3月12日(木)開催の、「透析患者の便秘と腸閉塞・腸管穿孔~腎不全ではなぜ腸内細菌叢が乱れるのか~」について以下のような質問をいただきましたので回答させていただきます。
Q.向精神薬によりQT延長を来すことがあるのは知っています
A.僕自身はMg剤でQT延長を抑制する予防効果があるかどうか知りませんでしたので、PubMed検索で調べたところ、以下の最新の著作(論文ではありません)に記載がありました。
Brian Cohagan; Dov Brandis: Torsade de Pointes. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-.によると
「低カリウム血症、低マグネシウム血症、および低カルシウム血症を是正することは、いずれもトルサード・ド・ポアンの発症予防に役立つ。薬剤によるQT延長を有する患者に対し、経口または静脈内投与のマグネシウムに予防的効果が示唆される研究は少数存在する。しかし、全体的な有益性は十分に確立されていない。」と記載されています。
トルサード・ド・ポアンの発作を止める第1選択薬として硫酸Mg静注が使われることは教科書にも書かれているくらいよく知られていますが、そのほかの論文も検索して深堀りしてみると、酸化マグネシウムなどの経口Mg剤をQT延長の予防目的での有効性のエビデンスは限定的なようです。
QT延長の原因になる電解質異常は低カリウム血症が最重要で、次いで低Mg(低Kと相乗的)、低Caも補正対象になります。特にQT延長薬使用中はKを4.5–5.0 mEq/L程度、Mgを正常上限に維持することが重要とされているようです(2017 AHA/ACC/HRS ガイドライン: Circulation 138, 2018 )。
また高Mg血症にするとQT延長は起こらないという考えは誤りのようで、逆に高Mg血症はQT延長と有意な関連したという報告が複数あり(PMID: 31221261、PMID: 30157775)、透析患者でもMg剤過量投与で報告されているようです(PMID: 12500237)。
僕も知りませんでしたので勉強になりました。まとめると「QT延長を起こさないためには低Mgにしない方がいいけど、低カリウムの補正のほうがより重要。高Mgは良くない」となると思います。