熊大の教授になれたなんて夢のようなこと
大阪での薬剤師のころの経験から熊大薬学部に来ることができて、学生たちにいつも言っていたことは「処方箋を書く医師は薬物動態と相互作用に関しては医学部ではほとんど教えられていないのだから、薬剤師がカバーすべき。そのために薬剤師の存在価値がある。でももっと根本にかえって考えてみると、もっと本当に大切なものがある。薬剤師は医療者なんだよ。医療者に共通して絶対に必要なものは優しさと愛じゃないですか?僕は薬剤師として頑張って有効で安全な薬物療法を提供し、患者さんの不安を取り除くことによって患者さんに感謝され、他の医療スタッフからも感謝され信頼される。医療者の魅力はボランティアのような仕事をして、しかも給料をいただける。それはそれはありがたい仕事じゃないですか?」と。でも信頼されるようになるにはそれなりの力も必要だ。患者さんを助けたいという気持ち、患者さんのために何とかしてあげたいという気持ち、その熱意と優しさが、薬剤師としての力をつけたいというモチベーションに繋がるのではないかと思うようになった。
熊大で、よく講義中に話題を変えると、元の話題に戻れなくなり、「さっき僕は何について話してたっけ?」と学生に問うことがある。これは年を取ってボケたんじゃない。以前から頭が悪かった、特に記憶力は飛び切り悪かっただけのこと。まだまだ他人に劣ることはいっぱいある。未完成の自分、足らないことだらけだ。
いやなこともそりゃ人間だから、たくさんあるが、それ以上にやりたいことがあるってことは本当に素敵なことだと思う。でも学会の理事長になり、大学の教授になり、僕にとっては雲の上の人のような方ばかりと付き合えるようになって、強い戸惑いを感じることが多々あります。
いつも思うことはまだまだ僕は足らないことだらけの欠陥人間だなということ。いまだに英会話の勉強をしないとレベルが保てないし、統計も病態も薬理学も動態も勉強し直さないとどんどん進歩する薬物療法についていけなくなってくる。新薬についても勉強しなくては・・・・。ああ若いときにもっと勉強していたらなぁって、後悔することばかりの今日この頃です。
神戸に転居して
2020年3月、新型コロナウイルス騒ぎの中、熊大を定年退職し、4月から本社が芦屋のI&H株式会社(阪神調剤グループ)から声をかけていたき、神戸に住むようになった。心機一転、保険薬局で頑張っている薬剤師さんをいっぱい見つけて、将来の薬剤師としての夢について語り合いたい。関西地区でも「平田塾」を開催してみたい。まだまだいろんな本を書いてみたい。どんどん学会発表して、論文もかけるような力のある薬剤師を育ててみたい。体はいたって元気いっぱいなので、老け込むことないし、65歳になっても夢をもって仕事を続けられるってことは、とても幸せだとつくづく思う。あ~薬剤師になってよかった!