2025年10月

2025年6月30日 X投稿
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 通常、腎排泄性の薬物ってリーマスⓇやゾビラックスⓇ、アミノグリコシド系やβラクタム系の抗菌薬のように水溶性で、蛋白結合率が低く、分布容積が小さい薬が多いイメージを持っているよね。これらは透析でよく抜けるから過量投与してもいざというときには透析で救命できるから怖くない。これは常識!だけど中に例外がある。ジゴシンⓇ、シベノールⓇ、シンメトレルⓇの3つの薬物だ。3つとも腎排泄性なので腎機能低下患者に減量せず投与すると当然、致死的な有害反応が起こる可能性が高いハイリスク薬だが、分子量も大きくないし蛋白結合率も高くないけど、分布容積が5.0L/kg以上あるため、透析で抜けない。透析だけじゃない、CHDFを含むあらゆる血液浄化法が無効だから救命できない。だから初回投与設計を間違えないことがとっても重要なんだけど、残念ながら医師にこの能力はない。動態をよく知っている薬剤師であれば初回投与設計を間違えないはず、薬剤師の力の見せ所なんだ。

 

 

2025年6月29日 X投稿
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 バラシクロビルで無尿になって急性腎障害で緊急入院、たいていの患者は小柄な高齢女性へのバラシクロビルの過量投与だ。腎障害だけでなく、ろれつが回らないアシクロビル脳症を併発していることが多いので、血液透析を2日以上連続して施行すると、2回目の透析中に目を覚ましたように意識障害が消失することがよくある。透析でアシクロビルが抜けたからだ。じゃあどんな薬物中毒の時に血液透析が有効なの?

 血液透析で除去されにくい薬物の共通点は蛋白結合率PBRの高い薬物、脂溶性の高い薬物、腎排泄性の低い薬物、分布容積Vdが大きい薬物、分子量の大きい薬物。もっと具体的には、①PBR>90%以上の薬物は血液透析によって除去されない(図1)、②分布容積Vd>2.0L/kgの薬物は除去されにくい(図2)、③PBR>80%かつVd>1.0L/kgの薬物も除去されにくい。たいていの肝代謝型薬物は上記の性質を持っているので透析では抜けないが、まとめるとこうなる(図3)。逆にアシクロビルの蛋白結合率は30%程度で低いし、分布容積Vdは0.7L/kgと体内水分量に近いくらい小さいし、分子量は225Daしかないから透析でよく抜けるんだよね。詳しくは薬物除去率予測式 を参照してね。

 

 

 

2025年6月16日 X投稿
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 ①ステージ4以降(eGFR<30mL/min/1.73m2)にまで腎機能が低下すると、②尿中へのリン排泄低下が起こり、FGF23というホルモンが骨から分泌されて、血液中のリンを減らそうとして、尿からのリンの排泄を促す。③ビタミンDの活性化がFGF23によって抑制される。④血清リン濃度の上昇、⑤ビタミンDの活性化障害によって腸管からのCa吸収能が低下して、低カルシウム血症になる。⑥血清Ca濃度が低下すると副甲状腺ホルモン(PTH: parathyroid hormone)が過剰に分泌されて骨吸収が増加(骨からCaを溶け出させる)ため、骨塩量が低下して骨がスカスカになって脆くなる。⑦これを線維性骨炎と言うが、同時に血中に溶出したCaとリン酸が血管に沈着して石灰化を起こす(図1)。この一連の流れを「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD: mineral bone disease)」と言う。

 その治療の基本は①リン、②Ca、③PTHの順にコントロールするのが鉄則。腎機能が低下して最初に上がるのが血清リン値、血清Ca値、血清intact PTHだからだ。PTHは骨の代謝回転を上げる悪玉のように言われるが、この中では3番目に重要。また図2には左からリン、Ca、PTHの折れ線グラフは全死亡ハザード比、棒グラフは透析患者の各濃度の人口分布を示すが、ハザード比の振れ幅が大きい、つまり血清濃度が高くなると全死亡ハザード比が高くなる順は明らかに①血清リン値、②血清Ca値、③血清intact PTH値の順だ。だからこの順に正すべきというのが鉄則なのだ。ではそれらの適正濃度は①血清リン値3.5~6.0mg/dL、②血清Ca値はアルブミン濃度で補正した補正Caとして8.4~10.0mg/dL、③血清intact PTH値60~240pg/mLに入るようにしよう(図3)。複雑だけど分かった?

