10月16日(木)開催の、シリーズ②「慢性心不全治療の薬物療法の基本」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.平田先生、いつもわかりやすい講演ありがとうございます。質問です。保険薬局でシベノール錠50mg2錠分2を定期服用している高齢患者さんに対して、おそらく主治医も注意しているとは思うのですが、先生でしたら外来においてどの程度の頻度で腎機能確認が最低限必要だとお考えでしょうか?よろしくお願いします。

A.高齢者は患者さんによって腎機能の見方が変わります。高齢者で体力の弱ったフレイルの方は筋肉由来のクレアチニンを基にしたeGFRを腎機能として信頼できません。筋肉量が少なくなっているため、高めに推算されますので、蓄尿して実測CCrを測定するか、シスタチンCによるeGFR算出します。それが無理なら、シベンゾリンは腎機能が急変すると低血糖だけでなくQT延長も起こしうる薬なので、医師に何のためにシベンゾリンを投与しているのかを教えていただき、シベンゾリン以外の抗不整脈薬に変更できないのかについて、相談しますね。シベンゾリンを投与する限り腎機能の頻回測定は必要ですし、急性腎障害を確実に食い止める必要があるからですが、そうするだけの見返りがあるかどうかを確認したいためです。ただし自分自身の研究成果から、元気で活動力の高い人であれば80歳でも90歳でもeGFRは信頼できるなと思っています。


Q.透析導入後、フロセミドに、トルバブタン7.5㎎(または15㎎)を透析クリニックで継続する際、トルバブタンはどこまで継続すべきか、何かガイドラインとなるものがあるのでしょうか。

A.フロセミド+トルバプタンは心不全ではどうしようもない溢水、呼吸困難、ひどい低ナトリウム血症などで緊急的に併用する薬物療法だと思います。僕自身は高価なトルバプタンを透析患者に併用するのはどうだろうと思います。その理由として透析患者であれば、溢水がひどければ透析で除水すればいいし(水の引き残しがあれば、透析終了後に透析液を流さず限外濾過(ECUM)をやるのもいい)、電解質異常は透析で是正できるからトルバブタンを併用するのは水分管理がよほどひどいときだけだと思います。肝硬変による腹水や腎嚢胞などで溢水があるからフロセミドを必要とするケースなのだと思いますが、透析をやっていれば徐々に腎機能が低下して3~5年で無尿になって、フロセミドの中止はやむを得ないと思います。トルバプタンの併用はよほどの時に一時的にとどめるべきではないでしょうか。ということで、透析患者を対象にフロセミド+トルバプタンの有効性を見る試験は誰もやらないと思いますので、ガイドラインには記載されていないはずです。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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