4月16日(木)開催の、「腎機能をしっかり見れる薬剤師を目指そう(中級者編)」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q. S-1は、体表面積で区切られた段階的な用量設定になっています。この場合、個別化eGFR(mL/min)で投与設計を考えると、体格を二重に補正することになるのではないかと少し気になっています。あまり気にしなくてもいいのでしょうか?

A.S-1は体格別用量(mg/m2)なので、身長・体重によってすでに補正されていますので、身長・体重の入った個別化eGFR(mL/min)を使うと二重補正になります。二重補正すると小柄な人はさらに低用量になって効かなくなり、大きな人はさらに用量が増えて副作用が起こる可能性があるからです。この時だけは薬物投与設計であっても身長・体重を式に含まない標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を使います。

eGFR(mL/min/1.73m2)は一般的に体表面積補正eGFRと呼ばれますが、実際には体格が全く考慮されていないため(実際には体表面積は考慮されていない)ので混同しやすいです。ということで我々、腎臓病薬物療法学会が標準化eGFRと呼ぶようにするようにしました。


Q.聞き逃してたらすみません、メトホルミンも個別化eGFRで評価で良いですよね?

A.大原則として投与量=AUC×CLtotal  ですよね。

腎排泄型薬物のクリアランスは患者さんの腎機能が低いほど減量しなくてはなりません。患者さん自身の腎機能は個別eGFR(ml/min)で表されます。小柄で体表面積1.2m2しかない人は腎臓のサイズも小さいので1.73m2の標準体型男性に比べて低用量にしないとAUCが中毒濃度になってしまいます。逆に巨体で2m2ある人は1.73m2の標準体型男性に比べて高用量投与しないと、腎臓のサイズも大きいので効かない(AUCが有効濃度にならない)可能性があります。

上の式で示した通り薬物クリアランスは個別eGFR(ml/min)と相関しますが、標準化eGFR を用いると非常に小柄な患者や大柄な患者ではそれぞれ過剰投与や過少投与になります。さらには小柄な患者では特定の薬剤(メトホルミンなど)の投与開始基準が甘くなって副作用を起こすかもしれません。

だからメトホルミンの添付文書表記が30mL/min/1.73m2未満で禁忌、30mL/min/1.73m2以上あれば750mg/日投与できます。ということは標準化eGFRを使うと小柄な人にでも投与できますが、乳酸アシドーシスなどの副作用などのリスクは高くなります。だから添付文書の腎機能表記として標準化eGFR R(mL/min/1.73m2)を用いることが間違っているのですが、メーカーも医師の先生方もFDAやNKFもだれも指摘しなかったのでしょうかね?

薬物の投与設計にはメトホルミンのように添付文書表記が標準化eGFR(mL/min/1.73m2)になっていても個別eGFR(mL/min)を使います。これが鉄則なのです!

標準化eGFR(mL/min/1.73m2)はCKDがどれだけ重篤化の診断に使うためのものです。薬物投与設計に使うのは身長170cm、体重63kgの人だけじゃなく160cm、体重70kgの人、身長180cm、体重57kgの人など1.73m2と計算される標準体型の男性の時か、抗がん薬でmg/m2の体格別体重の時にしか使いません。


Q.Calvert式について質問させて下さい。

私の施設では、上限125mL/min、CCrを用いる場合は0.2補正(酵素法による血清Cr値に0.2を加えてJaffe法に近い値にする手法)、ADDIKD( Anticancer Drug Dosing in Kidney Dysfunction)の腎機能変動20%以内は前回量維持推奨など、基準を設け適正使用を目指しております。

しかし、腎機能が保たれた患者では、前回投与時から10mL/min増加、AUC5で50mg投与量が増えるケースもあります。生理学的変動など誤差範囲かもしれず対応に悩んでおります。

A.血清Cr値の変動による腎機能への影響ですよね。患者さんの情報が十分ではないのでどうお答えしてよいのかわからないのですが、がん患者であれば、患者さんにはよっては衰弱してきて筋肉量が減少しそれによって推算腎機能が低下することが考えられます。それと腎機能が保たれた患者では血清Cr値のちょっとした変動によってeGFR値の影響しやすいです(腎機能が悪くなればなるほどゼロに集約されるので変動幅は小さくなりますが腎機能の良い方は変動幅が大きくなります)。

またCDK4/6阻害剤(パルボシクリブ、アベマシクリブなど)とカルボプラチンを併用することは、乳がんの治療(主に転移・再発乳がん)において選択肢の一つとしてありますよね。CDK4/6阻害剤はCrの尿細管分泌を阻害して血清Cr値が20%程度上昇して腎機能が悪化したように見えることがありますが、これは偽性腎障害でeGFRは低下しますので、CDK4/6阻害剤を中止するとeGFRが上がったように見えることがあります。ほかにも原因は考えられると思いますが、情報不足だと推測しかできないですね。


Calvert式は体格別用量なので、標準化eGFRを使う論文があった……ブログで回答します」と言ってしまいましたので訂正します。

正しくは、カルボプラチンは「体格別(BSAや体重)用量」ではなく、Calvert式で目標AUCと腎機能(GFR)に基づき総量mgで投与しますので固定用量です。したがって標準化eGFRは用いません。

式:Dose (mg) = 目標AUC × (GFR + 25) だから固定用量になります。GFRには標準化eGFRは用いません。

使うとすれば個別eGFRまたは(CCr+0.2)を用いた実測CCr(安藤雄一先生の論文)または(CCr+0.2)を用いた推算CCrを用います。

米国ではJaffe法で測っていた時代は副作用が起こっていなかったのに、2011年以降、IDMS traceableになって血小板減少症が増えたといわれています。日本ではもともと正確に測定する酵素法が、2000年以降一般的になったのでGFRの1.2~1.3倍になるため、血小板減少が米国よりも起こりやすいといわれていました。メーカーが「GFR一般的に推算CCrで代用できます」とパンフレットに書いたため、腎機能が高く推算されるとともに投与量が増えたため、血小板減少症が増えたのではないかと思います。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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