薬剤師っていらなくない?
初の薬剤師が主役のテレビドラマであるアレクサングシンデレラで「薬剤師っていらなくない?」ということばが話題になりました。「薬剤師なんていらない?なんでいらないの?薬剤師は絶対に必要なんだよ!だって処方箋を書く医師は薬物動態や相互作用、薬の化学構造や物性、製剤学などをほとんど習っていないんだよ。併用することによって血中濃度が1/20になって薬が効かなくなったり、20倍以上の血中濃度になったりするとき、それを防ぐ薬の組み合わせを提言できて、配合変化が起こるのを防ぎ、副作用の起こらないよう服薬指導するには薬剤師が絶対に必要なんだ。患者さんが使っている薬の有効性・安全性を担保するために薬剤師が監査し、疑義紹介しなければならないんだ。多くの患者さんが薬物療法によって病気を治療している。薬剤師は患者さんの薬の安全性を守る最後の砦なんだ。」これはこのドラマが始まる前から、僕が熊本大学薬学部で繰り返し学生たちに熱く語ってきたことです。でも「薬物動態学」の大好きな薬剤師や、それに関わる難解な計算式を得意とする薬剤師はあまり多くない(筆者も含めて)のが実態かもしれません。実際、処方箋監査をするのに「薬物動態学の知識って必要?」と思っている薬剤師も多いのではないでしょうか?
「薬剤師は薬の専門家」、幅広い薬の知識を持っているのは薬剤師自身も薬剤師以外も自覚していることでしょう。この薬の特性は何で表されるの?たとえば「どれくらいたてば効き始めて、どれくらい効果が持続するの?」「体の中に薬が溜まり続けて害になることはないの?」「いつ飲んだら一番効果的?」「同じ成分なのに飲み薬と注射薬と投与量が同じこともあるし、飲み薬の方が注射薬よりもうんと量が多いことがあるけど副作用は心配ないの?」「同じ量をのんでも人によって副作用が起きたり、効かなかったりすることがあるのはなぜ?」これらは動態を知っている薬剤師にとってはおそらく容易に答えられる質問内容ですが、医師には少し難しいかもしれません。
もしも現在の医薬分業が数十年以上前の院内処方に戻り、薬剤師不在のクリニックで建前上は医師(実際には事務員)が調剤して薬を渡すようになれば、訴訟沙汰になるような薬の有害反応が日常茶飯事のように起ってしまうかもしれません。おぉ~、怖い。