2026年4月

2025年12月2日 X投稿 閲覧者3,902人

 理想の薬剤師像って何だろう?僕は100床未満の小さな病院薬剤師だったので、病床数の制限が撤廃された40歳になって初めて病棟での服薬指導ができるようになった。その時には何となく明るくて、やさしくて、いろんな話を聞いてくれて、ドクターに言えなかったことを伝えてあげて、一生懸命、真面目に接してくれる薬剤師になりたいと思っていた。でもほんとの僕は決して明るい性格ではない。病棟に行く前に表情を確認して優しく、明るく見えるような薬剤師像を演じていた。そうすると病棟に行くごとにこれが徐々に普通になってきて、無理をしなくても優しく明るい薬剤師になれたような気がする。中には気難しくて、医師やナースも嫌がっている患者の病室に行くと「帰れ!」と言われたこともあった。でも何度も足を運び、会話をしてみるとそんなに性格の悪い患者さんなんていない、病気のせいじゃないのかなと思った。そのうちその患者さんが医師に言いたかったことを聞き出して伝えることができるようになった後、その患者さんから「あの薬剤師の兄ちゃん、呼んでくれへんか」とご指名をいただくことがあった。内心、「やったぜ」とうれしくなったものだ。

 

 

 今は「薬を飲みたくなるような指導をしてくれる」薬剤師ってホントに大切だなと思っている。だって薬嫌い、薬を一生飲むなんてとんでもないと思っている人は多いけど、難しい薬の作用や副作用を患者さん目線で分かりやすくかみ砕いて説明してくれる技量によって「薬を飲みたくなる」ようにするって、薬のことをしっかり勉強にした人にしかできないホントに重要なことだと思ってる。

2025年11月30日 X投稿 閲覧者8,993人

 透析導入をほぼ40%減少させる驚異的な腎保護作用、心血管病・心不全入院などをほぼ30%低下させる驚異的な心保護作用を示すSGLT2阻害薬はもともと近位尿細管のナトリウム‐グルコース共輸送体2、つまり近位尿細管のS1セグメントにあるSGLT2を阻害する薬だけど、腎機能正常者に投与してもS3セグメントにあるSGLT1(図1)が頑張ってブドウ糖を再吸収するから50g/日の非糖尿病ではブドウ糖を排泄させる薬理作用に過ぎない(図2)。だけど非糖尿病CKD患者、非糖尿病心不全患者でも糖尿病合併患者に劣らない効果を示す。その薬理作用は当然、尿糖排泄促進や糸球体過剰濾過軽減、アルブミン尿軽減だけでは説明できない。

 

 

 

 最近は貧血改善作用や、長寿遺伝子SIRT1活性化、尿酸値低下作用などとの関係を重要視する専門家も出てきたけれど、個人的にはケトン体のβヒドロキシ酪酸の血中濃度上昇が一番、SGLT2阻害薬の多面的な作用について説明しやすいと思う(図3)。ブドウ糖の貯蔵エネルギーは骨格筋グリコーゲンが300gと血糖を維持するための肝グリコーゲンが100g、骨格筋の1200kcalって1日足らずのエネルギーに過ぎないじゃん!だけど体脂肪は男性で20%足らず、女性は妊娠したときに胎児を守るために30%足らずの体脂肪を持っている。体脂肪は水分も含むことを差し引いて10kgあるとすると9kcal×10kg=90,000kcalでほぼ60日分のエネルギーだ(図3)。我々の祖先はもともと狩猟採集生活をしており、主な食料は肉・魚と木の実などの低糖質食で秋には甘い果実を食べて脂肪を蓄え、長い冬を越していた。そして女性に皮下脂肪が多いのは食料のない冬でもグリコーゲンではなく脂肪を貯蔵エネルギーとして使い胎児を守っていたからだろう。最後の氷河期が終わって、5,000年前(イスラエルの歴史家で哲学者でもあるユヴァル・ノア・ハラリ氏による「サピエンス全史」によると12,000年前に農業革命が起こったとしている)の新石器時代になって農耕・牧畜が始まり、糖質である穀物を主食にしはじめ、ブドウ糖がエネルギー源の主役になったのではないだろうか(図4)。そして現在、それによる弊害、肥満、2型糖尿病、高血圧などの増加に苦しんでいる。脂肪を分解して得られるケトン体は生体にとって実に様々な有益な作用を持っており、それらの多面的な作用はヒトが病気をせずに健康で長生きするために必要なものばかりだという話は次回にしよう。

 

 

4月16日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(中級者編)」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q. S-1は、体表面積で区切られた段階的な用量設定になっています。この場合、個別化eGFR(mL/min)で投与設計を考えると、体格を二重に補正することになるのではないかと少し気になっています。あまり気にしなくてもいいのでしょうか?

A.S-1は体格別用量(mg/m2)なので、身長・体重によってすでに補正されていますので、身長・体重の入った個別化eGFR(mL/min)を使うと二重補正になります。二重補正すると小柄な人はさらに低用量になって効かなくなり、大きな人はさらに用量が増えて副作用が起こる可能性があるからです。この時だけは薬物投与設計であっても身長・体重を式に含まない標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を使います。

eGFR(mL/min/1.73m2)は一般的に体表面積補正eGFRと呼ばれますが、実際には体格が全く考慮されていないため(実際には体表面積は考慮されていない)ので混同しやすいです。ということで我々、腎臓病薬物療法学会が標準化eGFRと呼ぶようにするようにしました。


Q.聞き逃してたらすみません、メトホルミンも個別化eGFRで評価で良いですよね?

