2021年8月

NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
7日目 Triple Whammy の片割れ、RAS阻害薬の利点・欠点

 RAS阻害薬はよく「両派の剣」とたとえられます。CKD患者では腎保護作用が期待できますが、同時に腎機能悪化の原因にもなるからです。現在では糖尿病腎臓病(DKD)でもCKD患者でも蛋白尿(DKDではアルブミン尿)があればRAS阻害薬を選択し、蛋白尿(-)であれば、RAS阻害薬にこだわらず利尿薬でもCa拮抗薬でもよいとされています。またRAS阻害薬では腎機能悪化や高カリウム血症に十分注意しなくてはならないので、使い慣れていない医師なら高齢者の脱水やAKIを防止するにはCa拮抗薬が一番無難で使いやすいと思われます。ここではRAS阻害薬の利点・欠点について解説します。

利 点
 RAS阻害薬は蛋白尿陽性であれば、糸球体過剰濾過が原因と考えられるため、糖尿病患者でもCKD患者でも第1選択薬となります。腎機能が低下するとネフロン数が減少して糸球体濾過量が保てなくなりますが、腎血流が低下しているのを傍糸球体細胞が感知してレニン分泌を促進します。レニンによって産生された超強力な血管収縮物質アンジオテンシンⅡは輸出細動脈を収縮させることによって糸球体内圧を上げて、ネフロン1個当たりの糸球体濾過量を増やそうとします。だから加齢に伴って腎機能が低下すると腎血漿流量よりも糸球体濾過量(GFR)の方が高くなります(図1)。

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これによっておこるネフロンの過負荷による糸球体過剰濾過によって蛋白尿が漏れ出て、糸球体や尿細管を傷害して、さらにネフロン数は減少します。RAS阻害薬はアンジオテンシンⅡを効かなくさせることによって、輸出細動脈を拡張させ蛋白尿・糸球体過剰濾過を軽減し、ネフロンの疲弊を防ぎます(図2)。

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糸球体内圧を下げ、腎臓を休ませる薬ですから腎機能は当然低下しますが、その後の腎機能の悪化速度を緩和するため、長期的に見れば透析導入を遅らせる、あるいは透析導入を回避できます。そのためCKD患者ではできるだけ早期から投与した方が、透析導入回避に有効な薬と考えられていました(図 3)。このほかにも心不全で前負荷・後負荷を軽減し、心筋や血管のリモデリング(肥厚)を抑制する重要な薬物です。ACE阻害薬は高齢者の誤嚥性肺炎予防効果もあるとされています。前回にも言いましたが、利尿薬との併用は利尿薬によって循環血漿量を減らすと、腎還流量が低下するためレニン-アンジオテンシン系が活性化されます。RAS阻害薬はそれを抑えるため、強力な降圧作用・蛋白尿抑制作用が期待できる相乗作用が期待できるよい組み合わせの配合剤ですが、高齢者では脱水や腎虚血を助長する非常に怖い組み合わせでもあります。まさに「両刃の剣」といえます。

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欠 点

 2017年のSchmidtらの報告(4日目の図2参照)により腎前性腎障害によって透析導入が増えたというショッキングな報告以降、蛋白尿のないCKD患者やアルブミン尿のない糖尿病患者の降圧には必ずしも第1選択薬ではなくなりました。eGFR<30の患者ではRAS阻害薬による腎機能悪化や高カリウム血症に十分注意し、副作用出現時には速やかに減量・中止し、高齢者ではCa拮抗薬への変更を考慮してもよいかもしれません。また、エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン20181)では「後期高齢者でeGFR<30の患者には脱水や虚血に対する脆弱性を考慮し,Ca拮抗薬を推奨する」とされました。
 なんでCa拮抗薬一択になるの?と思う方も多いかもしれませんが、エベレスト登山隊は凍傷にならないようにアダラート®をのんで登頂するそうだということをバイエル製薬のアダラート®の講演会で聞きました(間違ってもβ遮断薬をのんで冬山に上ってはいけません!)。末梢動脈の血流を改善するCa拮抗薬ですから、蛋白尿はやや増やすのですが、腎虚血を守り、さらに後期高齢者に最も使いやすい降圧薬としてはCa拮抗薬が安全面でベストな選択だと思います。

 

引用文献
1)日本腎臓学会: エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018.

