2023年3月

 6月にイタリアのミラノで開催されるEDTA-ERA(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association欧州腎臓・透析移植学会)に参加してみませんか?参加費は330ユーロで5万円足らず必要ですから、高めですが、国際学会の参加費はこんなものです。英語がうまく話せなくてもいいですが、少なくとも日頃から英語論文を読んでいる方なら、スライドやポスターを見れば内容は理解できます。僕は2019年6月にブダペストで開催されたEDTA-ERAに参加しましたが、この学会は日本でいえば日本腎臓学会の臨床分野+日本透析医学会+日本腎臓病薬物療法学会に一度に参加したような内容で、透析医学会のようなお祭り気分も味わえる魅力的な学会でした。最新の話題満載で、しかも演者は世界でトップクラスですので、日本での学会以上に僕のテンションは上がりました。この時に得られたSGLT2阻害薬の腎保護作用・心保護作用の最新情報だけでなく、腸内細菌叢などのマイナーな情報まで幅広いテーマを拝聴できて、ずいぶん勉強になりました。このときから、EDTA-ERAには毎年参加しようと心に決めました。

 実はブダペストの翌年の2020年にはミラノでの開催が決まっていたので、エクスペディアやトラベルコといった最安値チケット、ホテルを探すサイトを駆使して航空機を手配し、そこそこのホテルを選んでミラノーフィレンツェーローマの旅程を組みましたが、コロナ禍のためイタリアは非常に悲惨な状態になったため、残念ながら中止。でもこのミラノ大会が今年の6月15日~18日の予定で開催されるのです。なんといっても魅力のあるイタリアですから、ミラノだけでなくぜひ、これを機会にローマなども観光してみてはいかがでしょう?

 英語力、英会話に自信のない方はこれを機会にNHKラジオ英会話やDMM英会話などを始めて、翌年の2024年5月23~26日のストックホルム大会に参加(ぜひとも演題を出してください)してもいいかもしれません。6月のミラノ大会に参加される方がいれば、連絡ください(このブログの右側にある「カテゴリ」→「はじめに」→「ごあいさつ」に平田の連絡先があります)。ミラノで合流し、一緒にイタリア料理を楽しみながら情報交換しましょう。

 ダメ薬剤師を続けていて40歳になった時、当時、国立療養所千石荘病院(2003年に国立病院大阪医療センターに統合)の薬剤師だった上野和行先生に出会うことができた。まさに僕にとっては人生を変える運命の出会いだった。ある日、上野先生は僕に「アミノフィリン250mgの中にテオフィリンは200mg相当分入っとるから、アミノフィリン1Aを50kgの人に点滴投与したら、血中濃度はなんぼになると思う、平田君?」と聞かれ、戸惑って何も答えられなかった。だって血中濃度が予測できるなんて知らなかったから。「テオフィリンのVdは0.45L/kgなんや。まぁ、0.5L/kgでもええわ。50kgの患者さんやったらVdは25Lになる。200mg/25Lで8µg/mLになるやろから、喘息発作の治療にはちょっと足らへん。2A投与したら、16µg/mLになるんや。これやったら、ほぼ確実に気管支拡張作用を示して、20以上になったら起こる怖い副作用もでてけーへん。こーゆーことを知っとくと、薬を自由に操れるようになるんや。ほんでもって医者も意のままに操れるようになるんや」。

 これには本当にときめいた。そして上野先生を「師匠」と呼ばせていただくようになった。薬剤師って調剤や薬の管理ばっかりやっていて、病院に勤めていても何の存在感も示せない職業だと思っていたから。この時の経験から、薬物動態を本気で習おうと思った。僕はよく「努力はつらいからやめよう」とか、「好きになったら、それが趣味になって、夢中になれる。そうすればみんな一流になれる」なんてことをよく言うが、それは学ぶだけで身に着いて楽しい「薬物治療学」「薬理学」「病態生理」などの話だ。薬物動態だけはこれらと違って、僕にとってはあまり面白くはなかったが、薬剤師のマストアイテムだと思った。動態の教科書に書いてあること、特に数式は実に難解だったが、学ぶのが辛くても絶対にマスターしなきゃだめなんだ。最初は菅野彊先生やそのお弟子さんの書いた分かりやすいものからはじめて、大学での教科書など、少なくとも3冊は読んでほしい。結構、間違いが書かれていることに気づくようになるから。薬物動態の基本がわかっていない薬剤師を僕は「本当の薬剤師」とは呼びたくない、似非(エセ)薬剤師だ。薬物動態だけは努力してでも薬剤師が身に着ける価値のあるものだと今でも信じてる!だからみんな努力して、僕の師匠のように「ほんまもんの薬剤師」になってほしい。

