最初の講義は昨日と同じで、Dr.Dreilingという医師による心疾患検査について。僕にはあまり理解できなかったがエコーや画像診断についても習った。彼はなぜか僕に興味を持っているらしくて、「君の英語はすばらしい。どこで習った?」と聞くから「まだまだだめです」と答えると「私の日本語よりずっとうまい」だって。これってほめ言葉?
興味を持ってくれたのは、昨日ドクターが「尿酸は心疾患のリスクファクターである」って言ったから、「透析患者では尿酸値が上がるけどそれによって心疾患が悪化することはない」と質問したからかもしれない。「腎不全患者は別の話で、尿酸値は心血管病変のリスクファクターにはならない」と答えてくれた。
オレゴンでの講義スタイルは教授によって個性がまったく異なる。今日のドクターはジーンズをはいていたし、講義中に実践的なクイズを出すことも多い。中には正解者にキャンディを配る先生もいる。みんな身振り手振りを交えながら話し、広い階段教室を歩き回ったり、ジョークで笑わせるなどエンターテイナーみたいだ。学生の心をつかむのは大変なんだと思う。学生は帽子をかぶったままでもOKだし、授業中にバナナやリンゴをかじっている子もいる。でも日本と最も違うのは居眠りしている学生が1人もいないということ。
今日は授業が終わって講義内容についてのアンケートが回ってきた。講義はわかりやすかったか?配布資料はうまくまとめられているか?配布資料やスライドが見やすかったか?を5段階評価しそして自由に建設的なコメントをという欄が広いスペースであった。このようなアンケートを行っているからか、教授は後ろからは見えづらい黒板を使うことは全くなく、授業前にはパワ-ポイントの6分割のスライドをファイルで渡しておいて、まったく同じスライドを使って講義したりOHPを使ったりの形式が多かった。だからみんな予習できるし鋭い質問をする。スライドに写ったものがテキストになかったら「それを後からコピーして配ってくれ」と学生側から文句が出ることもある。
午後はAliについて病棟に行く。例の腎移植後、薬剤性糖尿病になった1歳の女の子が下痢をしている。これは矯味剤にソルビトールを多く使ったためだ。シロップ剤の種類の少ないアメリカでは錠剤をつぶしてイチゴシロップ、オレンジシロップ、単シロップなどに溶解して作るのだが、ソルビトールは溶解性が高いためと、DMだから血糖値が急上昇しないようにという配慮から多く使われたみたいで、シロップを作り直してもらった。
フェリチン値が2500ng/mLと異常高値のため腎障害を起こした患者にはデスフェラールの内服が使われた。これはPhase Ⅲで発売前だが注射薬に比べて皮膚炎が起こりにくいのだそうだ。
PharmD4年目のJanに「これは高アルミニウム血症にも使われるんだよ。高アルミニウム血症は透析痴呆症といわれる脳症と骨軟化症の原因になるんだ」とデスフェラールの構造を書きながら教えてあげた。Janの医薬品集にはちゃんと高Al血症の適応があった。
今日は退院処方が多いので、Aliは大忙しだ。ちなみに退院処方は30日分だ。ドクターが処方を作成してくれるようにAliのオフィスをよく訪ねてくるが「今は忙しいので、1時間待ってくれないか?」と丁寧に追い返す。その後ドクターとディスカッションするが、Aliの言われたとおりの新規処方をし、言われたとおりに不要な薬剤を中止した。ここではドクターとAliの立場まったく逆転している。カルテには付箋が張ってあるページがあって「これはナースか薬剤師が書いているのですか?」と聞くと「アメリカではCase managerという保険についてチェックする職種の人がいて、ドクターの医療行為に介入することがあるんだ」と説明を聞き、アメリカの医療制度の問題点を感じた。
Aliは講義もする暇がないから廊下を歩きながら「一番優れているβブロッカーは何だと思う?そしてその根拠は?」などと聞きながら、各々エビデンスを説明しながらカルベジロールの有用性について説明した。
処方変更すると続いて服薬指導だ。Aliは普通は早口だが服薬指導は非常にゆっくりわかりやすくちゃんと相手の目をみて説明する。日本のように目線をあわせるために座ったりはしない。「透明のインスリンは1日3回ブン、ブン、ブンとすばやく効くんだよ。だけどにごったインスリンは(両手を伸ばしながら)すごーく長く利くんだ。」こんな説明だとだと誰でも理解できる。
薬剤起因性の昏迷があるかないかをチェックするときには「大統領の名前は?」「Bush」「じゃ今日は何曜だったっけ?」「木曜日」と聞いて「パーフェクト」といって確認していた。
Janは中国から来た子で、レジデントのBryanよりもはるかに優れている。彼女に聞くとundergraduateを2~4年行って、PharmDを4年行く。さらに薬剤師免許を取得したら、調剤薬局(オレゴンではスーパーの中にあったり、巨大チェーン店が多い)に勤められるけど、病院薬剤師になるにはさらに Residentを1年、専門薬剤師になりたかったらさらにその専門の病院に1年間、さらにFellowshipで1年研究する人もいるそうだ。一人前の薬剤師になるには10年近くかかる。Janは薬剤師の卵のPharmD最後の年だが、臨床のことも薬理学も、薬物の構造についても動態についても実によく知っている。白鷺病院にいた頃、ある薬科大学の教授が白鷺病院に訪問したとき、「ピラマイド」を見て、「この病院では古い薬を使ってるんですね」と言ってたが、この教授は臨床を教えているにもかかわらず10年も前に結核治療のガイドラインが変わったことすら知らなかったのだ。こんなことはアメリカでは起こりえないことだと思う。
