熊本大学教授だったころの話、同僚の近藤悠希先生と「病名が分かれば医師の患者指導と齟齬がなくなり、より踏み込んだ服薬指導ができるはず。そして検査値、特に血清クレアチニン値やBUNが分かれば、腎機能低下患者の薬物用量を適正化でき、高齢者などの脱水の兆候を見抜き、腎機能の悪化を防止できる。薬剤師らしい仕事ができる。でもM3.comのアンケート結果では『病名と検査値の記載を原則義務化』すべきという割合は医師45.0%、薬剤師12.1%だった。『どちらかでも記載したほうがいい』を含めば医師71.4%、薬剤師28.2%でともに医師のほうが処方箋に検査値・病名を記載した方がいいと考える方が薬剤師よりもはるかに多かった。薬剤師の皆さん、なんで病名を知りたくないの?検査値も知りたくないのは責任が増えるから?」と、ある学会の保険薬局薬剤師さん向けのシンポジウムでこんな話をした。その時、会場からベテランの薬剤師さんが手を挙げて「私くらいに保険薬局薬剤師を長くやっていれば、患者さんとの会話をしているうちに患者さんの病態は検査値を見なくても手に取るように分かるようになるんですよ、だから検査値や病名は必要ない」とおっしゃった。後で聞くと、○○県の薬剤師会会長らしい。すごいね。県の薬剤師会会長クラスになると話をするだけで病態を把握できるんだ。未熟な僕(70歳だけど)には無理です。検査値も病名もわからないと僕には病態を理解できません。完全に脱帽です。