 


 7月6日(火)に公開した「医師のファクトフルネス、薬剤師のファクトフルネス」に、新たにテスト機能を追加しました。
 満点を狙って皆さん是非挑戦されて下さい!

NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
5日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その4)

 今回はTriple whammy症例について考えていただきましょう。後期高齢者が脱水になって、意識消失となり、腎機能も悪化しました1)。夏の熱帯夜でも冷房を使うのを嫌がる高齢者でよくありがちなことです。ではなぜ意識障害になったのでしょうか?
皆さんは以下の症例・処方内容についてどのワードに「薬剤師の気づき」を感じますか?

症 例
 76歳女性。身長155cm、体重57kg。2型糖尿病でHbA1cは8.6、eGFRは58mL/min/1.73m2で尿蛋白(-)。8月上旬に冷房を付けずに寝ていたが、朝食時になっても起きてこないので、家族が部屋に行ったが、意識を失っていた。救急車で搬送され、採血すると血清クレアチニン値1.8mg/dL(eGFR21.8mL/min/1.73m2)と腎機能が悪化し、血清Na濃度165mEq/Lと高ナトリウム血症。血糖値は50mg/dLの低血糖になっており、血圧は110/50mmHgに低下し、体重は54kgまで減少していた。直ちに1号輸液500mLの急速輸液に引き続き、2Lの乳酸リンゲル液を点滴することによって意識は清明となり、血圧も135/75mmHgに戻り尿意を催した。後で話を聞くと夜間頻尿のため、夕食以降は水分を摂らないようにしていたらしい。

処 方

2型糖尿病に対し
 メトホルミン500mg錠1回1錠1日3回毎食後
 アマリール®4mg錠1回1錠、1日1回朝食後

高血圧に対し
 エカード®配合錠LD 錠1回1錠朝食後

閉経後骨粗鬆症に対し
 エディロール®0.75μgカプセル1回1カプセル1日1回朝食後

腰痛に対し
 ロキソニン®60mg錠1回1錠、1日3回毎食後

 

引用文献
1) 平田純生: 調剤と情報27: 1474-1480, 2021

 


NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
4日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その3)

 Triple Whammy処方は遅くとも2000年ころから問題視されており1) 、我が国のCKD診療ガイド2012 2) でも「CKD 患者にRAS 阻害薬、利尿薬を投与すると、過剰降圧、eGFRの低下、あるいは血清Kの上昇(利尿薬単独投与時あるいは複数 の利尿薬併用時には血清Kの低下)がみられることがある。」 「降圧薬を服用中の患者で 、食事摂取ができない、嘔吐している、下痢をしている、あるいは発熱など脱水になる危険があるときには、急性腎障害(acute kidney injur y:AKI)予防の観点から、これらの降圧薬を中止して速やかに受診するように患者に指導する。特に高齢者では上記に加えて夏場の脱水に注意 が必要である。また、他院で腰痛などのためにNSAIDs を投与されていることもある。そのような薬剤を投与されていないかを確認する。」などの記載がすでにみられます。ですからTriple Whammyは今に始まった話題ではないのです。薬剤師の皆さん、CKD診療ガイド2012に記 載されているような服薬指導できていますか?多くの薬剤師の答えは「No」ではないかと思います。だから今回、この連載を企画したのです 。
 多くの薬剤師の先生方がポリファーマシーを解消でき、安価でアドヒアランスに貢献できると信じている配合剤のプレミネント®、エカード®、コディオ®、ミコンビ®、イルトラ®はARBと利尿薬の配合剤はすべてDouble whammy処方、ミカトリオ®はそれに加えてCa拮抗薬の配合されたDouble whammy処方になるのです(図1)。これらの錠剤にロキソプロフェンのような経口NSAIDsや経皮吸収型NSAIDsの貼付薬が加わるだけでTriple Whammy処方が完成します。

