2021年6月

 透析看護雑誌「透析ケア」などで有名なMCメディカ出版よりナース向けの「透析患者の薬剤ポケットブック改訂3版」が出版されました。第2版から約5年ぶりの改訂です。この5年間で新たに経口の腎性貧血治療薬が登場しましたし、高カリウム血症治療薬や、下剤も新たなものが続々と登場して、多様化しています。薬剤はすべて最新情報で、ページ数は増やさず薬剤を入れ替えてコンパクトにしました。薬の特徴を簡潔に写真つきで解説しており、その場でサッと調べられます。看護師、薬剤師はもちろん、透析患者にかかわるすべてのスタッフが、透析患者への正しい薬の使い方を学ぶことができます。熊本の仲間の先生方との共著ですが、透析に関わる最初の92ページは平田が書いています。ぜひ本書を参考にしていただき,透析患者さんに薬の正しい使い方を啓発・指導していただければ幸いです。


エクササイズ
 熊本大学時代にはとても忙しくて土日もほとんど出勤していた。好きなことをやっていたので苦痛では感じなかったが、ジムに行く時間的余裕がなかった。2006年からの最初の2年半は単身赴任で大学から歩いて1分の宿舎に住んでおり、昼食は学生と1000kcal以上あるヘビーなランチを食べに行き、歩行距離も少なく、空腹時血糖値が105になって、体力の衰えを感じた。そのため宿舎を出て少し離れたマンションを借りて、できるだけ歩くように心がけ、97240663_s.jpg嫁が熊本に来てくれて食事内容も劇的に良くなった。60歳になってから無理やり時間をとってジム通いを始めた。金曜日の夜などは朝まで大学で夢中になって仕事していたので、明け方5時ころ24時間開いているAnytimeというジムに通ってトレッドミルで10~20km歩いたり走ったりしていた。僕は歩いているとき、運転をしているとき、ジムでエクササイズをしているときなど、いつもイヤホンをして英会話を聴いたり、教育系オーディオブックを聴いたりして自分を高めようと心掛けている。無駄な時間がとっても惜しいと思うからだ。そして毎年2月には熊本マラソンに出場するため、いつもは67kgある体重を63kgまで落として、第2回熊本マラソンから5回連続出場して完走できたが、マラソン後はすぐにリバウンドして67kgになっていた。これは2月のバレンタインデーのチョコレートによるリバウンドかもしれない。
 神戸に来てからは規則正しい生活になって、ほぼ毎日ジムに行けるのと前述の16:8ダイエットで、体重を63kgに維持しているが、筋肉量を増やしたまま、体脂肪は20%未満になるよう保っている。それとライフスパンではよくないとされているプロテインはジムでは摂取している。そのためいつもBUNが高く、医師から「脱水じゃない?」と疑われるが、これはプロテイン摂取のせいだ。超健康体になった僕の場合は、後期高齢者になるまでは太らない105603155_s.jpgようにしようと気を付けて、1か月に少なくとも30万歩は歩くようにしている。そして最近はやりの高強度インターバルトレーニング(HIIT)。これは僕にとっては最近聞いた言葉だけど、DMM英会話で先生たちに聞いてみると、フィリピンやヨーロッパ、アフリカ、中米など世界中の英会話の先生たちはすでに知っていた。ということは世界中で流行しているトレーニングで、前回のライフスパンでも高齢者ほどHIITが老化予防に効果的で運動するほどテロメアが長くなるらしい。HIITでの適正な心拍数は208-0.7×Ageで計算できる。ちなみに僕は66歳なので、208-0.7×Age=208-0.7×66=162/分になるように30~40秒運動+15~20秒の休息を数セットやっている。死にそうになるきついトレーニングなので、健康な若い人にしかおすすめはしない。

ジムとサウナ
 これについては以前にブログで書いたけど、熊大を定年退職後に神戸に引っ越し、熊本で週1回は行っていた大好きなチムジルバンとサウナ付き大浴場のある「あがんなっせ」に行けないのはとても残念なのだが、六甲道に住んでよかったのは、近くにサウナやジャグジーなど完備の大浴場のついたジム「セントラルスポーツ」があることだ。ほぼ毎日、1時間のウォーキング・ランニングと10~30分の筋トレの後はサウナを楽しむ。サウナと冷水浴の繰り返しは「整う」という快感(この後、いいフレーズが頭の中にあふれるように出てきて論文がいくらでも書ける)を与えてくれるし、寒冷刺激は体に適度なストレスをかけることによって、エピゲノムが混乱しないため老化防止にもとてもいいのだ。

サプリ
 ミヤBMは家族みんな、ビタミンD(活性型ではなくネイティブのもの)は熊本で透析患者の骨ミネラル代謝異常の専門家、田中元子先生に「飲んだ方がいいですよ」と言われて以来、夫婦でずっと飲んでいる。僕は結構、他人に影響されやすいのです。もしも活性型ビタミンを処方されている人がいたら、カルシウムの併用は高カルシウム血症から多尿から脱水になって腎機能が悪化しやすいので気をつけて!


