12日目です。連載はまだまだ続きますが最後の鉄則となりました。腎機能評価は大切と言ってきましたが、安全域の広い薬物ではCCrを用いてもGFRを用いても大きな問題はありません。問題は抗がん薬や低血糖を起こしやすい薬物、抗凝固薬・抗血小板薬などの超ハイリスク薬、あるいは通常の薬物でも腎機能が低下するとハイリスク薬になってしまうような尿中排泄率の高い薬物(バンコマイシン、ピルシカイニドプレガバリン、H2遮断薬など)の投与設計時には腎機能の正確な見積もりが必要になります。

 よく私の作成した腎機能別投与一覧表で「セフェム系やペニシリン系の用量が腎機能が低下しても多めの投与量になっていますが大丈夫ですか?」という質問を受けますが、これらの薬物は安全性が高く、怖いのはアレルギー性副作用です。また急性疾患なので、早期の効果を期待したいこと、短期間しか投与されないこと、一般的になどを考慮したうえで定めた容量であり、あくまで目安として利用してください。これのみが正解というものではありません。


 

【 鉄則10】

上記の記載は腎機能低下患者にハイリスク薬を投与するとき、あるいは腎機能低下に伴いハイリスク薬になる薬を投与するときに考慮すべきものである。安全性の高い薬物では患者の腎機能にCCrenzを用いても大きな問題はない。

  セフェム系やペニシリン系の抗菌薬、あるいはフェキソフェナジンなど安全性の高い薬物は多くあります。このような薬物では腎機能低下患者で血中濃度が上昇する薬物であっても、腎機能としてeGFRを用いてもCCrを用いてもどちらでも構いません。腎機能が悪くなれば確実に血清Cr値は上昇し、eGFRもCCrもゼロに収束するため、腎機能の見積もりミスも少なくなります。

  しかし経口抗凝固薬であるダビガトランや抗がん薬のカルボプラチン、TS-1などでは厳密な投与設計が必要ですので、できる限り上記の鉄則を守ってください。また高齢のフレイル症例が日和見感染症に罹患した場合、1回目の抗菌薬治療が失敗すれば二の矢が継げないことになってしまいます。特に尿中排泄率90%と高いバンコマイシンの投与設計は腎機能低下に伴い難しくなります。このような時にも腎機能を正確に見積もるよう気を付けましょう。

20151106_8.jpg

「今日はここまで、それではまた次回お楽しみに!」

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

月別アーカイブ