NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
18日目 米国医療制度の闇

 米国は先進国で唯一の皆保険制度のない国です。医療レベルは極めて高いのに、医療費は極めて高く、自分で保険会社の保険に加入していない人は病院に行く余裕はないので、超安値OTC薬のNSAIDsを大量購入します。米国の医療用イブプロフェンは800mgの錠剤もあるので、日本では胃障害が少なく鎮痛作用もマイルドなイメージがあるイブプロフェンも「ジクロフェナクと変わらないよ」と米国の薬剤師は言っていました。膝痛・腰痛で痛ければ安くて日本の2~4倍量のイブプロフェンを飲み、それでよくならなければすべて日本の倍量のナプロキセン、アスピリン、ケトプロフェンに手を出す。当然、胃障害と抗血小板作用による消化管出血によって1年に2万人近くが死亡していたのだと思います。

 米疾病対策センター(CDC)によると、医者が処方した鎮痛剤の過剰投与による死亡は男女併せると1年に38,300人1)。ちなみに2016年の米国の薬物過剰摂取(副作用ではない)による死亡者は25~54歳が最多(副作用といえば後期高齢者のわが国と大きく異なります)で、2017年時点で63, 600人です。これにより米国の平均余命は短縮しつつあるといわれています2)。21世紀になってから過量服用による死亡者はNSAIDsからオピオイドに変わっているのです。米国では、合成麻薬の過剰摂取による死亡が2013年の約3,000人から2016年には約2万人へと大幅に増加しており、 2014年で4万人弱、2016年の薬物過剰摂取による死亡者は6万人を超えると見積もられています。この急激な増加には、不法に製造されたフェンタニルがヘロイン市場に導入された影響が大きいといわれています(図13)

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警察官2人に付き添われて、囚人服を着せられて退院する手錠をかけられた20歳前後の麻薬中毒の囚人を大学病院で何度見たことか……(図2: ただし写真は本物の囚人ではなく歌手で女優のTaylor Swiftさんです)。20211007_2.png

 20211007_3.png高額な民間保険に加入している人は世界最高峰の医療を受けられるのに、6人に1人の無保険者が交通事故で重傷を負うと、老朽化した群立病院County hospital(図3)の救命救急室ERに送られる。救急車の中で「County hospitalだけには行かないで!あそこに行くと生きて帰れないから」と叫んでも、民間保険に入っていない貧困者は衛生状態も決して良くないCounty hospitalに送られ、重症であっても抗生物質の自己点滴のやり方を薬剤師から指導を受けてすぐに退院させられる。これは実際にLAのCounty hospitalの薬剤師から聞いたことです。米国の無保険者に対する医療制度は2010年に成立したObama Careによって改善しましたが、2020年6月にコロナ禍の中でトランプ政権の共和党によって無効化を求める訴訟が行われましたが、1年後に訴えが退けられました。米国は医療の先進国なのにここの医療制度は病んでいます!

追伸:日本では原則として対面販売のみだったロキソニンSやガスター10などの第1類医薬品は、「ネット販売で対面販売よりも副作用リスクが高いというデータは存在しない」とする楽天の三木谷浩史社長らの訴えが実り、2014年6月の改正薬事法施行でネット販売できるようになりました。薬剤師による確認を行ってから薬品が発送されるとなっていましたが、「薬剤師からのメール返信確認後の発送!」となっていますが、ロキソニンSプレミアム24錠×10個でも非常に簡単に購入可能です(図4)。日本も米国のように病んだ国にならなければいいのですが・・・・。

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引用文献
1) 2013年7月5日共同通信
2) 2017年12月21日/Health Day News
3) CDC: 2017: 66: 1197-1202

 



プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)