病院薬剤師さんからの質問
今回執筆されているフィネレノンですが、ちょうど薬剤科内でメーカーさんの勉強会がありました。従来から腎機能別用量のeGFRがmL/min/1.73m2で書かれていますが、「標準的な体格から大きく外れている場合は補正を外した方がいいですか?」と聞いてみました。MRさんはそもそも腎機能の表記に疎く、薬剤科内では「補正しないのが正解では?」という見解があがりました。どうも腑に落ちないのですが、平田先生はどのようにお考えでいらっしゃいますか?
回答
標準体形でない人には補正するのが当たり前!だって標準化eGFRは血清Cr値、性別、年齢しか入ってないんですよ。女性で170cm, 63kg(男性のMサイズ )が合う人ってめったにいないですよね。だったら補正しなくちゃ危ないでしょ?
40kgのSサイズの人に男性のMサイズは大きいし、120kgの男性にMサイズは入らないので、LLLサイズにするでしょ。 ユニクロにだってSからLLLまであるのに薬は固定用量ですから、薬剤師がうまくやらないといけません。用量依存性のない薬はほとんどありません。効きすぎたり効かなかったりするのを薬剤師が調節すべきなのです。 フィネレノンは高カリウム血症を起こしにくいけど、やっぱり小柄な人では高カリウム血症は起こりやすいといわれてますからね(PMID: 34786651)。 MRさんにも指導してあげてください。これって薬剤師の常識だよ!
解説
標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDの診断指標に用いるもの。薬物投与設計には個別eGFR(mL/min)を持ちるのが鉄則!
59mL/min/1.73m2だったら蛋白尿(-)でもCKDと診断できる。でも1.73m2は日本人では標準体型男子で身長170cm、体重63kgだから、女性ではほとんどいない。そうすると小柄な女性で個別eGFR(mL/min)を用いると健康なのにCKDと診断されやすいし、120kgの男性は実際には肥満で腎機能が悪くてもCKDが隠蔽されてしまうから標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を用いるんだ。だけど薬の量は40kgの人と、120kgの人と同じでいいはずはないから、身長・体重を加えて計算した個別eGFR(mL/min)を使う。じゃあなんで添付文書に紛らわしい記載がされているのかというと、結論から言うとFDAの失策。黒歴史なのです。
米国では2010年12月30日までは薬物投与のための腎機能はFDAが製薬企業に対し血清Cr値ではなくCG式を用いた推算CCrを推奨→2010年12月31日より、血清Cr値の標準化(IDMS traceable)が行われた。→それ以前のCG式では薬物投与が不正確になる!ということで2011年のKDIGOの急性・慢性腎臓病患者の薬用量はCG式ではなくeGFRに変えるところを個別eGFRではなくバカなことに標準化eGFRを用いるようアップデートしようとしたんだ。標準化eGFRはCKD診断指標として医師にも患者さんにも普及していたかもしれないけど、これは間違い。欧州ではテキスト通り薬物投与には個別eGFR(mL/min)を使うとした。
多分、いろいろ過量投与などの問題が起こったんだろうね。2020年以降、FDAは製薬企業に対して「今後は個別eGFR(mL/min)を添付文書に記載するように」というお触れを出した。だから2020年以降に治験の行われる薬に関しては個別eGFR(mL/min)が用いられるようになるはず。そしてCCrも標準化eGFRも添付文書の記載から徐々に消えていくはずだ。