A.大原則として投与量=AUC×CLtotal  ですよね。

腎排泄型薬物のクリアランスは患者さんの腎機能が低いほど減量しなくてはなりません。患者さん自身の腎機能は個別eGFR(ml/min)で表されます。小柄で体表面積1.2m2しかない人は腎臓のサイズも小さいので1.73m2の標準体型男性に比べて低用量にしないとAUCが中毒濃度になってしまいます。逆に巨体で2m2ある人は1.73m2の標準体型男性に比べて高用量投与しないと、腎臓のサイズも大きいので効かない(AUCが有効濃度にならない)可能性があります。

上の式で示した通り薬物クリアランスは個別eGFR(ml/min)と相関しますが、標準化eGFR を用いると非常に小柄な患者や大柄な患者ではそれぞれ過剰投与や過少投与になります。さらには小柄な患者では特定の薬剤(メトホルミンなど)の投与開始基準が甘くなって副作用を起こすかもしれません。

だからメトホルミンの添付文書表記が30mL/min/1.73m2未満で禁忌、30mL/min/1.73m2以上あれば750mg/日投与できます。ということは標準化eGFRを使うと小柄な人にでも投与できますが、乳酸アシドーシスなどの副作用などのリスクは高くなります。だから添付文書の腎機能表記として標準化eGFR R(mL/min/1.73m2)を用いることが間違っているのですが、メーカーも医師の先生方もFDAやNKFもだれも指摘しなかったのでしょうかね?

薬物の投与設計にはメトホルミンのように添付文書表記が標準化eGFR(mL/min/1.73m2)になっていても個別eGFR(mL/min)を使います。これが鉄則なのです!

標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDがどれだけ重篤化の診断に使うためのものです。薬物投与設計に使うのは身長170cm、体重63kgの人だけじゃなく160cm、体重70kgの人、身長180cm、体重57kgの人など1.73m2と計算される標準体型の男性の時か、抗がん薬でmg/m2の体格別体重の時にしか使いません。


Q.Calvert式について質問させて下さい。

私の施設では、上限125mL/min、CCrを用いる場合は0.2補正(酵素法による血清Cr値に0.2を加えてJaffe法に近い値にする手法)、ADDIKD( Anticancer Drug Dosing in Kidney Dysfunction)の腎機能変動20%以内は前回量維持推奨など、基準を設け適正使用を目指しております。

しかし、腎機能が保たれた患者では、前回投与時から10mL/min増加、AUC5で50mg投与量が増えるケースもあります。生理学的変動など誤差範囲かもしれず対応に悩んでおります。

A.血清Cr値の変動による腎機能への影響ですよね。患者さんの情報が十分ではないのでどうお答えしてよいのかわからないのですが、がん患者であれば、患者さんにはよっては衰弱してきて筋肉量が減少しそれによって推算腎機能が低下することが考えられます。それと腎機能が保たれた患者では血清Cr値のちょっとした変動によってeGFR値の影響しやすいです(腎機能が悪くなればなるほどゼロに集約されるので変動幅は小さくなりますが腎機能の良い方は変動幅が大きくなります)。

またCDK4/6阻害剤(パルボシクリブ、アベマシクリブなど)とカルボプラチンを併用することは、乳がんの治療(主に転移・再発乳がん)において選択肢の一つとしてありますよね。CDK4/6阻害剤はCrの尿細管分泌を阻害して血清Cr値が20%程度上昇して腎機能が悪化したように見えることがありますが、これは偽性腎障害でeGFRは低下しますので、CDK4/6阻害剤を中止するとeGFRが上がったように見えることがあります。ほかにも原因は考えられると思いますが、情報不足だと推測しかできないですね。


Calvert式は体格別用量なので、標準化eGFRを使う論文があった……ブログで回答します」と言ってしまいましたので訂正します。

正しくは、カルボプラチンは「体格別(BSAや体重)用量」ではなく、Calvert式で目標AUCと腎機能(GFR)に基づき総量mgで投与しますので固定用量です。したがって標準化eGFRは用いません。

式:Dose (mg) = 目標AUC × (GFR + 25) だから固定用量になります。GFRには標準化eGFRは用いません。

使うとすれば個別eGFRまたは(CCr+0.2)を用いた実測CCr(安藤雄一先生の論文)または(CCr+0.2)を用いた推算CCrを用います。

米国ではJaffe法で測っていた時代は副作用が起こっていなかったのに、2011年以降、IDMS traceableになって血小板減少症が増えたといわれています。日本ではもともと正確に測定する酵素法が、2000年以降一般的になったのでGFRの1.2~1.3倍になるため、血小板減少が米国よりも起こりやすいといわれていました。メーカーが「GFR一般的に推算CCrで代用できます」とパンフレットに書いたため、腎機能が高く推算されるとともに投与量が増えたため、血小板減少症が増えたのではないかと思います。

2025年11月29日 X投稿 閲覧者26,643人

 SGLT2阻害薬はもともと尿糖排泄を促すことによる血糖降下薬であった。血糖降下作用はそれほど強力ではないし、脱水(4.5%)、性器感染(高齢女性で多く3.8%)、糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病患者のみで起こり0.22%)も起こしやすい(図1)のでDPP4阻害薬などと比べて決して、使いやすい薬ではない。

 

 

しかし様々な大規模研究によって透析導入をほぼ40%回避でき、心不全入院・心血管合併症発症をほぼ30%低下させ、全死亡も有意に改善した、今まで予後を改善する治療薬のなかったHFpEF(左室肥大による拡張不全が原因の患者が多いと言われている)も有意に改善した。駆出率に関らず効果を示す薬物がこれまでにあったであろうか?しかも投与初期には利尿作用が認められ、脱水から急性腎障害が増えるという従来薬の常識を覆し、逆に急性腎障害を25%も発症を抑制してくれ(図1)、RAS阻害薬やMRAとの併用による高カリウム血症も防いでくれる。ただし日本の高齢者は痩せがちであるため、投与したくてもできない患者が一定数いることは確かだ(図2)。

 

 

でもそれら以外の投与可能な患者さんには投与してほしい。ようやく糖尿病での処方率が上がってきたと聞くが、CKD/DKD、心不全の適応がありながら投与を躊躇している医療者が多いのは残念、というよりこれだけエビデンスのそろった薬を投与しないのはイナーシャ(怠惰)というべきではないだろうか(図2)。日本腎臓病薬物療法学会ではSGLT2阻害薬の効果、副作用とその防止法、シックデイ対策などを若手薬剤師によるワーキンググループが作成した(図3、図4)。これらの内容は秀逸で極めて使いやすいので患者さんの理解度だけでなく、医療者の理解度もアップするはず。学会会員でなくても無料でダウンロード可能だ。平田もアドバイザーとして参加さえていただき、日本腎臓学会の先生方にも査読していただいたのでぜひ活用してほしい。

