本を今までにたくさん書いたし、論文もたくさん書いた。学会での講演もたくさんやらせてもらってきた。だけどいつも時間いっぱい話したくなるし、同じことを何度も繰り返してしまう。論文を書けば、査読者から決まって「冗長(くどくて無駄に何度も繰り返している)」といわれる。でもこれが平田の個性なんだよね。

 子供のころ出来が悪くって、成績は中の下。たまに小テストで満点を取ると、ほぼクラスの半分が満点を取るような内容でも教師から「やればできる」と言われた。運動神経もクラスで一番鈍く、走るのが一番遅かった。さかあがりができるようになったのも一番最後だった。何をやっても不器用で、遅かった。先生の言ってることが理解できないのだ。1回の説明では理解できないんだ、僕の鈍い頭では。1回のお手本では、すぐにさかあがりができないんだ、僕の能力では。1回や2回ではコツがつかめないから。

 中学校に入って最初の中間テストは学年200人中130番だった。たまに何度も繰り返していってくれる先生がいると、その教科が好きになって徐々に成績は良くなってきた。それがたまたま数学と英語と化学と生物だったから、私学の薬学部に入れることができのかもしれない。古典や漢文はいい先生だったけど、手取り足取り教えてくれるタイプではなかったので、理解するコツがつかめなかった。大人になって司馬遼太郎さんの小説にのめりこみ、その後は明治から昭和などの現代史にのめりこむと日本史や世界史全体が大人になってから好きになった。このころ古典や漢文、歴史の授業があったら、僕は前のめりにのめりこむことができたんだろうなと思った。

 で、僕はダメ薬剤師を40歳になるまで続けて、ある出会いがきっかけで「薬剤師」という仕事にのめりこむことができるようになった。そして講演会の前座の10分の症例報告のチャンスをもらい、それがうまくいくと30分の話をさせてもらい、それらの繰り返しで、いずれ教育講演や特別講演を任されるようになったが、もともと理解するのが苦手だったから、かっこいいことを話すんじゃなくって「何にも知らいない人でもわかるような話し方、そして分かりやすいスライドの作り方にしようと心に誓った。そしていずれ、薬学系雑誌に掲載依頼が来ても、出版の話が来ても、くどいくらい何度も何度も、試行錯誤しながら理解できるように繰り返す。だから本当に編集者泣かせなんだ、僕って著者は。そして60分の講演依頼があれば、60分を使って何とかわかってもらいたいために、またいつものようにくどい話をするので座長泣かせなんだ、僕って演者は。たまに僕の話を「熱い」といってくれる人がいるが、僕はほんとに不器用なんだ。だから熱く何度も何度も語って、わかってもらいたいんだ。こんな話し方だから、何度も聞いてる人は飽きちゃうよね。でも大事なのは同じテーマで講演依頼があっても、僕は最新の話題、新たなスライドを必ず入れる。それをしないと僕自身が、エキサイトできないから。ごめんなさい、いつもいつも平田塾は長い話ばかりで、そしてくどい話ばかりで。でも僕は平田塾をやらせてもらっているから、昨日より今日の方が少しだけでも成長している薬剤師になれているんだと思う。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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