 以前にブログで「健康を保つためにやっていること 前編後編」を書きましたが、前回の「ライフスパン」という名著の影響を受けて、今、僕がやっている健康法についてまとめました。

16:8ダイエット
 僕も66歳の高齢者で、一般的に加齢に伴って筋肉量が減るために、ダイエットはしない方が良いといわれているが、僕は20年前から糖質制限食を続け、5年前からジム通いをはじめ、体組成計による体内年齢は常に50歳以下だ。20210607.pngとても元気でウエイトトレーニングを定期的にやっているので、筋肉量は増加傾向のため、さらなる健康追及のために内臓脂肪は減らしたい。食事はずっと以前から炭水化物・脂肪をできるだけ摂らないで食物繊維の豊富な野菜がメインで鶏肉、魚、卵、乳製品などを加えた食事を心がけている。朝食は自家製ヨーグルトと果物、野菜ジュースがメインだったが、David A Sinclair教授の「ライフスパン 老いなき世界」を読んでから、朝食を抜いて遅い昼食をとる「16:8ダイエット」を実施、おかげで楽に減量でき体脂肪率が下がった。16:8ダイエットは、例えば20時に夕食を摂ると、朝食は抜いて16時間後の12時に昼食を食べ、8時間以内に夕食を摂る。最初は空腹を感じたが慣れるとなんでもなくなり、昼食をたっぷり摂ると夕食時に食欲がなくて何も食べないこともあり、かなり体重が減る。僕は甘いもの、和菓子やチョコレート、アイスクリームが大好物だが、これをたくさん食べると当然、太って、体脂肪が増えていたが「16:8ダイエット」実施後は太らなくなった。今は170cm、63kg、BMI 22で体表面積1.73m2の標準体型を保っている。10055856_s.jpg
でもあまり我慢しすぎるのもよくないので、気晴らしに週に1度は外食で好物のとんかつ(熊本の勝烈亭は最高においしい)、カツカレーなどの肉類やうどん、ラーメン、餃子(神戸市灘区にはおいしい餃子屋が結構ある)など好きなものを食べる。本来、「16:8ダイエット」ダイエットや軽い飢餓状態は細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除したりすることで生体の恒常性を維持するためのシステムの「オートファジー」を活性化することに意味があるらしい。


 僕はその後、英検準1級を取得したものの、 実は英字新聞も満足に読めないし英語の小説も読めない、映画やテレビドラマも字幕がなければ完全には理解できない。プロ野球のヒーローインタビューで元大リーガーたちの話す英語は80%分からない(関係ないけど嫁の故郷、鹿児島の高齢者同士の会話は95%分からない)。149703552_s.jpgラミレス前横浜監督の英語はネイティブスピーカーじゃなかったのでほぼ100%分かったけど。だけど医学論文だけは辞書なし、もちろんgoogle翻訳なしで理解できるし、国際学会に行っても、スライドがあれば日本語と全く変わらず理解できるようになったし、英語で質問もディスカッションもできるようになった。普通の英米人と話していても医学英語に関しては僕の方がはるかによく知っていた。これは半年のオレゴン州立大学での生活で伸びたのではない、まさに23歳の時にやった毎日、論文を訳してきた経験によるのだ。
 今回、伝えたいことは、どうやったら英語が上達するのかではなく、どうやったら、自分に自信を持てるかという1例を若い人たちに知ってもらいたかった。そして、なにかを極めるためには努力じゃない。だって努力はつらいもの。つらいことは続けられないし、無理したら心を病んじゃう。ドキドキワクワクしながら夢中になってやることは自分を信じられないくらいに変えてくれる。でもちょっとだけ好きになる努力は必要だ。だから患者さんを好きになれない人、薬に全く興味のわかない薬剤師は早く転職したほうがいいとも思っている。いつも僕がいつも言うように「オタク」は天才に勝てるのだ。まさに23歳の時、夢中になってやっていれば、頭が多少悪くても何かができるんだ、ということをつかんだターニングポイントだったと思う。今井眞一郎教授の講演を聞いてこの時のころのことを思い出した。

