2021年 4月、これから実務実習に行こうとする薬学科5年生の薬物処方学試験 記述問題『あなたにとって薬剤師とはどのような役割を担った職種だと考えますか?また将来どのように変わっていくべきだと思いますか?』より。これは2015年のブログでも紹介しましたが、薬物処方学のこの試験問題は60点に満たなかった人を救済するために、10点の下駄をはかせる目的で毎年、出題しています。今年は非常勤講師としてですが、平田が感動し、なるほどと思った7名の、素晴らしい考えをご紹介いたします。みんな実務実習、頑張って!


A君:医師と対等に意見交換できる薬剤師
 私の将来なりたい職である病院薬剤師を例に挙げるが、薬剤師は「薬物治療」に関しては全責任を負い、患者にとって最善で安全な治療を提供する役割を担う職種であると考える。
 また、この役割を担う上で、薬剤師としてのあり方として変わらなくてはいけないと思う点が2点程ある。
 自分は身近な所に現役の看護師として働いている人がいるのだが、よく話を聞くのが「薬剤師さんの回答が自信なさげであいまいだからいつも不安」という事についてであり、私はこの話を聞いて「薬剤師は他職種から薬に関しては信頼を置かれるべき存在なのだから、単に知識を蓄えるだけでなく、堂々とした態度でコミュニケーションをとる事も等しく重要なのだ」と感じた。
 また、2点目に、現場の声を聞いていると、やはり薬物治療に関しても医師の方が立場が上、といった印象があるらしく、将来、薬の特性に関して医師以上に知識をもつ薬剤師が、医師と対等に意見交換できるような環境を作らなければいけないと強く感じた。

平田の感想:堂々とした態度でコミュニケーションをとれるようになる秘訣は、20210701_1.png僕の場合は「なりたい薬剤師像」を心の中で作って、それを演じ切ることでした。僕の場合は「やさしくて物知りの薬剤師」が理想像でした。それとやっぱり医療人すべてに共通することですが、患者さんを好きになり、薬に興味を持つことだと思っています。夢中になって実習を乗り切っていけば、いい薬剤師さんになれると思います。頑張って!


Bさん:高齢者に寄り添える薬剤師
 薬剤師は、これからの超高齢社会における人と医療をつなげる役割を担った職種だと考えます。高齢者の方は多くの方が薬をのみながら生活していらっしゃるので、そういった方ができるかぎり自立した、自分らしい生活を長く送れるように、また、体調が悪くてなかなか病院へ行けない方のサポートができるように働きかけることができればいいなと思います。また、高齢者が多く暮らしていらっしゃる地方においては、そういった方々のコミュニティーの場、薬剤師も交えた情報交換の場として薬局や薬局が主催するイベントが活用されればいいなと考えております。その中で、やはり、処方権が完全に委託されたままでは薬剤師の活動の場が広がらないので、薬剤師が可能な処方変更のラインを認定薬剤師制度などを活用して変えていければいいのかなと考えています。

平田の感想:コミュニティーの場で身近な存在の薬剤師ってすばらしい。相談しにくいことがこの人なら相談できる、という人になりたいですよね。でも話は聞くけど、何もできないのは寂しい。よりよい医療に貢献できるようになるには薬剤師1人1人が力を付けて責任ある仕事をこなしていくこと。そうすればこの仕事は薬剤師に任せようという機運が生まれるんじゃないかしら。


Cさん:安全性を守り、処方権を持てるように
 薬は病気を治療できる便利なものである反面、使い方を少しでもあやまると患者さんの健康を害してしまうおそれのあるとても怖いものである。薬剤師は、患者さんの薬のリスクから守るセーフティーネットのような役割を担った職業であると考えた。
 現在、薬剤師は医師や歯科医師の処方せんがないと患者さんに医療用薬品を渡すことができないが、将来的には、薬剤師も処方することができ、重症でない限りは薬局に直接来てもらって薬を渡せるようなことができるようになったら良いと思った。


Dさん:専門性から地域まで幅広い薬剤師の活躍に期待
 薬剤師は薬の専門家であるのはもちろん、公衆衛生や地域の健康づくりをも支える一員である。医療機関ではチーム医療の一員として薬の適正使用に努めなければならない。平田先生の授業で学んだように、例えば抗菌薬適正使用も医療現場では課題となっている。そのようなケースで、薬学を学んできた私たちは抗菌薬適正使用のサポートチームに介入していくのはもちろん重要だ。さらに現在、がん治療が外来で行われることも多くなってきた。外来で治療を進めていく患者の薬の安全と、心の不安の解消のために薬剤師が寄り添っていくことも重要だ。このように、抗菌薬の適正使用や外来がん薬物療法など、様々な面での課題を知り、専門、認定薬剤師として、患者により安全な薬物療法を提供できるようにするのも必要ではないだろうか。また、今後も続いていく高齢社会で、病院完結型医療ではなく地域完結型医療が求められている。このような状況でもますます薬剤師が必要とされていくと考えられている。病院で処方せんをもらって来局した患者の薬歴だけでなく、地域住民のセルフメディケーションのサポート、健康情報の共有において役割を担える。さらにかかりつけ薬剤師の普及などから住民の安否確認にもつながる可能性はある。医療スタッフ、また地域住民のかかわりを築きながら薬剤師としての課題はますます見つかるだろうと考えている。


E君:AIにはできない薬のプロ
 薬剤師は薬のプロフェッショナルとして、医療に携わり、患者に寄り添っていく役割があると思う。現在、AI化が進んでいく未来には多くの職業がAIによってまかなわれていくことが予想される。薬剤師の仕事もAIによって行われ、薬の調剤などを無人で行われるようになるかもしれないというものをTVの番組で拝見した。しかし、私は、薬剤師の仕事はAIに代わっていいものではないと考える。AIでは、患者の心情、背景、本音をすべて正確に感じとることは、不可能であると思う。40118462_s.jpg薬のプロフェッショナルである薬剤師だからこそ、人間がやるからこそ、患者に寄り添い、ひとりひとりにあった医療を行うことができると思う。そのため薬剤師はAI化されるべきではないと考える。
 最後に、薬剤師の給料は、もう少し高くても良いと思う。病院内での医師との差がより縮まればよいと思う。


Fさん:医療従事者とscientist の側面を持職業 
 私は薬剤師とは身近な医療の相談相手であると考える。もちろん患者やその家族の健康に関する相談や現在服用中の薬に関する情報を提供するという意味もあるが、最近流行する新型コロナウイルスについて正しい知識を提供するといった務めもあると考える。
 また、薬剤師は医療従事者としての側面と、さらにscientistとしての側面、この2つをもつ職種であると考える。この強みを生かしながら、経験と知識を目の前の患者だけでなく、地域全体に活かせるような薬剤師になりたい。


Gさん:病院薬剤師の給与は低すぎる 
 医者と同様に患者さんの治療法を考える大事な存在だと思います。特に救急では、原因がわからない方が多く、時間もないので、長年の経験や知識が必要になると感じました。しかしながら、そのような責任のある職種であるのにも関わらず、日本では薬剤師の給料は低く(とくに病院)、価値が認められていないように感じます。私たちのような新しい世代の薬剤師が病院内で価値を認めさせ、今後の医療界を支えていく必要があると強く感じています。


プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)

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