これから医師や医学生に臨床薬理学の重要性を教えれば、難しい症例は優秀な薬剤師に処方をまかせようということになるかもしれない。そのためには「臨床をよく知った優秀な薬剤師」を育てる必要があるなと感じた。一方、薬剤師は医療薬学会や薬学会などの薬学系の学会にとどまることなく、自分の行っている病棟の専門性を生かした臨床系の学会に参加しなければ最新の情報は得られない。最新の情報を知らない薬剤師は医師から信頼されることはないと思う。
今日は初めて迷子にならずにすんだ。オレゴンは霧雨が多いし、この時期からよく雨が降るそうだが「インディアン、嘘つかない」「オレゴン人、傘ささない」。
今日習ったこと:10/6
カルベジロールの利点はインスリン感受性を挙げて体重を減少できる。コレステロールを下げるが、アテノロール、メトプロロールはコレステロールを上昇させる。ロプレソール、カルベジロールは中枢神経系の副作用が少ないが、アテノロールは半減期が長いので、中枢神経系の副作用が起こりやすい。
Crを上げずにBUNだけが上がることのある薬物はシメチジン、プロベネシド、ペニシリンなど。
ソルビトールは単シロップに比べ溶解性が高いために矯味剤として用いやすい。
屯服のことはAs neededという
昨日のオレゴン日記は長く書きすぎたため、8時半過ぎに学校を出た。でもバスがない。この時間帯は40分待たないとバスが来ない。アメリカの夜は安全なポートランドでも危険で1人歩きしないように言われたが、ジョギングをしている2人組もいたので、心配はしない。ダウンタウンで降りるはずがまた見逃し、迷子になる。乞食によく声をかけられるが、これは無視する。ポートランドの一般人は優しい。バスを待っている人が停溜所を3つ分くらい一緒に歩いてくれてようやくMAXにのって帰宅。帰りがけに寄ったセブンイレブンでビールとアイスクリームを買ったが、ビールは350mLなんてない。ほとんどが500から1000mL以上だ。バドワイザーの価格は発泡酒並みの安さなので500mLを6本買った。9時過ぎにホテルに着くとホテルから部屋を代わるように言われたので荷物をまとめる。おかげで外に食べに行くことができない。ファミレスのデニーズも閉まっており、仕方なく朝食でくすねたパンとドーナツ、リンゴ、それとインスタント味噌汁ですませ、オレゴンで初めてのビールを飲んで寝た。4時半に目が覚めたが、来週からはOncologyで、朝7時にくるように言われたので、来週からは5時に起きて朝食抜きで行かなくちゃ行けない(ホテルの朝食は6時半から)。
今日の講義は医師による心疾患検査についてと、薬物動態。学生がこれだけよく知っているのはなぜかと思って聞いてみたら山ほど本を買わされて、前もってみんな予習してくるんだって。実習時間は毎日じゃないから日本よりは大学内でのゆとりはあるみたい。人によって3回生もいたり、4回生もいたり。たぶん飛び級のためだろう。Pharm.Dを取得するのには8年かかるそうだ。今まで、僕は6年だと思ってた。これじゃ日本の薬剤師のレベルが違うのは当たり前かもしれない。
午後はAliのところに行きレジデントの学生の発表(リチウムの腎毒性と甲状腺機能低下症と亢進症について)そのあとAliによる糖尿病性腎症についての講義。これは得意中の得意だから、英語はうまくないけど中心になって答えることができた。これについては本当は僕のほうがよく知っているけれど、あまり話しすぎて嫌われるといけないので我慢した。服薬指導の後、錠剤を粉にするピルクラッシャー、Med Box(4×7の分割箱)、錠剤を半分に分割する器械などのお土産をAliからもらった。
コンピュータにアクセスできるようにパスワードをもらったがアクセスできない。事務はもう帰っているし、また明日の朝、聞いてみることにする。
今日習ったこと:10/5
Cytomegalovirus (CMV)の抗体陽性率は日本人では100%。
LiはNaと共輸送により神経細胞や筋肉細胞に入る。
9人中7人がリチウムを中止しても腎障害が進行した。尿細管間質障害だけでなく糸球体障害も起こる。
2型でも1型でもHD導入率は同じ。
2型糖尿病の90%が網膜症になる。網膜症は細血管障害の中で最も最初に起こる。
糖尿病性腎症では腎機能がCCrで10mL/min/年(1mL/min/月)低下する。
糖尿病性腎症では尿中マイクロアルブミンが300~500mg、蛋白が3~3.5g/日出る。
eMedicine×薬物×腎毒性で腎障害の発症頻度がわかる。
eMedicineに病名を入れるとその特徴がわかる。病気の原因、人種差、死亡率、発祥暦、病態がわかる。