後日談
 結局、「中分子量物質が尿毒素」というのは完全な眉唾だった。今は誰もこの研究に関わっていない。僕はこの学会発表をするまでに、元気な人ほど中分子量物質濃度が高いという気がしてならなかった。はその当時、僕の作ったスライドだが、20210617_1.pngピークa~cあたりが中分子領域といわれていたが、Bёrgstromに言わせると、これが高くなると尿毒症性の心不全で死亡しやすいと言っていたが、僕の測定結果では元気な人ほど高かった。BёrgstromやManの言っていることと全く異なったデータしか得られなかった。中分子量物質の正体が何だったのかよくわからない。ひょっとしたら下条文武先生が発見したβ2ミクログロブリンだったのかもしれないが、元気な人ほど食べているから、低分子蛋白やペプチド(微量のホルモンではなく栄養素としてのペプチド)などの濃度が高かっただけではないかと僕は思っている。この研究は1回の学会発表で終わったけれど、終えて良かったと思っている。なおこのころから10数年後、MacのPCが医学界を席巻するまでのスライドはすべて手書きだ。20210617_3.png20210617_2.pngロットリングペンと製図用テンプレートを使って描いていた。すべて英文なのは格好をつけているんじゃない。薬剤師の研究に病院がお金を出してくれないから、自分で一番安上がりのスライドを作らなくっちゃいけない。ドクターはラフデザインを描くだけで天満橋にあるスライド屋さんが作ってくれ、病院がその代金の数万円を立て替えてくれていたが、薬剤師の僕たちは和文発表なのに、すべて英語で書かれたスライドを使わざるを得なかった、昭和の時代のことである。


 長寿遺伝子のトップ研究者のワシントン大学の今井眞一郎教授が母校の慶応大学で講演した時のこと。学生の「オリジナリティのある研究テーマやビジョンをどうやって探せばいいのですか」という質問に対し、「1日1報、原著論文(アブストラクトではだめ)を全文読んでください。まずは1か月続けてください。1か月するとその分野で何が起こっているかが分かってくる。2か月続けるとばらばらだった知識が結合してくる(知識をブラッシュアップできる)。それを続けて3か月、つまり90報読むと、ほぼ何がこの分野で分かっていて、ここが分かっていないこと、これから何をやるべきかが分かってくる。」と答えていらっしゃり、大いに納得した。40024209_s.jpg
 大阪薬科大学の4年間は、高校までまったく自信がなく、女子と話すなんてできないくらいシャイだった僕が、いろんな先輩や友人のおかげで、人間的に成長できた素晴らしい4年間だったと思っている。でも悪い先輩たちから薬理と薬品製造と衛生以外は出席しなくてもいいというのを信じ込み、授業には全くついてゆけず、ほぼ最低の成績だった。卒業して研究志向は高いが、当時30床くらいしかなかった小さな透析をやっている個人病院の白鷺病院に入職し、1年後に「尿毒素としての中分子量物質」のテーマに興味を持った。透析で小分子は抜けるが中分子量物質は抜けが悪い。だから中分子量物質が蓄積して尿毒症を悪化させるというものだった。
 学生時代はダメ学生だったので、目指した薬理学教室には成績が悪くて入れえず、仕方なく僕がお世話になっていた若い先生のもとで合成をやっていた。ただし申し訳ないことに合成には全く興味なく、合成反応後のクロマトによる結晶の精製に手間取り、先生方や同僚に迷惑ばかりかけていた。卒業発表でも質問に立ち往生しボロボロになりかっこ悪かった。でもこの時にやっていたクロマトグラフィーの技術が役に立ったのだ。透析患者の尿毒症体液成分を用いてSephadex G15を用いたゲルクロマトグラフィーを用いて分析するのだが、卒業して初めてクロマトの原理について1から学んだ。そして分析に取り組み、初の学会発表の機会を得た。分子量物質仮説についてはスウェーデンのBёrgstrom、フランスのManらがそれらの学説をけん引していた。関連する文献は英語論文ばかりで20くらいしかなかったが、医師から鋭い質問が来るかもしれないので、卒業発表のトラウマがあったためとても怖くなった。
 この20の文献をメーカーに頼んで取り寄せ、それを毎日1つずつ読もうとした。その当時、一番多くの専門語の載っていたリーダーズ英和辞典を1万円も出して買って、論文に書かれているほとんどの単語の意味が分からないから、論文が鉛筆で書いた日本語訳だらけになった。20200623_1.png夜12時になっても訳せなかったが、次の日の仕事があるので、2時か3時までには病院の寮に帰るしかなかった。でもこれは全く苦痛ではなかった。1~2本読んだ時点で僕は白鷺病院で一番、中分子量物質について知っているという喜びを感じることができたから。誰も知らないことを知るって、楽しいじゃない?5本読めば大阪で一番の物知りに、20本読めば知識の上では日本のトップに立てるのだ。誰とディベートしても、たとえ東大の教授に突っ込まれた質問をしても勝てるんだという自信が持てる、だめ薬剤師としては初めてのワクワクドキドキする体験だった。1本の論文を全訳するのに深夜まで病院に残って2~3日かかっていたのが、そのうち1日1本訳せるようになり、辞書を引く回数が減った。20本を訳し終えた時には、1日2本読めるようになり、ほとんど辞書が要らなくなった。これは自分にとって大きな驚きだった。そして学会発表の時にも自信を持てたので、何が来ても、どんなえらい医師が質問しても怖くなかった。学生時代の卒業研究発表会とは違って、ワクワクしながら学会発表できたことを覚えている。