SGLT2阻害薬患者指導箋(JSNP版) | 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会

 

 

 

 4月16日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(中級者編)」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。


平田の薬剤師塾には参加されていますか?なにかの時に頼ると助けてくれますよ。 この文章は私の大事な友人でもあり師匠と呼べる方の最後のメッセージでした。 平田先生にどうしても伝えたく挙げさせていただきました。 今日も熱い思いを込めた講座ありがとうございました。


腎機能評価は患者と治療薬が何かを把握した上でメリハリをもって、という最後の言葉がすごくしっくりきました。この話を聞けただけでも参加してよかったです。


初級、中級と講義を受けさせて頂き、腎機能評価に対する理解が深まりました。ありがとうございました。


腎機能の評価方法とその精度をどこまで求めるかに関して学べた。腎機能の正確な評価が難しいので調節を先生にお願いしに行くことはできないと言われることもあったがどんどん先生に相談しに行こうと思います。


S-1は、体表面積で区切られた段階的な用量設定になっています。 この場合、個別化eGFR(mL/min)で投与設計を考えると、体格を二重に補正することになるのではないかと少し気になっています いつも勉強になる講演ありがとうございます


前回に引き続き、症例や患者の状態により個別化gGFRだけでなく必要な検査値があることが分かりましたが、質問で理解が追い付いていないことが多く、もう一度録画配信にて確認したいと思います。恐れ入りますが、録画配信は最後の質問まで配信して頂けますでしょうか。


タリージェは酵素法、ヤッフェ混ざってるんですね!添付文書の腎機能でみればいいと思ってしまってました。


初級編から参加したかったです。 ありがとうございました


腎機能の考え方について理解が足りていない部分が多くありました。講演を通して知識及び考え方を得ることができました。貴重なご講演をいただきありがとうございました。


難し面もありましたが大変勉強になりました。 ありがとうございます。


勉強になりました


薬物投与量設計には個別eGFR一択なんだと改めて理解できました。ブログの更新も楽しみにしております。

2026年6月11日(木)開催の平田の薬剤師塾「特別講座」のお知らせです。

◆第72回「平田の薬剤師塾」特別講座のテーマは
「はじめての学会発表・論文作成ゼミナール」です。

 できれば5月の薬剤師塾に参加した人で顔出しOKの方、この1~2年以内に学会発表や論文作成を目指す方を対象に、少人数制の「学会発表・論文作成ゼミナール」を開催したいと思います。皆さんが持っている研究テーマ案やデータ、スライドをより洗練されたものにするにはどうすればよいでしょうか?また、学会発表した内容が論文や英語論文になるかどうかの見分け方についても考えてみましょう。このディスカッションの成否は参加者の熱意にかかっています。参加費は無料です。

 論文作成には最低限の統計や動態などの知識は必要です。簡単にあきらめかけている人はいませんか?あるいは、薬局薬剤師、新人薬剤師、学生、学会発表未体験者で、今は研究テーマがないけれど、皆さんの話を聞いて参考にしたいという方も、聴講者として参加できます。

お申し込みは こちら から
【申込期限:講演会開始直前まで】
【定員:20名】

※お申し込み時のお願い
当日は、頂いた質問を交えながら進行する予定です。

先生方の悩みを解決できるよう、お申し込みの際に普段抱えていることやここが聞きたい!というポイントなど、事前質問の入力にご協力いただけますと幸いです。
※録画とオンデマンド配信はありません。

 

(クリックするとPDFが表示されます。)

 

 座長 吉田より 
学会発表や論文作成をやってみたいけど、こんな悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか。
 ・一歩踏み出せない、忙しくて手を出せない
 ・指導者や相談できる人がいない
 ・何から始めればいいか分からない
私もその一人で、行動に移せずにいます。でも変わりたい!
 
今回の薬剤師塾はそんな方も含め、「〇〇で行き詰まっている」など具体的な課題をお持ちの方まで、先生方のアイデアが学会発表・論文などの形になり誰かの役に立つ。そのためのヒントを見つける無料特別版です。
 ・少人数制、講義ではなく対話形式
 ・平田先生や他施設の先生方とディスカッション
 ・発表や論文内容をより洗練させるための手がかりを得る
 
このような形式だからこそ、 参加者一人ひとりの具体的な悩み解消に近づけるのではと思います
顔出しや発言はハードルが高く感じるかもしれませんが、少人数なので意外と大丈夫です。「こんなこと相談していいのかな…」なんて心配せずに、気軽に発言して大丈夫です。小さな疑問も対話の種ですので、平田先生も喜びます。
右も左も分からない状態でも、大歓迎です。私も5月の薬剤師塾を受講して、共に勉強してゆきます。
 
明日からのモチベーションに繋がる会を、参加者の先生方と創りたいです。去年の反省点を生かして今年も座長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。

4月9日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(初心者編)」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.eGFR30 ml/min/1.732の禁忌設定の意味合いってCKDステージ4.5に該当するような患者は禁忌、だから個別化で考える必要はなく標準化でいいと理解してますがどうでしょう?メトホルミンの書き方的に投与量設計の意味合いはうすくないですか?ツイミーグだと解釈難しいですが……良くない考え方でしょうか?

