5日目です。CCr推算式は多くの専門家によってかなりの種類のものが作成されていますが、Cockcroft-Gault(CG)式はその中で唯一、現在でも使われ続けています。ということは、臨床上、最も優れたCCr推算式と言えるかもしれません。ただし肥満患者では理想体重または標準体重を入力する必要があり(後述)、高齢者では低く見積もられるのが問題と思われます。
入院患者では入退院を繰り返すような虚弱(フレイル)な高齢者が多い、そしてそのような患者では腎機能が低下しやすい、そして栄養状態が悪く免疫能の低下した患者が院内感染に罹患しやすく、腎排泄性薬物の多い抗菌薬の投与設計に適していた。これらは私の推測ですが、これらの理由からCG式が高齢者に適合しやすい理由かもしれません。確かに長期臥床の痩せた高齢者ではeGFRよりもCG式のほうが腎機能の予測性が高いことがよくあります。
【 鉄則3 】
CG式による推算CCrEnzは薬物投与設計には原則として用いないが、血清Cr値の低い痩せた患者にeGFRcreat推算式を使うと過大評価してしまう。そのため後期高齢者やがん末期などのフレイル症例にはeGFRcreatよりもCG式による推算CCrEnzが適していることがある。
CG式では1年に約1mL/minずつ低下しますが、実は平均的な日本人の腎機能は加齢によってそんなには低下しないことが分かりました(図5、グリーンで示す線)。この図で注目していただきたいのはもともと腎機能の低い患者では加齢に伴い腎機能が悪化しやすいということです(図5、赤色で示す線)。入退院を繰り返している症例はこのような脆弱なフレイル症例に多いと考えられます。eGFR(mL/min)は推算CCrに比し、身長が考慮されているため、一般的にはより正確に腎機能を把握できます。しかし痩せた栄養不良の高齢のフレイル症例ではeGFR(mL/min)、eGFR(mL/min/1.73m2)はともに腎機能を過大評価しやすくなります。一方、推算CCrは加齢とともに腎機能を過小評価する傾向があるため(附則2の図9を参照)、痩せた高齢者ではeGFRよりも予測精度は高くなることがあります。一方、若年者ではCG式による推算CCrはGFRより高値になるので0.789倍し、GFRとして評価します。
院内感染症などの栄養状態が不良の特殊な症例を除けば、薬物の投与設計ではeGFRの方がCG式よりも優れていますが、入院している高齢者はやはり生理機能が低下している脆弱な状態であるため、通常の高齢者よりも腎機能は低めになりやすいことも考慮しておきましょう。
図5. 加齢に伴う腎機能(GFR)低下のシミュレーション
(Imai E at el. Hypertens Res 31:433-441,2008 より引用;この図はCKD診療ガイド2012より引用)
「今日はここまで、それではまた次回お楽しみに!」