3.適度な飢餓と運動が老化を防止し、若返る?
 老化は避けられないものではなく、「病気」なのだ。病気だから薬や食事などで直すことができる。ただし一つの病気を治したからといって、別の病気で死ぬ確率が低くなるわけではない。私達に必要なのは、病気の全てを取り払うこと、つまり身体の衰えをもたらし、病的異常を伴う「老化という病気」を撲滅することである。老化を避けるための内容は今までにも言われてきた欧米化した食事ではなく低カロリーで食物繊維の多いものを摂り、運動などの生活習慣の改善だけでなく、薬物療法やサプリメントの摂取も深く関わっている。では具体的に何をすればいいのかについて要約してみよう。生体に適度なストレスがかかると、長寿遺伝子が始動する。例えば絶食、低タンパク質の食事、運動、高温や低温にさらすなどだ。これは加齢に関係なく、いつから始めてもよい。

(1)食べる量を減らすこと
 肥満が健康に良くないことは様々な研究で分かっていることで、カロリー制限が長寿につながることは、周知の事実だ。具体的には

・野菜をたくさん摂取し、肉を口にするのはなるべく避ける。植物性タンパク質は良いが動物性タンパクは良くないからだ。プロテインにはアミノ酸が豊富でmTOR(mammalian target of rapamycin )を活性化して、筋肉量を増やす。ちなみにmTORを阻害すると、がん細胞の増殖や血管新生を阻害することができる。mTORの活性化は長寿にとってはデメリットになるが、後期高齢者でサルコペニアになるのを避けるには、運動したときに肉やプロテインを積極的に摂取するのはメリットになると思う(平田の考察)。著者も運動の時には肉を食べると言っている。

・mTORを働かせないようにすると、オートファジー(古くなったたんぱく質を再利用する働き)が促進する。オートファジーによるたんぱく質の再利用は健康寿命を延ばす。カロリー制限が老化防止に良いはこの作用による。肉や乳製品の摂取量を減らしても同じく、オートファジー活性化効果がある。

・1日どれか1食を抜くか、少なくともごく少量に抑えるようにする。カロリー制限のため週2日の断食とか、朝食を抜くのもよい。月に5日カロリーを制限する。間欠的断食でも効果は同じか高い。

朝食を抜いて遅い昼食をとるもの(「16:8ダイエット」:例えば20時に夕食を摂ると、朝食は抜いて16時間後の12時に昼食を食べ、8時間以内に夕食を摂る)や、週に2日はカロリーを75%に減らすもの(「5:2ダイエット」)がある。もう少し挑戦したいなら、週に2~3日は食物をいっさい摂らない(「イート・ストップ・イート法」)のもいい。あるいは、健康問題の権威であるピーター・アッティア医師が実践しているように、毎月丸々1週間を空腹で過ごしてもいい。週に2日はカロリーを75%に減らすのもよいし、アミノ酸を少し制限するのもよい。ただし今井教授はMNMには昼間に高くなるというサーカディアンリズムがあるので、朝、しっかり食べて、その後に空腹時間を長く摂るようにしているらしい。

(2)運動療法
 サバイバル回路を作動させることが有効ならば、それは食事以外の活動、例えば運動でも構わない。運動が遺伝子のスイッチを入れ、私達を細胞レベルで若返らせてくれる。

・毎週のジム通い。バーベルを挙げ、少しジョギング、サウナでしばらく過ごしてから、氷のように冷たい水風呂に浸かる。他にも、寒さに身を曝せばサバイバル回路が動作することが分かっている(暑さに身をさらすのがプラスに働くかははっきりしていない)。

健康を増進する遺伝子を一番多く活性化したのは「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」だっ
た。HIITは心拍数や呼吸数が著しく上昇する。一般的に脂肪を減らす目的で行われているが、本書では高齢の被験者ほど、HIITによる遺伝子活性化効果が大きかったということ。

・運動するほどテロメアが長い。運動は体にストレスをかける。これもHIITの活性化効果が高い。断食と運動を組み合わせる必要がある。精進料理を食べて滝行で体を冷やし、高野山・真言宗の阿闍梨のように山中を歩き続ける修行はサーチュインとNAD濃度が上昇して長寿になれるかもしれない(図6)。

