2022年3月

第 11回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
腎臓が何をやっているか ~糸球体編 ようこそこの複雑で精密な世界へ ~

 

Q.貴重なお話ありがとうございます。チャットで記入していましたら間に合いませんでした。基礎的で申し訳ないのですが腎機能低下は両方で同じように起こるのでしょうか?片方摘出する場合摘出後は、腎機能は改善するのでしょうか?

A.透析導入の3大疾患である糖尿病、腎炎、腎硬化症は両方同じように腎機能低下が起こります。片方だけ悪くなるのは腎がん、腎結核くらいでしょうか。


Q.NSAIDは避けてカロナールを推奨されてたのですが、実際には痛みを訴える患者さんが多くてロキソニンやボルタレンも使われていて、効かないからもっと多くほしいと希望されることもあります。(カロナールも効かないと訴えあり)許容範囲を決める時にどの視点から考えれば良いか教えてください。また、トラムセットも併用で出されたりしていますが、カロナール以外の痛み止めのおすすめがあれば教えてください。

A.若い方へのNSAIDsはあまり気にしなくてもよいでしょうが、問題は高齢者(と小児)です。もともとRAS阻害薬や利尿薬が投与されている高齢者には非常に危ない。しかも胃障害もきついし出血しやすいし血圧は上がり心血管疾患に罹患しやすくなる。NSAIDsは抗炎症作用があるので、痛風などの炎症を伴う急性疼痛には第一選択ですが、漫然と投与する高齢者の膝、腰の痛みは急性ではありません。アセトアミノフェンを投与してもらいたいものです。また1回500mgくらいで「効かない」と判断しないでほしいです。1回750mg×3回、頓服で1日1回程度なら1000mgくらい使ってから効かないと判断してもらいたいです。透析患者の半数近くがPPIを必要とし、NSAIDsでは胃痛、消化管出血が怖いので、直接の胃刺激の少ないボルタレンサポやインダシン座薬を勧めたこともあります。RAS阻害薬や利尿薬が投与されている高齢者で痛みがきつければ、トラマドールの方がよほど安全だと思っています。


Q.貴重なご講演をありがとうございました。腎障害の患者、透析を行なっている患者の方への手術後の疼痛管理ですが、アセトアミノフェンが効かない患者へはどういった薬剤がいいでしょうか?ご教示をよろしくお願いします。

A.透析患者ではこれ以上腎機能が悪くならないので「腎障害が悪化するため禁忌」という考え方は間違っています。ただし透析患者さんは胃が弱い方が多く、胃障害が怖いので、僕は医師にボルタレンサポやインダシン座薬を勧めていました。今はトラマドールも使えます。

腎障害の患者さんに対しては前問の回答をご覧ください。


Q.毎回わかりやすく丁寧な塾を開講いただきありがとうございます。SGLT2阻害薬について質問させてください。SGLT2阻害薬間で腎保護作用の違いはあるのでしょうか?SGLT2の選択性が高いダパグリフロジンで効果が認められていますが、SGLT2にそれほど選択性のない(SGLT1にも作用する)カナグリフロジンでも腎保護作用が認められたとの報告もあり、今後のSGLT2阻害薬の使い分けが気になります。何かお考えがあれば、ご教示ください。

A.SGLT2阻害薬間で腎保護作用の違いを調べた報告はないと思います。そして腎に関してはダパグリフロジンとカナグリフロジンしか主要評価項目を腎にしていないと思います。それに加えてエンパグリフロジンでもサブ解析で腎保護作用が認められていますし、ほぼクラスイフェクトと言ってよいと思っています。ほかにもSGLT2阻害薬もありますが、大規模試験をやるだけの体力・財力がないだけかもしれませんね。