A.メトホルミンは添付文書上では30mL/min/1.73m2以上であれば1日750mg投与できますよね。30未満だと投与禁忌なのです。もしもメトホルミンの投与量が30mg/kgなどの体格用量で示されていれば、二重補正を避けるために標準化eGFRを使うべきです。ただし添付文書の多くが固定用量、メトホルミンの場合も、腎機能がよければ1500mg/日(最大2,250mg/日)という固定用量になっています。

極端な例で申し訳ないのですが、こういうこともありうるからということで理解していただきたいのですが、35kgの小柄な女性と150kgの幕内力士の2人とも標準化eGFRが35mL/min/1.73m2以上あったので、どちらにも1日750mg投与しますか?悩みますよね。だってもし35kgの女性が添付文書上、投与可能になっているけど乳酸アシドーシスなどの副作用リスクは明らかに幕内力士に比べて高くなりますよね。添付文書に標準化eGFRを使って投与設計しようとしたのはFDAの2011~2020年までの黒歴史です。2019年のメトグルコの添付文書改訂(現在の添付文書)も間違いだったのに日本でも誰も何も指摘しなかったというのは恥ずべきことだと思っています。でもいいです。今後に治験される薬物の添付文書は薬物投与設計に使うべき個別化eGFRになると信じていますから。


Q.メトホルミン、20切っても処方有りえますか?

A.主治医の判断次第でありうると思います。ただしメトホルミン、安くてよい薬ですが、SGLT2阻害薬やフィネレノンほど、生命予後改善効果・心血管疾患の予防効果はそれほど期待できないので、eGFR20を切ってでも処方するメリットはあまりないし、DKDは進行性の疾患ですので、腎機能がよくなることはないことを考えるとあまり投与継続には賛成できません。


Q.メトホルミンで質問です。個別eGFRで明らかに減量や禁忌患者に、疑義照会しても腎内科医は減量や中止しません。それは、ある程度過量投与になっても大丈夫なのかなと考察してます。平田先生の意見をお聞かせ下さい。

A.前問の回答と同じで、主治医の判断次第でありうると思います。

現在の腎内科医はあまり腎機能の評価について詳しくありません。日本人向けeGFR推算式を実質上作成した堀尾学先生の論文は2010年前後に多く発行されていますが、今はそれから15年も過ぎてしまっていますからあまり興味がないのかなと思っています。2020年、2024年のFDAの声明(今後は薬物投与設計には個別eGFRを用いること)に日本の腎臓内科医の先生方が少しでも興味を持ってくれることを切に望んでいます。


Q.シスプラチンはml/min/1.73㎡を使うということでしょうか?同様の質問で「シスプラチンなどの体格で投与量が決まる薬剤に対して、ml/min/1.73㎡を使うほうがよいのが、わからなくて教えてほしいです。」というのもありました。

A.その通りです。体格用量になっているシスプラチンを使う場合の腎機能は身長・体重が考慮されていない標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を用います。

シスプラチンは代表的な殺細胞性抗がん薬でハイリスク薬です。固定用量にするのは危なすぎるので、添付文書には病態によってシスプラチンとして15~90mg/m2(体表面積)の体格用量になっています。例えば「睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌にはシスプラチンとして15~20mg/m2(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬」となっています。

ということは用量設定中に身長・体重によって計算した体表面積が組み込まれていますので、腎機能として体表面積が組み込まれた個別eGFR(mL/min)を使うと二重補正になってしまい、小柄な人はさらに低用量になって効かなくなり、大柄な人はさらに高用量になって有害反応が起こってしまいます。

例題をやってみましょう。
mg/m2で表記されたCDDP(シスプラチン)の個別腎機能とBSAによる投与量設定

【 例 題 】

シスプラチンの標準1回量を20mg/m2と仮定します(100%量)。この方法では体表面積を算出する必要があるため、身長・体重が必要になります。Kintzelらによると1)、以下のようなシスプラチンの腎機能に応じた減量基準が推奨されています。

腎機能正常(CCr>60mL/min): 100%(20mg/m2を1日1回投与)
CCr 46 to 60 mL/min: 75%に減量
CCr 31 to 45 mL/min: 50% に減量
CCr <30 mL/min: 禁忌(他の薬物の投与を考慮する)

Aさん: 60歳、身長150cm、体重40kgで日本腎臓病薬物療法学会HPを利用すると体表面積が1.30m2、血清Cr値が0.9mg/dLの女性症例。日本腎臓病薬物療法学会HPを利用すると体表面積が1.30m2、血清Cr値が0.9mg/dLの女性症例。標準化eGFR 49.68mL/min/1.73m2であった。

Bさん:60歳、身長170cm、体重65kgで体表面積が血清Cr 0.8mg/dLの男性症例。日本腎臓病薬物療法学会HPを利用すると標準化eGFR 76.47mL/min/1.73m2であった。

Aさん、Bさんのシスプラチンの至適投与量を求めよ。

 

【 解 答 】
Aさん:標準化eGFR 49.68mL/min/1.73m2なので、75%に減量して体表面積が1.30m2であるため、20mg/m2×0.75×1.3m2=19.5mg/日がCさんの至適投与量になります。
Bさん:標準化eGFR 76.47mL/min/1.73m2で腎機能は正常です。腎機能正常者の用量20mg/m2で体表面積が1.69m2であるため、20mg/m2×1.69=33.8mg/日が至適投薬量となります。

ここでやりがちなAさんの間違った解答を紹介します。基本は体格で2重補正しないことです。体格の大きな人に2重補正すると過大投与、体格の小さな人に2重補正すると過小投与になってしまいます。

Aさん:60歳、身長150cm、体重40kgで体表面積が1.30m2、血清Cr値が0.9mg/dLの女性症例では標準化eGFR49.68mL/min/1.73m2となりますが、シスプラチンを投与する場合、個別eGFRに直すとeGFR 49.68mL/min×1.3/1.73=37.33mL/minになり、Kintzelらの腎機能別投与によると「CCrが31-45mL/minでは50%に減量することになっているため、10mg/m2投与が推奨されます。そのため、1.3m2の体表面積の患者に投与する場合、1.3倍して13mg/日投与すればよいことになります。

ここで算出された個別eGFR=37.33mL/minには体表面積1.3m2をすでに用いて身長・体格が考慮されています。このような小柄な症例にさらに1.3m2を用いて用量設定することは2重補正による過小投与になります。

 

引用文献
1)Kintzel PE: Anticancer drug-induced kidney disorders. Drug Saf 24: 19-38, 2001