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(3)薬物療法(薬剤師としての解説も加えています)
 食事、運動以上にエピゲノム系を変えるツールは「薬」である。老化が病気であると認識して、きちんとそれに対処する薬物療法によって、老化を遅くしたり、健康寿命を伸ばせる。エピゲノム化に重要なのがサーチュインという遺伝子であり、この遺伝子を活性化させるのは適度なストレスだが、NADがないと働けない。NADが細胞質内のSIR2酵素の活性を高める。NADは加齢とともに減少するのでその前駆物質を補充してやらないといけない。体内ではNR(ニコチンアミドリボシド)は体内でNMNに変換され、NADに変わる。NRをサプリとして飲んでいるヒトもいるがNMNのほうが安定しており効果が高いのではないかと著者は推測している(研究としてはNRを用いたものが多い)。
 他にも古い蛋白の分解やDNAの修復、老化細胞によって引き起こされた炎症を軽減するmTOR、代謝をコントロールしてエネギーレベルの低下に対処するAMPKなどの老化関連遺伝子として重要。これらは生体にストレスがかかると始動するので、低タンパク食やカロリー制限を行うことによってストレスをかける。

以下が長寿に効果のあると言われている薬物だ。
ラパマイシン(シロリムス)
:モアイ像で有名なイースター島の土壌から発見されたマクロライド系抗菌薬で免疫抑制薬としてPTCAの時に使われるステントに配合されたり、リンパ脈管筋腫症治療薬として用いられている。オートファジーを阻害するmTORを阻害し、NADの産生を促して寿命を延ばす働きを持つ。mTORを阻害することによる生命延長効果は動物実験ではわかっているもののmTOR阻害薬はもともと免疫抑制薬なので、感染症を発症しやすいし、消化器障害、蛋白尿や腎障害など多くの副作用があるためヒトでは臨床試験はやっていないようだ。

NMN:サーチュイン遺伝子を活性化させるのは適度なストレスだが、細胞質内のSIR2酵素の活性を高めるためにはNADがないと働けない。NADは加齢とともに減少するので、その前駆物質を補充してやらないといけない。体内ではNRは体内でNMNに変換されるので、NMNの方が効果的。本書ではNMNを摂取した高齢女性に止まったはずの生理が戻ってきたり、馬の生殖能力が回復した事例が報告されている。ヒトでの検証については今井教授が行っていて、動態的には吸収するためにはトランスポータが必要なものの非常に吸収が早く、枝豆、ブロッコリー、アボガドや血中に豊富なのでスッポンの生き血にも多いそうだが、NMNとして摂取したほうが現実的だ。今井教授らのマウスを使ったNMNの効果図7に示す(Mills KF, et al: Cell Meta 2016 Dec 13;24(6):795-806.)。

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メトホルミン:もともとはインスリン抵抗性を改善させ、安価なので欧米での糖尿病治療薬の第1選択薬。糖尿病治療薬としては①肝における糖新生を抑制し②筋肉・脂肪細胞でのインスリンの働きを良くする(糖取り込み促進)とともに③小腸からブドウ糖が吸収されるのを抑制する。ラパマイシンと同様、メトホルミンを摂取した場合もカロリー制限に似た効果が現われ、ミトコンドリアの働きを活性化し、エネルギーレベルの低下に対処するAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ: AMP-activated protein kinase)などの遺伝子を活性化することによって細胞内シグナル伝達系を刺激することにより、糖代謝を改善するとともにアンチエイジング効果を持つ。発がんリスク低減作用も注目されている。最近の報告では2型糖尿病患者の膵島ではオートファジー機構の不全があること、メトホルミンの添加がオートファジー機構の不全を改善することが明らかになっている。ただし、ラパマイシンのようにmTORを阻害するのではなく、ミトコンドリアの代謝反応を制限する方向に働く。ミトコンドリアは「細胞の発電所」ともいわれ、ブドウ糖などをエネルギーに変換する仕事をしているが、メトホルミンにはこのプロセスを遅らせる作用がある。すると、AMPKが活性化して細胞内にブドウ糖を取り込むのはメトホルミンの主作用だ(図8)。 20210607_8.png AMPKは酵素の一種で、エネルギー量が低下したときにミトコンドリアの機能を回復させる機能をもつ。メトホルミンはSirt1(サートワン)というサーチュインファミリーのタンパクの活性(NADを使ってタンパクの脱アセチル化を進める)も高める。ほかにも、がん細胞の代謝を抑えたり、ミトコンドリアの数を増やしたり(ミトコンドリアの機能低下を補うために細胞がミトコンドリアをより多く生成しようとするため)、折りたたみ不全のタンパク質を除去したりする効果が明らかになっている。

レスベラストロース:Sirt1を活性化して寿命を延ばす。赤ワインに含まれ、カロリー制限と同様の効果が得られると期待されている。赤ワインだと1日100杯分のまないと効かないので、サプリメントとして大量摂取するのが現実的だ。
 ちなみにSinclair教授が服用している薬物療法は以下の通り。ラパマイシンは免疫抑制作用に伴う様々な副作用が懸念されるためか、服用していない。

・NMN 1gを毎朝服用
・メトホルミン 1gを毎朝服用
・レスベラトロール 1g
 (自家製ヨーグルトに振り入れて混ぜて食べている)

