3日目です。いよいよ鉄則1です。検査せんに最近載るようになってきたeGFR(mL/min/1.73m2)は薬物投与設計には使えません。なぜかというと・・・・
【 鉄則1 】
eGFRcreat、 CCrでmL/min/1.73m2は薬物投与設計に使わない。mL/minを使うが、抗菌薬・抗がん薬などで投与量がmg/kgやmg/m2となっている場合にはmL/min/1.73m2を使う。
eGFR, CCrで単位がmL/min/1.73m2になったものはCKDの重症度分類に用いる診断指標として用いるものであり、実際に腎機能を表していないため、これを用いて薬用量を決めるには問題があります。薬物投与設計にはeGFR(mL/min/1.73m2)は標準体型の男性以外では使えません。Du Boisの式を使って体表面積を求めたうえで体表面積を外したeGFR(mL/min)を使います。
体表面積(BSA)算出式(Du Bois式)1)
BSA(m2)=体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×0.007184
体表面積未補正eGFR算出式
eGFR(mL/min)=eGFR(mL/min/1.73m2)×BSA/1.73m2
eGFRやCCrを薬物投与設計に用いる場合で、推奨用量が体格にかかわらず固定用量が定められている薬物については、体表面積の補正はしない腎機能(mL/min)を用いるのが鉄則です。
体表面積未補正eGFR(mL/min/1.73m2)は、「体表面積がもしも1.73m2であったなら」という仮の値です。1.73m2は身長170cm、体重63kgに相当しますが、高齢女性ではこんな身長・体重の方はほとんどいません。したがって平均的な体格の男性患者以外ではeGFR補正値(mL/min/1.73m2)を用いて投与設計をしてはいけないのです。ちなみに身長160cm、体重70kgの人、身長180cm、体重57kgの人も1.73m2と計算されます。
CKDの重症度分類に体表面積補正値を用いる理由は、小柄な体格の方は体格なりの小さなGFRで十分なのに、体表面積未補正値を用いると腎機能を過小評価してCKD患者になってしまったり、あるいはより重症のCKDに分類されてしまうことを防ぐためです。かつては日本人の体表面積は1.49m2が用いられていましたが、国際的に1.73m2が用いられるようになったため、1.73m2が採用されたのだと思います。一般的な日本の入院患者さんを想定すると1.49m2の方が妥当かもしれません。eGFR(mL/min)は体表面積補正がされていない、患者さんの腎機能そのものを表します。腎機能が低ければ腎排泄性の薬物は減量しなければなりません。ですから薬物投与設計に用いることができます。
ただしeGFR(mL/min)や推算CCr(mL/min)にはもともと体重が変数に含まれています。そのため抗菌薬・抗がん薬などで推奨投与量がmg/kg(アミノグリコシド系抗菌薬のように薬物により理想体重を入力すべきものもあります)やmg/m2で規定されている薬物用量の場合に、たとえば体重が小さい症例でeGFR(mL/min)や推算CCr(mL/min)を用いると体表面積と腎機能の両方で減量してしまうことになります。そのため投与量がmg/kgやmg/m2で表されている場合には例外的に血清クレアチニン値によって求められたeGFRcreat(mL/min/1.73m2)またはCCr(mL/min/1.73m2)を用います。
引用文献
1)Du Bois D, Du Bois EF; A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known. Nutrition 1916; 5: 303-313.
「今日はここまで、それではまた次回お楽しみに!」