2025年9月

2025年5月3日 X投稿
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 プルゼニドⓇ錠やヨーデルⓇ錠などの刺激性下剤は一般外来では3~4錠/日が最大投与量だが、透析患者は10錠以上+アローゼン4包など、大量を連用することが普通にみられる。アントラキノン系の刺激性下剤は腸管の蠕動を亢進する下剤で、一見、高齢者の蠕動力低下による便秘には有効性が高いように思えるが、刺激性下剤は結腸全体、つまり盲腸から直腸の結腸全体を刺激するため、最初は硬結便、通常便、泥状便、そして腹痛とともに水様便が排泄されて結腸全体が空っぽになる。そのため大腸の再充満時間が延長し排便間隔が長くなって、連用すると依存性や耐性を生じる(図1)。刺激性下剤はもともと頓服で週に2~3回頓服で使用するものなのだ。世界消化器連合ガイドラインでの推奨度・エビデンスレベルはラキソベロンで2B、他のセンナやアントラキノン系の刺激性下剤は3Cと評価が非常に低い。刺激性下剤を使用すると最終的には大量のカリウムを含む水様便が排泄されるため、低カリウム血症を起こすが、透析液中のカリウム濃度は2mEq/Lと低いため、透析によるカリウム喪失によって透析直後は低カリウム血症が助長され、蠕動力がさらに低下して便秘が増悪する。そして食の細い高齢透析患者ではもともと血清カリウムが低値であるため、透析後に麻痺性イレウスをきたすことがある(図2)。それでもなお透析患者が刺激性下剤の処方を望むのはワンフロアで20~30人もが同時透析をしているので、便意を催したくないという心理が働いいているのだろう。透析患者の死亡原因の9位はイレウスで毎年300人以上が死亡する極めて深刻な合併症なのだ。

 

2025年4月30日 X投稿
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 糖尿病患者が感染症や体調不良になって食事が摂れなくなった時や、下痢・嘔吐、発熱などがあることによって血糖値が乱れることを「シックデイ」(著しく体調の悪い日)と言う。血糖値が不安定になるため、薬の服用を一時やめていただき、シックデイルール、つまり血糖コントロールを調整するために安静、水分補給、保温、炭水化物摂取(食欲が落ちて低血糖になりやすい場合は、不足したカロリー分を補う)、血糖値が高いときには脱水になりやすいので、水分や電解質を十分に補給する(目安として、1日1.5Lの水分は摂る)、血糖測定などが必要。かかりつけ医に相談するときに体重、体温、血圧/脈拍、血糖値の変化などの情報があれば、医師が判断しやすくなる。 平田は糖尿病とは直接は関係ないけど、高齢者で高カルシウム血症から多尿・脱水を引き起こす活性型ビタミンDを加えたい。MRA+ACE阻害薬/ARBによって起こる高カリウム血症も突然死のリスクになるが、高カリウム血症の判別はむつかしい。

2025年4月20日 X投稿
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 利尿薬+ レニンアンジオテンシン系阻害薬+NSAIDsの組み合わせは腎機能を悪化させる三重攻撃(Triple Whammy)処方といい、特に高齢者で起こりやすい腎前性腎障害の原因薬物になる。高齢女性では閉経後骨粗鬆症を予防するために活性型ビタミンDが投与されることが多いが、これによって起こる高カルシウム血症は尿濃縮障害から多尿・脱水をきたし急性腎障害、腎細動脈の石灰化の原因、つまり腎機能の悪化につながる。
 2020年10月にはPMDAから「エルデカルシトールによる高カルシウム血症と血液検査の遵守について」という医薬品適正使用のお願いが発行された。エルデカルシトールの添付文書には定期的に血清Ca濃度を測定するよう注意喚起されているものの、高カルシウム血症の副作用報告では定期的な血清Ca濃度のモニタリングがされていない事例が多く報告されている。この文書には①血清カルシウム値を定期的(3~6カ月に1回程度)に測定すること(整形外科・皮膚科ではほとんど実施されてない)、②高カルシウム血症の症状(多尿・多飲・口渇感・便秘、倦怠感、いらいら感、意識レベルの低下等)が出たらすぐに受診するよう、 患者やその家族へ指導することが記載されている。血清Ca濃度を上げるCa剤、サイアザイド利尿薬(ループ利尿薬はCaを下げる)やビタミンAなどが併用されていないかを確認することも薬剤師の極めて重要な任務だ。図の黄色の文字は薬剤師として特に重要なポイント!

