑤細胞外液量はそれぞれ体重の何%?

問11.以下の血清電解質濃度の正常値を言え
①血清Na濃度、②血清K濃度、③血清Ca濃度、④血清P濃度、⑤血清Mg濃度、
⑥血漿HCO3濃度

問12.以下の正常値を言え
①心拍出量/分、②腎血流量/分、③糸球体濾過量/日

問13.糸球体細動脈をボウマン嚢の中で束ねているのは何細胞と何組織?

問14.下記の()内に適切な数値を入れよ。
ヒトは最も薄くて(①)mOsm/Lから最も濃くて(②)mOsm/Lの尿を作ることができる。

問15.ヒトの ①尿中正常Na濃度、②尿中正常水素濃度、③尿中正常Ca濃度、④尿中正常リン濃度 をいえ


  解  答   この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

腎の構造と機能から学ぶCKDの病態

27日目 発汗によって脱水になったら、
    どうやって水分の喪失を防ぐ?
     ~ADHとアルドステロン、ANP/BNPの違い~


 

 尿量は最終的に集合管で決められる。脱水にならないための主役は昇圧系の代償機構の代表であるRAASのアルドステロンとともに、抗利尿ホルモンADHで、これらが尿量を減らすことによって脱水を防いでくれている。ついでに言っておくと、降圧系の代償機構の代表であるANP(心房性Na利尿ペプチド)やBNP(脳性Na利尿ペプチドだが実際には心室で分泌されている)は心房・心室から分泌され、集合管でのNa再吸収を抑制している(図1)。これはANPやBNPの分解を阻害するサクビトリル/バルサルタンというアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の快進撃によって心・腎保護作用が注目されている。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

腎の構造と機能から学ぶCKDの病態

26日目 アルドステロン分泌異常疾患、
    ADHの分泌異常疾患による血清Na値異常



高ナトリウム血症と低ナトリウム血症

 血清Na濃度の正常値は135-145mEq/Lだが、症状は120 mEq/L未満、あるいは160 mEq/L以上になってから起こる。高ナトリウム血症と低ナトリウム血症の症状はよく似ている。「どちらも悪心・嘔吐、倦怠感、意識障害、痙攣と覚えよう。高ナトリウム血症になって意識障害を起こしたのか、低ナトリウム血症になって意識障害を起こしたのかは患者の原因疾患やシチュエーションを見ればわかる。」と熊本大学の学生には教えていた(図1)。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

第 31回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
初心者向けシリーズ③糖尿病性腎臓病とその治療薬

 


 

2023年11月17日アンケートによる質問

氏名を書いていただきましたが、匿名とさせていただきます(批判的な回答をしましたので)。



Q1 .SGLT2の腎機能低下例への投与について、先日eGFR30を下回ってる患者への投与で薬効が期待出来ないとの事から疑義をしましたが、投与するという回答でした。本日のご講演から20を下回らなければ投与に意義があると考えていいのでしょうか。

A.「薬効が期待出来ない」からで考え方は合っています。たしかにSGLT2阻害薬を腎機能低下例に投与すると腎に作用する薬ですから効きにくくなりますが、メトホルミンのように乳酸アシドーシスという致死性副作用を起こしたりNSAIDsのように薬剤性腎障害で透析導入などのリスクが高くなるわけではありませんので、個人的には透析導入になるまで、疑義照会せず、見守っていいんじゃないかと思います。

 SGLT2阻害薬の添付文書には「 重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖降下作用が期待できないため、投与しないこと」となっています。重度というのは一般的にeGFR30 mL/min/1.73m2未満のことですが、この添付文書はおそらく発売当初から書かれた内容だと思いますが、添付文書はよほどのことがない限り、書き直されることはありません。しかしその後の臨床試験はそれより低い腎機能の患者を対象にしたものもあり、それによって各国の学会の指標も変わりつつあります。

 厳密に言うとエンパグリフロジンのRCT試験はeGFR20 mL/min/1.73m2以上を対象とした試験があるため、20以上あれば投与開始できます。ダパグリフロジンのRCT試験はeGFR25以上を対象としているため、25以上あれば投与開始できます。カナグリフロジンはeGFR30以上のDM患者のみを対象としています。それ以外のSGLT2阻害薬はDM患者のみを対象としており、心不全やCKD患者に対する試験は行われていません。⽇本腎臓学会 のCKD 治療におけるSGLT2 阻害薬の適正使用に関するrecommendationでは要約すると以下のことが明記されています。

①糖尿病合併 CKD においては eGFR20 mL/min/1.73m2 以上であれば,クリニカルエビデンスを有する SGLT2 阻害薬の 積極的な投与開始を検討すべき

②eGFR15mL/min/1.73m2未満では新規に開始すべきではない。

③SGLT2 阻害薬開始後に eGFR15 mL/min/1.73m2未満となった場合には,副作⽤に注意しながら継続する。

 だから平田は添付文書通りに「eGFR30mL/min/1.73m2未満の患者さんには禁忌です」という型にはまったような疑義紹介をするデジタル薬剤師にはなってほしくないと思っています。