Q.脱水の保険薬局での指標はBUN/Cr比の推移をみるなどなにか考え方がありましたらご教示頂けますと幸いです。

A.ツルゴール低下(皮膚を引っ張った時の戻りが悪い。皮膚の張りがない)、口腔・腋窩の乾燥、体重減少、頻脈・血圧低下、尿量減少・濃縮尿などがあります。検査値としてはBUN/Cr比>20のほかに、ヘマトクリット値、血清アルブミン濃度、総蛋白などが脱水による血液濃縮で上昇します。爪毛細血管再充満時間≧2秒というユニークな脱水鑑別方法もあります。


Q.最近病院へ転職して、初めてこんなにも腎機能が奥深いことを知りました。今日のが基礎編というのは(不勉強で申し訳ありませんが)正直かなり難しかったです。もっと勉強したい!と思いました。今日は貴重なお時間ありがとうございました。(もっともーっと基礎編があったらうれしいです!と言わせてください。)

何か初学者が勉強するのに良い資料やテキスト、教科書などはありますでしょうか?大学を卒業してかなり経ってしまい基礎がそもそも抜けきっているので、なにかベースとなるものがあれば教えていただきたいです。

A.何を知りたいかによります。興味のない分野、自分で経験をしていないことを無理して勉強しても身につきませんから。腎機能の見方について興味があるのなら、今回の内海先生のスライド、そして、ユーザー登録していただけるとブログ「平田の薬剤師塾」の「腎機能評価の10の鉄則」が無料で読めますし印刷できます。腎機能の見方についてはこれが一番、分かりやすく詳しいと思います。そして2019年11月に作成されたまま、改訂されていませんが、言っていることに大きな間違いはありません。


Q.薬物投与量に関しては個別化eGFRをということでしたが、以前の講義で脱水の時は一時的に腎機能が悪化しているように見えるが脱水が改善されたら数値も戻るとおっしゃっていた気がして…患者さんに直近の検査値を聞いてそれを元に先生に疑義すると思うのですが、その数値がどういった背景のものなのかって薬局薬剤師だと判断が難しいのですが単純に個別化eGFRの数値だけで投与量の提案をしてしまってよいのでしょうか?

A.単純に個別化eGFRの数値だけで投与量の提案をしてしまってよいとまでは言えません。例えばいつもはeGFR>50mL/minだった高齢者が、夏季の猛暑による発汗、飲水不足によって明らかに脱水になってしまってeGFRが29mL/minになったとしますね。でも採血後、輸液をして結構元気になって患者さん自身が薬局に来られたらどうでしょう?

疑義紹介しますか?「eGFR30未満ならメトホルミン禁忌」という疑義紹介は僕の嫌いなデジタル薬剤師の考え方です。多分、医師も「もういい加減にして!」と思っていることでしょう。患者さんを点でしか見ていないからです。「夏季、猛暑、発汗、飲水不足、輸液、症状改善」という線でみて、それでも投与すると危ないのであれば疑義紹介したいものです。そういう意味で患者さんから様々な情報を聞き出すのは重要なコミュニケーションだと思います。


Q.身長140センチ、体重30kgの女性がeGFR:60(ml /min /1.73㎡)で、個別化eGFR:38(ml /min )の場合、CKD診断基準であるeGFRがCKDでなく尿蛋白陰性で個別化eGFRが60以下であっても、この女性の腎機能は正常で病院を受診する必要はありませんと女性にお伝えしても良いのでしょうか。

A.前問と同様、ですが、eGFRが60あればCKDじゃないというのは少しデジタル的ですね。この方の年齢にもよります。80歳でeGFRが60にまでやや低下したのであれば、普通に加齢に伴い腎機能が低下しているだけで、治療する必要はない可能性が高いと思います。でも線でみて(臨床経過を観察して)みると、患者さんの病態に悪影響する何かが見つかれば、受診勧告すればよいと思います。


Q.糸球体が弱る疾患にかかっている際の腎機能評価を行う際に気をつけなければならない事はありますでしょうか。

A.糸球体が弱る疾患は慢性糸球体腎炎だけでなく、糖尿病関連腎臓病、高血圧による腎硬化症などがありますが、それぞれ治療方針は異なりますし、使う薬物も異なります。薬物投与に関わる腎機能評価も薬によって異なります。

ただし腎硬化症以外ではアルブミン尿・蛋白尿が増え、それが持続すると加速度的にGFRを低下させることがあります。またネフローゼ症候群などによる低アルブミン血症や糖尿病患者ではクレアチニンの尿細管分泌が増加し、腎機能を過大評価してしまうことがあります。

 

4月9日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(初心者編)」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.シスタチンCなど有用な指標を使うべきと考えておりますが、添付文書上の指標がCCrや標準化eGFRの方で用量設定されている以上、保険調剤する場合に訴訟などの問題の観点から事実上介入が難しい現状があります。打開策などありましたらご教示頂けませんでしょうか?

A.標準化eGFRが32mL/min/1.73m2の人が2人いて、1人が35kgの90歳女性、もう1人が2型糖尿病で150kgの力士だったら、同じ用量にしますか?僕だったら、訴訟が起こってもいいから35kgの90歳女性にはメトホルミンの投与をやめるよう介入します。だって個別eGFRは22.9mL/min、推算CCrは17.22mL/minですから。僕の考え方は添付文書通りじゃないから間違いでしょうか?こんな極端な例は非常に少ないでしょうががありうる話ですよね。

寝たきりの高齢者、つまりサルコペニアで腎排泄性ハイリスク薬(バンコマイシン、バラシクロビルなど)がeGFRや推算CCrが正常値以上ということで常用量投与されていたらなら、僕だったらシスタチンCを測定してもらってからでないと投与はさせません。このように介入しないと患者さんが危険にさらされることがほぼ予測できる時には介入すべきです(それぞれテイコプラニン、アメナメビルに変更というより楽な介入方法だと思います)。CCrや標準化eGFRは添付文書通りの測定法であれば、いずれも健常者の1.5倍以上(150~200mL/min)あれば、常用量投与を認めますか?このデータは腎機能がよいのではなく、明らかに筋肉量が少ないことを表しているだけなのですよ。介入しないで有害反応を起こした場合、ほぼ100%、医師の責任になりますよね。薬剤師の責任にならなければいいのでしょうか?
それだったら薬剤師って必要ないと思いませんか?
患者さんのための薬剤師になっていないと思いませんか?
ごめんなさいね、極端な例を出して。でもサルコペニアの腎機能過大評価はふつうに起こっていますので。


Q.シスタチンCを使うにあたって測定費用がクレアチニンに比べ高いのと、3か月に1回請求とれないのが問題としてあがります。シスタチンCが使いやすくなるためにはどういった活動をすればいいんでしょうか?