2025年4月18日 X投稿
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 活性型ビタミンDの添付文書には「血清カルシウム上昇を伴った急性腎障害があらわれることがあるので、血清カルシウム値及び腎機能を定期的に観察すること」と書かれているが、整形外科医はほとんど採血検査をしてくれないことが非常に悩ましい。活性型ビタミンDを服用中の高齢女性には「こまめな飲水」の服薬指導は必須だまた閉経後骨粗鬆症の多くの患者さんが「Caが足りない」と信じ込んでいるのではないだろうか。活性型ビタミンDを投与されている方が、Ca剤を服用したら当然、重篤な高カルシウム血症になるのは当たり前。むしろ服薬指導で「主治医の許可なくCa剤やCaサプリメントを一緒に服用してはいけません」という指導をすることが重要だと思う。整形外科医(皮膚科もですが)はほとんど採血しないので、血清Ca濃度をモニターしていないため、高カルシウム血症に気づかない。そして多尿から脱水、そして腎機能が悪化して内科を受診、そして腎臓内科に紹介入院になることが多々ある。「平田先生、整形外科向けの講演会ではNSAIDsだけじゃなくエディロールⓇのことも言ってくださいよ」と腎臓内科医の先生方によく言われる。そしていつも思う。やせた超高齢女性にエディロールⓇ0.75、アルファロールⓇ1.0µgって多すぎるんじゃないの?

2025年4月17日 X投稿
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 〇年8月5日、85歳女性、身長155cm、体重41kg。65歳の時に2型糖尿病と診断され、いつもeGFR50~60mL/min/1.73m2で推移していた。猛暑のため食欲不振が続いて昨夜は眠れず、倦怠感があり、軽度熱中症と診断され、採血(検査値は表を参照)。その後、ラクテックⓇ注を1L輸液した後、元気になって来局。

Rx: 下記処方が1年継続
オルメテックOD錠20mg1錠
メトグルコ250mg3錠
ジャディアンス10mg1錠 

 皆さん、疑義紹介しますか?服薬指導、どうしますか?

 僕の考えた回答を図の黄色で示します。BUN/Cr比>30で脱水が強く疑われますが、SGLT2阻害薬による利尿作用は数日以内で持続しません。脱水の主原因は猛暑による発汗だと思われます。eGFR30mL/min/1.73m2未満なら「メトホルミンを中止して」と自動的に疑義紹介する「デジタル薬剤師」にならないようにしましょう。医師に怒られても仕方ありません。

 

 9月18日(木)開催の 中級者コース「NSAIDsの腎障害」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.ワーファリン服用者に他院でNSAIDsが出る際、腎機能の低下がなければ経過観察、腎機能低下があれば、疑義ということでよいでしょうか?

A.平田塾では主としてCYP2C9によってワルファリンが代謝されるため、それと腎機能が低下するとCYP2C9の活性が低下することなどからワルファリンはさらに高濃度になってしまうこともお話ししました。でもワルファリンとNSAIDsとの相互作用は薬物動力学的な相互作用も考えられます。NSAIDsによる胃障害と抗血小板作用による出血助長がありますので、ワルファリンとの併用はとても怖いと思います。
だから腎機能低下がなくてもワルファリン服用者はNSAIDsの併用はやめていただきたいと思います。トラムセットのほうがまだ安全だと思います。
ただし低用量アスピリンの併用は治療上、やむを得ないこともあると思います。

 9月18日(木)開催の 中級者コース「NSAIDsの腎障害」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。


とても勉強になります。NSAIDsをはじめとする鎮痛剤はとても身近なものなので、これからも常に意識していきたいと思います。ありがとうございました。


今回も熱意あふれる講義をありがとうございました。とても勉強になりました。患者さんが薬をのみたくなる服薬指導を考えたいと思います。


前回参加できなかったこともあるのですが、勉強不足でついていけない部分もありました。オンデマンドで再度確認しながら復習します。


整形外科処方にてノイロトロピン錠が処方されています。患者様からセレコキシブやロキソニンなどとの違いや効果があるのかと聞かれますが、ノイロトロピンはプラセボ効果で説明していますが。帯状疱疹の痛みにも処方されていました。いずれも効果を疑問されています。いっそ、製造中止になれば良いのにと思うこともあります。