カナグリフロジンの次に選択性が低いのはダパグリフロジンのはずです。SGLT2選択選択性の低いものであれば腸管上皮のブドウ糖の吸収に関与するSGLT1の活性も阻害するので血糖降下作用が腎機能に依存しないので、この2つが腎に関するトライアルをやったのではと勘繰る人もいます。報告によってはSGLT1は小腸、心、肝、肺にも存在するためSGLT2選択性は副作用に関与(特に小腸に作用すれば下痢)すると総説には書かれています。


Q.ダイエット、筋トレ後の筋肉増強のため、プロテインをたくさん摂る人がいます。タンパク質多量摂取における、腎臓への負担について教えていただきたいです。

A.浅学の方が「プロテインの摂取は腎機能を悪化させる」と言うことがありますが、これは間違いです。熊大の時に健常な筋肉系スポーツ選手を対象に臨床試験をやろうとして、1つの目的は筋肉量が多い方なので、血清クレアチニン値が過大評価されないかということ、そしてもう1つは1年間のクレアチンサプリメント、プロテイン摂取で腎機能は悪化しないかということでした。実は後者の試験はクレアチンサプリメントの臨床報告が結構よくない報告が少なからずあったのでやめたのですが、プロテインの摂取で腎機能が悪くなったという報告は皆無に等しいくらいになかったです。

だから健常者のプロテイン摂取は大丈夫だと思いますが、腎不全患者であればたんぱく摂取は窒素老廃物だけでなく、腎機能を悪化させ心血管病変を悪化させる尿毒素(インドキシル硫酸、p-クレジル硫酸、TMAO)が蓄積します。炭水化物・脂質は水とCO2になるとてもクリーンなエネルギーですが、たんぱく質はBUN、クレアチニン、尿酸などの老廃物を作りますから腎の負担にもなります。だから腎機能が悪化すれば0.8g/kg、さらに悪化すれば0.6g/kgにたんぱく質摂取量を少なくしてもらいます。ただし、肉、魚、卵などは良質なたんぱくですから後期高齢者などで栄養状態が悪い方へのたんぱく制限は、サルコペニアになってしまい、免疫力低下から感染症による死亡も懸念されますので極端なたんぱく制限は避けた方がよいと思います。実は腎不全患者のたんぱく制限によって予後が改善したという報告はほとんどないのです。


Q.薬局の外来で腎機能が落ちてきた高齢者に「お水をこまめに飲みましょう」とよく言うことがありますが、「そんなに多く水を飲めない」と言われることがあります。脱水状態になるのも良くないと思いますが、実際どのくらいの飲水量を維持できれば急激な悪化なく腎機能を保つことができるでしょうか?

A.暑い夏以外は「お水をこまめに飲みましょう」という服薬指導は必要ありませんし、若年者にも不要だと思っています(のどが渇けば水を飲んでくれますので)。ただし利尿作用の強い(特に投与初期の利尿作用が強い)SGLT2阻害薬が高齢者に投与された場合には夏以外では、起きた時、10時と3時にもお茶か水を程度でよいのではないかと思います。

夏に利尿薬、RAS阻害薬、NSAIDs、バラシクロビル、活性型ビタミンD、SGLT2阻害薬のいずれかの複数の組み合わせが高齢者に投与されれば、起きてすぐ、朝食時、10時、昼食時、3時、夕食時、ふろ上がりなどにグラス1杯の水を飲めばほぼペットボトル500mL×3本分になりますね。

ただし溢水のために利尿薬が処方されている患者さんに対して飲水の是非については主治医と相談をしてから指導をしましょう。


Q.心不全など何らかの原因で胸水がある患者さんの場合、利尿剤をフロセミド、サムスカなど数種類併用され続けられるのですが、体重が減少していっても胸水は減らず、腎機能が悪い高齢者だとBUN、SCrがどんどん上昇します。しかし、Dr.は利尿剤を減らしてくれませんし、補液投与もしてくれない事があります。高齢者だと水分補給もなかなか進みませんし、そうしているうちに腎機能もさらに悪化してしまいます。薬剤師として何かできることはあるのでしょうか?また、尿酸値も上昇するのですが、Dr.は10を超えるようならフェブリクを検討されています。そんなに上昇するまで放っておいていいのでしょうか?

