2026年3月22日 X投稿 閲覧者4,901人

 SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンの衝撃的な試験、EMPA-REG OUTCOME試験では腎保護作用に関しては用量依存性がない。つまり10mg/日でも25mg/日でも同じ。CANVAS試験でも100mgと300mgで主要評価項目に差がなかった。じゃあ低用量でいいよねということになったんだけれども、なんで?

 エンパグリフロジンの尿糖排泄作用に関しては用量依存性がないわけではない。10 mgで約64 g/日、25 mgで約78 g/日と尿糖排泄が増えるとはいえ、2.5倍の用量なのに尿糖は22%しか増えず、SGLT2というトランスポータの飽和が示唆される。腎保護の主要機序は遠位尿細管のCl濃度上昇をマクラデンサが感知して糸球体内圧低下による糸球体過剰濾過の是正をすると考えると、この糸球体過剰濾過を抑制する血行動態の変化は、SGLT2がある程度(約80%以上)阻害された時点で最大に近い効果を発揮するので、比較的低用量からプラトー化しやすいのだろう。10mgで尿細管糸球体フィードバックが十分に作動していれば、30mgに増やしても「それ以上に輸入細動脈を収縮させる」力はほとんど働かないのだ。

 この尿糖排泄作用は糖尿病患者では血糖値に依存して変化するため個人差が大きいはずだ。そこで非DMのCKD患者で考えてみると、原尿量150L/日×血糖値100mg/dLで150gのブドウ糖/日が含まれるとして、SGLT2阻害薬が投与されていないときにはSGLT2が90%程度のブドウ糖を再吸収し、残りの20g程度が少し下流にあるSGLT1が完璧に再吸収するため、尿糖は全く出ない。SGLT2阻害薬投与によりブドウ糖の再吸収はゼロになるが、その分SGLT1がかなり頑張って100g程度再吸収するので、非DM患者の尿糖排泄量はわずか50g/日程度、カロリーとして200kcal、ご飯を茶碗に軽く1杯に過ぎない。

 ただしこれに糖質制限をするとケトン体はかなり増加してそれによる恩恵を受けるだろう。でもSGLT2阻害薬を10mg投与して50gの尿糖が、25mg投与して仮に20%増えたとして、どれだけのケトン体の産生が増えるのだろう。おそらく食事内容の影響の方が大きくて、SGLT2阻害薬の投与量が2~3倍増えてもほとんど意味ないことが分かるよね。

 これって用量を増やしても、糸球体内圧低下や尿糖排泄が頭打ちになるってことは、利尿薬でみられる天井効果(ceiling effect)に近いかもしれない。ただしSGLT2阻害薬の利尿は数日間だけで、その後は腎の適応によって平衡に戻るのが少し違う。腎保護に関しては低用量で主要機序が飽和しやすい「機能的プラトー」を示す薬と考えるのが妥当かもしれない。

 

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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