慢性心不全は延々と緩やかに続く坂道のような病態で、重い荷物を引いている老馬が慢性心不全の心臓にたとえると患者さんには理解しやすくなる。心臓を鞭打つ薬、つまり強心薬を使い続けると、最初は快調に走ってくれても老馬は疲弊して早死にしてしまう。「逆に馬の速度を緩めてあげる役割がβ遮断薬、馬の荷物を軽くして負担を軽減する役割がRAS阻害薬、MRAはさらに荷物を軽くしてくれる薬なので、老馬はより長い距離を歩くことができる。つまり生命予後を延長できる慢性心不全治療薬になるのです(図1)」と説明するとわかっていただけるかも?強心薬は生命の危機を脱するために急性心不全だけでなく慢性心不全の増悪期にも一時的に使うことがある(図2)。心拍出量を上げるにはドブタミン、尿量が減ってきたらドパミン、血圧が下がってきていよいよ危なくなってきたらノルアドレナリンのように使い分ける。じゃあ利尿薬の立ち位置は?
慢性心不全入院理由の多くを占める体液貯留によるうっ血症状を改善してくれるのが利尿薬だ。症状を目覚ましく改善してくれるのでガイドラインでの推奨度はⅠだが生命予後改善効果はない。じゃあSGLT2阻害薬は?
「いっぱいあって説明しにくい」けど、ケトン体によってエネルギー効率がよくなることだと考えると「老馬にこまめにえさと水を与えること」に似ているかも?でもこれは平田の勝手な持論です。