・ビタミンDおよびビタミンK2の1日推奨量を摂取
 (日本人なら納豆でもいいのでは?)
・83 mgのアスピリン
を服用
 (NSAIDとしてではなく抗血小板薬として)

 健康系・教育系Youtuberが「NMNはアマゾンでも売っているが、1日1gも摂ると高額で1か月10万円もする」という人が複数いたし、レスベラトロールも1日1gではかなり高額なものが多いが、海外からの輸入商品を丹念にチェックすると2021年6月現在の最安値はアマゾンではなく楽天でNMNは6.95mg/円、他のサイトでの海外商品レスベラトロールは16.16mg/円であった。1日推奨摂取量はSinclair教授自身にも分かっていないので、きっと十分量を摂って、余ったものは尿中に捨てればいいと思っているはずだ。そして欧米人に比べて日本人は小柄ということを併せて考えてみれば、それぞれ1日500mgを摂るとするとNMNは1日78円、レスベラトロールは1日30.9円。1日100円と考えれば、決して高い金額ではない。

(4)意外と健康に良くないもの
 一般的に筋トレに有用とされている分子差鎖アミノ酸(BCAA)の中で、特にロイシンは良くない。筋肉がつくのはロイシンがmTORを活性化するからだ。ベジタリアンが長寿である理由も同じ。赤肉に含まれるカルニチンは腸内細菌によって、心血管病変を悪化させる尿毒素トリメチルアミン-N-オキサイド(TMAO:本ブログのわかりやすい細菌と抗菌薬の話 第12回参照)に変換されるになるためよくない。ということで肉は良くない。メチオニンはオートファジーを抑制するmTORを活性化するので、摂取を制限する。
 抗酸化サプリはCoQ10,α-リポ酸、ビタミンE、アスタキサンチンなど長寿とは無縁だ。様々なサプリメーカーが長寿を謳っているだけで、論文で証明されているものではない。レスベラトロールは抗酸化サプリとしても発売されているが、sir2酵素を活性化することによって寿命を延ばす作用が証明されている。
 
あとがき
 Sinclair教授はオーストラリア出身でハーバード大学医学部の老化と寿命延長の生物学に関する医学研究者です。1969年生まれなので私よりも15歳若いのですが、2013年にはシドニーのオペラハウスでTED Talkで講演をされています。とても人を惹きつける講演内容であり、Youtubeで見れます。日本人ではワシントン大学の今井教授も長寿遺伝子の研究をしており、母校の慶應義塾大学での講演でYoutubeでのリーダーシップのあり方、講演のテクニックに関しての講演も秀逸です(これは日本語)。
 この研究成果を見て、高齢者がどんどん増えていったらどうなるんだ、と考える人も多いかと思いますが、健康寿命が高くなれば、若年者が少なく未来の希望の光の見えない日本でも、元気な高齢者が社会を活性化できればいいという考え方もできると思います。
 長寿遺伝子の研究はいまだ完成されているとは思いません。でも10年後、20年後、現在行われているヒトでのデータが蓄積すれば、戦前までは結核や肺炎などの感染症が不治の病だったのが、今では抗菌薬で簡単に治癒できるのと同じように、「あの頃の平均寿命は80歳くらいって言われてたけど、今は80歳じゃまだまだ現役で仕事ができるものね(現に平田が子供のころの60歳は腰の曲がった老婆か完全なご隠居さんのイメージだった)」という時代が来るかもしれません。60歳代の現役プロ野球選手、60歳の横綱が生まれ、80歳のマラソンランナーが3時間以内でフルマラソンを完走できるのは、ひょっとしたら将来的にはありかもしれません。ただし超高齢のねたきり末期心不全患者がジョギングできるようになる、透析患者の尿量が増えて透析が不要になる、老眼も白内障も緑内障も完治するようになるには幹細胞移植の助けも必要になるのではないでしょうか。

 

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 第3回 基礎から学ぶ薬剤師塾 7月10日(火)18時から20時(予定)の申し込みを始めます。
 第2回目は1回目よりもより多くの質問を受けることができましたが、チャットでの質問にすべて答えられなくて、反省点もありましたが、改善してまいりたいと思います。でもチャットだけではなく直接、納得いくまでディスカッションしたい人は勇気をもって質問していただければ塾も盛り上がると思いますので、よろしくお願いいたします
 参加を希望される方は以下の申し込みフォームに記入のうえ、送信してください。https://forms.gle/Y4FhcsSAu8wHc1888
  第3回のテーマは事前アンケートで最も多かった腎機能の見方です。「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう」です。腎機能についての話は、結構難しい内容になりがちですが、できるだけわかりやすくしたいと思います。質問を丁寧に受けると1回では終われないかもしれません。
 20210608.png 薬剤師塾への参加者はどなたでも構いませんが、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書き、海外の学会で発表し、英語論文をまとめて博士号を取るんだというような大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。 300名参加可能(これって結構な金額になるんですよ)ですが、前回の登録者数は220名でしたので、早めに登録してください。


