9月17日(木)開催の、「腎臓が何をやっているか?(2)尿細管編 ~腎臓の最も重要な体液の恒常性維持は尿細管の仕事~」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.透析患者さんにおいてもフロセミドとサイアザイドの併用は効果があるのでしょうか。CKD患者においてサイアザイド単剤での利尿効果はほぼないと認識しております。

A.高度の腎機能障害患者では、サイアザイド系利尿薬単独での利尿・降圧効果は低下するため、作用の強い長時間型ループ利尿薬へと切り替えられこともあります。しかし末期腎不全(ESRD)の段階であっても、ループ利尿薬単独で十分な利尿が得られない場合にサイアザイド系利尿薬を併用すると、相乗効果により強力な利尿降圧作用が得られるケースは少なくありません(Sequential Nephron Blockade:連続的ネフロン遮断によるとされます)。僕が薬剤師時代にも腎臓内科の先生方はよく併用されていましたが、併用時は低Na・低K・高尿酸・腎機能悪化に注意し、効果と有害事象を見ながら減量・中止を検討する必要があります。

 ただし透析導入後となると、血液透析自体が体外循環による体液除去や血圧変動を伴い、腎虚血を引き起こしやすい操作であるため、尿量のある透析導入直後はループ主体、必要時にサイアザイド併用によって尿量を確保できますが、時間の経過とともに残存腎機能・尿量は徐々に低下していきますので、サイアザイドを続けるのはどうかと思っています。ループ利尿薬も尿量がかなり減少した段階になっても漫然と併用を継続することには疑問が残ります。

 特に尿量が300mL/日以下まで低下した場合、無尿(100mL/日未満)への移行が近いため、ループ利尿薬を含めた利尿薬の効果が乏しくなるため中止・減量を検討するのが望ましいと考えられます。また、両剤の併用(特にサイアザイド系)は近位尿細管の有機アニオントランスポーター(OAT)を介して分泌されるため、尿酸の分泌と競合するほか、体液量減少に伴う近位尿細管での尿酸再吸収亢進によって血中尿酸値を上昇させるのが悩ましいです。

Q.サムタス1V/日を使用してもフロセミドを併用したがらず、やっと説得して0.5A/日を併用(内服薬10㎎/日処方あるも嚥下困難で服用できていない)。サムタスも3日で終了。同時にフロセミドも中止。やっと利尿が始まり、浮腫が改善、体重は2k gほど減少して効果がみられていたのに、主治医は血管内脱水だと全部中止。その後経口困難で点滴必須となるもK↑、水分貯留で利尿剤0.5Aのみ、対処法をご指導ください。

A.目的が「心不全患者の尿量を出すこと」だけなら、通常はまずループ利尿薬の適正化、順次ネフロン遮断(サイアザイド、MRA併用)を投与し、低Na時であればサムタス(トルバプタンリン酸エステルNa注)、必要なら限外濾過(ECUM:透析器に透析液をつながないで除水だけを行う方法)による水除去などを検討します。

 本症例の場合、尿量、尿中Na排泄分画、血清電解質などの検査結果の推移を知ることができないので明確に回答できないのですが、血管内脱水(体液量減少/循環血流量減少)と、細胞内脱水(高ナトリウム血症/高張性脱水)は、「どの画分の水が失われているか」によって自覚症状や検査値の特徴が明確に異なります。

 心不全による溢水で尿量がないとなると腎機能の悪化も懸念されますよね。そんな症例にサムタス±フロセミドが3日間投与され、やっと利尿が得られ、体重2k減少、浮腫改善ということは、「効果あり」ということだと思います。その後、主治医は血管内脱水と判断したということは、サムタス±フロセミドが効いた(効き過ぎた?)と判断したのでしょうね。血管内脱水では生食や乳酸リンゲルなど細胞外液補充液を投与する必要がある病態ですから、フロセミド、サムタスも中止になるのは当然と思います。

 細胞内脱水(=高張性:血清Na高値や自由水欠乏)が懸念される場合、まず溢水(細胞外液過剰)と高張性(細胞内脱水)が併存し得る点を踏まえ、張度是正とうっ血管理の両立を図ります。ただし「点滴必須となるもK↑」の、この点滴がわからないです。輸液による点滴でその中に入っているカリウム剤(3号輸液など)でカリウムが上昇したのか、サムタス点滴の水利尿によってカリウムが上昇(多分Naはもっと上昇?)したのかも不明です。「水分貯留で利尿剤0.5A」というのはフロセミドのことでしょうね。水分貯留(特に輸液後の細胞外液過剰)で高カリウム血症の是正が必要となると、フロセミドが前回は効き過ぎているので少量投与から開始というのは理にかなっていると思います。

 その後はNa/K/Cl/HCO3−、Cr、尿量・尿Na、体重、うっ血指標などのモニタリングをしつつ、最初に述べたようにループ利尿薬±サイアザイド、MRA併用を投与し、低Na(細胞内浮腫)であればサムタスの投与を検討します。薬剤投与によっても水分過剰が改善せず、腎機能悪化、血圧低下が懸念される場合はECUMという限外濾過によって等張体液を除去できます。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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