A.シスタチンCを測定してくれるのはほぼ腎臓内科の先生たちです。他の科の先生方は医師国家試験にも出題されていますし、もちろんシスタチンCのことは知っています。しかし薬剤師が医師に「eGFRが過大評価されているみたいなので、シスタチンCを測定してもらえませんか?」と言っても「シスタチンCってなに?」と問い返されることがよくあると聞きます。医師歴の長い開業医の先生方なのかもしれませんが……。

シスタチンCって1回1,000円以上する高い検査費ですし、いまだに3か月に1回しか測定できません。

一方、米国のNKF/ASNタスクフォースは2020年のJASN誌(PMID: 34563581)、2021年のAJKD誌(PMID: 34556489)に「シスタチンCの確認検査への拡大(routine use)」を強く推奨(Strong Recommendation)しました。シスタチンCの日常的、かつタイムリーな確認検査の迅速実施を呼びかけ、学会・実臨床で採用が進むべき方針を打ち出しました。

それに対して日本の現状はどうでしょうか?日本ではシスタチンCの測定を推進しようという機運すら感じられませんし、薬剤師は何とかラウンドアップ法などで逃げており、シスタチンCの普及は恐ろしいほど遅れています。薬剤師にできることは明らかに筋肉量が異常なため血清Cr値によるeGFRが信頼できないときにはシスタチンCを測定してもらうよう主治医にお願いしましょう。そういう積み重ねによってシスタチンCが普通に測られるようになれば検査費用も安くなり、3か月に1回の測定が毎月、あるいはもっと頻繁に測定できる時代になるはずです。スウェーデンでは日常診療でCysCを日常的に併用しており、同日測定15.8万人の解析が可能なほど比較的しています。


Q.日本腎臓病薬物療法学会のHPの個別化クレアチニンクリアランスの計算を主に利用しております。
DM薬は標準化eGFRが多くて、あとの添付文書は大体個別化クレアチニンに基づいて問題ないと把握しておりますが、標準化クレアチニンクリアランスを使う場面は何かありますか?思いつかないです。
たまにクレアチニンが基準に入ることあっても、標準化クレアチニンクリアランス使う添付文書に出会ったことないです……。

A.標準化クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2)を使う場面は現在は全くないと思います。これは日本においてeGFR(推定糸球体濾過量)の算出にMDRD式(Modification of Diet in Renal Disease)が実質的に使われていたのは、2004年くらいから2008年度初頭以降は現在のeGFRがずっと使われています。標準化CCr(mL/min/1.73m2)はeGFRができる前に腎臓病の進行度を見るために使っていたものです。標準化eGFR(mL/min/1.73m2)ができてから、診断指標としてのeGFRは2004年以降、ずっと主役になっています。標準化CCr(mL/min/1.73m2)を使う人はもういないはずです。


Q.薬局薬剤師だと、肥満であっても添文がCCr表記なら現体重と理想体重の2個でCCr数値計算して医師に判断、で問題ないと思いますが、病院の薬剤師の方とかだと、薬剤師が薬剤設計の裁量もってたりするのでしょうか?最終判断を医師に投げてしまうのは薬剤師として無責任なのでしょうか?誤差がある式である以上医師が判断すべきと思いますが…。薬局薬剤師なので意見求められることもなく数値だけ出して医師に投げてしまっています。ただ意見求められた時に何も言えないのは専門家として情けないので勉強するべきではありますね。

A.著明な肥満患者なので推算CCrが過大評価され、薬用量が過量投与になっていると危惧した場合には病院薬剤師、薬局薬剤師に関わらず、医師に問い合わせるべきだと思います。その時に薬によっては補正体重か理想体重を用いるて、腎機能がどのように推算されるかということを報告するとよいと思います。

病院の薬剤師はTDM対象薬やある種の抗菌薬の投与設計だと薬剤師が薬剤設計を主導することはありますし、実力のある薬剤師がいる病院では外来でも薬剤師がついて薬物投与時に提言しているところもあります。

理想体重(男性; kg)=50+{2.3×(身長−152.4)}/2.54

理想体重(女性; kg)=45.5+{2.3×(身長−152.4)}/2.54

補正体重(kg)= 理想体重+[0.4×(実測体重-理想体重)]


Q.尿細管分泌する薬剤のクリアランスは理論上CCrと相関しそうな気がしますが、投与設計には個別化eGFRを使用すべきでしょうか。メトホルミンやプラミペキソールなど

A.糸球体ろ過+尿細管分泌=薬物の腎クリアランス になりますので、薬物の腎クリアランスが分かれば投与設計はもっと良くなるはずですが、尿細管分泌・再吸収機能を正確に調べるのは研究的には行われていますが、実臨床上のデータによると一貫せず、相関は弱~中等度に留まります。薬物の分泌経路(OAT1/3 vs OCT2/MATE)や病態(CKD、SIRS/ARC)で乖離しやすいためと考えられています。

メトホルミンは腎排泄性薬物で、OCT2/MATEの基質なので腎クリアランス(CLr)は糸球体濾過(GFR)を大きく上回るため、尿細管分泌の寄与が支配的です。健常~腎機能良好ではCLrが約510 mL/minと報告され(PMID: 21241070)、プラミペキソールもOCT2やMATE1/2‑Kの基質になるので腎排泄のうち分泌の寄与が大きい薬ですが何%の寄与率かまでは分かっていません。

ただしシメチジンでクレアチニン分泌を抑えるとCCrはGFRに近づき、推算の精度が改善する報告があり、CCrが分泌に強く依存していることを裏づけます。

理論上はCCrの方がGFRより分泌成分を共有するため相関しやすいはずですが、現実には輸送体依存性・病態・相互作用で崩れやすいので、分泌優位薬の用量調整は、CCr/eGFRを初期の目安にしつつ、必要に応じてTDMで補強するのが安全だと思います。実臨床で実測GFRの測定も無理でしょうから、これらの試みは研究的になります。ぜひ、この疑問を研究テーマにして解決して論文を書いてください。

 

 

4月9日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(初心者編)」につきまして、ご質問を多数いただきましたので、回答いたします。
今回はこれまでにない数のご質問をいただいていることから、本日より3日間にわたり、全3回に分けて、各回16時に公開予定です。


Q.ステロイド使用患者さんてシスタチンCの値がブレると思いますが、サルコペニアでステロイド使っている方は何を指標にされますか?

