チリの氷河に行く

 バルパライソを出港してから、太平洋は波が非常に高く、船は大いに揺れ、空には厚い雲、海は色を失い、鉛色になって強風が続き、気温は徐々に下がっています。季節は南半球なので、夏とはいえこの船旅で、一番寒いところに来ました。平均最高気温は13℃、最低気温は6℃です。

 船は荒れた太平洋を避けて内海に入り(地図を見ると一見、大きな河のように見えますが、瀬戸内海のように穏やかな内海なのです)、1月28日15時に海峡に入り、夜間は内海を通ってフィヨルドを進み(図1)、1月29日の早朝にはピオⅪ世氷河の間近に到達し(写真1-2)、朝7時にピースボートの最上階で巨大な氷河をバックに記念撮影。ピースボートは夏でも溶けないこの氷河を見るためにこの長い内海を通ってきたのでした。

 この船旅は2月11日にリオデジャネイロに着きますが、その時がリオのカーニバルの最盛期なのです。ピースボートでもブラジル情報やカーニバルの歴史を学び、実際にカーニバルに参加したダンサーのダンス(写真3)を楽しみましたが、その迫力のすごいこと。本物のカーニバルにはあまり興味のなかった僕たも余ったスタンド席のチケットを購入しました。

 

南米大陸最南端の街プンタアレナスに停泊

 その後、内海水路を戻って、1月30日、31日にはチリ側の南米大陸の最南端でマゼラン海峡に面したプンタアレナスに停泊しました。プンタアレナスは年間を通じて風が強い街ですが、バルパライソと同様、パナマ運河開通までは、太平洋と大西洋を結ぶ重要な航路であった同海峡を航行する外洋船の寄港地として繁栄したそうですし、最果てなのでチリの流刑地でもありました。今は人口13万人の牧羊で得られた羊毛や羊肉の拠点になっています。海岸には海鵜、カモメとたくさんのマゼランペンギンがいました(写真4)。ここは人口13万人とは思えないほど、大きなショッピングモ

ール(この中にはユニクロの看板も見ましたが、なぜかGAPなどの他メーカーと一緒で、お店の中にはユニクロ商品は皆無でした: 写真5, 6)やスーパーマーケットが港の近くに多く、どのお店の店員や警備員の人たちもとっても優しい人ばかりでした。

そしてこれまでの、あるいはこれからの南米・アフリカの中ではかなり安全な街です。ただし英語の通じる人は全くいなかったため(これは南米各国で言えます。ホテルのフロントはさすがに英語を話せますが、タクシーの運転手やお土産屋さんの店員もまったく英語を話しません)、ポケトークが大活躍してくれました。僕はこの時、旅行者下痢症でしょうか、2日間下痢が続いていたのですが、ロペミンを持っていなかったので、ショッピングモールの薬店でロペラミドを購入。小さな2mg錠(日本の倍量)が6錠入って3,990ペソ(638円)とリーズナブルな価格でした(写真7)。それとチリ人が好むMerquenという辛みの調味料と好物のマシュマロを2袋(1袋150円程度で日本とほぼ同じ)購入しました。チリワインも欲しかったのですが、なぜかこのあたりのスーパーマーケットにはチリワインどころかビールも売っていなかったので翌日はワインを買うために港から6km以上離れたUnimarcという大きなスーパーに行きました。南米では日本で見られない種類のバナナを多く見ました。クスコでも赤いバナナや太目のバナナを買って食べましたがとてもおいしかったです。ここでは緑のバナナが売っていましたが(写真8)、店の人の話によると、これは料理油のバナナなので、そのまま食べてもおいしくないそうです。その後は船内でなくしたギター用のカポタストを楽器屋さんで購入しました。僕の持っているマーチンのバックパッカーというギターのネックは太いので、クラシックギター用のものでないと合わないのでです。ずっと他人のカポを借りていましたので、ちょうどよいものがあって本当によかったです。天気は午前中の霧雨はやみましたが、ほんとプンタアレナスには風の強い街でした。でもカラフルな家が並ぶ素敵な街でもありましたし(写真9)、この辺りの日の出は6:20、日の入りは21:44と1日が長く(白夜のよう?)、1日を長く楽しめるのはとてもお得な感じがしました。

 

南米最南端の街ウシュアイアでパタゴニアトレッキング

 2月2日にはアルゼンチン側のフエゴ島に位置する南端に位置する人口6万人のウシュアイアに停泊しました。この辺りは南米大陸のプンタアレナスよりも200kmも南にある島で、いわゆる「世界の果て」でもあり、1人200万円以上もするオプショナルツアーの南極クルーズに行く人たちもこの街を起点にします。ここもプンタアレナス同様、アルゼンチンの流刑地としても有名で、刑務所は観光地になっています(写真10)。日本の網走みたいですね。ブンタアレナスよりもやや寒く、この旅で最も寒いところです。ウシュアイアに着いた時から、見渡す限り、険しい山々があって(写真11)、まさにあの防寒・登山ウエアで有名な「パタゴニア」のマークのような形の山々が連なっており、初めてスイス・オーストリアのアルプスを見た時のような衝撃でした。

 ここでは船内のオプショナルツアーのパタゴニアのミニトレッキングを選択しました。僕たちは基本的には船内のオプショナルツアーは高いのであまり参加しませんが、ウシュアイアという小さな街を起点とするパタゴニアツアー自体がウェブ上では見つからなかったので仕方ありません。ピースボートでは高齢者が多いためか、トレッキングといっても息が切れるようなきつさはありませんが、風景はどこを見ても、さすがに美しいです(写真12)。

時々、上高地や尾瀬のような湿地帯や池がありましたが、これはアルゼンチン海軍が1940年代に毛皮で産業を育てようとビーバーを連れてきたのですが、彼らが川をせき止めて池を作ったために、水に弱い木が枯れてこのような池ができたとのことで(写真13)、せっかくビーバーが作ったダムを、住民が壊して森林破壊を食い止めているそうです。ビーバーはその後、毛皮にもならず、天敵もいないため数は増えましたが、ヒトと共存しているそうです。ウシュアイアはタラバカニがおいしく、列車「世界の果て号」、世界の果て博物館、堺の最果て駅、世界最南端の郵便局があり、アラスカから続くパンアメリカンハイウェイの終着点です。

 ピースボートは2月3日より大西洋に出て南米大陸の東岸のアルゼンチン、ブラジルに向かいます。2月7日には世界最大のイグアスの滝、そして2月11日にはリオのカーニバルが待っています。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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