2025年10月12日 X投稿
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 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023の第11章「薬物療法」の11-8「疼痛のあるCKD患者への鎮痛薬選択」には、「1. 非ステロイド性抗炎症薬:併用薬剤に注意し、常用しないことが望ましい。選択的シクロオキシゲナーゼ2阻害薬、特にセレコキシブについて、腎への安全性に関する明確なエビデンスはない」と記載されている(図1)。「特にセレコキシブ」ってなんで?

 

 

 痛風を伴うCKD患者には極力NSAIDsを使いたくないが、アセトアミノフェンには抗炎症作用がない。それなら、せめてNSAIDsの中で胃障害が少なく、消化管出血のリスクも極めて低く(図2)、心不全イベントが最も少なく(図3)、アスピリン喘息を起こしにくいもの(それがセレコキシブだ)を選ぼうとする医師もいるはずだ。それなのに、読者が納得できるような引用文献を付けずに、「セレコキシブには特にエビデンスがない」と書かれている。

 

 

 

 CKD診療ガイドライン作成の前には毎回、腎臓学会から公開されるドラフト版を平田は必ず精読し、パブリックコメントを提出している。今回も「セレコキシブは他のNSAIDsに比べ、腎障害が少ないという論文が6報あります(図4)」とコメントしたが、今回ほどひどく無視されたのは初めてだ。というか、ドラフト版は内容が薄かったのに、印刷された正式版には新たに膨大な文章が付け加えられ、その中に「特にセレコキシブ」という文言が追加されていた。このガイドラインの完成後、学会のシンポジウムでも問題になったし、ガイドライン作成者にはその前後に何度もメールを送ったし、同じ大学病院の知人にも連絡を依頼した。しかし、何の反応もなかった(留学中だったけどメールくらい返せるはず)。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」では、「CQ:高齢者へのNSAIDs投与は腎機能低下のリスクを高めるか?」という問いに対し、「高齢者では使用をなるべく短期間にとどめる(要約)」となっており、中止が難しい場合には、「消化管の有害事象を予防するために、選択的COX-2阻害薬(セレコキシブなど)の使用を検討する」となっている。また、「消化性潰瘍診療ガイドライン2020」では「NSAIDsによる潰瘍発症の予防にCOX-2選択的阻害薬の使用を推奨する」と記載されている。NSAIDsで最も注意すべきなのは腎障害よりも消化管出血だ。なぜなら、消化管出血は時として致命的な結果を引き起こす可能性があるためだ。

 

 

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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