9日目です。これまで血清Crが低い痩せた高齢者では腎機能を過大評価してしまうという話をしてきましたが、今回は血清Crが低いけれども痩せていない若年者(論文では50歳以下と書かれていますが、実際には60歳以下でも十分にみられます)の話です。全身熱傷などでICUに入院した患者でよくみられることですが、大量輸液や血管作動薬の投与によって腎血流が増加しGFRが高くなっているためと考えられるため、この場合には血清Cr値が低いことは素直に腎機能がよいと考えていい場合が多いのです。


 

【 鉄則7 】病院薬剤師用

 60歳以下の腎機能正常者で全身炎症(SIRS)によりICU管理下で血管作動薬・輸液の投与を受けている患者ではeGFRが150~160mL/min/1.73m2に上昇することがある。これは過大腎クリアランス(ARC)により腎機能が高くなっており、血清Cr値は0.6未満になることもあるが、腎機能推算式や0.6mg/dLを代入するラウンドアップ法を使わず実測CCrの測定による腎機能の正確な把握が望まれる。

若年の腎機能正常者で血管作動薬や輸液が投与されている全身性炎症反応症候群(SIRS)の患者(多くはICUの症例)では血清Cr値が0.3~0.5mg/dLに低下した場合、筋肉量が少ないのではなく腎機能が上昇していることがあります。60歳以下の若年者で腎障害のない感染症が引き起こすSIRSの病態下では心拍出量増加・血管拡張や腎血流増加により過大腎クリアランス(ARC: Augmented Renal Clearance)が発現し通常100mL/min/1.73m2のGFRが150~160mL/min/1.73m2に上昇し、抗菌薬の大量投与を行わないと十分な効果が得られないことがあります。この場合、eGFRや推算CCrは腎機能を過小評価するため、蓄尿による実測CCrによる腎機能の正確な把握が推奨されます1)。ましてや0.6mg/dLを代入するラウンドアップ法は行うべきではありません。ARCのリスク因子は①年齢(60歳以下)、②敗血症、③外傷・手術、④外傷性脳損傷、⑤熱傷、⑥低アルブミン血症、⑦血液がんなどが提言されています(図7)2)。

引用文献

1)Baptista JP, et al: A comparison of estimates of glomerular filtration in critically ill patients with augmented renal clearance. Crit Care 2011; 15: R139.

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「今日はここまで、それではまた次回お楽しみに!」

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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