 

 

 

 10月16日(木)開催の、シリーズ②「慢性心不全治療の薬物療法の基本」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.平田先生、いつもわかりやすい講演ありがとうございます。質問です。保険薬局でシベノール錠50mg2錠分2を定期服用している高齢患者さんに対して、おそらく主治医も注意しているとは思うのですが、先生でしたら外来においてどの程度の頻度で腎機能確認が最低限必要だとお考えでしょうか?よろしくお願いします。

A.高齢者は患者さんによって腎機能の見方が変わります。高齢者で体力の弱ったフレイルの方は筋肉由来のクレアチニンを基にしたeGFRを腎機能として信頼できません。筋肉量が少なくなっているため、高めに推算されますので、蓄尿して実測CCrを測定するか、シスタチンCによるeGFR算出します。それが無理なら、シベンゾリンは腎機能が急変すると低血糖だけでなくQT延長も起こしうる薬なので、医師に何のためにシベンゾリンを投与しているのかを教えていただき、シベンゾリン以外の抗不整脈薬に変更できないのかについて、相談しますね。シベンゾリンを投与する限り腎機能の頻回測定は必要ですし、急性腎障害を確実に食い止める必要があるからですが、そうするだけの見返りがあるかどうかを確認したいためです。ただし自分自身の研究成果から、元気で活動力の高い人であれば80歳でも90歳でもeGFRは信頼できるなと思っています。


Q.透析導入後、フロセミドに、トルバブタン7.5㎎(または15㎎)を透析クリニックで継続する際、トルバブタンはどこまで継続すべきか、何かガイドラインとなるものがあるのでしょうか。

A.フロセミド+トルバプタンは心不全ではどうしようもない溢水、呼吸困難、ひどい低ナトリウム血症などで緊急的に併用する薬物療法だと思います。僕自身は高価なトルバプタンを透析患者に併用するのはどうだろうと思います。その理由として透析患者であれば、溢水がひどければ透析で除水すればいいし(水の引き残しがあれば、透析終了後に透析液を流さず限外濾過(ECUM)をやるのもいい)、電解質異常は透析で是正できるからトルバブタンを併用するのは水分管理がよほどひどいときだけだと思います。肝硬変による腹水や腎嚢胞などで溢水があるからフロセミドを必要とするケースなのだと思いますが、透析をやっていれば徐々に腎機能が低下して3~5年で無尿になって、フロセミドの中止はやむを得ないと思います。トルバプタンの併用はよほどの時に一時的にとどめるべきではないでしょうか。ということで、透析患者を対象にフロセミド+トルバプタンの有効性を見る試験は誰もやらないと思いますので、ガイドラインには記載されていないはずです。

2025年6月15日 X投稿
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 カルタンは唯一のCa含有リン吸着薬。2007年にCa含有リン吸着薬群はセベラマー(レナジェル)群に比し、有意に死亡率が高いといわれ(図1)、同様な報告が続いた。カルタンは一番使い方が難しい、一番怖いリン吸着薬と思われている。だけどカルタンは高リン血症かつ低カルシウム血症になりがちな保存期には一番使いやすい薬で価格も安く、上手な使い方をマスターしなければならない薬だ。でも使い方の基本をマスターしていない医療者が多すぎる!

 食事をしないときにカルタンを飲むとリンを下げず、血清Ca値が上昇することによって起こる高カルシウム血症は透析患者の血管の中膜の石灰化(血管が骨に変わる!: 図2)を助長するためとても危険なので、「食事をしないときには飲んじゃダメ!」の服薬指導はとっても重要なのだ。リンが高くなく、低カルシウム血症を是正する時には血清Ca濃度を上げるために透析医は意図的に空腹時に投与することもあることも知っておいてほしい。

 「カルタンは異所性石灰化の原因になり、Ca非含有リン吸着薬に比べて予後が有意に不良」という常識は、唯一、セベラマーと比較して有意差がついただけで、2015年以降のメタアナリシスでは「これらの報告は異質性が高く、Ca含有剤が本当に有害で、セベラマーが有益という結論には至っていない。ましてや非Ca含有が優れているとは言えない」とされている。「カルタンの死亡率が高い」という研究が行われたときに薬剤師が、「ご飯を食べないときには飲んじゃダメですよ」と服薬指導していたら、カルタンによって予後が悪化する結果にはならなかったかもと思うんだけどね。以上、私論(ぼやきかな?)でした。

