【3位】糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて

山田悟著 新書 ¥858

 無理のないゆるめの糖質制限「ロカボ」を薦める糖質制限のトップドクターで北里大学北里研究所病院の糖尿病センター長の山田悟先生の著です。今や誰もが知っている「ロカボ」という言葉はおそらく山田先生の造語だと思います。糖尿病学会が長い間、提唱してきたカロリー制限食を正しいものだと信じて、患者さんにずっと指導してきたけれど、実は実行は大変で、効果もあまり期待できない。今のカロリー制限食は、糖尿病治療ガイドライン2019よりも前のガイドラインに載っている内容では、体重を減らせなかっただけでなく、LDLコレステロールの低下、中性脂肪の低下、HDLコレステロールの増加、CRPの低下、アディポネクチンの低下、空腹時血糖、空腹時インスリン分泌、インスリン抵抗性など、すべてにおいて低糖質食に比し劣っていたというRCT研究が引用されています1)。これって2008年の報告なのに、なんで糖尿病診療ガイドライン2016には反映されず、エビデンスのない炭水化物 50~60%エネルギーとする低カロリー食を推奨し続けたのでしょうか。

 ロカボとは糖質を控えるだけで、肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症といった、いわゆるメタボリックシンドロームの構成要素がすべてよくなるという食事です。簡単に言うとご飯の量を少なくし、おかずの量は増やしてよいという実践可能な食事療法なのです従来の常識の脂質はカロリーが高いし肥満になりやすいというのはウソだし、脂質摂取で糖尿病になることはありません。血糖を上げるのは糖質だけだから、体にいいといわれていた蕎麦、玄米、全粒粉パン、山芋は糖質なので実は糖尿病には良いわけではないのです(腸内細菌叢の健全化にはとても良い食事だと思いますが、糖質ではあるため、血糖値が上がらないわけではない;山田先生は糖尿病食として解説しています)。油脂やコレステロールの高い卵を摂ってはいけない、等は間違っていました。チャーハンはカロリーは高いけれども白米より糖尿病になりにくい。植物性油だけでなく動物性の脂もバターも脂質は悪玉ではない。バターは動脈硬化にならないから食べてもいいのです。卵の黄身などのコレステロールを控えても、心臓病や肥満の予防にはほとんど役立ちません。

 糖尿病患者にとって本当に怖いのは動物性の脂ではなく食後高血糖等の血糖異常です。脂質制限は意味がなく、実際には動物性脂肪(飽和脂肪酸)は、脳卒中を減らしています。油の摂取量の上限自体を撤廃すべきだし、それよりも老化につながる血糖値の乱高下が危険だし、酸化ストレスで認知機能が低下します。抗酸化作用を発揮するためには、糖質を控えケトン体にする事で、酸化ストレスから逃れられます。昔は、糖質を食べないと筋肉内のグリコーゲンという栄養源が足りなくなってしまうと、僕らも教わっていました。しかし、実はエネルギーさえしっかり取っていれば、糖質を制限していてもグリコーゲンの貯蓄はちゃんとできることも分かってきています。

 「食の知識」に関する書物は、非常に多くありますが、専門家でもない人が誤った情報、民間療法のレベルの情報を発信していることがよ~くあります。糖尿病についてのエビデンスのある正しい食事療法の常識を、薬剤師が得るためにはこの書をお勧めします。新書版なので1000円以下で買えますし、この後編ともいえる「カロリー制限の大罪」も併せて読みたい本です。

 

引用文献
1)Shai I, et al: N Engl J Med 359: 229-241, 2008

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)