20210819_01.png CKD診療ガイド2012には「RAS 阻害薬、利尿薬の投与開始後はeGFR、血清Kをモニタリングする。その際eGFR については、投与開始3カ月後までの時点で前値の30%未満の低下は、薬理効果としてそのまま投与を継続してよい。」とされていましたが、このことは現在では言わなくなりました。いや言えなくなってしまったといってもよいでしょう。これはSchdmitら3)の報告でACE阻害薬・ARB服用後の血清Cr値の上昇はCKD診療ガイド2012で治療の中止を推奨する30%以上でない場合も、累進的に心・腎疾患発症リスクを上昇させることが明らかになったからです。この報告ではRAS阻害薬服用者で血清Cr値の上昇が10%未満を対象として30%以上ではもちろん、「薬理作用だから問題ないといわれていた」20-29%、10-19%でも疾患リスク・死亡リスクが有意に上昇したというもので、特に透析導入・全死亡リスクで顕著です(図2)。ではRAS阻害薬・利尿薬の投与はCKD患者にとって有害なのでしょうか?それについては、これから症例検討も交えて考えてみたいと思います。

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引用文献
1)Thomas MC: Med J Aust 172: 184-485, 2000
2)日本腎 臓学会編: CKD診療ガイド2012
3)Schmidt M, et al: BMJ 2017;356:j791

 


 第5回 基礎から学ぶ薬剤師塾 9月7日(火)18時から20時(予定)の申し込みを始めます。
 第5回のテーマは腎機能低下時に減量が必要な薬~根拠は尿中排泄率だけじゃない~です。腎機能が低下すれば患者の腎機能と薬物の尿中排泄率に応じた減量が必要です。ところがザイロリックⓇのように尿中排泄率が低いのに、あるいはモルヒネやサインバルタⓇのように尿中に排泄されないのに減量しなくてはならない薬や腎機能低下患者には使わない方がいい薬もあります。あるいはミネブロⓇのように薬物血中濃度が上がらなくても腎機能低下患者には使わない方がよい薬もあります。今回は腎機能低下患者や高齢者にはどのような薬が危ないのか?どのような薬は使うべきではないのか?投与量の設定はどのようにすればよいのか?薬剤師にとって最も大切な薬物投与設計の基本について考えてみたいと思います。
 参加を希望される方は以下の申し込みフォームに記入のうえ、送信してください。https://forms.gle/kENFYwkCXs5C3Usm8
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 薬剤師塾への参加者はどなたでも構いませんが、ぜひ学会発表を目指している方に参加していただきたいと思います。そしてその先には原著論文を書き、海外の学会で発表し、英語論文をまとめて博士号を取るんだというような大きな夢を持つ人になっていただきたいと思います。300名まで参加可能ですが、最近の登録者数は200名を超えていますので、早めに登録してください。

 


NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
3日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その2)