A.溢水で呼吸困難になるためにフロセミド、サムスカが投与されているのであるのに、飲水すれば、より呼吸困難が悪化しますので飲水指導を勝手にやってはいけませんが、BUN、SCrがどんどん上昇するのは脱水による腎機能低下の可能性が極めて高いです。直ちに医師と相談して、脱水を防ぐための「約束事」を作ってみませんか?フロセミド、サムスカが投与されていて体重が1.0kg以上減少した時、血圧が10mmHg以上低下した時には脱水の可能性があるので、〇mLの飲水指導をする、体重が2.0kg以上減少した時、血圧が20mmHg以上低下した時には脱水の可能性があるので、飲水をして直ちに受診する、その他のシックデイ対策などを考えた方が患者様のためになると思います。


Q.退出前ににっこりしたモノクロの平田先生の写真を拝見しましたが、いつ頃のお写真ですか?いい笑顔で癒されて退出しました。

A.ありがとうございます。そんなに前じゃないですが、Facebookに参加した5年前の写真で、僕の誕生日に学生たちがケーキを買ってきてくれて祝った時に写真です。最近、眼鏡をかけなくなったのは遠視が進みすぎて近視が治ったためです。今は年老いて鏡を見るのが嫌になりました。


Q.仕事と家庭を両立させる秘訣は?

A.自慢させてください。とても性格が良く、ちょっとだけかわいい妻を持てたこと、自分が楽しいと思うことに一生懸命になったことが秘訣だと思います。


Q.最近、この講座の事を知りました。初回からの講座を視聴する方法はないのでしょうか?

A.これまでずっと新ネタをやってきましたが、あと数回で新ネタが尽きれば、今までの講演内容をアップデートして繰り返し講演しますので、ずっと聴き続いけていただければ幸いです。


Q.パワーポイント等のテキストが、頂ければ、幸いです。

A.一般の方々にはテキストを配布して、見ていただければ、理解力が高まっていいなと思いますが、そのままコピペして自分の講演で「平田の講演内容から引用」などと断らずに使う輩、ほぼ同じスライドを少しだけ変えて自分が作ったかのように総説論文で使う輩が結構いるのです。僕はスライド作りにかなりの労力とお金をかけています(図や写真を購入する費用など)。この盗用する方々は実力がある人ですが、引用元を明記したり、引用論文として記載していただくなどのルールを守らずに盗用されるのはやはりいい気がしません。ブログの図も無断引用されますし、こんなことが続けばブログも薬剤師塾もやってられないくらいに悔しいです。


 

講演依頼に関しましては平田のメールアドレスhirata@kumamoto-u.ac.jpまでお気軽にご連絡ください。
大学での非常勤講師も可能です。「実務実習で代表的な8疾患」のうち高血圧、糖尿病、心疾患、感染症の4疾患の薬物治療学+腎疾患、輸液、TDMなどについて国家試験対策も含めを教えることができます。

 

アスヤクLife研修会 Q&A(2022.2.28)

 

Q1.様々なことに興味を持って調べたり、勉強します。コロコロと変わっても良いものでしょうか。

A.次々と興味を持ったことを調べることはとてもいいことです。ぜひとも幅広い知識、多様性のある情報を身に着けてください。これをやっていない医療人との差は、すぐにつくと思いますので頑張って興味あることについて調べてみてください。

衝撃を受けるくらい興味を抱いたことについては深掘りしてみるのもいいですね。僕の場合は書籍を購入して読破し、さらに最新の情報をPubMed検索するなどして最新の情報を導き出します。このような習慣を身に着ければ、いずれあなたは○○市でトップの情報を身に着けた薬剤師→○○県でトップの→日本で有数の情報を身に着けた薬剤師になれることでしょう。


Q2.リリカのお話を聞きまして、普段、有害反応、と判断するのが難しいと感じてることを思い出しました。起こった事象が、その薬物が原因であると、何を根拠に判断すればいいのでしょうか。