今日は事務員のネイサンの案内で授業前に白衣を買いにいく。久しぶりの快晴、「これぞ、オレゴンだよ。アスファルトの道なんかやめて土の道を歩こう」と言うネイサンと一緒に白衣を買ってからMackenzy Hallで午前中は学部長のDr. Kradjan(Applied Therapeuticsの編集者の1人)の心不全の講義その2とSandra Earles先生の薬物動態の講義。学部長は心不全治療の概論を述べ、Dr. Sinが実践の臨床的なことについて補則するという形式で、これはほぼ医学部で習うようなエビデンスに基づいた講義内容で、相変わらず学生の鋭い質問があった。これが3回生ではじめて臨床について習っていると学生から聞いて、日本の学生の甘さが感じられた。だってかなり予習していないとあんな鋭い質問はできっこない。薬物の成分名だけでなく多くの学生が「ラシックス」や「ノルバスク」などの商品名まで記憶している。講義はメトプロロールとカルベジロールを比較して長所・短所を説明するなど、内容はかなり濃い。1時間後に5分間の休憩があるが学部長とDr. Sinの周りには質問をする学生が列を作っている。これもなんという積極性、日本と大違い。
2時限目は実践的な薬物動態。薬物を連続投与し、3ポイントの血中濃度を測定し、その結果から、X時間後の濃度はどれくらいになるかを関数電卓を使うだけではなく、片対数グラフを使ってOHPのシートに書きながら説明する。もちろん学生も片対数グラフをもらって半減期、AUCの計算、平均定状状態濃度の計算をする。最後には数人ずつに1台コンピュータが配られ、どのようにしてグラフを書くか、濃度の計算をどのような式を用いて行うかを習得する。こんな講義は薬剤師会の講演でも必要だと思う。だって日本の薬剤師はTDMをやるにも解析ソフトがないとできないと思っているし、VdもFもCLもほとんど知らないんだから。
食欲がないというか食堂のハンバーグやピザのにおいをかいだだけでもむかつくので昼ごはんはなし。本当はご飯と漬物と味噌汁がほしい。
午後は昨日と同じAli Olyaeiのオフィスに行くが、方向音痴なので何度も道に迷った。でもみんな親切に案内してくれた。オレゴンの人はみんな優しい。
Aliにはレジデントの学生2人と一緒に最初に高リン血症治療薬、ACE-I, ARB、腎毒性について講義を受けた。主に学生2人に先に質問をしてくれたが、日本の大学院生とは比較にならないくらいレジデントの学生のレベルはかなり高い。彼らは常にPDAを持っていてその中に医薬品集formularyが入っていて、先生の質問にもすぐに答えられる。
講義の後は5時までAliと一緒に病棟に回る。クレアチニンが2.2mgの心内膜炎にゲンタシンとバンコマイシンが併用されていることが判明。TDMはドクターが指示を出しているが、ゲンタシンを200mg近く投与し、トラフ値が11.5mg/Lと異常高値であることが判明。このままでは腎機能は悪くなる一方のはず。直ちにドクターにゲンタマイシンの投与をやめて血中濃度測定を依頼する。TDMは医師が指示するが実際には薬剤師が主導権を握っている。バンコマイシンの目標トラフ値を聞くと「10~20μg/mL、で肺炎の時には20μg/mLに設定する」といわれ、AliはDr.Craigの最新の文献をチェックしていることがわかった。日本では添付文書が10μg/mL以下になっているから、こんなことを言う人は僕と森田先生(同志社女子大)しかいないと思う。
Aliはどんなに患者が重症でも積極的に服薬指導に連れて行ってくれた。この内容がすごい。まず処方を作成し、ドクターの了解を得ると薬の一覧表を作り、処方箋を薬局にFAXしできた薬を持って説明する。ここまでは僕たちと一緒(僕は最初から処方することはなかったが)。服薬指導では膵腎同時移植した患者に一覧表を渡し、薬の名前、いつのむか、何錠飲むか、食後に服用するべきか、副作用は、について説明し終えたら、リピートさせる。つまり「朝飲む薬の名前は?何錠のむんだっけ?食後か食間かいつに飲むんだっけ?」のように。これは南カリフォルニア大学のDr.Sigbandが提唱している「フィードバック」の手法をちゃんと守っている。患者のほうも免疫抑制剤やステロイド、そしてそれらの副作用を防止する薬だから必死になって答える。答えが完全になるまでフィードバックさせる。日本では患者の理解力がありそうならそこまではしないが、患者は見た目では判断できない。理解しているようで理解していないことが多いため、この手法は日本でも取り入れるべきだと思った。
米国ではPTPや散剤はほとんどなく錠剤を瓶に詰めて渡す。そのかわり一週間分の朝昼夕寝る前の28分割のケースはちゃんと渡してた。錠剤を半錠にするのも錠剤を砕いて粉にする器械(ピルクラッシャー)も簡単なプラスチック製のものがあってそれを患者に渡し、患者自身が粉にしたり、1/2錠にしたりで、案外不親切なようだが、考えようによっては患者に任せている、つまり独立心を大切にする国民性の表れなのかもしれない。
次に腎不全からCAPD導入後、腎移植を受けたが、タクロリムスの副作用で糖尿になってしまった1歳の女の子のところにいく。小児病棟では白衣を見るだけで赤ん坊は泣くので、白衣を脱いで部屋に入る。免疫抑制剤を投与されているので、厳重に手を洗うが、マスクやガウンは着ない。なぜなら個室なのに日本の6人部屋よりも広いから患児から遠く離れて父親に服薬指導をする。免疫抑制剤などの大切な薬なので、父親も一生懸命になって話を聞いてくれる。「ほかの薬剤師が食間に服用って服薬指導しても絶対に食後に服用しなきゃだめ」と説明しているのが気になったが、胃腸障害を起こさない配慮だと思う。
