2005年11月

1123.png この頃珍しく快晴続き。今日はEmanuel病院のAnticoaguration Clinicの最後の日。今日の短頭はPamでCarlと並んでこの病院の実力者。患者の自主性を重んじた指導をする。アメリカ人は独立心を持っているから、上から押さえつけるような指導ではだめなんだ。Pamだけは失敗しても、患者指導や採血をさせてくれる。「この頃出血や青あざはできていませんか?抗菌薬などの新しい薬は処方されていませんか?食欲はいかがですか?緑色野菜はコンスタントにとっていますか?」などを英語で聞きながら採血をし、データが出たらINRが高ければ減量、低ければ増量するわけだが、患者さんの理解しやすいような服用方法を考えてあげ、次回INRが治療域になるような投与量を考える。実際にやってみるとマニュアルどおりにやるにしてもなかなか難しいものだ。人によって代謝能力や野菜摂取量、運動量、健康状態の日差変動が異なるから30%くらいの人はINRをモニタリングしてもなかなか治療域に入らない。それでも迅速検査をやっているとやっていないとでは血栓ができる危険性、出血の危険性ともに大きな差が出る。重要な仕事である。なぜ薬剤師がやるかというとワルファリンは治療域が狭く、血栓ができる危険性、出血の危険性のある怖い薬であること、相互作用が非常に多いこと、医師が忙しすぎることらしい。

 仕事が終わってHaiにアパートまで車で迎えに来てもらい、ダウンタウンのTodaiというbuffe形式の日本料理屋に行く。ベトナムのこと、日本のこと、家族のこと、ガールフレンドのこと、日本の温泉や銭湯のこと、カリフォルニアにあるヌーディストビーチのこと、卒業したら1度ベトナムに帰ってみたいこと、クラブ活動や薬学教育のありかたなどありとあらゆることを話した。おごるつもりだったが、前回招待してもらったからとHaiが譲らない。結局学生のHaiにおごってもらった。そのかわり次回はベトナム料理をご馳走するということを指切りして約束した。

 Haiは本当にまじめでいい人である。すばらしい薬剤師になるだろう。何れ日本にも遊びに来てほしい。明日はPamの家でサンクスギビング。七面鳥がはじめて食べられる。

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 昨日からAliの講義が始まる。移植と肝障害について。彼は病棟薬剤師としてもすごいが、著者としもすごい。図書館で見ただけでも腎臓、腎移植、肝移植など多方面に渡って本を書いている。講義もすごい。強弱をつけ、みんなに問いかける。そして症例を出して考えさせる。これは僕のスタイルと同じなんだけど強弱をつけ、身振り手振りで分かりやすく説明する。まったく感心した。まさにAli is the greatestである。しかもgentlemanである。どんな質問にも優しく答えてくれるし病棟での学生の指導も熱心である。講義にも実習生が参加していた。僕には毎朝声をかけてくれて力強い握手をしてくれて「いつかまた連絡するから」と招待してくれるみたい。うれしいことに彼は僕の実力を認めてくれるからだと思う。

 クリスマス休暇の一時帰国が決まった。12月22日から1月3日まで。Angieが天使のように見えた。Refreshしてパワーアップしてオレゴンに戻ってくるぞ!

 昨日は講義が終わった後、学部長の次の臨床薬学のトップの伊藤教授(日系4世でまったく日本語は話せない)が今学期の試験と大学側の考えを述べ、・・・、ここまでは日本でも編みかけられることですが、学生の声を十分聞いて、「いい意見だね、次回は改善するよ」という感じでディスカッションするのです。
同じ内容の講義をしてほしくない、マイクはもっと高性能のものを使ってほしい、非常勤の先生は本当に専門性でやっている先生であってほしい、まともに質問に答えられないような先生を講師にしてほしくない。などを学生たちは教授に文句や改善案を言い、そのたびごとに教授は「いい意見だ。改善する」と約束していました。

1121.png全ての講師が学生によって評価され、その内容は直ちに講師に伝えられ、次回から講師は改善しなくてはいけません。
これは日本の大学ではないことですね。民主的だし、学生ははっきり自分の意見を言うし、教授は先生の評価(学生による)を受け止めて毎年改善していく。だからこのように短期間で臨床系の講義の改善を成し遂げたのだろうと思います。10年前に卒業した薬剤師に聞いてみても今の講義内容はかなり変わってきています。「この講義って医学部じゃないの?」と思うくらい臨床教育を大切にしています。親友のHaiに聞いてみるとこんなふうに学生の意見を取り入れて毎学期ごとに内容が変わっていくんだそうです。
前述の10年前に卒業したEmanuel Hospitalの薬剤師も最初はドクターに進言しても聞いてくれなかったとか、外科のドクターは頑固で話を聞いてくれないとか、少し前の日本と同じ状況なのですね。
これから日本も変わらなくっちゃ。いや薬剤師を変えなくっちゃと思っています。

今日は1人で観光に。車がないので、日本人ガイドに頼んで富士山そっくりのスキー場で有名なMount Hood、Coumbia渓谷の滝などを見物する。本当は1人では行きたくなかったけど、このシーズンは観光には不向きなので、1人だけとなる。でもポートランドはこれからもっと寒くなるため帰国予定の3月までにいけるとしたら今しかない。雨の多いポートランドでは珍しく快晴。おかげでいい写真が撮れた。ガイドの日本人はすこし胡散臭い。一応、親切な説明はしてくれるが、観光料金に勝手にサービス料がつけられていた。これは前もってトータルでいくらですか?と聞いた額と20%違う。最後に「こんなの前もって説明しなきゃだめじゃないの?」って言ったら、「こういうシステムになってるんです」だって。今後はこの会社は使わない。