A.副作用報告に関する論文を書くと、「有害事象と有害反応が区別できていない。有害反応の定義はどうやって定めたの?」って査読者に聞かれることがあります。「有害反応 有害事象 違い」でググってみてください。あるいはNaranjo scaleなどを知らべてみてください。副作用を①9以上で確実、②5-8点でほぼ副作用だろう、③1-4点で副作用の可能性あり、④0点で副作用とは疑わしいに分類できます。①②を副作用と定義したという論文が多いように思います。

この他にも「血清Ca濃度が10mg/dL以上とか、リン濃度が6mg/dL以上、クレアチニン濃度が1.2mg/dL以上になると」、とか、「血清クレアチニン値が0.3mg/dL上昇すれば急性腎障害」など診療ガイドラインなどを見ると、副作用と定義しやすくなると思います。


Q3.いつも薬剤師塾をわくわくしながら拝聴しております(ときめいています)。平田先生の影響を受けて英語の論文を少しでも読もうとしていますが、英単語を調べるのに時間がかかりなかなか進みません。おすすめの媒体はありますか?今は主にインターネットで単語を調べています。医療用英語の辞書の方が良いのでしょうか…

A.2000年ころまではリーダーズ英和辞典 が28万語だったのでこれを使っていましたが、ALCの出版している「英辞郎 第11版」は217万語が単語数で群を抜いて多いので(もちろん医療英語も満載です)、これをPCにインストールしていました。今はオンライン英会話もやっていますし、英語論文投稿時や個人輸入時のトラブル、海外旅行の旅程の予約などに英文Eメールを書くこともありますので、例文数が多い年額3,630円で英辞郎on the Web Proを使っています。

翻訳ソフトに関してはGoogle翻訳よりも韓国のPapago、Papagoよりも日本のDeepL翻訳のほうが医療系文献の翻訳能力では高いと思っていますので、試してみてください。どれも無料で使えます。DeepL翻訳は特におすすめです。


Q4.6年制の第1期生です。大学院に行き博士号を取りたいと思いながら、気づけば10年目の薬剤師になってしまいました。出身大学は遠方なので難しいです。何かきっかけが欲しいです。アドバイスお願いします!

A.学位が欲しいために博士号を取りたいのですか?博士号を持っていても得になることと言えば、大学の教員になりやすいことくらいではないでしょうか?これから薬剤師として生き残るには認定・専門薬剤師をとった方がよいのではないかと思います。僕は臨床の面白さに没頭した薬剤師なので、博士号は不要だと思っています。薬剤師として学会発表し、論文を書くようになると実力のある薬剤師になれるし、周りの方々も注目してくれます。つまり薬剤師としてのスキルを高めるために、自分のやった仕事を残すために、査読付き論文を書いてきました。「博士号」が目的ではなかったです。論文を書いていたら博士号がおまけについてきたようなものです。

博士号を取るために大学院に入学する方のほとんどは基礎研究しています。基礎研究が好きであれば近い大学に行けばいいでしょう。ただし働きながらだと、大学卒業して大学院に入った学生と比べて非常に不利ですから、留年することも覚悟が必要ですし、薬剤師をやめて研究を3~4年続けるつもりで大学院に入った方がよいように思います。


Q5.若手対象のお話のようで恥ずかしいのですが・・子育てが一段落して学会発表を試みて2年たちました。症例報告をしました。次回は研究レベルに挑戦したいと思っています。調剤薬局に勤務しています。調剤薬局の方々の研究発表はアンケート調査がほとんどです。違った視点での薬局薬剤師の研究で先生がご存じのもの、何かありましたら教えていただけるでしょうか