 

 

 

2025年6月13日 X投稿
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 熊本大学教授だったころの話、同僚の近藤悠希先生と「病名が分かれば医師の患者指導と齟齬がなくなり、より踏み込んだ服薬指導ができるはず。そして検査値、特に血清クレアチニン値やBUNが分かれば、腎機能低下患者の薬物用量を適正化でき、高齢者などの脱水の兆候を見抜き、腎機能の悪化を防止できる。薬剤師らしい仕事ができる。でもM3.comのアンケート結果では『病名と検査値の記載を原則義務化』すべきという割合は医師45.0%、薬剤師12.1%だった。『どちらかでも記載したほうがいい』を含めば医師71.4%、薬剤師28.2%でともに医師のほうが処方箋に検査値・病名を記載した方がいいと考える方が薬剤師よりもはるかに多かった。薬剤師の皆さん、なんで病名を知りたくないの?検査値も知りたくないのは責任が増えるから?」と、ある学会の保険薬局薬剤師さん向けのシンポジウムでこんな話をした。その時、会場からベテランの薬剤師さんが手を挙げて「私くらいに保険薬局薬剤師を長くやっていれば、患者さんとの会話をしているうちに患者さんの病態は検査値を見なくても手に取るように分かるようになるんですよ、だから検査値や病名は必要ない」とおっしゃった。後で聞くと、○○県の薬剤師会会長らしい。すごいね。県の薬剤師会会長クラスになると話をするだけで病態を把握できるんだ。未熟な僕(70歳だけど)には無理です。検査値も病名もわからないと僕には病態を理解できません。完全に脱帽です。

 

 

2025年6月26日 X投稿
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 SGLT2阻害薬は尿糖を排泄させる糖尿病治療薬として発売されたが、強力な腎保護作用・心保護作用が認められ、今では糖尿病関連腎症、CKD、慢性心不全治療薬の最も頼りになる、つまり有効性の高い幅広い治療薬になった。統計的に有意な副作用は脱水、性器感染、糖尿病性ケトアシドーシスの3つだけ。だけど、基本的に尿糖排泄によって痩せるので、①やせ過ぎのフレイル、サルコペニア(活動度の低い人はみんな)では筋肉量がさらに減って栄養状態が悪化するので、やめておいた方がよい。寝たきりの人は性器を清浄に保つことができないので性器感染のリスクが高まるためなおさら投与すべきではない。

 ②食事を摂れない患者:絶食の必要な患者・周術期・重症感染症・重篤な外傷・アルコール依存症、それと新しい薬が投与されたので一念発起して「今後、血糖管理、頑張ります。だから糖質は一切摂りません」などという糖尿病患者さんがいたら、身を挺してでも「それはいけません。1日3回少量でもいいからご飯(糖質)は摂らないといけません」と指導しよう。でないと糖尿病性ケトアシドーシスになっちゃうからね。

 ③透析患者など腎機能の廃絶した患者では腎に作用する薬なので効かないとはずだ(いつか透析患者に投与する日が来るかもしれないが・・・・)脱水、性器感染、糖尿病性ケトアシドーシスはすべて服薬指導で「こまめな飲水」が必須なのは常識だよね。

 

 

 

 

2025年6月20日 X投稿
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 NSAIDs、利尿薬、RAS阻害薬、活性型ビタミンD3、SGLT2阻害薬、バラシクロビル服用者には薬剤師は、猛暑の続く夏には特に「こまめな飲水」を指導しなければならない。ただし一定数の患者はこれに従ってくれない。

 ①高齢者は口渇感を感じなくなることが多い。口渇中枢に異常があるために、のどが乾かないのだ。②高齢男性は前立腺肥大による夜間頻尿があるため飲水したくない、特に夕方以降の水分摂取を嫌がる。そしてよく知られていないけど多いのが、③加齢あるいは明らかな腎機能低下があると夜間の抗利尿ホルモンの分泌低下によって起こる尿濃縮障害により、夜間多尿になるため、夕方以降の水分摂取を嫌がる人たちだ。夜間多尿は腎機能が低下している、つまりCKDの典型的な症状なのだ。夜間頻尿はつらいもの。だけど、飲水不足によっておこる脱水から急性腎障害は入院を要するくらい大変な病態であることを分かっていただき「こまめな飲水」を実行していただき、濃い褐色尿から左側の無色透明に近い尿になるまで(冬の尿はたいていこんな尿だよね)飲水していただこう。