A.高用量ステロイドの投与により、血清シスタチンC値は上昇し、腎機能を過小評価することが報告されて

います。またステロイドを投与すると筋肉量が減り脂肪が増えます(だから糖質コルチコイドという)が、。そうなると、クレアチニンによる推算式も使いにくくなります。このような時には実測GFRの測定がベストですが現実的ではありません。(日本人のeGFRcr + 日本人のeGFRcys)/ 2で判断するか、実測CCrを測定するとよい思います。実測CCr×0.715でGFRとして評価できます。


Q.体表面積で補正していたら体重の影響は補正されていると考えて良いでしょうか?

A.ことばの使い方がむつかしいのですが、体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2)の計算には年齢、血清Cr値、性別しか使われていません。ということは体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2)には体重で補正はされていないということです。体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m2)には「補正」と言ってるのに体重で補正はされていないというのはとてもややこしいですね。体表面積補正eGFR、体表面積未補正eGFRとすると聞き間違え、書き間違いが多くなるので、標準化eGFR、個別eGFRと日腎薬で定義しました。そう、これらは僕たちの作った造語なのです。


Q.知識不足で申し訳ございません。サルコペニアは体表面積などから判断するのでしょうか?

A.サルコペニア(筋肉減少症)の診断は、主に「AWGS 2019(アジア・サルコペニア・ワーキンググループ)」の基準に基づき、①筋肉量(低下)+②筋力(握力)または③身体機能(歩行速度)の低下で判定されます。男性28kg未満/女性18kg未満の握力や、歩行速度1.0m/秒以下の低下、および骨格筋指数(SMI)の低値が指標となります。長期臥床患者・車いすの必要な方、要介護度の高い方はほぼほぼサルコペニアと思ってよいでしょう。


Q.高齢患者さんでCr0.6㎎/dlで、医師から腎機能がいいからと腎排泄型薬剤が通常量処方されることを経験しますが、その時はコッククロフト式でクリアランスを計算して、医師に提案するのがよいでしょうか?

A.腎排泄型薬剤がリスクの高い薬であれば血清Cr値での腎機能は信用できません。推算CCrは加齢の影響を受けやすいのでで90歳ならかなり低い値になります。その腎排泄型薬剤が非常にリスクの高い薬かどうかによります。例えば、ダビガトランを35kgの高齢女性に投与する際、血清Cr値が0.6㎎/dLだったら推算CCrは34.43mL/minとなります。ダビガトランは30mL/min未満なら投与禁忌ですが、僕だったら他のDOACに変更してもらいます。ですから腎排泄型薬剤がハイリスク薬であるかどうかを一番重視します。


Q.肥満患者さんの場合、理想体重や補正体重を使用してCG式に代入しているのですが、eGFRの1.73m2をとるときの体表面積は実体重でよろしいですか?それとも、そちらも補正した方がよろしいですか?上手く説明できずに申し訳ございません。

A.実体重で構いません。個別eGFRがすでに身長・体重で計算された体表面積で補正されていますから、理想体重・補正体重で補正すると二重補正になります。二重補正は大きな人の過大補正、小さな方の過小補正の原因になりますのでやってはいけません。


Q.CG式は肥満患者さんで体重補正が必要だと思うのですが、個別化eGFRと相関するのですか?個別化eGFRは体重補正しないでよろしいですか?

話は変わるのですが、医師に聞かれたときにどう答えようといつも思うのですが、先生方はどのようにわかりやすく答えていますか?本当は自分で考えなければならないのですが、考えがまとまらずで…

A.CCrは通常、GFRの120~130%の値になりますので、個別化eGFRと相関します。個別化eGFRには身長・体重を含んでいるため、さらに体重星をしてしまうと二重補正になるので、やりません。

医師には分かりやすく答えてあげてください。答え方は薬剤師によって一定にする必要はなく個性があったほうがいいとお見ます。様々な経験を積むと、分かりやすく答えられるようになると思います。


Q.薬物投与設計で、個別化eGFRと個別化eCCLのどちらかを参考にするかは、専門家でも意見が分かれると過去の平田先生の講演で聞きました。その点、詳しく教えていただいです。アンチ個別eGFRの意見を知りたいです。

A.初期段階での情報共有の徹底が不十分だったために様々な解釈をする方が出てきて、意見に分かれつつあります。でも意見は持っていたら、それなりに確認するための検討をし、論文に残していただきたいのですが、自分なりの理論で意見を言っている方が多すぎます。基本は2010年前後に書かれた堀尾勝先生の論文が英語も日本語も多くあり、一点の曇りもなく素晴らしい内容になっています。なにせ日本人向けeGFR推算式を作った方ですから。

「専門家でも意見が分かれる」内容を詳しく書くといろいろな考え方・解釈方法を持つ人を非難することになりますので、ご勘弁ください。僕は堀尾勝先生と何度も議論し、質問もさせてもらっていましたし、解決できない疑問点については、かなりの数の論文を書いていますので、2009年から今までずっと考え方はぶれていないつもりです。


Q.ラウンドアップ法があったかと思うのですが、筋肉ムキムキの人の腎機能推定の考え方がわかりません。

A.筋肉ムキムキの人の腎機能推定は教科書的にはシスタチンCを使うとガイドラインなどにも書かれていますが、引用文献はありません。熊本でボディビルダー、熊大ラグビー部の方を対象にやりましたが、シスタチンCと実測値との相関性は低かったです。


Q.最近の薬は、酵素法でCrを測定しているかどうかは、どのように判断すればよいでしょうか?

