石川県の地震のニュースが徐々に明らかになり、ピースボート内でも少し深刻に考え、義援金を募るなどの活動が始まっており、現在、この船だけで約200万円の募金が集まっているそうです。冬のこの時期の地震は深刻ですね。船はモアイ像で有名な南海の孤島イースター島に向かっていますが(写真1)、この辺りは雨期になるらしく、曇りや雨の日が多いです。南半球とはいえ赤道を超えたあたりですが、蒸し暑い日本に比べれば、ずいぶん過ごしやすいと思いますし、早朝はむしろ涼しいくらいです。ただし船内は冷房がきついのがつらいです。室温が高いと船酔いしやすいので下げているようですが、外は完全な夏なのに、船内では上着がないと風邪を引きそうなくらい寒いです。

 

時間を無駄にしたくない

 このクルーズ船旅行は地球一周106日間の旅です。この間に、今までにできなかったこと、やり残したことをやってみたいと、誰もが何らかの目標をもって乗船していると思いますが、僕もそうで、自分の得意分野ではない免疫やがんなどについて基礎から学び直そうと思ってたくさんの本を持ち込みましたが、船内でのギターと唄の練習、ランニングや英会話上級教室、水彩画教室、趣味の会や講演会への出席に忙殺されてあまり進んでいません。旅行に行ったために遊んで、やる気をなくすようにはしたくないのです。常に昨日よりも今日、今日よりも明日の自分の方が進歩していたいのです。船内のジムで走っている時や船内デッキを歩いているときでも時間を無駄にしたくないので、英会話を聞いているので、DUO 3.0/CD復習用(写真2;これが英会話を上達したい人には一番お勧めです)、ALCのキクタン英検準一級の2冊の本の例文をiPhoneを通して頭に叩き込んでいます。

 

変な楽器を持ってビートルズをやっている人

 日本を出発して3週間も過ぎると少しずつ、僕も顔を覚えられて「健康長寿について講演した人」、「タヒチのモーレア島で英語ガイドの通訳してくれた人」と呼ばれることがありますが、一番多いのが「変わった楽器を持ってビートルズをやっている人」なのです。「走っている人」とはあまり言われたことがありません。実は僕はギターが好きで、モーリスやヤマハ、K.ヤイリ(以前に持っていたマーチンHD28よりも音がいい!)など結構いいギターを持っているのですが、ピースボートに乗って、ライブに参加することや、自分でライブを企画するなんてことは全く考えていなかったので、今回はマーチンのバックパッカーというコンパクトなギターを持ってきました(写真3)。音は悪くはないけれど、大きなギターにはかないません。最初はなんでいいギターを持ってこなかったんだろうと後悔していましたが、「変わった楽器を持ってビートルズをやっている人」ということで知られるようになったのは、いいことかもしれません。ピースボートでは毎朝6時から9時まではバーを借りて「楽器演奏広場」がオープンします。ギター(クラシックギターもエレキギターも)だけでなく、ウクレレ、エレキベースやバイオリン、トランペット、フルート、トロンボーン、ハーモニカ、オカリナ、パーカッション、琴や民族楽器、指笛や声楽の方など多種多様、ありとあらゆる楽器が集まり、コンサートも定期的に開催されています。そして開催するのはピースボートではなく、我々乗客自身も自主企画をすることができるのです。コンサートも初心者レベルからプロまで、誰でも参加できるのです(写真4-6)。僕もギターと唄の師匠である塚本さんと一緒に50分間のコンサートの企画運営をしましたし、自主企画で講演を2回しました。講演の反響は意外と大きく、熊本のご夫婦に「もっとお話をお聞きしたいので、食事を一緒にしたい」、4人の見知らぬ方たちから、同様に「食事を一緒にしたい」、そしてシンガポール、マレーシアの日本語の堪能な方たちも講演を聞いてくれていて、「私たちがピースボートにお願いするので、英語通訳をつけてほしい」という要望がありました。お食事会はもう2回済ませましたが、メモを書きながら、健康長寿について様々な質問を受けました。反響が少しでもあったのはとてもうれしいことです。

 

若い人こそ、ピースボートに乗ってみたら?

