重度腎障害(CCr<30mL/min)はDOACの大規模RCTにおいて除外対象となり、リアルワールドデータも乏しい。透析患者にはDOACの使用経験がないからという理由で、いまだにワルファリンを使わざるを得ない医師はまだ多いようだ。米国ではアピキサバンが透析患者に使われているのにね。
以前に僕が調査したアンケートで医師はワルファリンが透析患者(重篤な腎障害)に禁忌になっていることを知っていたのは26%のみ。そして重篤な腎障害患者で血栓を起こしやすい症例に対してワルファリンを処方することがある医師は85.3%(平田,2009)。薬剤師も透析患者にはワルファリンが普通に投与されているから「重篤な腎障害には禁忌」って寝耳に水だったのかも?
だけど実際には腎機能が悪くなればなるほどワルファリンは大出血を起こしやすいんだよね。PT-INRの目標値は通常2.0~3.0だけど日本の透析患者は2.0未満にしなくちゃいけないし、日本の高齢者では1.6~2.6にしなきゃいけない。腎障害血清を加えるとではワルファリン代謝酵素CYP2C9の活性がCYP2C9基質ロサルタンへの血清添加量が多くなるほど代謝が阻害されることは京都薬大の辻本先生の検討で分かっていた(辻本, 2010)し、GFR<30mL/minではCYP2C9代謝が阻害されCYP2C9代謝が阻害されS-ワルファリン濃度が27%上昇し半減期が20%延長する(Albrecht D, 2017)ことも明らかになっている。しかもワルファリン服用者の大出血発生率は腎機能が悪化するほど高い(Jun , 2015)。じゃあ日本人高齢者で特にワルファリンが使いにくいことはワルファリンの効果部位のVKORC1の遺伝子多型がアジア人で多いので、ワルファリン用量を減らすべきことと、腎機能が悪くなればなるほどさらに減量すべきことで説明できるかも(Ichihara, 2015)。ということで日本人の腎機能低下患者にワルファリンを使うと出血しやすいということは十分に分かっているのに、透析患者には使わざるを得ないようだ。2024 年 JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療で「維持透析患者に対してワルファリンを用いることは推奨されない 」が推奨クラスⅢ(No benefit)デビデンスレベルBになった。No benefitって、わかりにくい説明だね。よく読むと「透析患者には原則禁忌」のようだ。でも臨床現場では透析患者の血栓症予防のためには投与せざるを得ない。ああ、悩ましい。
さらに悩ましいのは相互作用。CYP2C9阻害作用を持つNSAIDsはロルノキシカム、イブプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、セレコキシブなどがあり、これらのNSAIDsはワルファリンの代謝を阻害することによってワルファリンの出血リスクを増大する。薬剤師こそ知っておくべき薬物動態学的相互作用なのだ。



