NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
7日目 Triple Whammy の片割れ、RAS阻害薬の利点・欠点
RAS阻害薬はよく「両派の剣」とたとえられます。CKD患者では腎保護作用が期待できますが、同時に腎機能悪化の原因にもなるからです。現在では糖尿病腎臓病(DKD)でもCKD患者でも蛋白尿(DKDではアルブミン尿)があればRAS阻害薬を選択し、蛋白尿(-)であれば、RAS阻害薬にこだわらず利尿薬でもCa拮抗薬でもよいとされています。またRAS阻害薬では腎機能悪化や高カリウム血症に十分注意しなくてはならないので、使い慣れていない医師なら高齢者の脱水やAKIを防止するにはCa拮抗薬が一番無難で使いやすいと思われます。ここではRAS阻害薬の利点・欠点について解説します。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
7月6日(火)に公開した「医師のファクトフルネス、薬剤師のファクトフルネス」に、新たにテスト機能を追加しました。
満点を狙って皆さん是非挑戦されて下さい!
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
5日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その4)
今回はTriple whammy症例について考えていただきましょう。後期高齢者が脱水になって、意識消失となり、腎機能も悪化しました1)。夏の熱帯夜でも冷房を使うのを嫌がる高齢者でよくありがちなことです。ではなぜ意識障害になったのでしょうか?
皆さんは以下の症例・処方内容についてどのワードに「薬剤師の気づき」を感じますか? この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
4日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その3)
Triple Whammy処方は遅くとも2000年ころから問題視されており1) 、我が国のCKD診療ガイド2012 2) でも「CKD 患者にRAS 阻害薬、利尿薬を投与すると、過剰降圧、eGFRの低下、あるいは血清Kの上昇(利尿薬単独投与時あるいは複数 の利尿薬併用時には血清Kの低下)がみられることがある。」 「降圧薬を服用中の患者で 、食事摂取ができない、嘔吐している、下痢をしている、あるいは発熱など脱水になる危険があるときには、急性腎障害(acute kidney injur y:AKI)予防の観点から、これらの降圧薬を中止して速やかに受診するように患者に指導する。特に高齢者では上記に加えて夏場の脱水に注意 が必要である。また、他院で腰痛などのためにNSAIDs を投与されていることもある。そのような薬剤を投与されていないかを確認する。」などの記載がすでにみられます。ですからTriple Whammyは今に始まった話題ではないのです。薬剤師の皆さん、CKD診療ガイド2012に記 載されているような服薬指導できていますか?多くの薬剤師の答えは「No」ではないかと思います。だから今回、この連載を企画したのです 。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
第5回 基礎から学ぶ薬剤師塾 9月7日(火)18時から20時(予定)の申し込みを始めます。
第5回のテーマは「腎機能低下時に減量が必要な薬~根拠は尿中排泄率だけじゃない~」です。腎機能が低下すれば患者の腎機能と薬物の尿中排泄率に応じた減量が必要です。ところがザイロリックⓇのように尿中排泄率が低いのに、あるいはモルヒネやサインバルタⓇのように尿中に排泄されないのに減量しなくてはならない薬や腎機能低下患者には使わない方がいい薬もあります。あるいはミネブロⓇのように薬物血中濃度が上がらなくても腎機能低下患者には使わない方がよい薬もあります。今回は腎機能低下患者や高齢者にはどのような薬が危ないのか?どのような薬は使うべきではないのか?投与量の設定はどのようにすればよいのか?薬剤師にとって最も大切な薬物投与設計の基本について考えてみたいと思います。
参加を希望される方は以下の申し込みフォームに記入のうえ、送信してください。https://forms.gle/kENFYwkCXs5C3Usm8
薬剤師塾への参加者はどなたでも構いませんが、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書き、海外の学会で発表し、英語論文をまとめて博士号を取るんだというような大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
3日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その2)
利尿薬は循環血漿量を少なくすることによって血圧を下げますが、腎血漿流量も下げます。RAS阻害薬は輸出細動脈を拡張させることによって糸球体内圧を下げ、 糸球体過剰濾過を抑制することによって蛋白尿を抑えるとともに腎機能悪化を防ぐために用いられる降圧薬です。利尿薬もRAS阻害薬も腎臓の負荷を軽減させ、 休ませることによって、腎機能は一時的に低下しますがその後の腎機能悪化速度を緩めることによって、透析導入を遅らせる、あるいは避けることができます。 NSAIDsはすでに述べたように「塩分欠乏のある人。利尿薬、ACE阻害薬、またはARBを服用している人には避けたい薬」です。利尿薬は低ナトリウム血症をきたしやすいのですから、 前述のように利尿薬+RAS阻害薬+NSAIDsの組み合わせは3重攻撃Triple Whammyなのです。図1左に示すように腎臓は上述のように1日1,500Lの血液をろ過して、 1日150L(=GFR100mL/min)の原尿を得るために糸球体内圧は末梢動脈としてはかなり高い50mmHgを保っています。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
2日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その1)
1日目に記載した米国イブプロフェンの添付文書中の赤字記載は平田がいつも懸念している「薬剤性腎障害」関連です。「高齢者、塩分欠乏のある人。利尿薬、ACE阻害薬、またはARBを服用している人」を赤字にした理由は利尿薬+RAS阻害薬(ACE阻害薬、またはARB)+NSAIDsの組み合わせは悪名高い三重攻撃(Triple Whammy)といわれているからです。なぜ、これらの処方の組み合わせが悪いのかというと、まずはよく理解していただくために腎臓がどんな仕事をやっているかについて説明させてください。 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます
NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
1日目 NSAIDsの4大副作用
NSAIDsは痛みを抑える以外にのんで得することがない。1日3回、1回1錠で30日分投与されても、痛くなければ飲む必要がない。いや高齢者に限っては、のまない方が患者さんのためになる!と平田は思っています。だって副作用は半端じゃない。胃障害、出血、肝障害、腎障害、アスピリン喘息、高血圧をはじめとした心血管病変の悪化。これについてはいいかげんな日本の添付文書ではなく、米国のイブプロフェンの添付文書を参照したいと思います。
以上に示すようにNSAIDsの副作用は実に多彩です。平田は熊本大学では学生たちにNSAIDsの4大服用を叩き込ん でいました。すなわち①胃障害、②腎障害、③出血助長、④アスピリン 喘息(NSAIDsに共通しているので、NSAIDs喘息だ!)ですが、それに加えるとすればNa・ 水貯留から高血圧をはじめとした心不全・脳卒中など心血管病の悪化も重要ですし、「表.NSAIDsによる腎前性急性腎傷害の危険因子 (このような一覧表は このブログのカテゴリ→育薬に活用できるデータベース→薬剤性腎障害 で印刷も可能です)」を参照すれば、忘れていました。 高レニン血症や高アルドステロン血症も急性腎障害(AKI)を悪化させる危険因子でした。血圧も上がるだけじゃなく浮腫、蛋白尿、 血清クレアチニン上昇、高カリウム血症も副作用として考えられるから後期高齢者や腎不全患者では飲まない方がいいという理屈が分かっていただけます。
8月9日(月)より週に2回、月・木で『NSAIDsによる腎障害』の連載を始めます。ご期待ください。