何度か同じ内容も繰り返し教えていただいているのに違う角度からも聞き直すことができてとても勉強になっています。ありがとうございました。これからも継続お願いします。楽しみにしています。


有料でも続けていただきたいです


大変勉強になりました。ありがとうございます。


ご講演、ありがとうございました。オンデマンド配信で、しっかり復習したいと思います。


勉強不足を実感しました。


腎機能低下患者へのセレコキシブの投与について、どう考えれば良いのかが分からなかったが、この講義でクリアになりました。ありがとうございました。


薬物動態や理論にもとづいた説明がわかりやすかったです。ありがとうございました。


アセトアミノフェンの有効用量について様々ご意見がありましたが、小児用量からのアプローチも一考かと。10~15mg/kgから目安量に迫っていくのも良いのかなと。平田先生お示しの有効域だけでなく、Tmax、半減期、現実的な調剤可能性、嚥下能力もモノサシとして挙げられます。月並みですが一概にして規定することはできない問題で、患者背景を総合的に捉えて用量検討することに尽きる、と感じます。


高齢者への鎮痛剤の処方に対して、より注意していきたいと思います。医師にも処方提案等できれば。


今日もとても勉強になりました。また次回の薬剤師塾楽しみにしています。


毎回わかりやすい講演をありがとうございます。リウマチと腎障害について講演して欲しいです


毎回楽しみにしています。出来たら資料等を、ダウンロードできるようにしていただけるとありがたいです。


 

今回初めて参加させていただき、前回の公演も聴きたくなりました。出来れば機会を作っていただきたいです。


頻用薬剤であるNSAIDsについての講義、とても興味深く勉強になりました。


とても勉強になりました。

2025年4月16日 X投稿
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 シタグリプチン(ジャヌビアⓇ、グラクティブⓇ)、アログリプチン(ネシーナⓇ)は腎排泄型で、腎機能の程度に応じて用量調節が必要となるため、腎機能が低下すれば使いにくいので腎機能に関わらず用量調節が不要なDPP4阻害薬に変更すべき、あるいは「○○は腎不全患者でも減量不要なDPP4阻害薬」と書かれたものをよく見ます。でも本当でしょうか?僕はDPP4阻害薬は血中濃度に応じて用量依存的に低血糖が起こるような危険な薬ではないので、「投与すべきではない」とも「使いにくい」とも思っていません。私見ですが、薬剤師がAUCの上昇率に合せて減量を提案すれば、シタグリプチン、アログリプチンは腎機能低下患者では低用量で効いてくれる安価な薬とも考えられます。これは腎機能が安定している患者さんであればかえって利点だと思うのですが…。

 

2025年4月7日 X投稿
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 腎排泄性薬物は全体の2~3割を占めるに過ぎないが、抗菌薬の多くは腎排泄性である。抗菌薬以外でもアシクロビルやガンシクロビルなどの抗ウイルス薬は腎排泄性で用量調節を間違えると容易に中毒性副作用をきたしてしまう。殺菌性の抗菌薬は免疫能の低下したCKD患者にはなくてはならないが、これらのほとんどが腎排泄性である。用量依存性の副作用がほとんどないβラクタム系やホスホマイシン、殺菌力の強いアミノグリコシド系、グラム陽性菌にはめっぽう強いグリコペプチド系、濃度依存性の殺菌作用を持つ抗MRSA薬のダプトマイシン、多剤耐性緑膿菌の切り札であるコリスチンなどはすべて水溶性で腎排泄性の殺菌性抗菌薬なのだ(表)。多くが経口薬で抗菌スペクトルが広く殺菌力の強いキノロン系はレボフロキサシンの尿中排泄率が90%と高いことから、腎排泄性のイメージが強いが、基本的には腎嚢胞感染症にも効果的で細胞内寄生菌にも有効な組織移行性の高い脂溶性薬物であり、ノルフロキサシンやレスピラトリーキノロンとして効果の高いモキシフロキサシンのように尿中に排泄されないものもある。一方、オキサゾリジノン系、マクロライド系、リンコマイシン系、テトラサイクリン系、チゲサイクリン、クロラムフェニコールなどの静菌性抗菌薬は脂溶性であり、腎排泄性で静菌性のものはST合剤中のトリメトプリムくらいしか思い当たらない。