 船では15日に開催される運動会の準備で若い人から高齢者までみんなで盛り上がっています。玉入れ(写真7)、綱引き、大縄跳び(写真8)、障害物競走などの競技を誕生月で赤組、青組、黄組、緑組に分かれて競うもので、妻は緑組なので「お父さん、何か緑のTシャツ持ってない?」と聞いてきたので、大阪マラソンの黄緑色の完走Tシャツを貸しました。僕は運動音痴なので応援だけにしようと思いましたが、運動神経は関係なさそうなので誕生月で分けられる黄色組に参加することになりました。若い人たちが中心となっている運動会の実行委員たちの準備(写真9)を見ていると高校、大学時代の学園祭の準備を思い出します。僕も大学生の時には学園祭の実行委員になって、朝から晩まで、時には実習までさぼって学園祭の仕事に没頭したものでした。それは今でも良い思い出になっており、自我、アイデンティティの形成に大いに役立ったと思っています。

 何度も言いますが、ピースボートは豪華客船ではありません。東南アジアの人たちをスタッフにし、ボランティアを増やし、食材も安価なものを選んでいるから、若い人たちでも100万円ちょっとあれば世界一周が可能ですし、最上級のベランダ付きのスイートの部屋でも500万円代です。お酒を飲まなければ衣食住は、基本価格に含まれますから、学生たちは4人部屋で2段ベッドに寝泊まりします。部屋の中で過ごすのは、基本的に寝るときだけです。本を読んだり、PCを使って仕事をするのはホテルのロビーにあるソファのような場所が船内にいくらでもありますし、最上階に行けばプールサイドの日光浴をするような長椅子がいくらでも空いているし(写真10)、7階のウッドデッキにも椅子があります。

 勉強をしようと思えば、どこでもいくらでもできますが、それは大学でもできること。ピースボートでは様々な催しがありますが、それを運営しているのは学生や20歳代の若者が中心なのです。PAの担当、撮影の担当、司会や、催し物の運営アシスタントなどは無償で若い人たちがやっているのが、ピースボートの安さの一因だと思うようになってきました。環境問題や人種差別、性差別、平和を考える講演も多いので、極右の人たちの一部はピースボートを嫌っている人がいますが、日本人だけでなく韓国、中国語圏の台湾、香港、中国、シンガポールやマレーシアなど多民族の人々とうまく共存共栄しています。日本では中国や韓国のことを毛嫌いしている人がいますが、どこの国の方も、話をしてみるとほんと素敵な人がいっぱいいますよ。ピースボート参加者のほとんどが夫婦か1人旅なのでレストランでは、必ず挨拶をして会話をします。日本の日常生活では社員食堂でもあまり話をしなくなりましたが、ピースボートは学校のようなもので時がたてばたつほど知り合いが多くなります。レストランで働く親しいタイ人のスタッフや部屋の掃除をしてくれるインドネシア人にはファーストネームで呼び合ったりしています。僕はこの雰囲気から楽しかった学生時代を思い出すのです。下船した後も、毎年、定期的に会合を持つ人たちや、船で知り合った人たちがリピーターになることもよくあることだそうです。僕はピースボートは初体験ですが、「何回目ですか?」というのがあいさつ代わりになるくらいリピーターが多いのです。まあ、それくらい、充実した生活を送れる場所なんだなと思います。

 学生時代が暗く、思い出があまりない若い人がいれば、一度、ピースボートに乗って、スタッフとしてボランティア活動をやれば、同世代の人たちと苦労を分かち合えることで、きっといい仲間が増えることだと思います。僕も何の思い出もない灰色の生活だった高校生時代と比べ、様々な体験ができて大人になれた大学時代が人生で一番、捨てがたい思い出でしたから。そしてその時の友達が今でも一番の親友ですから。

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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