6月19日(木)開催の 中級者コース「腎機能悪化を防ぐ血圧・血糖管理」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。


Q.シックデイで入院した患者がジャディアンスを服用していたので中止について医師に相談したところ、DMで飲んでるわけではないので継続、と言われました。ビーフリード一本程度の補充で3日間絶食でしたが、DMでなければSGLT2iは継続でも良いのでしょうか。

A.SGLT2阻害薬でシックデイになる一番危険な症状はケトアシドーシスだと思います。DMではない患者さんであれば他の糖尿病治療薬によるシックデイの可能性が高いのではないかと僕も思います。ただし、他の薬剤情報が示されていないので、よくわかりません。


Q.具体的な症例にもとづく講義に感謝いたします。質問ですが、糖尿病を持つ心不全患者が、心不全のためにフォシーガ10mg服用している場合のシックデイの対応を知りたいです。糖尿病で服用している場合とで考え方を変えた方がいいのか、迷っています。

A.前問と同じように、糖尿病患者がSGLT2阻害薬でシックデイになる一番危険な症状はケトアシドーシスだと思います。他の血糖降下薬との併用による低血糖も発症はまれですが考えられます。非糖尿病患者では脱水もありえなくはないのですが、利尿作用の持続しないSGLT2阻害薬で脱水の副作用がなぜ起こるのがよく分かっていません。ループ利尿薬やARNIによる利尿作用が増強する可能性はあります。それ以外でSGLT2阻害薬が単独で急激な体調悪化、つまりシックデイになる可能性があるとは平田には思えないのです。


Q.ACEとARBの使い分けはありますか?ACEは副作用を考えてしまいますがACEのよさはどこにあるか今一つ曖昧なのでご指導いただきたいです

A.教科書的には心不全ではエビデンスレベルの高いACE阻害薬を用い、空咳、血管浮腫などの副作用で使いにくいようであればARBに変更することが推奨されていると思いますが、腎保護に使う場合にはエビデンスレベがほぼ同じなのでどちらでも構いません。日本では薬価の高いARBを製薬メーカーのMRさんが勧めるので、腎保護にはARBがメインに使われていますが、海外では薬価が安いACE阻害薬が主流です。アジア人ではACE阻害薬による空咳が起こりやすいからという説もあります。ACE阻害薬にあってARBにない利点はブラジキニンによる血管拡張作用ではないかと思います。ただしそれによる血管浮腫などの副作用が問題で使いにくくなりますが。


Q.SGLT2阻害薬の利尿作用は3日ほどしか継続しないとのことですが、脱水の副作用が4.5%あるというのは、脱水は投与初期に起こりやすい副作用(それ以降では体液減少が起こりやすい患者以外はあまり脱水は起こらない)という認識でよろしいのでしょうか?

A.利尿作用に関する報告の多くは日本人医師によるもので、カナグリフロジンで1日のみ、その他の報告でも数日間ですし、薬理作用の主たる糖利尿は持続しますが、Na利尿も持続しません。ブドウ糖の再吸収は近位尿細管のSGLT2とSGLT1しかありませんが、Naは尿細管のいたるところで再吸収に関わっているため、近位尿細管以降でNaが再吸収されているのだと思います。したがって、SGLT2阻害薬単独によって脱水が起こるとすれば投与初期に多く発症する可能性があります。またループ利尿薬が併用されている場合には、ループ利尿薬の作用を増強するという報告がありますので、併用によって起こった可能性があります。そしてARNIの利尿作用を増強している可能性も考えられます。ただしSGLT2阻害薬の単独での利尿作用、脱水の機序について詳しく調べた報告はありませんのでよくわかりません。平田が調べられていないだけかもしれませんが・・・・。


Q.日々業務をしている中で、Drへの伝え方・コミュニケーションの仕方も薬剤師としての重要なスキルであると痛感しています。そこで、脱水でSGLT2阻害薬中止し、補液等の治療後、再開せず退院しかかりつけフォローとなった患者さんがいる場合、平田先生は実際どのようにDrへ再開を提案しますか?参考にさせていただければ幸いです。

A.脱水が収まればSGLT2阻害薬を速やかに再開すべきだと思っています。それくらいSGLT2阻害の治療効果は強力ですからしばらく中止する理由はないと思います。その時には「こまめな飲水指導」が必須ですね。ただし脱水や糖尿病性ケトアシドーシスが原因であれば、「食事が摂れない」など、SGLT2阻害薬を投与すべきでない原因があれば中止していただいた方がよいでしょう。


Q.SGLT2阻害薬を服用していても尿糖-の方が数人います。調べると体質でそういう場合もあるとありましたが、本当にそうでしょうか? また、そういった方は効果がないと考えるのでしょうか? 他のSGLT2阻害薬に変更しても変わりませんか? 教えていただけると幸いです、よろしくお願いいたします。

