9/15(金)発刊予定! 定価3,500円(+税)
(実際の書店やAmazonでの販売は月末になりそうです。)
「平田の薬剤師塾」という熊本大学時代からこのブログで皆さんからいただき、僕が回答してきた膨大なQ&Aを分類し、最重要なもの厳選して121にまとめました。
この最重要な121個のQ&Aはどこからでも読み始めることができ、「点としての疑問」が1つずつ解消できます。そしてすべての章を読み通せば、腎と薬に関する臨床の疑問が徐々に線となって理解でき、最終的にあなたの頭の中の空白のジグソーパズルが「1つの絵画」として見えるようになればいいなと思って書きました。
その他の平田の書いた本! 興味のある方は コチラ から。
また、腎臓病薬物療法に関するご質問,あるいは本書に関するご意見・コメントなどがあれば,連絡先メールアドレス hirata_s@i-h-inc.co.jp まで,よろしくお願いいたします。
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
9日目 CKDの降圧療法はどうあるべきか?
5日目にアルブミンを漏らさないための糸球体の役割について学んだ。アルブミン尿や蛋白尿はなんでこんなに重要なのか知ってる? CKD、つまり慢性腎臓病という病名が21世紀に生まれたのは、分かりやすい言葉で一般市民に腎臓病の脅威を伝える必要があったからだよね。そしてそれは腎機能が低下するか、アルブミン尿または蛋白尿が陽性になれば心血管病変、透析導入リスクがともに著明に上昇する怖い病気だからだ。そのためにアルブミン尿または蛋白尿を抑える必要がある。その1つのアプローチとして全身血圧のコントロールが重要だ。もちろんRAS阻害薬もSGLT2阻害薬もミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)も特異的に蛋白尿を抑制するが、それらについては後でゆっくり解説することにして、今回は蛋白尿(+)の時の全身血圧のコントロールについて考えてみよう。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
8日目 輸液療法
~腎機能正常者への輸液は簡単だが腎不全患者への輸液はとても難しい~
腎機能が保たれている患者であれば、輸液管理に詳しくない医師が不適切な輸液をしても、最終的には腎臓が帳尻を合わせてくれるので、通常、脱水気味の高齢者は輸液をするだけで元気になることが多い。基本的に腎の代償機能が期待できる患者への輸液は簡単なのだ。このような患者ではどんな質、量の輸液をしても問題はほとんど起こらない。ただし腎機能が正常でなければ話は異なり、輸液はとてもむつかしい。末期腎不全患者への輸液は下手をすると高カリウム血症・高リン血症・溢水・アシドーシスを悪化させることがあり、非常に厄介なのだ。すなわち水・塩分・電解質などの摂取量(in)と尿の組成(out)のバランスに異常のある腎不全患者では容易に電解質・酸塩基平衡異常や体液過剰・欠乏を起こすからだ。
Quiz 1
ネフローゼ症候群で浮腫を認める症例で、血清Na濃度は130mEq/Lと低ナトリウム血症だったので生食の点滴を行った。これって正しい? この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
7日目 腎臓のできることと限界 ~尿量と尿の濃さ~
Quiz 1
乏尿と無尿の定義を言え
Anser
乏尿は400mL/日以下の尿量のこと、無尿は1日400mL/日以下の尿量のこと
炎天下でスポーツして「今日は尿が少ない」と思っていても500mL/日以上の尿量はあるし、汗をかき、ただし脱水状態になると口渇中枢が刺激されてのどが渇き水を飲む。この時に飲水を我慢できるだけ我慢すると尿量は減るが1日400mL以上はある。脱水になって尿量400mL/日未満が持続すると、腎機能が低下して電解質異常・血清クレアチニン値やBUNが上昇する。これと同じことが高齢者でのNSAIDs、利尿薬、RAS阻害薬のtriple whammy処方±活性型ビタミンDによる高カルシウム血症による脱水によって薬剤性腎障害が頻発している。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
6日目 糸球体の仕事をまとめ、糖尿病性腎症の進展について考えてみよう
まとめのクイズ:健常者の腎臓について下記の問いに答えよ
1.腎血流は1日何L?
2.糸球体濾過量は1日何L?
3.平均尿量は1日何L?
4.輸入細動脈圧は何mmHg?
5.ネフロンの数は左右の腎臓を併せると何個ある?
6.腎臓の細動脈圧は通常の細動脈に比べて高いのに風船のようにパンクしないのはなぜ? この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
5日目 最終的にアルブミンを漏らさない糸球体の濾過障壁は何?
