2025年1月

③心保護メカニズムは心筋リモデリング抑制、心筋収縮性改善、電解質恒常性維持、利点は主要心脳血管イベント減少、心血管死減少、心不全入院減少

 SGLT2阻害薬の心保護作用は僕のイメージとしては腎保護作用ほど強力ではなく、30%程度だと感じています。CKDも慢性心不全も基本的に改善することはなく、進行を緩徐にすることしかできませんが、心不全の場合には適度な運動や薬物治療によって症状が良くなってNYHA分類がよくなった、あるいはBNPやNT-proBNPの値が この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

②腎保護メカニズムは尿細管糸球体フィードバックの是正、浸透圧利尿・Na利尿、利点は急性腎障害の発症抑制、アルブミン尿軽減、eGFRの悪化速度緩和とそれによる透析導入防止

 この論文を書いたEvans先生は糖尿病医なので、オリジナル文献では「浸透圧利尿・Na利尿」が先頭、その次が「尿細管糸球体フィードバックの是正」になっていましたが、これは明らかに違和感があるので順序を変えました。「浸透圧利尿・Na利尿」はむしろ心保護メカニズムのトップにしてもいいと思っていますが、利尿作用 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

①糖尿病の進行防止のメカニズムは尿糖増加、糖毒性軽減、脂質異常改善、利点はHbA1c低下、血圧低下、体重減少

 平田自身の抱いているイメージは糖尿病に関してはHbA1cを1.0足らず下げる程度で強力ではないし、SGLT2を完璧に阻害してもSGLT1がその分、頑張ってしまうので、SGLT2阻害薬の尿糖排泄作用は糖質を1日200~400kcal(炭水化物50~100gなのでご飯をお茶碗1~2杯分)摂っていなかったくらいにしかなりません。だから痩 この続きは登録ユーザーのみ閲覧できます

 いやはや、とんでもなく良く効く薬が現れました。その薬は皆さんご存じのSGLT2阻害薬。ブドウ糖は腎糸球体でろ過されますが、重要な栄養素であるため尿細管で100%再吸収されるので、健常者では尿糖は排泄されませんが、SGLT2阻害薬はブドウ糖の再吸収を阻害して尿糖を増やす薬なので、血糖値を下げる糖尿病の薬として発売されましたが、安全性試験で「強力な腎保護効果、心血管合併症の発症を抑制する効果」が認められ、期待した製薬メーカーは次つぎと大規模無作為化比較試験に打って出ました。そして現在では①糖尿病治療薬だけでなく、②CKD治療薬、③慢性心不全治療薬のそれぞれ切り札的な役割をする、安全で強力な作用を示すことが明らかにされました。

 まずは図11をご覧ください。真ん中に示されている図はブドウ糖が腎糸球体でろ過され、重要な栄養分であるため近位尿細管で再吸収されますが、その再吸収するトランスポータSGLT2を阻害するので、ブドウ糖の近位尿細管からの再吸収が抑制され、尿中のブドウ糖排泄が促進されることがまとめられています。それによって血糖値・HbA1c値が下がり糖毒性が軽減され、糖質制限をしたのと同様な効果(体重減少、脂質異常改善、血圧低下)、それに付随して心血管病変(CVD)の発症率を抑えます。

 ではそれぞれの作用メカニズムと利点について明日から探ってみましょう。内容はEvans1らの論文をもっとわかりやすいよう、アレンジしています。

 

引用文献
1)Evans M, et al: Diabetes Ther 2022; 13: 889-911

もっといい本を書きたい。もっといい講演をしたい。
もっと高いレベルの薬剤師になりたい。僕にはまだまだ伝えたいことがある。
そして僕はまだまだ知らないことが多すぎる。だからもっと学び続け、新しい発見をし、それをわかりやすく皆さんに薬の使い方、薬の効き方、病態と薬の関係について伝えたい。

昨年、70歳になった僕。
僕も若い時には「これからは若い者の時代だ、年寄なんか引っ込め!」と思ってた。
若い人たちには僕はなんと、迷惑な存在なのだろう。でも実際に、僕はまだまだ若い人たちには負けてない。
年功序列だけで上がってきた人じゃなく、たたき上げでここまできたからね。
学者じゃなく職人になりたいと今でも思ってる。
薬剤師のレベルを上げようとする情熱が、若い人たちには足らないんだ。
薬剤師の学会、そして勉強会、なんで熱いディスカッションをしないんだろう。
医学系の学会なら質問がないなんてことはないはずなのに、なんで薬剤師は冷めているんだろう。

僕は自分の気持ちの中に熱いものがある限り、走り続けます。
若い者に次々と抜かれない限り、僕は引退しない。
若者たちよ、くやしかったらこのおいぼれを抜いてみろ!
平田は今年も走り続けます。もっともっと走り続けます。

「たたき上げ」で調べてみるとこんなフリ-素材があったけど、「努力」じゃないな。「努力」じゃなくって「好奇心」「興味」かなと思う。だって「努力」は続かないし、つらいもの。でも何かをやり遂げるときにはある程度の辛抱強さは必要だよ。

 

 皆さんに相談させていただきたいことがあります。これまでの平田の収入、そして会社のスタッフの援助が4月以降なくなると、このブログの更新も「基礎からわかる薬剤師塾」も金銭上の問題で運営できなくなります。でも僕は皆さんのご希望がある限り、これらを続けたいので、これから新会社「平田の薬剤師塾」を設立して、①このブログの更新頻度を高めようと思っていますし、②オンライン勉強会の「基礎からわかる薬剤師塾」をより充実させたいと思っています。これまでの薬剤師塾の開催は金曜日の18時30分でしたので、多忙な方からこの時間帯では参加できない、再放送がない、そしてスライドテキストがないなどの不満が出てきていたのですが、これらを解消したいと思っています。例えば金曜日の20時ライブ開催、翌日の土曜日に再放送をする(あるいはyoutubeで数日間視聴可能)、そしてスライドテキスト付というのはいかがでしょうか?さらに内容がむつかしいと思われる方のために、初心者編と中級者編に分け、例えば慢性心不全をテーマにするときに、初心者は国家試験レベルの「心臓の働きと心不全の病態・薬物療法の基礎」を学び、中級者は「ヘフレフ、ヘフペフとFantastic Fourの適正使用」に分けるというのも考慮中です。

 でもこれらを持続するうえで、一番問題なのは、費用とスタッフなのです。4月からの収入がなくなるので、ボランティアとしてブログの更新はできても、オンライン勉強会の定期開催を続けるのは大変厳しくなります。そのため、例えば ①1回500~1000円の参加費をいただいて ②テキスト付きの平田塾の講演会を ③皆様の希望の時間帯に ④複数回見れるようにすることを検討しています。それと毎回 ⑤初心者向けと中級者向けの2つのコースを作る のもいいかもしれません。例えば初心者は「心臓の働きと心不全の病態・薬物療法の基礎」を学び、中級者は「ヘフレフ、ヘフペフとFantastic Fourの適正使用」に分けるというやり方です。

 もちろんこれまで以上にすべての質問に丁寧に回答させていただきます。さらに日病薬研修シール、日薬研修シール、日腎薬研修シールも可能であれば配布したいと考えています。皆さん、よいアイデア、ご要望がございましたら、メルアドhirata@kumamoto-u.ac.jpまでご連絡いただけると幸いです。またPCリテラシーがあって平田の薬剤師塾のスタッフとして働いてみたいいう方の連絡もお待ちしております。

 第43回の「基礎から学ぶ薬剤師塾」は2025年1月17日(金)18時半から(20時までの予定)です。

 従来の慢性心不全の予後を改善してくれる薬はRAS阻害薬とβ遮断薬のみでした。現在では①β遮断薬はそのままですが、②RAS阻害薬をARNIのサクビトリル/バルサルタンに、③ミネラルコルチコイド受容体遮断薬、そして最強の④SGLT2阻害薬を加えるFantastic Fourが推奨され、慢性心不全の予後が大幅に改善できることが明らかになっています。今回のテーマは「慢性心不全とその治療薬~これからはFantastic Fourの時代~」です。

 参加を希望される方は 申し込みフォーム に記入のうえ、1月12日までに送信してください。

 医療従事者であれば参加可能です。なお、I&H株式会社の主催するオンラインセミナーは残り3回となります。

 


 

2025年2月~2025年3月 基礎から学ぶ薬剤師塾 予定表

回数 タイトル 日程
44 透析患者の便秘は「たかが便秘」ではない深刻な合併症 2025.02.21
45 腎機能悪化を防ぐこれからのtriple therapy~SGLT2阻害薬、RASi or ARNI、MRAの適正使用について考える~ 2025.03.14

 

あけましておめでとうございます。 
旧年中はひとかたならぬご厚誼を賜りまして、大変ありがとうございました。

 平田は今、70歳。2020年4月、熊本大学を65歳で定年退職後にお世話になっていた阪神調剤グループのI&H株式会社は昨年、スギ薬局グループの傘下に入りましたが、今年3月末で定年退職となります。5年間、毎月2回、通算50回近くの「基礎から学ぶ薬剤師塾」、社内薬剤師向けの「平田塾」に学術課・研修課の優秀なスタッフの皆様とともに開催させていただきましたこと、開催に係る時間、場所を提供していただきましたこと、I&H株式会社様、そして親会社のスギ薬局様、心より感謝申し上げます。大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

 平田はまだ引退するつもりはございません。このブログは続けます。そしてもっと内容の濃いものにします。新しい書籍の出版「CKDの服薬指導」(じほう)、わかりやすい薬物動態の書籍出版も決まっていますし、10月31日(金)には東京虎ノ門ヒルズフォーラムで開催される第19回日本腎臓病薬物療法学会で恒例の3時間の平田塾も開催していただくことになっており、今回は参加者にテキストを配布できればいいなと思っています。趣味に関しては時間に余裕ができるようになると思いますので、旅行は国内・海外、いろんなところを回る予定です。マラソンは2016年熊本城マラソンから9年連続完走しており、10年目の2025年は大阪マラソン、熊本城マラソンには抽選で外れたので、3月1日の鹿児島マラソン(妻の故郷)にエントリーしています。ランニング、ギター、読書、野球観戦、相撲観戦、ジム通いも続けたいですね。

 まだまだ平田は元気ですし、なにより本職の「薬への興味」がまだまだ膨らむばかりで日課としてPubMed検索して、よくわからない薬のことを徹底的に調べあげ、最新の分かりやすい図表を作成して解説できるようにするという楽しみが一向に衰えないのです。オンライン勉強会の「基礎からわかる薬剤師塾」はI&H株式会社のご援助によって3月までは開催できますが、2025年4月以降は未定ですが、何とか続けたいと思っています。最新でわかりやすい情報をお届けしたいという気持ちでいっぱいなのです。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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