ブログ内容に関する質問ではありませんが、私へのメールでの質問は薬剤師塾としての質問とさせていただき、その回答を共有させていただきます。最近では以下の2つの質問をいただきました。今後もメールでの質問やご意見をいただくと、その回答を共有させていただくことによって薬剤師塾を双方向性にして活性化させていくことができればと思います。



6月20日 姫野病院 薬剤科 照崎真帆先生より

 先生に是非ご教授頂きたくメールにてご質問させて頂きます。
日本腎臓病薬物投与学会では、エルネオパNFやビーフリードを高度腎機能患者では禁忌とされております。
もちろん窒素滞留の恐れなどを懸念しているということは理解できます。
しかしながら、高度腎機能患者で褥瘡患者は逆に蛋白質を多く服用した方がいいとの内容もあり、どこまでアプローチすればいいか悩んでおります。
 是非先生の助言を頂けると幸いです。宜しくお願い致します。

 

【 平田の回答 】

 ご連絡ありがとうございます。
 一応、添付文書上の禁忌のものは禁忌とせざるを得ないというだけのことと思います。我々の学会が禁忌と決めているわけではないことをご理解いただければと思います。今は欧州腎臓学会に参加のため国外にいますので、手短かな回答のみで失礼いたします。



6月15日 山梨県立中央病院 薬剤部 堀内琢矢先生より

 いつも平田先生が執筆された著書で勉強させて頂いております。
 この度は、バルガンシクロビル(VGCV)の腎後性腎障害についてどうしても分からない事があり平田先生にご教授願いたく、ご連絡致しました。
 腎臓病薬物療法ガイドブック第2版 抗ウイルス薬による尿細管閉塞性腎障害 P349の記事ですが「特に夏、小柄な女性の後期高齢者でRAS阻害薬、利尿薬、NSAIDsのtriple whammyや活性型ビタミンDなどの腎前性DKIの原因薬との併用で糸球体ろ過された原尿中のアシクロビル濃度が高くなって容易に発症してしまう。」の部分ですが、バルガンシクロビルについても上記に該当するかと思います。
 利尿剤などで脱水があるとガンシクロビル(GCV)の血中濃度が上昇し、糸球体ろ過された後の原尿中のGCV濃度が通常より高くなるイメージがつくのですが、RAS阻害剤などの腎前性DKIの原因薬との併用で原尿中のアシクロビル濃度が高くなる理由が分かりませんでした。
 腎前性DKIの原因薬との併用で腎虚血となり、原尿は減りますが、GCVの糸球体ろ過量も減るため原尿中のGCV濃度は腎前性DKIの原因薬併用あり/なしで差がないのではと考えたからです。これは、GCVの尿細管分泌が腎前性DKIの原因薬併用あり/なしで変わらなければ、腎虚血で原尿が少ない方が、「原尿中のGCV濃度」が高くなり析出しやすいということでしょうか?長々と申し訳ありません。論文検索や腎臓内科の先生方に伺っても分からず、是非平田先生からご回答頂けたら幸いです。
 御多忙の中、大変恐縮ですが宜しくお願い致します。

 

【 平田の回答 1 】

 ご連絡ありがとうございます。
 バルガンシクロビルについては使用経験がなく、全く知らないのですが、バラシクロビルと同じメカニズムで腎後性腎障害を起こすのであれば、この薬の活性体のガンシクロビルは水溶性で腎排泄ですが溶解度が低いので、血中濃度が上昇すれば、尿細管内で水や塩が再吸収されて濃縮されれば結晶化しやすいのは理解できますよね。
 RAS阻害剤は輸出細動脈を拡張させるということは糸球体内圧が低下し、原尿の産生速度が低下=腎機能が低下します(SGLT2阻害薬と同様にinitial dippingがありますよね)。糸球体濾過速度が減少すれば溶媒の量が減るので活性体のガンシクロビル濃度は当然、上昇しますので、過飽和になって結晶化しやすくなりますよね。利尿薬も腎血流量が低下するのでGFRが低下しますし、脱水になるとなおさら過飽和になりやすいですよね。NSAIDsも輸入細動脈を収縮させるので、GFRが低下して過飽和になりやすいですよね。活性型VDも多尿から脱水をきたすと尿細管で水や塩が再吸収されますので、当たり前に尿細管濃度が上昇して過飽和になり結晶化しますよね。これでわかりましたでしょうか。


 

6月20日

 大変お忙しい中、ご回答ありがとうございます。一点だけ、私の理解力不足で大変恐縮でございますが
 RAS阻害剤などで糸球体内圧が低下し、原尿が減ると溶媒の量が減って尿細管中のガンシクロビル濃度が上昇することは理解できたのですが、例えばNSIADsで輸入細動脈が収縮している場合は、原尿が減りますが、糸球体に流れてくるガンシクロビルの量も減り相対的にみると尿細管中のガンシクロビル濃度はあまり上昇しないのではと考えました(溶媒が減るが、溶質も減る?)。その点について、ご教授頂けないでしょうか。
 ご多忙のところお手数をおかけしますが、何卒宜しくお願い申し上げます。

 

【 平田の回答 2 】

 ごめんなさい。今、欧州腎臓学会に参加のため、時間の余裕がありません。ガンシクロビル投与量が同じであれば、溶質の量は一緒ですよね。NSAIDsによってGFRが下がれば尿細管中での溶質の量は同じであっても溶媒の量が減っているので、腎後性腎障害が起こりますよね。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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