※次回連載予定「SGLT2阻害薬による心腎保護作用と適正使用」のための
SGLT2阻害薬に関する事前クイズ(解答・解説付き)
にご協力ください!

 

浦田基樹らによる透析による薬物除去率を予測する簡易式の構築10)

 2018年当時、筆者の属する熊本大学生命科学研究部大学院博士課程に在籍していたUrataら10)は成人の透析による除去率ならびに、全ての薬物動態パラメータが抽出された90品目の注射薬を対象として薬物の透析性の予測式作成を試みた。Spearmanの順位相関係数の検定より透析による除去率と有意な相関を示すパラメータは、尿中未変化体排泄率fe(rs = 0.67)、PBR(rs = −0.53)、Vd(rs = −0.32)、1/Vd(rs = 0.32)、(100−PBR)/Vd(rs = 0.61)、fe/Vd(rs = 0.68)、fe*(100−PBR)/Vd(rs = 0.78)、fe *(100−PBR)/ (Vd*logMW) (rs = 0.79)であった。ベイズ情報量基準(BIC)を用いたステップワイズ法による重回帰分析の結果、BICを最小とするパラメータは、logMW(B=−18.87)、PBR(B=-0.40)、fe/Vd(B=0.05)の3項目であったので(表2)、回帰式としてこの3項目のパラメータを用いることを採用し、透析による薬物除去率を予測する以下の簡易回帰式が作成された(図9)。ここで特筆すべきはfe/Vdの採用である。前述したとおりVdが大きければいかなる血液浄化法でも除去不能であるが、Vdが小さいと除去可能かというとそうではない。例えばワルファリンは脂溶性薬物であり、PBRが99%以上と極めて高い。そのためアルブミンにトラップされて血管外に出ていけないのでVdは0.15L/kgと小さい。Vdは小さいものの、PBRが極めて高いため、透析クリアランスは血流量200mL/minの場合、透析クリアランスは2mL/minにもならない低値であり、当然、血液透析では全く除去できない。Vdを補正する何らかの親水性・疎水性を表すパラメータで修飾する必要があったが、Urataはfeを選び、fe/Vdを採用したところが、素晴らしいアイデアであったと思える。Urataの作成した式は以下のとおりである。

透析による薬物除去率(%) =
-18.87×logMW(Da)−0.40×PBR(%)+0.05*fe(%)/Vd(L/kg)+90.78 ―(1)

 

20211125_1.png

 

20211125_2.png

 簡易回帰式より導いた予測値とインタビューフォーム値は有意な正相関(rs = 0.75)を示した。Mean prediction error (ME)、mean absolute prediction error (MAE)、root mean squared error(RMSE)はそれぞれ0.59(95%CI: −5.10, 6.28)、8.29(95%CI: 4.66, 11.93)、7.07であった。この薬物除去率予測式は当時としては世界で最高の精度であった。というよりもこのような試みはほとんど検討されていなかったのが事実だが、R2=0.64では、簡易式の域を出ることができず、臨床に用いるにはもう少し高い精度のものが必要と思われた。

 

引用文献
10) Urata M, Narita Y, Fukunaga M, Kadowaki D, Hirata S: A simple formula for predicting drug removal rates during hemodialysis. Ther Apher Dial 22: 485-493, 2018

 

 



プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)