 

 

 

2025年6月18日 X投稿
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 慢性心不全は延々と緩やかに続く坂道のような病態で、重い荷物を引いている老馬が慢性心不全の心臓にたとえると患者さんには理解しやすくなる。心臓を鞭打つ薬、つまり強心薬を使い続けると、最初は快調に走ってくれても老馬は疲弊して早死にしてしまう。「逆に馬の速度を緩めてあげる役割がβ遮断薬、馬の荷物を軽くして負担を軽減する役割がRAS阻害薬、MRAはさらに荷物を軽くしてくれる薬なので、老馬はより長い距離を歩くことができる。つまり生命予後を延長できる慢性心不全治療薬になるのです(図1)」と説明するとわかっていただけるかも?強心薬は生命の危機を脱するために急性心不全だけでなく慢性心不全の増悪期にも一時的に使うことがある(図2)。心拍出量を上げるにはドブタミン、尿量が減ってきたらドパミン、血圧が下がってきていよいよ危なくなってきたらノルアドレナリンのように使い分ける。じゃあ利尿薬の立ち位置は?

 慢性心不全入院理由の多くを占める体液貯留によるうっ血症状を改善してくれるのが利尿薬だ。症状を目覚ましく改善してくれるのでガイドラインでの推奨度はⅠだが生命予後改善効果はない。じゃあSGLT2阻害薬は?

 「いっぱいあって説明しにくい」けど、ケトン体によってエネルギー効率がよくなることだと考えると「老馬にこまめにえさと水を与えること」に似ているかも?でもこれは平田の勝手な持論です。

 

 

 

 10月16日(木)開催の、シリーズ②「慢性心不全治療の薬物療法の基本」について以下のようなアンケートの回答をいただきました。原文のまますべてのアンケート内容を紹介させていただきます。


大切なことを何度も繰り返し、色々な角度から教えて頂き、本当にわかりやすかったです。何度も繰り返し勉強したいので、テキストが欲しいです。ありがとうございました。


わかりやすく話して頂いてよかったです。


拝聴して、わかることが増えていくにつれてわからないことも出来てくるといった感じもあります。 ありがとうございました。


服薬指導と処方医への提案にも大いに役立つと思います。


作用機序、試験結果までわかりやすいご講演ありがとうございました。


先生のお話は解りやすくて心不全に対する知識があいまいだった 部分が少しずつ固まってきました。まだまだ??な部分はありますがここを埋めていけば、みたいな感触であとは症例で勉強して役に立てるようにしていきたいです


ガイドラインを見直すきっかけになりました。新しい考え方を学べました。


前回の分も振り返りながら、基礎から分かりやすく説明いただいて ありがとうございました。


23くらい前、調剤薬局に勤務の頃、ARBが頻繁に処方されていました。カリウムの上昇が気になり、野菜、野菜ジュース、果物など摂取をどうしたら良いのか、他の薬剤師と話し合ったことがありました。患者の食生活など聞き取り、可能であれば採血結果など。。平田先生の講義は貴重です。このような機会を頂くことが出来てとても嬉しく、分かるまで何度でも見直して勉強します。有難うございました。


心不全の薬を整理することができて、参加してよかったです


拙い質問にもお答えいただきありがとうございました。 肥大型、拡張型ではなくHFrEFかHFpEFかで判断する事が分かりました。今度、患者様にもう少しお話を伺ってみたいと思います。


なかなか心不全について、自分なりに本などで、勉強してても、 ぼやっとした理解でした。先生の講義で理解が前に進みました。


アルドステロンによって、心筋の肥大・繊維化、および腎臓の メサンギウム細胞・およびたこ足のポトサイトの障害、間質繊維化、糸球体硬化などをいかに早期に抑えるべくACEiを使用すべきということがわかりました。ありがとうございました。


ありがとうございました。 いつも べんきょうに なります  


とても勉強になりました。 ありがとうございます!

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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