服薬指導の途中でAliの顔見知りの女性腎臓内科医と会う。僕を紹介してくれて「腎障害患者のNa制限は日本では6~7g/日なんだって?アメリカでは2~3gよ」と聞いてビックリ。日本人は1日2~3gの食事は不可能だ。アメリカ人との食生活の違いを感じたが「東北地方の人は1日30gの食塩を摂るんですよ」と説明すると今度は相手がビックリ。
ほかにもかなり重症の患者を見た。だってAliは腎専門薬剤師といっても移植病棟の専任薬剤師だから。彼の実力は本当にすごい。僕も完全に脱帽である。今日も寂しくホテルに帰る。早く日本に帰りたい。母ちゃんのおかずが食べたい。漬物と味噌汁だけでもいい。でも学ぶべきことは多い。辛抱、辛抱。
今日習ったこと:
ラシックスの最大投与量は注射で240mgを1日2回。
急性期には半減期の長いカプトリルがよい。
Ejection fractionの改善はカルベジロールのほうがメトプロロールよりもよい。しかし血圧はカルベジロールのほうが低下しやすい。
βブロッカー全体にいえることだが、メトプロロールは倦怠感、めまいを起こしやすい。
腎毒性について調べるにはClinical Nephrotoxins ?Renal injury for Drug and Chemicals, 2nd Edがよい。Kluwer Academic PublishersからMark E DeBroeらの編集で売っている成書。
ACE, ARBの使用はDM発症率を低下させる。
イトラコナゾールはin vitroでは効果が高いがin vivoでは弱い。
アメリカの透析患者は健常者に比べて35倍早く死ぬ。
リン吸着薬の使用は炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、レナジェルの順。
シナカルセットの効果は高い。
アムホテリシンBの構造は水溶性サイドと脂溶性サイドがあり、そのため組織移行性が高い。
アムホテリシンBは尿細管障害により2~3週間の使用でGFRが低下する。ただし早期にクレアチニンやBUNが上昇する(80%)。
アムホテリシンBを3ヶ月使用すると85%の腎障害が回復しない。
アムホテリシンBを2g(約20日)以上の使用で45%の腎障害が回復しない。
Deptomycinは肺炎に有効だがcyclo lipopeptideという新しい種類で横紋筋融解症が起こることがある。
フェニトインには心毒性があるため投与初期から注意深い観察が必要。
いよいよ今日から大学へ。興奮しているからか朝4時頃目が覚めました。MAXという市電に乗ってバスに乗り換えていくんだけど少しややこしいい。行ってみると僕は教授扱いで広いオフィスとコンピュータをもらいました。学生も教授たちもみんな僕のことを知っていていろいろな人に話しかけられて戸惑いました。でもやってることは学生か実習生だけどね。授業は心不全と薬物動態の二科目。薬物動態も日本とは異なり実践で使える臨床薬物動態学すごく白熱していてしょっちゅう学生が先生に質問するし、先生も学生に問いかけると学生はみんな先を競って答えを言う。教授の教え方も丁寧でわかりやすく手作りテキストも充実している。日本の大学で教授が難しいことを言って、何も反応しない学生ばかりなのとはわけが違う。
午後になって腎臓専門薬剤師のAli Olyaei(イラン系のnephrologist、すごい病棟薬剤師で、腎毒性の講義もうまい)について病棟を回る。オレゴン州の薬剤師には処方権はないが、重症患者の処方は全面的に任されている。処方を病態、体格にあわせて処方し、ドクターのところに行くと「Perfect!」の一言。それから薬局に処方せんを送り、処方をもらったら、即、患者のところに行き、服薬指導。今日は腎移植を受けた1歳の赤ちゃんや肝移植を受けて退院間近の高齢女性。どちらも免疫抑制剤やその副作用防止のための処方で、処方数もかなり多い。頻繁にポケベルが鳴り、そのたびごとに病棟に行く。患者さんや意思やドクターから「Hi! Ali」と声をかけられていつもにこやかに対応する。その後、薬学研修生2名と一緒に腎毒性についてPower Pointを使った講義を受ける。僕も薬物の腎毒性についてはよく知っているつもりだったけど、完敗だった。もっと勉強しなくては・・・・。それと驚いたことに腎不全の薬物療法の世界一の権威であるWilliam Bennet先生がポートランドに住んでいて、Ali Olyaeiもムナ先生も彼の教え子のnephrologistだった。僕がBennet先生のことを尊敬しているというと、すぐに電話をかけてBennet先生と話ができた。彼はシカゴ出身でホワイトソックスの大ファン。井口の話もした。
大変な一日だった。これが毎日続くと神経が参りそう・・・・。
今日習ったこと:10/3
Pixisという自動薬物引渡し装置が薬局にあったこと。
ACE-Iは副作用を考慮して少な目から投与すること。