詳しくは  第3回:殺菌性の抗菌薬はなぜか腎排泄 を参照してください。

 

 11月1日、2日(土日)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催される日本腎臓病薬物療法学会前日の10月31日(金)17:30から20:30までの3時間、前夜祭として恒例の「平田塾」を開催します。

 入場無料、登録する必要はありません。会場に来るだけで、日腎薬に参加しない人でも医療関係者であれば無料で参加できます。先着200名の方にテキストを進呈します。テーマは「薬物動態学を好きになれないあなたへ: 物性から薬物動態を理解してみよう。「動態=薬の顔・特徴」だと思えば動態を知ることが楽しくなるはずだ」です。金曜日なので早退して参加した方がいいかも。

(クリックするとPDFが表示されます。)

 
 大学での講義や教科書には難解な式が並んでいて、「薬物動態学」を好きになれた人はあまりいないんじゃないかな。でも薬の体内での動き、すなわち薬がどのように吸収され、どのような部位にどのような濃度でどのように分布し、どのように代謝され、代謝物の活性強度はどれくらいか、どのように排泄されるのかといった「薬の特徴そのもの」には薬剤師だったら興味があるはずだ。だってこれらを知っているからこそ薬物間相互作用を避けることができ、腎機能に応じた投与設計、高齢者、様々な病態への適正投与が可能になるからだ。その表向きの指標が薬物の血中濃度。この濃度は他の検査値と異なり、時間の推移とともに変化する。だから反応速度論kineticsという意味を持つ薬物動態Pharmacokineticsなんだよね。この知識を身に着けることによって「有効かつ安全な薬物療法の提供=適正使用」に貢献できるようになるはずだ。薬物動態について医師はほとんど学んでいないから、薬剤師こそが患者さんへの薬の有効性・安全性を担保するゲートキーパーになれるんだ。医師の理解できない薬物動態、つまり薬の体内での動きを予測する能力を駆使して、疑義紹介して医師から頼れる薬剤師になり、動態知識を生かして説得力のある服薬指導をすることによって、だれよりも信頼できる薬剤師になってほしい。

 単に薬に関する知識を身に着けた薬剤師が素晴らしいのではない。それだけでは「歩く医薬品集」に過ぎない。薬物動態パラメータをすべて記憶しようとすると、ますます動態を嫌いになってしまうが、「物性」から動態を理解しようとすると、水溶性薬物は一般的に腎排泄されやすく、吸収率は不良で、タンパク結合率は低く、分布容積もクリアランスも低いことに気づく。脂溶性薬物はこの逆なんだというように、系統立てて薬を理解しようとすると、よく分からなかった「薬の特徴」が分かるようになる。例えば向精神薬は血液脳関門を通って効果を示す薬だから脂っぽい構造のものが多いよね。向精神薬で腎排泄されるのはガバペンチノイドやリチウムなど8%しかないので、これらの例外を記憶するほうがずいぶん楽だ。殺菌性の抗菌薬はなぜか腎排泄のものが多い、分子標的薬は腎排泄のものは少ないなど、知らないうちに薬の特徴が分かり動態を好きになれるかもしれない。薬物動態学が大嫌いだった平田だったからこそ、分かりやすく解説できるんじゃないかと思ってる。皆さん、薬剤師は薬の専門家だよね。今回の平田塾では年齢や腎機能、疾患などによる薬物動態の変化や併用薬の影響など、日々の業務で役立つ知識、明日からの仕事に活かせるヒントを掴んでほしい。薬の特性を知っているからこそ、患者さんへの薬の影響を考える力が身につく、薬剤師としての成長につなげることのできる3時間にしたいと思う。ほんとは3時間じゃ足らないので、不足分は各自の自習は必須だよ

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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