A.テーマになる候補のものは探せば、薬局薬剤師でもいっぱいありますが、あなたが何に興味があり何をやりたいかが一番重要です。興味のないことに人は一生懸命になれませんから。薬剤師のあなたであれば、学生と違うのですから、「このテーマをやりなさい」と言われるのを待つのではなく、自分が薬剤師として仕事をしていくうちに疑問に思ったことに関して、いっぱい文献を読んで、何が分かっていないか?何をやるべきか?を自分で見つけてください。アンケート以外でもできることはいっぱいありますが、何がやられていないかを知るには、いっぱい学会で情報を得て、いっぱい論文を読まないと分からないです。

論文をチェックできれば、いいテーマが見つかります。やられていることは知識として身に着け、やられていないことを研究テーマして解明すればいいのです。

結構身近なことでわかっていそうで分かっていないことは多いものです。薬剤師の論文はレベルが低くてもやられていないことが多いから、結構英語論文になりやすいのです。


Q6.基本的なことかもしれません。日本語論文と英語論文の違いとその理由を知りたいです。英語論文の方が審査が厳しいということでしょうか?

A.薬剤師も医師も実力のある研究者は、研究を開始した時点からすべて英語論文を目指しますが、英語論文にならないレベルの内容であれば、仕方なく日本語論文にしています。だから違いは「レベルが違う。英語論文の方が日本語論文よりもはるかにレベルが高い」のです。日本語論文の読者は1.2億人に過ぎないが英語論文だと78億人が見る可能性があるのだから当然と言えば当然です。さらに言えば、英語論文でも日本語雑誌や日本語学会誌に英語で書いたものの評価はあまり高くありません。査読付き英文専門誌に掲載されれば、PubMedにも載りますし、さらにimpact factorの高い英文誌に載れば、この著者はかなりの実力者と専門家が判断してくれます。

ただし非常にレベルの高い日本語総説もあります。これは広く日本人読者に読んでもらいたいために、専門家が英文総説になるのに、意図的に日本語で書くことがあります。たとえば日本腎臓学会誌などの専門分野の学会誌に載っている総説は非常にレベルが高く、読みごたえがあり、ありがたいと思っています。僕もよく知ってもらいたいことについては日腎薬誌に査読付き総説として投稿します。


Q7.調剤薬局で勤務している場合、病院と異なりカルテなどが見れないなどの特徴がありますが、その場合どのような調剤薬局で臨床研究をし、発表につなげていくことができると考えられますでしょうか。

A.カルテが見れると、患者さんの検査データだけではなく、看護師が聞き取りした家族背景、性格や病歴などの個人情報も見ることができます。毎日の血圧・脈拍の変動、食事摂取量も分かります。これらを繰り返し見れば、僕は病棟に行き初めて、2年もたてば検査データを見るだけで「病態が予測できる」ようになり「副作用はなにをマークすべきか」が分かるようになりました。これは単にカルテを見れるからではなく、病棟に行って医師やナースと症例についてディスカッションできることも関係していると思います。つまり臨床現場を見ることができるところが病院薬剤師の良さです。さらに病院を選ぶなら回診に連れて行ってくれる科、病院を選ぶとさらに実力アップします。

そのような経験から僕はその後、大学で教えることになるのですが、奨学金を返すのに、給与の高い薬局に就職しなければならない子や病院のハードワークに耐えれないような子は除き、学生たちには「2年間は病院薬剤師を経験した方がいい」と言っていました。今は薬局で働いている方も、あとからでもいいから病院で経験した方がいいでしょう。そうすれば調剤薬局ですぐに実力を発揮できる薬剤師になれるリーダー格になれると思っています。調剤薬局チェーン店の中には大学病院薬剤部で、調剤薬局の給与をもらいながら研修できるシステムのある所があります。実は僕の所属するI&H株式会社もこのようなシステムがあり、その研修を終えた薬剤師は「さすが」と言えるほどの薬剤師に成長していますが、このシステムがありながら、利用者が少ないらしいのです。なんで?