ACE-Iの中でラミプリルは半減期が飛びぬけて長い(50~120hr)。心筋梗塞後の予後もACE-Iの中で一番よい(Pilotel, et al: Am J Intern Med 141: 102-112, 2004)。
ACE-Iの蛋白尿抑制作用はdose dependentだが、降圧作用はdose dependentではない。
ACE-Iによる血管浮腫はいつ起こるかわからない。投与後1年後に起こることもある。これはbradykininは関与していない。
ACE-Iに比べてARBのほうがカリウムは上がりにくい。
MDRD法は従来のCockcroft法に比べて優れている。計算式は複雑だが、検索エンジンでMDRPとCalculationで自動計算できる。
トリメトプリム、シメチジン、セファキシジンは腎毒性がない。
今日あった先生:Hearleen Sings(Internal medicine, Heart failure), Dale Kramer(統計と薬学経済学)、Donna Bella(PK), Wayne Kradjan(Heart Failure, Dean)、Allison(Aliのボスのnephrologist)、Ali Olyaei(イラン系のnephrologist、すごい病棟薬剤師で、腎毒性の講義もうまい)、Anji and Neithan(事務)
今日、会った学生:Sully(大阪出身の友達がいるメキシコ系の?女の子)、Hai(ベトナム系の男の子でカリフォルニアに家がある)、Thuy Duong(日本語のうまい子)
今日行った所:Gaines Hall, School of Nursingを通って講義室(Mackenzie Hall)、Hatfield research Center/HRCV emergency Dept 9階:Ali Olyaeiのオフィス)
今日は昼にムナ先生一家がたずねてきて中華レストランで昼をご馳走になりました。ご主人はウイリー、長男は高1のマシュー、小学校5年のジャスミン、その後、お宅を訪問しましたが、これが大豪邸、築10年だけどすごくきれいで、子供2人ともスポーツ好きで、ジャスミンとは英単語をどれくらい知っているか競争したり(これは僕の圧勝)、クイズをしたりで仲良しになりました。そのあとコウズのような量販店Coscoに行き防水コートとジャージの上下を買いました。驚くほど安いです。昨日行ったダウンタウンは日本のデパート並みに高くて何も買えませんでしたが・・・・。マルちゃんのカップめんが24個入りで6ドル足らずという安さだったので、思わず買ってしまいました。買い物を済ませてからムナ先生のお宅に行って夕食をご馳走になりました。10月末にはハロウィンがあって、僕も招かれましたが、仮装していかなきゃならないそうです。アメリカ人との付き合い方ってよくわからないから少し不安・・・。アパートには10月10日に引越しです。ホテル住まいはビュッフェスタイルの朝食付きなので、食べ終わってからパンやりんごをポケットに入れて昼ごはんにしています。1人でレストランに行くのは苦手です。
ポートランドのエージェントの方の助けで今日になってようやくインターネットがつながりました。でもおかげで東京に30分も国際電話しました。今月の電話代は高いだろうね。
今日は1人で大学まで行ってきました。だけど、どうやっていけばいいかエージェントの人もホテルの人も誰も知らない。交通会社に電話で問い合わせたけど今日は土曜日だから電話も休み。さっぱりわからないので、不安だったけど電車の中で南米から来て10年以上住んでいるエマというおばさんに話しかけられて、親切にも大学まで連れて行ってくれました。話によると娘さんがこの病院で亡くなったみたいで、だからよく病院の行きかたを知っていたんだろうけど、この話を聞いてつらかったです。ホテルからだと大学まで電車とバスの乗り継ぎで30~40分くらいかな?
メール:T先生(白鷺病院の元同僚でテニス仲間)へ
明日、会う約束の先生からのメールでは月曜日は先生たちと昼ごはんを食べて紹介するとメールで書いていましたので、長引くかも知れません。明日、いつか早く終われる日があるかどうか聞いて見ます。
今日、日本食を売ってる店「安全」に行きましたが、約2倍以上しますね。「緑のたぬき」が300円から400円なんて信じられないくらい高いですね。お米だけは安いですが。
メール:T先生より
こちらにも、それに似た店がありますが、特価日で、160円ぐらいでしたけどね。オレゴンは、日本食を売っている店は、高いのかもしれませんね。
確かに、こちらでも日本食品は、割高ですが、1個買えば、結構一人なら十分ですよね。
もし、可能なら10月8日に、平田さんが、レンタカー借りて、シアトルに来て、10月9日の夕方にポートランドに帰るというのは、どーですか?多分、その頃には、僕の車がないので。
多分、車を持たないなら、シアトルに来るのは難しくなると思うので。どーですか?この機会に。
まあ、ガソリン代、車代を考えると割り高になりますが、ホテル代は、いりませんよね。でも、フトンが、一人分しかないのですが、敷布団は、近所にTN先生が住んでいるので、キャンプに使うマットは、借りてこれるので、上フトンを買ってもらえれば、ありがたいのですが?
