11日目です。いよいよシスタチンCの登場です。腎機能を推算するために汎用される血清Cr値の測定費用は安価なものの、腎機能の影響だけでなく筋肉量の影響を受けるという致命的な欠点がありました。シスタチンCは小児から高齢者まで簡便にGFRを予測することができます。ただし3か月に1回の測定しか保険適応になっていないなど様々な問題点もありますが、筋肉量の少ない患者の腎機能予測をしたいが、蓄尿は大変という場合には一番頼りになる腎機能マーカーになると思われます。そして軽度~中等度腎障害では血清Cr値はすぐには上がってくれません。このような時にも頼りになる腎機能マーカーとも言えます。


【 鉄則9】

軽度~中等度腎機能低下症例にはシスタチンCによるeGFRcysも推奨される。

 20160113_6.jpg 栄養状態が不良の症例では血清Cr値が低いのだから少なくとも腎機能が極度に悪いということは考えられません。このように加齢に伴い若干、腎機能が低下しているかもしれないという時に有用なのがシスタチンCです。シスタチンCはhouse-keeping geneをコードしているため、炎症などの細胞外の影響を受けにくく、全身の有核細胞から一定の割合で産生されるタンパク質で、広く生体内体液に存在しています。分子量が13,250Daであり、細胞外液中のシスタチンCは全くタンパクと結合せず、すべて糸球体で濾過され、濾過後はほとんどが近位尿細管で再吸収され、アミノ酸に分解されるため、血中には戻りません。血中濃度はGFRに依存し、血清Cr値に比し、食事や筋肉量、性差、運動、年齢差の影響を受けず、軽度の腎機能の低下に反応して血清シスタチンCの濃度が上昇します1)。そのため、CrはGFRが30~40mL/min前後まで低下しないと上昇しないのに対し、GFRで60~70mL/minの早期の腎障害の進行度を判断できるのが特徴です(図9)。

  シスタチンCは保険適応の関係上、3カ月に1回しか測定できませんが、腎機能が安定している症例では、以後は血清Cr濃度変化を基に予測するなどの工夫が必要です。しかしシスタチンCの血中濃度は腎機能が低下すると頭打ちになることが分かっており、末期腎不全では腎機能を正確に反映できないため、血清Cr値が2mg/dL以上になればシスタチンCの測定意義は低くなり血清Cr値のみで腎機能を評価するのがよいでしょう。

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シスタチンCの問題点

  シスタチンCに関しては、ステロイド、シクロスポリンなどの薬剤の使用や甲状腺機能低下症で、高値に測定されることを念頭に置く必要があります。シスタチンCの測定キットは当初、メーカーによってそれぞれ異なる社内標準品を基準にしていたため、メーカー間で測定値に差が出るのが問題でした。しかし2010年以降、認証標準物質DA471/IFCCができたため、メーカー間の測定誤差がなくなってきています。CKD診療ガイド2012ではHorioら2)および小児に関してはUemuraら3)が新たに開発したシスタチンCによる新しい日本人向けGFR推算式が掲載されているので、以下に紹介します。    

                                      

日本人のGFR cys推算式(mL/min/1.73m2) 

男性:(104×シスタチンC-1.019×0.996Age)-8

女性:(104×シスタチンC-1.019×0.996Age×0.929)-8

小児:104.1/シスタチンC-7.80

体表面積補正をしないeGFRcys=eGFRcys×(体表面積/1.73) 

 

引用文献

1) Grubb AO: Cystatin C-properties and use as diagnostic marker. Adv Clin Chem 35: 63-99, 2000

2) Horio M, et al: GFR estimation using standardized serum cystatin C in Japan. Am J Kidney Dis 61: 197-203, 2013

3) Uemura O, et al: Cystatin C-based equation for estimating glomerular filtration rate in Japanese children and adolescents. Clin Exp Nephrol 18: 718-725, 2014

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「今日はここまで、それではまた次回お楽しみに!」

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)