おっと、答えが随分とずれてしまいました。研究テーマはいろいろなものがあります。アンケートも気の利いたものであればアンケートは有用です。僕もCa拮抗薬全盛時に、RAS阻害薬が登場して、透析患者への使用頻度はCa拮抗薬が高かったのです。これは関西腎と薬剤研究会の仲間と組んで様々なデータを集めたのですが、使用頻度を調べました。患者数は2500人くらい。透析患者としてはすごいデータです。しかもβ遮断薬はその当時第1選択薬だったのに心不全目的以外で降圧薬としては全く使われていないことも分かりました。これを透析医学会誌に載せました。その後、医師はこれから透析患者に対してどの降圧薬を使いたいのだろうと疑問に思い、これをアンケートに取りました。当時、Ca拮抗薬は頻脈になるものばかりで、心臓を鞭打ってしまうので透析患者にどんどん投与するのはいかがなもんだろうと思ったからです。で、出た結果はARBを使いたい医師が最多だったのです。これで関西腎と薬剤研究会のスタッフは全員2報の原著論文の著者になれたのです。

DOACが出てきたときに透析患者にはワルファリンしか使えないことに事実上なっていましたが、ここで医師にアンケートをとると「ワルファリンが重篤な腎障害に禁忌」ということを80%以上の医師が知らなかったのです。

アセトアミノフェンの添付文書を見せると「これはNSAIDs」だと間違ってしまう医師も多いはずです。だってアセトアミノフェンの添付文書の内容は完璧に間違っていますから。こんな間違いだらけのクイズをやって医師、薬剤師の正答率を見てみると興味深い内容になると思いませんか?

臨床的な問題を見つけて、よーく論文をチェックすると何がやられていて、何がやられていない=今後の研究テーマになる ということが見えてきます。アンケートでもうまくやれば英語論文になっています。Q5の回答と同じになりますが、論文をチェックできれば、いいテーマが見つかります。やられていることは知識として身に着け、やられていないことを研究テーマして解明すればいいのです。

結構身近なことでわかっていそうで分かっていないことは多いものです。薬剤師の論文はレベルが低くてもやられていないことが多いから、結構英語論文になりやすいのです。

 

講演依頼に関しましては平田のメールアドレスhirata@kumamoto-u.ac.jpまでお気軽にご連絡ください。
大学での非常勤講師も可能です。「実務実習で代表的な8疾患」のうち高血圧、糖尿病、心疾患、感染症の4疾患の薬物治療学+腎疾患、輸液、TDMなどについて国家試験対策も含めを教えることができます。

 


 第12回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2022年4月16日(土)13時~15時まで の申し込みを始めます。今回のテーマは「腎臓が何をやっているか ~②尿細管編 ようこそこの複雑で精密な世界へ~」です。

 腎不全患者はたんぱく制限、水分制限・食塩制限、カリウム制限、リン制限などを怠ると、それぞれ、尿毒症、溢水・浮腫、高カリウム血症・不整脈・突然死、腎性骨症・血管石灰化などの致命的な合併症が起こりますが、腎臓が正常である限り、これらの症状は全く現れません。その理由は腎臓が非常に狭い範囲内で血清電解質濃度、血清pH、体液量などの恒常性を保っているからなのです。2つ合わせて500g足らずのこの小さな臓器が、どうやってこんなにすごいことをやり遂げられるのでしょうか?それは濾過した大量の原尿を尿細管が最終的に必要なものを再吸収し、不要なものは分泌するなどして取捨選択してくれているからです。

 腎臓が異常をきたすと老廃物がたまるだけではなく、貧血が起こり、骨がもろくなり、血圧も高くなるのはなぜ?これらの深遠な謎を解き明かすには、腎臓のどの部分が何をやっているか、つまり解剖とその機能を知ることが意外と近道になります。CKDの病態が理解でき、薬物投与設計の基本が理解でき、薬剤性腎障害のメカニズムなどが「な~るほど!」と理解できるようになることでしょう

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾への参加者はどなたでも構いませんが、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書き、海外の学会で発表し、英語論文をまとめて博士号を取るんだというような大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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