でも、アパートに移ったならば、必要になるでしょう。その分で、シアトルで買ってもらうというのは、どーですか?IKEAと、いうのが、あって結構なんでもそろっているので、Twinならば、$40ならば、いい掛けフトンが、売っていますが、もし来るなら買っときますが。代金は、後払いでお願いしたいのですが。
もし、来るとしても夕方になるでしょう。来た時に、フトンが無ければ、寒くて眠れませんよね。
地図は、インフォーメーション・センターに行けば、もらえると思いますよ。土曜日で朝ならば、I-5は、すいていると思うので、運転しやすいと思います。左車線を走って、こちらは、右車線が、追い越し車線です。
I-5を北に向かい、I-405(Bellevue)に入って、北に向かいます。Exit13で、降りて、NE8thを東に向かうと、156thAveというのが、あってそこが、Cross Road Mallになっています。そこで、電話をくれれば、待ち合わせ場所まで、徒歩10分くらいで行けるところです。
また、連絡下さい。
T先生へ
国際免許は持ってますが、僕が車の保険に入っていないのでレンタカーは難しいですね。数日間の保険でもあれば別の話ですが。それよりも「地球の歩き方」をなくしたため地図がないので地理をほとんど知らないのが一番の不安ですね。
お会いしたいのはやまやまですが・・・・。
この後の電話で結局、レンタカー代は出すからT先生にシアトルから来てもらうことにしました。
新世紀の薬剤師の1日
私なりに新世紀、それも30年後の理想的な病院薬剤師像を、急性期病院で活躍するAさんと慢性期病院で活躍するBさんを想定して考えてみました。
◎Aさんは年齢30歳、薬学部卒業後、大学院の社会人コースに通いながらPharm Dを取得し2年経過したところです。朝9時から夕方5時までの勤務ですが、今日は早朝の抄読会があるため、7時半に病院に行き、内科医師達の抄読会に参加します。今回の発表はAさんの担当なので、遺伝子診断による薬物投与設計について最新の英文ペーパーを抄読します。20世紀には一般病院ではできなかった遺伝子タイピングも今や患者さんの毛髪1本あれば薬局においている簡単な器械でタイピングでき、poor metaboliserでもultra rapid metabolizerであってもtransporterの欠損者であっても薬物投与する前に個人個人の体質に合わせた至適投与設計(いわゆるテイラーメイド医療)が可能になりつつあります。遺伝子タイピングによる薬物投与設計は急性期病院だけでなくすべての病院薬剤師の基本的な仕事になっていますが、まだまだ薬物療法において未解明な問題も多くあるため、Aさんはさらなる臨床研究をしているところです。TDM業務は21世紀初頭には大きく進歩し、薬剤師がTDMに基づく科学的投与設計を実施した場合、保険料が加算できるようになったのは10年前のことですが、この2?3年遺伝子タイピングの発達とともにTDM実施件数は少なくなりましたが、これからは遺伝子解析の結果をテーラーメイド医療に生かせるよう薬剤師が医師に代わり投与設計する業務にウエイトが置かれつつあります。現在、TDMは副作用の多い抗がん剤の分野が主流になっていますが、TDM業務は21世紀初頭には動態解析にポイントが置かれていたのと異なり、副作用および効果の確認が一番重要なポイントとされています。腫瘍が縮小したかどうかの判定はドクターの仕事なので、ドクターとの回診・症例検討会は毎日欠かせません。薬剤師は薬物療法の専門家ですから、薬物療法が主体となる症例検討会の時には薬剤師のAさんがイニシアチブをとっています。一方で、常に最新の信頼できる情報を医師に提供できるようAさんはインターネットを利用して最新の文献チェックを怠らないようにしています。患者さんは重症患者がほとんどで、服薬指導を行う機会は少ないのですが、病態が急変したり副作用が発現した時にはベッドサイドに行って副作用の内容を克明に調査します。昨日は薬物アレルギ?による肝障害が起こった症例があったためアレルギーの原因薬物同定検査を行ったところです。薬剤師は21世紀初頭に薬物療法におけるリスクマネージャーとしても認知されるようになりました。薬物の効果確認も大切な仕事です。薬物療法の効果を確認するのための検査のオーダーは最近になって薬剤師でもオーダーできるようになりました。十数年前にTDMの採血依頼が薬剤師でもできるようになり、その業務推進によって治療期間が短縮し投薬コストを削減できることが認められてから、薬剤師の業務内容も幅広くなってきました。近年は医師は診断に専念し、薬物療法に関しては薬剤師がリードして投与設計を行う時代に代わりつつあります。もちろん最終的な処方時にはドクターの承認が必要なためドクターとのコミュニケーションは欠かせません。Aさんは遺伝子タイピングによるゲノム薬理(pharmacogenomics)の認定薬剤師取得を目指しており、5時になると病院の研究室に行って「遺伝子タイピングと投与設計」についての論文をまとめます。薬剤師も臨床系の学会に参加することは20年以上前から当たり前の時代になっています。
◎Bさんの年齢も30歳、20年前に6年制になった薬学部を卒業して6年経った中堅薬剤師です。慢性期病院の薬剤師は当直者を除き、基本的に2交代性勤務になっており、朝7時から昼3時までと昼の1時から夜の9時までの勤務です。今日は早出の日なので、ナースステーションの隣にあるサテライトファーマシーに行って、昨晩、遅出の薬剤師が調剤した薬を患者さんのベッドサイドに配薬するのが朝一番の仕事になります。このように毎食後の薬物投与は薬剤師の仕事になってから、服薬アドヒアランス(コンプライアンスという言葉は死語になりました)は完璧になりました。毎日患者と会話しているため、この病院では副作用の第一発見者は薬剤師です。副作用がでるとドクターに報告して、どのような薬剤に変更するかを議論します。さらに10年前に薬剤師やナースにも一部の処方権が与えられたため、下剤や風邪薬などは患者から頼まれれば薬剤師の判断で処方できます。そのせいか外科系のドクターから、処方を任せられることも増えてきました。そのときはBさんに処方依頼がドクターから来ることになっています。配薬が終わるとナース・栄養士たちと一緒に患者申し送りに参加します。この病院では薬物以外のケアはナース、薬物に関するケアはすべて薬剤師の仕事です。そして医師は医師本来の仕事である診断や処置に集中して力を注ぐことができるようになったために、かつて問題となった医療事故もめっきり減っています。ナースもナース本来の業務に専念できたため、ナースの人数も減少しました。逆に21世紀初頭、この病院の薬剤師は全ナース数の1割しかいませんでしたが、今は薬剤師数が増えて全ナース数の2割を占めるようになりました。消毒薬の調整、点滴の準備だけでなく癌患者さんへのIVHメニューの投与設計も薬剤師の仕事です。10数年前から医師は診断に専念し、経口栄養に関しては栄養士が処方し、経静脈栄養に関しては薬剤師が処方するようになっています。考えてみれば薬剤師はもともとmEq、mOsm、Calといった計算は医師よりも得意なはずなのですから、当然かもしれません。もちろんサテライトファーマシーではIVH処方の無菌調剤も行われます。この病院では退院後のフォローも万全です。退院後の独居老人のところには定期的に別組織の在宅センターから医師・ナースだけでなく薬剤師も行っていますが、在宅センターの薬剤師との連携もBさんの仕事です。
私の提言?あなたにとってのプライオリティは何か??