 利尿薬は循環血漿量を少なくすることによって血圧を下げますが、腎血漿流量も下げます。RAS阻害薬は輸出細動脈を拡張させることによって糸球体内圧を下げ、 糸球体過剰濾過を抑制することによって蛋白尿を抑えるとともに腎機能悪化を防ぐために用いられる降圧薬です。利尿薬もRAS阻害薬も腎臓の負荷を軽減させ、 休ませることによって、腎機能は一時的に低下しますがその後の腎機能悪化速度を緩めることによって、透析導入を遅らせる、あるいは避けることができます。 NSAIDsはすでに述べたように「塩分欠乏のある人。利尿薬、ACE阻害薬、またはARBを服用している人には避けたい薬」です。利尿薬は低ナトリウム血症をきたしやすいのですから、 前述のように利尿薬+RAS阻害薬+NSAIDsの組み合わせは3重攻撃Triple Whammyなのです。図1左に示すように腎臓は上述のように1日1,500Lの血液をろ過して、 1日150L(=GFR100mL/min)の原尿を得るために糸球体内圧は末梢動脈としてはかなり高い50mmHgを保っています。
  図1に示すようにTriple Whammy処方は①利尿薬による循環血漿量減少、②NSAIDsによる輸入細動脈収縮、 ③RAS阻害薬による輸出細動脈拡張によって、糸球体血流量が激減し、糸球体内圧が低下するため原尿産生量が低下(=糸球体ろ過速度が低下するので、GFRが低下)する。 つまり腎機能が当たり前に低下します。

20210816_01.pngとくに動脈硬化が進行して腎虚血に陥りやすく、夏季に脱水になりやすい高齢者で要注意な処方です。高齢者では加齢に伴う腎機能低下に加え、 腎機能・心機能を守るためにRAS阻害薬・利尿薬が投与されやすく、腰痛・ひざ痛などのためにNSAIDsが投与されやすく、超高齢者で90歳代になると死因の第1位はがんではなく心不全です。 心不全で肺水腫になって呼吸困難を生じるとループ利尿薬が投与されます。Triple Whammy処方に加え、夏季の発汗や意図せぬ下痢や嘔吐があったり、免疫能の低下・栄養状態の悪化によって重症感染症に罹患すれば、腎の自動調節能が破綻し低環流になって全身血圧に関係なくGFRが低下して、一気に透析導入になってしまうという最悪のシナリオが完成してしまうのです(図2)。

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NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
2日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その1) 

 1日目に記載した米国イブプロフェンの添付文書中の赤字記載は平田がいつも懸念している「薬剤性腎障害」関連です。「高齢者、塩分欠乏のある人。利尿薬、ACE阻害薬、またはARBを服用している人」を赤字にした理由は利尿薬+RAS阻害薬(ACE阻害薬、またはARB)+NSAIDsの組み合わせは悪名高い三重攻撃(Triple Whammy)といわれているからです。なぜ、これらの処方の組み合わせが悪いのかというと、まずはよく理解していただくために腎臓がどんな仕事をやっているかについて説明させてください。

腎臓のやっている仕事
 腎臓は2つで250g程度の小さな臓器なのに、 心拍出量5L/分の20%にあたる1.0L/分の血流があります。1日当たり1,440Lですが、大雑把に1,500L/日と考えて構いません。そのうち10%にあたる150L/日を 濾過して原尿を作っています。でも尿量が1日当たりだいたい1.5L/日ですから、原尿のうち99%の水(とすべての栄養素、必要なだけの電解質)を再吸収し、 不要なもの(老廃物や薬物、余剰な電解質など)を1.5Lの尿に捨てることによって生体体液の恒常性を保っています (図1)。

20210812_1.png 人は毎日、違うものを食べても腎機能が正常であれば、血液中のNa、K、リンなどの電解質濃度、 pH、水分量は常に狭い正常範囲内に保つことができます。つまり腎臓は生体の体液の恒常性を非常に狭い範囲内で精密に保つのに重要な臓器なのです。 ただし図2に示すようなラーメンのスープを腎不全患者がすべて飲み干すと高ナトリウム血症になりますし、 大ジョッキのビールを飲めば、当然溢水・浮腫に、西瓜をたくさん食べれば高カリウム血症で突然死の恐れがありますし、ピーナッツ1袋を透析患者さんが 食べれば5mg/dLの血清リン濃度が一挙に9~10mg/dLに上がりますが、腎機能正常者であれば同じものを食べても何にも起こりません。腎不全患者が下痢・ 嘔吐すればNa, K, Clなどの電解質が失われ、何も食べられなければ低ナトリウム血症、低カリウム血症になりますし、腎不全患者が大出血すれば何もし なければ、細胞外液が失われてショックになる事でしょう。でも腎機能正常者であれば尿量を減らすことによって即死することはありませんし、 山中で遭難しても水さえあれば、尿中にNaを排泄しないことによって塩を全く摂れなくても低ナトリウム血症になることはありませんし、 体脂肪からケトン体をエネルギーにして10日以上でも生きることができます。腎臓の力って本当にすごいでしょ。