最終的にアルブミンを原尿中に漏れ出させない仕組みは糸球体のどこにあるのだろうか?糸球体のサイズバリアとしての濾過障壁は実は3層構造になっている。①内皮細胞の小窓の直径は50~100nmで赤血球(直径7~8µm)は通さないが、分子量68,000のアルブミン(直径3~8nm)は容易に通過できるザルのようなものだ。②スポンジやフェルトのような粗いフィルターの糸球体基底膜(図1)の小孔(直径 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
4日目 なんで腎臓病は良くならない?
~脆弱な腎細動脈を守っているものは何と何?~
糸球体内圧は一般的な細動脈に比し、50mmHgと非常に高い。これは大量の原尿を産生するために高い内圧を保つ必要があるからなのだが、糸球体高血圧の持続によって、高齢者に多い腎硬化症で透析導入患者が増えつつある。ただしNSAIDs、利尿薬、RAS阻害薬の投与(薬剤性腎障害の原因になるtriple whammy処方)などによって、糸球体内圧が低くなると原尿の産生速度、つまりGFRが低下=腎機能が悪化する。このように糸球体毛細血管は非常に脆い。その脆い糸球体細動脈を内側から束ねて支えているのがメサンギウム(メサンギウム細胞mesangial cellとその周りのメサンギウム基質である(図1)。メソは「中間の」の意味で、アンギウムは血管を表 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
第29回の「基礎から学ぶ薬剤師塾」は2023年9月15日(金)18時半から(20時半までの予定)です。今回より基本的に第3金曜日の18:30に録画ではなく2時間のライブとなります。登録していただいた方のみ視聴できますが、今回よりライブのみで再放送はありません。大変、申し訳ありませんが、ひと言でいうと「人手不足」のためです。テーマも変わります。
今回のテーマは「初心者向けシリーズ② 2型糖尿病とその治療薬」(これは翌月10月の予定です。)ではなく前回の続編、「CKDの薬物療法総まとめ~エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023を読み解く~その2」です。8月12日の薬剤師塾1回だけではCKD診療ガイドライン2023を語りつくせませんでした。今回はいよいよ第10章の薬物療法からです。クレメジン、重曹、SGLT2阻害薬の腎保護作用、そしてNSAIDsやPPIなどの薬剤性腎障害、シックデイ対策、RAS阻害薬は腎不全になると中止すべきか、非糖尿病患者へのSGLT2阻害薬の推奨度は?保存期CKD患者への活性型ビタミンD治療は推奨される?などのテーマ、そしてまとめとして理解度テストも用意しています。
参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、送信してください。
薬剤師塾となっていますが、医師・看護師など医療従事者であれば参加可能です。ただし薬剤師塾への参加者は、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そして活発なディスカッションに参加して薬剤師塾を大いに活性化いただける方に参加していただきたいと思っています。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
3日目 腎臓の構造について学ぼう
~まずは糸球体の役割から~
腎の構造を知らないと「CKDはなぜ治らない病気なの?」とか、「糖尿病の症例って最初は腎機能がとびきりいいのに、そのまま無治療で放っておくと、なんで急激に悪化して透析導入になってしまうの?」とか、「なんで腎臓は高血圧で悪化するの?」などについて理解できないし、薬剤師なのにサイアザイド系利尿薬とループ利尿薬の違い、フォシーガⓇなどのsodium-glucose cotransporter-2(SGLT2)阻害薬、レニベースⓇやオルメテックⓇなどのrenin-angiotensin system(RAS)阻害薬、ケレンディアⓇなどのmineralocorticoid receptor antagonist (MRA)、ネスプⓇなどのerythropoiesis stimulating agent (ESA)、エベレンゾⓇなどのhypoxia-inducible factor prolyl hydroxylase(HIF-PH)阻害薬などの腎に作用する薬の作用機序がいまいち理解できないのだ! この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
腎の構造と機能から学ぶCKDの病態
2日目 ヒトは細胞内液に原始の海を細胞内液には太古の海を持っている
46億年前に生まれた原始地球には大陸はなく、1,000℃以上の高温のマグマで赤色をした海に覆われた殺伐としたものだった。地球にはじめて降り注いだ雨は、地殻の底に閉じ込められていたNa、Mg、K、Fe、Cu、Caなどのミネラルを溶かし出した。こうして多くの物質を含んだ海になったが、この時の大気中に酸素はほとんどなかった(図1)。
その後、38億年前に安定した海の中で蛋白質や核酸が合成されて単細胞の生命体が誕生した(図2)。単細胞生物は海水中の栄養分を細胞内に取り込み、 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます