慢性腎臓病(CKD)の腎機能(eGFRで表す)は通常、よくなることはない。だから「腎機能の低下速度をいかに緩めるか」が治療のポイントなのだ。Youtubeで再生回数が数十万回と多い「腎機能が強くなる○○」「腎機能がみるみる回復する○○」のはすべてウソです。CKD患者さんは通常、医師から腎機能がよくなることはないと聞かされているので、こういうタイトルに藁にもすがる思いで見るのでしょうね。調べてみると「【驚愕】腎臓揉んで毒素をドバドバ出す魔法の方法」、「寝る前1杯飲むだけで腎機能改善!」、「腎機能をアップさせる最強の手もみ3選!」というのはあり得ないことです。
また、困ったことに書籍でもどうも信じられないタイトルのものがあります。
「疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい」では腎臓が疲れると、血液がドロドロになるので腎マッサージで、身体の疲れは簡単にとれると書かれていますが、そんなエビデンスはありません。腎臓の近くをマッサージすると疲れが取れる可能性はあるかもしれませんが・・・・。
「国立大学教授・腎臓の世界的名医が教える 運動を頑張らなくても腎機能がみるみる強まる食べ物大全」はすごいタイトルの本ですね。僕はこの本を図書館で借りて読みましたが、内容は腎機能が悪化しにくい食べ物や、腎機能の低下した患者さんには勧められない食べ物などについて書かれた極めてまっとうなものなのです。でもタイトル中の「腎機能がみるみる強まる」ことはないし、「腎機能がみるみる強まる食べ物」なんてありえないのです。確かに、本当に「みるみる強くなる食べ物」があるのなら患者さんは買って読みたくなりますし、内容は腎機能低下した患者さんが読んでいただいたほうがよい内容で、実際、この本はベストセラーになっています。著者の先生は多くの患者さんに正しい食事療法を知ったもらいたかったのかもしれませんね。ですが残念ながら腎機能がみるみる強まる魔法の食べ物はありませんので、患者さんは誤解されませんよう!
ただし今は腎機能の低下速度を緩める作用の強力なSGLT2阻害薬、レニン-アンジオテンシン系阻害薬、抗アルドステロン薬などが現れ、これらをうまく組み合わせると半分以上の患者さんの透析導入を防ぐことができる時代になってきました。でも使ったほうがよい患者さんもありますし、副作用などのために使いにくい患者さんもいます。薬剤師の皆さん、正しい情報を丁寧にやさしく患者さんに伝えてください!