NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
3日目 NSAIDsはTriple Whammyの1つ(その2)
利尿薬は循環血漿量を少なくすることによって血圧を下げますが、腎血漿流量も下げます。RAS阻害薬は輸出細動脈を拡張させることによって糸球体内圧を下げ、 糸球体過剰濾過を抑制することによって蛋白尿を抑えるとともに腎機能悪化を防ぐために用いられる降圧薬です。利尿薬もRAS阻害薬も腎臓の負荷を軽減させ、 休ませることによって、腎機能は一時的に低下しますがその後の腎機能悪化速度を緩めることによって、透析導入を遅らせる、あるいは避けることができます。 NSAIDsはすでに述べたように「塩分欠乏のある人。利尿薬、ACE阻害薬、またはARBを服用している人には避けたい薬」です。利尿薬は低ナトリウム血症をきたしやすいのですから、 前述のように利尿薬+RAS阻害薬+NSAIDsの組み合わせは3重攻撃Triple Whammyなのです。図1左に示すように腎臓は上述のように1日1,500Lの血液をろ過して、 1日150L(=GFR100mL/min)の原尿を得るために糸球体内圧は末梢動脈としてはかなり高い50mmHgを保っています。
図1 右に示すようにTriple Whammy処方は①利尿薬による循環血漿量減少、②NSAIDsによる輸入細動脈収縮、 ③RAS阻害薬による輸出細動脈拡張によって、糸球体血流量が激減し、糸球体内圧が低下するため原尿産生量が低下(=糸球体ろ過速度が低下するので、GFRが低下)する。 つまり腎機能が当たり前に低下します。
とくに動脈硬化が進行して腎虚血に陥りやすく、夏季に脱水になりやすい高齢者で要注意な処方です。高齢者では加齢に伴う腎機能低下に加え、 腎機能・心機能を守るためにRAS阻害薬・利尿薬が投与されやすく、腰痛・ひざ痛などのためにNSAIDsが投与されやすく、超高齢者で90歳代になると死因の第1位はがんではなく心不全です。 心不全で肺水腫になって呼吸困難を生じるとループ利尿薬が投与されます。Triple Whammy処方に加え、夏季の発汗や意図せぬ下痢や嘔吐があったり、免疫能の低下・栄養状態の悪化によって重症感染症に罹患すれば、腎の自動調節能が破綻し低環流になって全身血圧に関係なくGFRが低下して、一気に透析導入になってしまうという最悪のシナリオが完成してしまうのです(図2)。