ポートランドを選んだのは日本人があまりいないからだけど、土日は仲間がいないのはやっぱりさみしい。級友たちは月曜日が試験だから土日は一緒に遊べないし、Emanuel病院から帰ると6時過ぎで真っ暗だから近所のノア君ともあまり遊べない。来週はサンクスギビングで24日に招待されている以外は何の予定もなし。いつも朝7時から夜10時までやっている近所の巨大スーパーのフレッドマイヤーもサンクスギビングの日は休み、その次の日も6時間だけの営業。サンクスギビングはみんな故郷へ帰る正月みたいな日なんだ。お雑煮やおせち料理を食べる代わりに七面鳥とパンプキンパイを24日に食べるらしい。だから級友たちはみんな故郷に帰ってしまう。

ということで僕も急に日本に帰りたくなってきた。米国から日本への往復チケットは早く頼めば4~5万円であるが、今からクリスマスホリデーに頼むと高くなるはず。でも12月の第1数で学校は冬休みに。僕は朝から病院で1日中Critical Care(ICU)で実習。やるべきことはあるけど土日中、アパートにいるのは苦痛でたまらない。今はサイクリングとアパートのジムで汗を流して気を紛らわせてはいるけれど。明日、旅行者にチケットを確認し事務のAngieと交渉しなくっちゃ。留学VISAを持っている者の一時帰国は事務手続きが大変らしい。

11月14日

日本ではワルファリンの作用を増強するbucolomeはないみたいですね。日本ではワルファリン投与時には納豆とクロレラを中心に話をし、緑色野菜を取り過ぎないように説明しますが、こちらでは納豆とクロレラの話は全くなし。問題はバクタとキノロン、そして緑色野菜ですね。バクタはスルファメトキサゾール、トリメトプリムともにCYP2C9の阻害薬ですが、こちらの人は蛋白競合阻害だと信じているみたいです。蛋白競合阻害による相互作用は一過性のもので考えなくてもいいと理解していましたが、bucolomeは蛋白競合による相互作用でしたっけ?ワルファリンクリニックについてはパワーポイントで60枚くらいのスライドを作りました。これだけでも講演ができそう。1114.png

11月12日

今は午前の授業が終わるとOHSU以外の病院のAnticoagulation Clinic(ワルファリンクリニック)に通っていて、大学からもアパートからも1時間ちょっとかかりますが、やっていることがそんなに複雑ではないので、ガイドラインに沿っていけばそんなに難しくはありません。
英語の聞き取り、しゃべりともに少しは進歩したかな?と実感し始めているところです。
Legacy Emanuel Hospital Anticoaguration clinicにてDebolaによると 年配のドクターは薬剤師のことをよく思っていない。若いドクターは薬剤師の重要性を知っているから、頼られる。よい関係を保っているそうです。これは日本と同じかな?

先週は仲のよいクラスメートを3人アパートに呼んで日本料理をご馳走しました。内容はきゅうり巻ととんかつ巻(オリジナル寿司)、ラーメン、餃子。
なぜか白人の子とは親しくなれなくてベトナム出身の一番の親友Hai、香港出身の少しシャイなKevin、メキシコ系アメリカ人の明るい女の子Sullyの3人ですが、ベトナム、メキシコの子は寿司に餃子につけるラー油をつけて食べるんですね。よほど辛いのが好きみたい。
来週はクリスマスに次ぐイベントのサンクスギビングです。一応、神に感謝する日みたいで、今行っているEmanuel病院の薬剤師の家に招待されましたが、一体どうすればいいのか皆目見当がつきません。ワインでも持っていくのかな?困った・・・・・。 

レキシドラッグスという出版社の本のDrug Information Handbookインターナショナル版というのは残念ながら日本の薬はなくてヨーロッパの薬が載っています。アメリカ、カナダ版の1.2倍くらいの量になると思います。僕は本のほうを買いましたが、アメリカ、カナダ版にしました。これも白衣のポケットにはいらないことはないのですがとても携帯できるような重さではありません。余裕があれば僕もすべてPDAに入れたいですね。でも僕はザウルスなので、無理みたいな感じがします。PDAを持っていれば、PKパラメータ、相互作用、小児用量、検査値など重さにして10kg位の本がポケットの全て入るのですから、重宝するはずです。米国にもインターネット書店のAmazonはあって、新品同様の中古本が半額くらいで買えます。今後のためにLaboratory Handbook、Pharmacotherapy handbook, drug interaction handbook, Infection Disease handbook, Natural Medicine Handbook(これらはRexi Comp社の者でHandbookと言う名前がついていますが、もともとはハードカバーの馬鹿でかい本をペーパーバックスにした同一内容の廉価版です), それから今執筆中のサプリメントに関する本としてNatural Medicines comprehensive databaseを購入しました。こんなにサプリメントやハーブについて詳しい本は日本には1つもないのですがアメリカでのサプリメントの使用量はすごいと思います。だって最近の薬局は一昔前の街角の薬局ではなく巨大なスーパーの中にあります。処方箋を出して薬を作ってもらう間に買い物をするというパターンで、こういう店にはOTC薬品(ザンタックやオメプラールもOTC薬です)、サプリメントから豆乳やプロテインなどが所狭しと並べてあります。しかもサプリメントは日本の安い通信販売商品よりも安いです(大塚が扱っているNature Madeもあります)。OTC薬は比べ物にならないほど安いです。タイレノールなどはブランド品でなければ200錠で1000円しないくらいであります。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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