A.日本は2000年以降から酵素法が主流になり、現在、すべて酵素法になっていると思います。しかし、薬の治験時の腎機能となると、何法で測定しているかについてはインタビューフォームにも載っていませんし、メーカーに聞いてみるしかありません。おそらくメーカーは「分からなない」と答えると思います。


※アンケート内に以下の質問がございましたので、こちらで回答させていただきます。

Q.最近、講演後のオンデマンド配信のメールが届かなくなってしまったのですが、オンデマンド配信は行われているのでしょうか?

A.イベントペイから一斉送信しているメールに関し、正常に送信されたかどうかは調査できない仕様となっております。
恐れ入りますが、講演後1週間経ってもオンデマンド配信および配布資料が送付されない場合は個別にお問い合わせください。
【お問合せ】E-mail:info@hiratajuku.jp(平田の薬剤師塾 事務局)

 4月9日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(初心者編)」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。


内海先生のお話基礎から丁寧に解説頂き大変わかりやすかったです。ありがとうございました。


最近病院へ転職して、初めてこんなにも腎機能が奥深いことを知りました。今日のが基礎編というのは(不勉強で申し訳ありませんが)正直かなり難しかったです。もっと勉強したい!と思いました。今日は貴重なお時間ありがとうございました。(もっともーっと基礎編があったらうれしいです!と言わせてください。)


初めて参加しました。 分かりやすく奥が深くて次も楽しみにしています。


内海先生のお話が、初心者でもわかりやすく、ゆっくり丁寧に解説頂いたのでためになりました。ありがとうございました。


勉強不足で申し訳ないのですが、GFRと表現された場合は個別化GFRと解釈してよろしかったのでしょうか


患者さんにはいろいろな背景の方がいらっしゃるので、何で腎機能を評価するのが最もふさわしいのか、考えながら業務にあたりたいと思いました。本日はありがとうございました。


これまで腎機能の値の違いが明確にわからないまま何となく日々の業務に臨んでいました。 今日学んだ事で、明日から添付文書をもっと楽しく読みこめると思います。ありがとうございました。


ある程度薬剤師全員が知っておかないといけない内容だと感じた。病院薬剤師や薬局薬剤師が現場でどの指標を使っているのか様々なのが問題だと思われました


腎機能評価はだんだん慣れてきたけれどもちょっと雑になっていたかもと反省できた。評価方法を見直そうと思います。


大変勉強になりました


本日は平田先生、内海先生貴重なご講演を有難うございました。個別化eGFRの意味を改めて実感しました。ポケットブックを見ながら再度勉強します。シスタチンCの測定を医師へ相談しようと思います。


本日か貴重な機会をいただきありがとうございました。 今後の業務に今回得た知識を活用し、処方提案等を行っていきたいと考えます。


分かりやすいご講演で、大変勉強になりました。アーカイブもとても助かります。お忙しい中、ありがとうございました。


実務で迷った時にはやはり自分がちゃんと理解していなかったからだと反省しています いつもありがとうございます


職場で後輩がCcrを点で見て(経過でなく一回の採血検査という意味の点です)薬の減量を医師に提案していて、なんとなくモヤモヤしながらも自分自身詳しいわけではないのでうまく説明が出来な かったのですが、今日の講義を聞いて理解が深まりました。


とてもよかったです


平田先生の新しい書籍も購入させていただきました。今回の研修もとても勉強になりました。 弊社でも薬剤師が適切な腎機能で薬物投与設計ができるように、学んだことを活かしていきたいです。


腎機能推算式の本当のお話しを聞けて大変勉強になりました


自分の勉強不足で1回では理解できないところが多かったです。オンデマンドで復習し、理解して来週の講演会を受講したいと思います。


eGFRが低下している患者さんの投与量をチェックする際に『腎機能別薬物投与量』の本を利用しています。サルコペニアの患者さんの腎機能評価にシスタチンCを使っていこうとありましたが、その本にはシスタチンC値と投与量の表記がなかったように思います。 シスタチンCで腎機能悪化がわかったとしても、どれだけ減量すればいいか、中止すべきか、医師への提案も難しいところです。


腎機能評価と薬物投与量設計の再確認と、今までの歴史も深堀できました。定期的に毎年、同様の講演をしていただけると、新前・中堅・ベテラン薬剤師、全ての薬剤師に有益な学びになります。今後ともよろしくお願いいたします


シスタチンCを使いやすくするために、啓蒙活動していきます。 ありがとうございました。


具体的な検査値、処方例から腎機能評価、用量調整をする事例を見たいです。ハイリスク薬や抗生剤の調整など。


これからはeGFR(?/min)で投与量を考えるということがよくわかりました。サルコペニアの方は、シスタチンCをはかるように働きかけていきたいと思います。


ルーチン的に添付文章に記載の腎機能を用いて薬物設計していたため、CCrを個別eiGFRに直すと聞いてびっくりしました。 自施設でも今回の勉強会の内容を取り入れて精進していきたいと思います。 ありがとうございました。


もっと疑う、突っ込みを入れる、が自分にとって必要と感じた


CCrを基本に腎機能評価を行なっていました。個別化eGFRとシスタチンCの2つががこれからの評価に用いるべきだ、という平田先生のメッセージを強く感じました。常にアップデートしている姿勢を私も見習わなければならないと思い反省いたしました。


大変勉強になりました。二重補正のところは以前から気になっていて、いまいち理解で来ていないのでもう少し詳しく聞きたかったです。


大変勉強になりました。ありがとうございました。


以前より平田先生のご講義を聞かせて頂き、以前の病院では慢性期に入院される患者には入院時にシステチンCの測定をルーチンにして頂きました。なかなか医師や病院を説得するのに時間を費やしましたが、今日のご講演を聞いてもやはりやってきてよかったと思いました。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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