薬剤師がこれからの生き残る道は中特半端ではなくとことん薬剤師としての職能を発揮することです。Aさんは薬物投与による患者治療cureを自分の職能として発揮するためにとことんドクターとの関係を密にして、薬物投与に関してはドクターを指導する立場として日夜努力しています。一方Bさんは患者careを自分の職能として発揮するためにナースとの関係をとことん密にしようと努力しています。週に1回、主治医、ナース、栄養士とともにカンファレンスも行います。では「とことん何をすべきか?」は勤務する病院によって、あるいは薬剤師それぞれの個性によってプライオリティ(優先順位)が異なってきます。当然そのプライオリティは医師やナースとは異なってくるはずです。薬剤師でないとできないことが最も優先されるはずです。Aさんは投与設計コンサルタントとして、Bさんは服薬コンサルタントの道を優先しましたが、どちらも副作用管理者(リスクマネージャー)としての業務は重要なウエイトを占めています。これからは薬剤師として、本当にやらなければならないのは何なのかを、自らの意志を持って判断し、そしてその実現に努力を惜しまないことが、大切だと思います。ここに私が書いたのは30年後、薬剤師として最良のシナリオかもしれません。現在の我々の努力が実ってこそAさん、Bさんが将来生まれてくるのです。現在の我々が「努力することもなく、与えられただけの仕事をこなし、5時になったら帰る」といったことを繰り返していれば、最悪のシナリオ:つまり、薬剤師という職種がなくなることはないでしょうが、病院薬剤師として必要とされるのは薬品管理だけと判断され、調剤するだけなら別に薬剤師でなくても問題ないと評価されて、病院薬剤師は激減するというシナリオも考えられます。
わからないことが多すぎる
なぜ、病院薬剤師が研究しなければならないか?それは「わからないことが多すぎるから」なのです。今私は、わからないことだらけです。今まで薬学部で学んだこと、多くの患者さんを今までに見てきたことから学んだこと、ドクターから学んだこと、多くの書物や文献から学んだことが本当のたくさんあります。でもわからないことはまだまだあります。今私が知りたいこと。私の病院は腎不全専門病院なので、腎不全患者さんについてのことが多いのですが、たとえば身近な薬のジゴキシンにだってたくさんあります。
別にこれらの疑問は実験室に入って試験管を振らなければできないようなテーマばかりではありません。TDMの測定データと患者背景を詳しく調べることから解明されることも多いのです。
「研究はやりたいけれどテーマがない」なんて行っている薬剤師はいないでしょうか?私は逆です。「わからないことが多すぎる」のです。身近な薬の中にも、わからないことはたくさんありますし、おそらく、上記の疑問は自分で答えを探さなくては、誰も答えてはくれません。だから研究するのです。薬剤師は何のために必要なのか?薬剤師のアイデンティティは何なのか?を考えてみてください。単に薬剤を管理し、調剤するだけなら、今まで学んできた「薬学」は何のためにあったのでしょうか?単に薬剤を管理し、調剤するだけなら、専門学校でも十分教えることができます。4年間学び、そしてこれから先、6年間学ぶ必要があるということに現場の薬剤師からはほとんど異論がでてこないのに、現場の薬剤師が薬学を活用しきっていまい現実は何なのでしょうか?薬学をベースにして調剤すれば、この薬はこの病態の患者にこの量でよいのだろうか?という疑問は必ず生じてくるはずです。そして疑問が生じたら調べるはずです。そして調べてもわからなければ自ら解明しなければ誰が答えてくれるでしょう。薬剤師は薬のプロフェッショナルのはず。この先、6年間勉強してきた薬剤師に教えなくても薬剤師の存在価値を示すことができるような職場に変えていく必要があるとは思いませんか?