 開始基準は上記の試験の通りですが、患者さんに不都合が生じないのであれば、いったん開始したSGLT2阻害薬を透析導入までは続けてもいいと思います。SGLT2 阻害薬が腎機能が落ちてもある程度効果があるのはなぜなのかについては明確にされていないし、どこまで効くかもよくわかっていないからです。

 ですから多面的な薬理作用と強力な腎保護作用を持つSGLT2阻害薬ですから、添付文書に記載されたよりも低い腎機能低下患者への治療効果の可能性を確認したい医師がいれば、薬剤師としては一緒になって副作用が起こらないようサポートし、効果が得られるかどうかを見守ってみてもいいんじゃないかなと思っています。



Q2 .SGLT2阻害薬が投与されている患者さんへの説明の中で、「食事ができないときには、服用しないように。」と伝えていますが、「どれくらい食べられたら飲んでも良いですか?」と聞かれます。食べられないのが単回の事であれば、パン1個とか、おにぎり1個程度食べたら、服用しても大丈夫なのでしょうか?目安等があれば、お教えください。

A.「食事ができないときには、服用しないように。」は良い指導だとは思いますが、実はSGLT2阻害薬を1日、服用をやめても尿糖は出続けます。おそらく数日間(1週間以内)、尿糖排泄は持続しますので、しばらくはグルカゴン/インスリン比が上がり、脂肪が分解されケトン体の産生する状況が持続すると思います。

 ですから「この薬を服用する場合には全く炭水化物を摂らないような厳格な糖質制限食や、極端な低カロリー食はやめてください(ケトン体の産生が亢進しますので)。毎食、少しのご飯かパン(ジャガイモやカボチャなどがおかずに入っているだけでもいい)を摂るようにしてください。でないとケトン体産生が亢進しすぎると脱水になって、嘔気・嘔吐、腹痛、意識障害の激しい症状(ケトアシドーシス)が起こることがあります」という指導の方がよいように思います。目安としては少しのご飯かパン(炭水化物)を必ず摂るように(炭水化物を多く摂りすぎると血糖値が上がるのでインスリン分泌が増え、SGLT2阻害薬の薬理作用が期待できなくなる)でいいと思います。



Q3.1型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬処方時にケトン体測定チップをお渡ししようと思いますが、その他1型糖尿病への特別な注意点があれば、ご教示ください。

A.1型糖尿病患者さんはインスリン依存状態なので、2型に比べて極めてケトアシドーシスになりやすいので、ケトン体測定チップをお渡しすることはとても良いことだと思いますが、自己測定によるケトン体測定について僕はあまり知りません。ごめんなさい。

 ただ調べてみると、結構、測定法によって正確性にばらつきがあるようで、病院で測定する正確な静脈血中βヒドロキシ酪酸濃度に近くなるような直接的に毛細血管中のβヒドロキシ酪酸を測定するものがいいようです(PMID: 18637083)。

 

腎の構造と機能から学ぶCKDの病態

25日目 フロセミドは浮腫改善作用を持つ利尿薬であり、
               サイアザイドは利尿降圧薬



フロセミドは浮腫改善薬であって長時間作用型ループ利尿薬とは異なる

 ループ利尿薬の中のフロセミドだけは半減期がほぼ1時間以内と非常に短いので、まさにフロセミドこそ「利尿薬」という名にふさわしいと思う。フロセミドの場合、細胞外液量は治療開始後数日の間に失われたナトリウムの量だけ減少したままである。サイアザイド系利尿薬では、最初の塩分と水分の喪失の後、一般的に塩分と水分の平衡が一定期間保たれ、細胞外液量が基礎値に近く(ただし、基礎値には達しない)戻る。この二次的な反応のメカニズムは明らかではないが、ループ利尿薬によるヘンレループからのNaCl排出量の増加は、遠位尿細管と皮質尿細管の肥大とNa再吸収能の増加につながることが示されているが、サイアザイド系利尿薬では、排出量の増加とそれに続く肥大反応は皮質尿細管に限られると考えられている。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 第32回の「基礎から学ぶ薬剤師塾」は2024年1月19日(金)18時半から(20時半までの予定)です。今回は事情があり(平田は3月末まで日本にいません)、録画を見ていただき、Q&Aはございません。登録していただいた方のみ視聴できますが、再放送もございません。申し訳ありません。

 今回のテーマは初心者向けシリーズ第4回目で、「初心者向けシリーズ④ 降圧薬を極める」です。大学で学んだ薬物治療学ではわかりにくかった高血圧の病態と降圧療法について、できるだけ分かりやすく解説したいと思っています。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、1月14日までに送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。300名まで参加可能ですが、登録者数はいつも200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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