Pharmacist dilemma

薬剤師は学校でかなり難しいことを習います。そして卒後も実によく勉強します。薬剤師会やメーカーが勉強会を開催すれば多くの薬剤師が集まりますが、これは医師を除く他の医療職種にはない現象だと思います。しかしこれらが十分、臨床に生かされているとは言い難いのです。学校で習った知識が一番生かされていない医療職種は薬剤師ではないでしょうか。これに関して反論する方も多いとは思うが、現在の多くの薬剤師は薬学で得た化学的知識を仕事に十分生かしているでしょうか?薬物動態学や薬理学、生化学で得た知識を臨床に十分に生かしているでしょうか?全く生かされていないとは思いませんが、どれも断片的なものであり、難しいことを学びながらもそれらを仕事に十分生かせないと思います。「この仕事はやっぱり薬剤師でなくては」といわれるような仕事をできていないこと、これを私はpharmacist dilemmaと名付けたいと思います。ジレンマとはあちらが立てばこちらが立たず、ということです。この問題になると多くの薬剤師は大学教育の問題と決めつける方が多いのです。確かにそれもあるでしょうが、医療現場での教育システムの欠如、リサーチマインドを持つ薬剤師が非常に少ないことの方が大きな問題ではないかと私は考えます。
リサーチマインドのない薬剤師が病院から評価されるわけはありませんし、社会的評価も低くなった薬剤師になろうと思う学生は減り、薬剤師のレベルはさらに低下すると考えられます。

しかし一方で、病院薬剤師が外来調剤中心から病棟での服薬指導中心の業務になってから、見違えるように大きくなった薬剤師が散見されつつあります。大学病院の先生方は、以前から多くの業績を残しているため除くとしても、一般病院でもTDMに関しては国立循環器病院の上野和行先生、薬物アレルギーに関しては新潟水原郷病院の宇野勝次先生、そして若手ではEBMに基づく薬剤師業務を推進する愛知厚生病院の三浦崇則先生、科学的な副作用モニタリングを実践している中国労災病院の前田頼信先生などなど、「薬剤師でないとできない業務」を遂行している薬剤師が現れはじめました。これらのひと味違う薬剤師は結局、自分自身のアイデンティティを持ち、「自分からイニシアチブをもって仕事のできる人」であり、安全かつ有効な薬物療法を患者に提供できる薬剤師だと思うのです。今までの薬剤師は医師の指示通り、処方箋に従って調剤をするという行為に慣れすぎたのではないのでしょうか?病院薬剤師の定員削減が話題になる中で、調剤技術だけでない「本当に病院にとって必要な、幅広い臨床的技能を身につけた薬剤師」の養成がこれからの重要課題になると思われます。そのためにはいつまでもorder takerであってはなりません。これからの薬剤師はself starter(自分からイニシアチブをもって仕事のできる人)に変貌する必要があります。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)