A.僕には尿糖(-)の方が数人いるというだけで驚きです。尿蛋白(-)の間違いじゃないですよね。飲んでないってことはないですよね。しつこいようですが、生まれつき遺伝的な疾患を持っている方なら1人くらい施設にいるかもしれませんが、数人もいるということはあり得ないと思っています。したがって理由は全くわかりません。そして「尿糖が排泄される=SGLT2が阻害されている」ことを示しますので、効果は期待できません。僕には「尿糖(-)の方が(同一施設内に?)数人いる」ということが信じられません。ごめんなさい。


Q.RAS系阻害剤を腎保護目的に良く使用されていますが、ある基準になった時に処方から外すと思いますが、具体的な指標は?またカルシウム拮抗薬(N型、T型など)の使い分けも教えていただきたいとおもいます。

A.「ある基準になった時に処方から外す」とすれば、「CKD診療ガイドライン2023に75歳以上でeGFR<30mL/min/1.73m2になったらCCBを推奨する」と書かれていたから疑義紹介しようという方がいるかもしれませんが、僕としては嫌いな「デジタル薬剤師」の考え方です。例えば、蛋白尿が(-)になったとしても、エビデンスはないとしても、この患者さんの血圧管理がうまくいっていて、有害反応が起こっていなければRAS阻害薬は続けていいと思いますし、透析導入になったとして無尿になれば当然、蛋白尿は収まりますが、透析患者の死亡原因の1位か2位が心不全ですから、症状が出始める前から続けておいた方がいいようにも思います。「ある基準」というのは有害反応が現れて患者さんにとって不利益になった時と考えていいんじゃないでしょうか?

N型、T型が優れているのは動物実験レベルですよね。ガイドラインに書かれるような明らかなエビデンスは二重盲検無作為化比較試験で有意差があったものでないと評価されません。だからそれらが実施されていないN型、T型のCCBは評価されていません。頻脈になるのが嫌などという医師がN型、T型のCCBを好んでいればそれに対して疑義紹介する必要もないと思います。


Q.『高齢者への薬剤処方』の著者○○先生のように、カルシウム拮抗薬は便秘、浮腫などの副作用のため高齢者にはむしろ使いにくく、RAS阻害薬を多用している、という意見もあります。

A.○○先生は高齢者に使うと「いろいろと細かい不都合が起こる薬をまとめた日本版Beers Criteria」をまとめた先生ですよね。平田は高齢者が不満に持つ細かい不都合よりも、重篤な副作用による入院や致死的な副作用を防ぐこと、突然死を防ぐことなどに興味がありますので、薬に対する視点が異なります。

Pimohamed ら1)によると高齢者で入院理由になるような有害反応を起こした薬の中にRAS阻害薬が原因で94人が入院しており、4位にランクされ、その理由は腎障害、低血圧、電解質異常、血管浮腫などでしたが、Ca拮抗薬による副作用で入院は全くありません。

Osanlouら2)によるとRAS阻害薬による入院数は14名で7位にランクされ、腎障害が9名、起立性低血圧3名、高カリウム血症1名、腎不全1名が報告されていますが、Ca拮抗薬による副作用で入院の記載は全くありません(その他の中にに含めれているかもしれません)。

Ca拮抗薬による副作用で緊急入院って平田はほとんど聞いたことがないんです。他薬に比し、便秘も浮腫も軽度で入院するような重篤な副作用ではありません。かたやRAS阻害薬はトリプルワーミーの1つでこれらの報告の上位にNSAIDsや利尿薬が入っており、組み合わせると高齢者ではほぼ確実に腎障害を起こします。僕は些細な副作用で使いやすいか使いにくいかよりも、重い副作用の発症を問題にしています。どっちが安全か、お分かりになれました?

1)Pimohamed M, et al: BMJ 2004; PMID: 15231615
2)Osanlou R, et al: BMJ Open 2022; PMID: 35788071


Q.講義中にも質問しましたが、RAS阻害薬とCa拮抗薬の併用についてです。 RAS阻害薬は輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を下げ腎保護作用を発揮しますが、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は輸入細動脈を拡張するので、内圧が上がってRAS阻害薬の腎保護作用が弱まることはないのでしょうか? 逆にRAS阻害薬のデメリットである腎虚血にはCa拮抗薬の併用は良い効果をもたらすのでしょうか?

A.おっしゃる通りです。ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は有意ではないですが、輸入細動脈を拡張するので、糸球体内圧がやや上がって蛋白尿をやや増やす薬です。しかしRAS阻害薬のデメリットである腎虚血を打ち消してくれるのであれば、血圧管理がうまくいっていなければ、腎硬化症が進行してしまう恐れがあるのでCa拮抗薬の併用は大いにありだと思います。


Q.アルブミン尿のmg/gCrの算出方法を教えてください。

A.尿中アルブミン/Cr比 (mg/gCr) = (尿中アルブミン濃度 (mg/dL)) / (尿中Cr濃度 (mg/dL))

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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