 わが国の高齢化率は2位のイタリア以下を5ポイント近く大きく引き離して、圧倒的な超高齢者大国になっており、これがさらに2042年まで上昇し続けるといわれています(図1) 。 20210607_1_1.png 日本の医療は、高齢者薬物療法の問題が顕在化しており、私もこれについて講演したり執筆する機会が増えています。平均寿命は2019年、男81.41歳(65歳の平均余命は19.83歳)、女87.45歳(65歳の平均余命は24.63歳)といわれていますが、介護が不要な健康寿命は2013年の厚労省のデータによると男71.19歳、女74.21歳です。10~13年、介護が必要というのはつらいものです。今、超元気でありながら、見た目は着実に老化の一途を辿っている現在66歳の平田(図2)にとって健康寿命はこのデータによるとあとわずか5年なのです。 20210607_2.png この5年間のうちにできることはやっておきたい、悔いは残したくないから。
 腎機能は良くはならず加齢とともに低下していくのと同じように、老化は避けて通れないものと、誰もが考えているでしょうが、非常に著名な医学者のDavid A Sinclair教授が2019年に著し翌年邦訳された「ライフスパン 老いなき世界 人類は老いない身体を手に入れる(原題:Lifespan: Why We Age – and Why We Don’t Have To)」が話題になっています。内容は今はやりの「健康本」や「ダイエット本」ではありません。20210607.pngちゃんと査読の厳しいNature, Cell, Scienceなどの医学のトップジャーナルに掲載された根拠のあるものです。500ページ近くあって、とてもわかりやすく書いているものの、科学に疎い人には内容的には難しいのですが、非常に興味深く、インパクトの強い内容、すなわち老化を防ぎ健康寿命を増やす(だけでなく最高寿命も増やせる)方法について記されています。書評はこのブログでは初めてですが、とても興味深かったのでワシントン大学の今井教授のNMNというニコチン酸誘導体に関する仕事や、平田の薬剤師としての持論も交えて解説してみたいと思います。

1.何故生物は老いて死ぬのか
 かつては、そして今も老衰や高齢による衰弱は主な死因であり、加齢に伴い疾病数は増え、高血圧、糖尿病罹患率も上昇する。現在の医療のようなもぐらたたきのように、個々の病気を治療するだけでは健康寿命は伸ばせない。老化は一つの病気であり、治療できるというのが本書の内容だ。なぜ老いるのか?我々の体にはDNAの損傷が見られるとき、つまり厳しい環境下では細胞の増殖を遅らせることで、損傷が治るまで自身の修復にエネルギーを振り向ける仕組みが備わっている。これまでの生命科学ではDNAの損傷、恒常性の消失、ミトコンドリアの機能の低下などの様々な要因によって老化が起こると考えられてきた。それは間違いではないが、「そもそもどうして老化現象が表れるのか」については解明できていなかった。著者は、これら諸要因に共通する「唯一の原因」を探し出した。それは「エピゲノム情報の喪失」である。つまり老化とは情報の喪失によるものだ
 ここでエピゲノムについて説明しておこう。体内には2種類の情報がある。1つはデジタル情報であり、A, G, C, Tで表される核酸塩基がこれに該当する。もう1つはアナログ情報であり、これは「エピゲノム」と呼ばれる。DNAの塩基配列を変えることなしに、細胞内での遺伝子発現の仕方を変えることを「エピジェネティクス」という。この「DNAによらないアナログな仕組み(DNA塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現を制御・伝達するシステム)」が、老化を止めるための重要な要素である。例えば同じ遺伝子を持っている一卵性双生児であっても環境の違いによってアナログ情報であるエピゲノムが変化すると、有名な写真の図3のように変化する(左が喫煙者、右が非喫煙者の双子)。 20210607_3.png わかりやすく説明するために著者は「ゲノムをピアノだとすればエピゲノムはピアニストのような関係である。ピアノの大きさや形は変えられない。芋虫は人間になれないが、その代わり、変態の過程でエピゲノムが変化することにより、ゲノムの配列自体は何も変わらないのに蝶へと変身する。」と説明する。エピゲノムはDNAの損傷など、細胞が大きく傷つけられたとき、機能不全が生じる。ピアニストで言えば、「レ」の音を必ず間違えて演奏しつづけるようなものだ。たった一度のミスなら気にならないが、これがずっと続くと不協和音となり協奏曲全体が崩壊していく。この情報変換のミスが老化なのだ。老化という身体の変化はこのようにして起こっているのだ。
 なぜ、「DNAによらないアナログな仕組み」が、老化を止めるための重要な要素になるのかというと、老化は昔からDNAの変質によって引き起こされる不可逆的な現象だと捉えられてきた。老化の症状に影響する遺伝子はすでに見つかっているが、実は老化の原因となる単一の遺伝子は見つかっていないからだ。私達の遺伝子が老化を引き起こすために進化したわけではないからである。であるならば、エピゲノムという可逆的なアナログ情報に生じたエラーを取り除くことができれば、若いころのDNAを復活させることができるはずなのだ。