“Yes, we can” の輪を広げよう
「えー?学会で発表なんて!」なんて思っている人はいませんか?今までに薬局の先輩達が一度も発表したことがない方はそう思うかもしれません。でも、我々、白鷺病院の薬剤師であれば学会発表は必須の仕事、学会発表することが当たり前になっていますから、どの薬剤師も決して「自分にはできない」とは言いません。私自身が学生時代、相当の劣等生でしたが、そんな私にでもできているのだから、若い薬剤師達も「君にだってできないはずがない」と励ますことはありますが、みんながやっていれば誰でもできてしまうのです。結局、学会活動の活発な薬剤師の多い病院とそうでない薬剤師の多い病院の違いは「私にでもできる」「私にだってできないはずはない」と考えるような土壌ができているかどうかの違いではないでしょうか?決して我々は競って発表しているわけではありません。薬局内の勉強会で疑問に残ったテーマ、解決できていない問題症例を何とか文献検索して、あるいは薬剤師同志で話し合って、あるいは医師やナースなどと話し合って疑問を解決したいと思うのはプロの薬剤師として当然のことだと思っているのです。解決できていない薬の問題点や症例に対する疑問点を全精力を注いで解決し、一定の結論が得られれば、それがポジティブデータであっても、ネガティブデータであっても学会発表、文献執筆という形で報告することによって完結させます。学会でフロアーや座長から質問さしていただくことによって、あるいは文献投稿時にレフェリーに批判していただくことによって薬剤師として、そして研究者として一歩一歩ステップアップしていくものだと思います。「私はちゃんと学会発表していますよ」なんて、地方の研究会程度で満足していませんか?ステップアップするための階段はまだまだあるのですよ。とはいえ人間が成長して大きくなることは決してたやすくありません。結局、少しずつステップアップするしかないのです。薬剤科内の症例検討会→院内の症例検討会(薬剤師も院内の症例検討会に参加して、薬剤師も症例報告しています)→地方の学会発表→全国レベルの学会発表→文献投稿→国際学会発表→英文文献の投稿→国際的に認められた一流紙への投稿、このようにあなたの成長する余地ははまだまだあるのです。一段一段上がるごとに薬剤師として大きく成長しているのが自分で体感でき、数年前の自分がどんなに低いところにとどまっていたかがわかると思います。勉強はちゃんとしていても、学会でちゃんと話を聞いていても、あなたは高い山を見上げているだけ。見上げているだけでは全然、頂上には近づかないのです。周りの人が登り出さないのなら、あなた自信がステップを踏み出してみてください。学会で質問され、あるいは文献投稿時にレフェリーに批判されるのを恐れてはいけません。我慢強くやれば、いい仕事はきっと評価されます。リサーチマインドのない薬剤師の集まりでは他の医療スタッフから評価されるはずはありませんし、社会的評価も得られません。「私だってできるのです(Yes, I can.)」、あなたのこの考え方がyes, we can”の輪になって広がってゆけば薬局全体に活気がみなぎることは間違いありません。
薬剤師は学校でかなり難しいことを習います。そして卒後も実によく勉強します。薬剤師会やメーカーが勉強会を開催すれば多くの薬剤師が集まりますが、これは医師を除く他の医療職種にはない現象だと思います。しかしこれらが十分、臨床に生かされているとは言い難いのです。学校で習った知識が一番生かされていない医療職種は薬剤師ではないでしょうか。これに関して反論する方も多いとは思うが、現在の多くの薬剤師は薬学で得た化学的知識を仕事に十分生かしているでしょうか?薬物動態学や薬理学、生化学で得た知識を臨床に十分に生かしているでしょうか?全く生かされていないとは思いませんが、どれも断片的なものであり、難しいことを学びながらもそれらを仕事に十分生かせないと思います。「この仕事はやっぱり薬剤師でなくては」といわれるような仕事をできていないこと、これを私はpharmacist dilemmaと名付けたいと思います。ジレンマとはあちらが立てばこちらが立たず、ということです。この問題になると多くの薬剤師は大学教育の問題と決めつける方が多いのです。確かにそれもあるでしょうが、医療現場での教育システムの欠如、リサーチマインドを持つ薬剤師が非常に少ないことの方が大きな問題ではないかと私は考えます。
リサーチマインドのない薬剤師が病院から評価されるわけはありませんし、社会的評価も低くなった薬剤師になろうと思う学生は減り、薬剤師のレベルはさらに低下すると考えられます。
しかし一方で、病院薬剤師が外来調剤中心から病棟での服薬指導中心の業務になってから、見違えるように大きくなった薬剤師が散見されつつあります。大学病院の先生方は、以前から多くの業績を残しているため除くとしても、一般病院でもTDMに関しては国立循環器病院の上野和行先生、薬物アレルギーに関しては新潟水原郷病院の宇野勝次先生、そして若手ではEBMに基づく薬剤師業務を推進する愛知厚生病院の三浦崇則先生、科学的な副作用モニタリングを実践している中国労災病院の前田頼信先生などなど、「薬剤師でないとできない業務」を遂行している薬剤師が現れはじめました。これらのひと味違う薬剤師は結局、自分自身のアイデンティティを持ち、「自分からイニシアチブをもって仕事のできる人」であり、安全かつ有効な薬物療法を患者に提供できる薬剤師だと思うのです。今までの薬剤師は医師の指示通り、処方箋に従って調剤をするという行為に慣れすぎたのではないのでしょうか?病院薬剤師の定員削減が話題になる中で、調剤技術だけでない「本当に病院にとって必要な、幅広い臨床的技能を身につけた薬剤師」の養成がこれからの重要課題になると思われます。そのためにはいつまでもorder takerであってはなりません。これからの薬剤師はself starter(自分からイニシアチブをもって仕事のできる人)に変貌する必要があります。