20210812_2.png 腎機能は加齢とともに低下しますから、高齢者の中には腎機能が低下している方が結構多いので、上記のような正常な腎臓の機能を享受することができなく なることがあります。例えば高齢者は夏には発汗によって容易に脱水になりやすいし、薬物の影響による腎虚血の影響も受けやすいのです。

 


NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
1日目 NSAIDsの4大副作用

 NSAIDsは痛みを抑える以外にのんで得することがない。1日3回、1回1錠で30日分投与されても、痛くなければ飲む必要がない。いや高齢者に限っては、のまない方が患者さんのためになる!と平田は思っています。だって副作用は半端じゃない。胃障害、出血、肝障害、腎障害、アスピリン喘息、高血圧をはじめとした心血管病変の悪化。これについてはいいかげんな日本の添付文書ではなく、米国のイブプロフェンの添付文書を参照したいと思います。

米国イブプロフェンの添付文書からの注意事項(抜粋)
気管支喘息、心臓病、うっ血性心不全、肝機能障害または腎機能障害、高血圧症には注意が必要です。出血性疾患、十二指腸/胃/消化性潰瘍、口内炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、潰瘍性大腸炎、上部消化管疾患、妊娠後期(動脈管の早期閉鎖を引き起こす可能性がある)。
NSAIDの長期投与は、腎乳頭壊死やその他の腎障害を引き起こす可能性があります。最もリスクの高い患者には高齢者が含まれます。腎機能障害、循環血液量減少、心不全、肝機能障害、または塩分欠乏のある人。利尿薬、ACE阻害薬、またはARBを服用している人。
剥離性皮膚炎、中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重篤な副作用を引き起こす可能性がある。 
抗血小板作用がある。
アスピリンを除くNSAIDSは、心臓発作、心不全、脳卒中のリスクを高める。これは致命的となる可能性があり、長期使用によりリスクが高くなります。
高血圧、心臓病、肝硬変、腎臓病、喘息、甲状腺疾患、糖尿病、緑内障、前立腺の肥大による排尿困難、または脳卒中の患者には注意が必要です。
心不全(HF)のリスク:NSAIDSは、ナトリウムと水分の保持、全身の血管抵抗の増加、利尿薬への反応の鈍化につながるプロスタグランジン阻害によって心不全を誘発する可能性がある。
N SAIDsは、可能な限り避ける。

 

 以上に示すようにNSAIDsの副作用は実に多彩です。平田は熊本大学では学生たちにNSAIDsの4大服用を叩き込ん でいました。すなわち①胃障害、②腎障害、③出血助長、④アスピリン 喘息(NSAIDsに共通しているので、NSAIDs喘息だ!)ですが、それに加えるとすればNa・ 水貯留から高血圧をはじめとした心不全・脳卒中など心血管病の悪化も重要ですし、「表.NSAIDsによる腎前性急性腎傷害の危険因子 (このような一覧表は このブログのカテゴリ→育薬に活用できるデータベース→薬剤性腎障害 で印刷も可能です)」を参照すれば、忘れていました。 高レニン血症や高アルドステロン血症も急性腎障害(AKI)を悪化させる危険因子でした。血圧も上がるだけじゃなく浮腫、蛋白尿、 血清クレアチニン上昇、高カリウム血症も副作用として考えられるから後期高齢者や腎不全患者では飲まない方がいいという理屈が分かっていただけます。

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8月9日(月)より週に2回、月・木でNSAIDsによる腎障害』の連載を始めます。ご期待ください。


プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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