2.老化の情報理論
 老化の典型的特徴の1つ1つがなぜ起きるのかは、老化は情報ミスであるという「老化の情報理論」で説明できる。この理論は、一見ばらばらに思える老化の要因を、普遍的な生死のモデルへと統合させることが可能で、それを分かりやすく表すと以下のようになる。
 若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻きつきとエピゲノムの混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死
 エピゲノムは「クロマチン」という構造にしまわれ、いくつかに分割された上で「ヒストン」というごく小さな珠状のタンパク質に、ヨーヨーのように巻きついている(図4)。 20210607_4.png 「エピゲノム」とは、わかりやすく言えば「どの遺伝子を使い、どの遺伝子を使わないかを決めるスイッチ」のようなもので、DNAと違って化学物質・ストレス・その他の外部からの刺激などの要因によって変化する。このモデルのDNAの巻きつきとエピゲノムの混乱→アイデンティティの喪失には、サーチュイン(sirtuin)という寿命を調節する酵素が重要な役割を果たしている。サーチュイン遺伝子の働きは災害対応部隊の指揮官のようなものであり、DNAが損傷したとき、普段の仕事、つまり遺伝子の制御を通して、細胞がアイデンティティを失わないようにすることを手放して、損傷個所に修復にかけつける。
 ここでサーチュインが酷使される=DNAの損傷が頻発することであり、生殖など生命本来の仕事に手が回らなくなり、生命に深刻なダメージが及ぶ。このゲノムの混乱状態が「老化」なのだ。つまり老化は遺伝子変異ではく、DNAの損傷を引き金とするエピゲノムの変化によってもたらされているのだ。エピゲノムの混乱を収束してやれば、若いころのDNAがまた動き出す。つまり老化は可逆的で治療可能ということになる。酵母を用いたサーチュイン遺伝子の研究結果から、酵母の寿命を延ばすのはSIR2遺伝子であることが明らかになった。細胞が作り出せるsir2酵素の量には限りがあるが、sir2を増やせれば、細胞内に十分な量ができ、いつもの仕事とDNAの修復を並行して行えるようになるはずだ。マウスの実験ではサーチュインを活発化させるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を混ぜた餌を与えたら、ヒトに例えると65歳の老齢マウスが通常のマウスでは生涯に走り切れないくらいのウルトラマラソン級の距離を走り続けて、走行距離計を壊してしまった。老齢マウスのサーチュインを活性化させる酵素が増え、エピゲノムが安定してミトコンドリア数が増加し、あらたな毛細血管ができて若返ったのだ。

サーチュイン遺伝子
 もともとは脱アセチル化酵素であり長寿遺伝子または抗老化遺伝子とも呼ばれ、その活性化でより生物の寿命が延びるとされるがNADを必要とする酵素なので、ニコチン酸誘導体が老化防止のキーワードになる。ある種のサーチュインが機能しなくなった動物では、記憶能力の低下、老化様症状を示すという報告があり、さらにサーチュインは、アルツハイマー病の病理学的変化を抑制する可能性が示唆されている。サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるタンパク質、サーチュインはヒストン脱アセチル化酵素であるため、ヒストンとDNAの結合に作用し、遺伝的な調節を行うことで寿命を延ばすと考えられている。酵母のSir2遺伝子がヒストン脱アセチル化酵素であることを見出し、この酵素の作用が代謝や遺伝子サイレンシング、加齢に関与している。サーチュイン遺伝子は、HIITというインターバルトレーニングや、飢餓やカロリー制限によって活性化されるので、運動や食事習慣も老化防止の重要なキーワードになる。この他に赤ワインに多く含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールによってsir2が活性化されるのでレスベラトロールのサプリメント摂取も老化予防に貢献できる(図5)。 20210607_5_1.png

 

ニコチン酸サプリメント
 ナイアシンの健常成人耐用量は35mg/日とビタミン剤の中では最も推奨用量と近接している副作用の起こりやすいビタミンでニコチン酸を含むサプリメントは末梢血管拡張作用を有するため一過性の顔面紅潮などを起こしやすいので要注意だが、ヒスタミン遊離による一過性のものであり、ニコチン酸アミドではこの作用はない。そのためOTC薬やサプリメントは安全性の高いニコチン酸アミドの型で配合されている。Sinclair教授は動物実験では低価格のナイアシンやニコチンアミドではなく有効性の高いNR(ニコチンアミドリボシド)を動物に投与しているが、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)はより安定で効果的にNAD濃度を上げることができる合成中間体として、教授自身とその家族は毎朝1g服用している。NMNには副作用はないらしい。

 

 

 

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プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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