2023年3月22日 熊本市薬剤師会学術研修会 Q&A
腎機能の正しい評価
~添付文書の腎機能で使われるCCrは実は日本のCCrじゃない~

 


Q1.腎機能評価の指標として、糸球体濾過率が使用されていますが、年齢・体格・疾患や栄養状態など影響を与えうる因子が非常に多いことに評価の難しさを感じます。糸球体濾過率によらない、信頼性のある評価指標の研究結果はないでしょうか。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 本を今までにたくさん書いたし、論文もたくさん書いた。学会での講演もたくさんやらせてもらってきた。だけどいつも時間いっぱい話したくなるし、同じことを何度も繰り返してしまう。論文を書けば、査読者から決まって「冗長(くどくて無駄に何度も繰り返している)」といわれる。でもこれが平田の個性なんだよね。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

第 23回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
高齢者薬物療法と薬物動態の変化

 


アンケートでの質問


手束病院 楠本倫子先生

Q.いつもわかりやすく熱い講演をありがとうございます。
 バンコマイシン点滴静注用についてですが、MRSA感染症、寝たきりで高齢者、低アルブミン、SCr:0.8以下でも低体重の為CCr30mL/min未満でしたら他の抗MRSA薬を考慮すべきでしょうか?バンコマイシンを例えば負荷投与後は500〜750mgを24時間毎などの低用量を検討しても良いのでしょうか? TDMは外注になるので結果が出るのにタイムラグがあり、最近はあまりしていないのですがそれでも測る方が良いのでしょうか? 先生のお考えをお聞かせいただけたら幸いです。
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僕はこんな人をデジタル薬剤師と呼ぶ。善か悪かだけ?

 最近の若い人たちは物事をメリットかデメリットだけで判断しがちな人が増えつつあるように思える。 いいか悪いか、デジタル(0か1)でしか考えられない。CKDか非CKDかだけ?いつもCCrが50以上の人が1度だけ、それも明らかな脱水によってCCr<30未満で、即、添付文書通りに疑義照会をやって、ドクターに怒られる。僕はこんな人をデジタル薬剤師と呼ぶ。善か悪かだけ?

若者よ、昔のレコードよりも、生で見るライブよりも、

デジタルのMP3がいいに決まってると思っていない?

 第24回 基礎から学ぶ薬剤師塾 2023年4月8日(土)13:30から15:30まで の申し込みを始めます。

 登録していただいた方は再放送を繰り返し視聴できますが、再放送は質疑応答はできかねます。今回のテーマは「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう」です。

 このテーマは、薬剤師塾の中で一番、人気の高いテーマじゃないかなと思います。腎機能別至適投与量については、今、一番のスタンダードは「日本腎臓病薬物療法学会」の一覧表、あるいはこれと同内容のじほう社の「腎機能別薬剤投与量 POCKET BOOK 第4版」だと思います。見やすく、使いやすくはなっていますが、表の腎機能分類には「GFRまたはCCr(mL/min)」と書いてあるのはご存知でしょうか?添付文書はCCr(mL/min)で腎機能を記載しているもののもあれば、eGFR(mL/min/1.73m2)で記載されている薬物もあるのに、「これってアバウトすぎない?」と思ったことはありませんか?腎機能についての話は、結構難しい内容になりがちですが、薬物投与設計のための腎機能の推算方法などの基本から、できるだけわかりやすくしたいと思います。でも1回だけでこの深いテーマを説明できるか少し心配……です。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。

 薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そして活発なディスカッションに参加して薬剤師塾を大いに活性化いただける方に参加していただきたいと思っています。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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