NSAIDsによる腎障害 ~Triple whammyを防げ~
19日目 アセトアミノフェンについて深く知ろう
①.アセトアミノフェンの薬理作用

 アセトアミノフェンは一般的には安全性は高いものの、わが国では長らく添付文書用量が1.5g/日であったためか、十分量が投与できませんでした。そのため鎮痛用量に達していないので、鎮痛作用はNSAIDsよりも弱くなり、日本ではOTC薬の鎮痛薬や風邪薬の配合剤としては汎用されているものの、医療用医薬品としてはまだまだ使用頻度は低いようです。ただしアセトアミノフェンは薬剤性肝障害の原因薬物のトップですが1)、多くは自殺企図などの超大量服用が原因です。

 薬剤性腎障害に関してはアセトアミノフェンの報告もありますが、NSAIDsによるGFR低下は速やかに起こり、AKIの原因薬物になるものの、アセトアミノフェンを含む鎮痛薬複合剤はいわゆる鎮痛薬腎症という乳頭壊死・間質性腎炎による慢性腎不全を起こします。特に透析導入の原因薬物としてはどちらが安全か、またアセトアミノフェン単独で腎障害を超すのか否かについては、いまだに明確な結論が出されていないのです。そのため本項ではNSAIDsとアセトアミノフェンの安全性について特に腎機能に着目して概説したいと思います。

 アセトアミノフェンの薬理作用についてはいまだ明確に解明されていませんが、2005年にHögestättら2)はアセトアミノフェンの代謝物がアラキドン酸と結合することによってN-アシルフェノールアミン(AM404)が生成されることを明らかにしました。このAM404が強力な鎮痛作用を表すことが示唆されていますが、一般的にはアセトアミノフェンは主に中枢神経系におけるプロスタグランディン(PG)の合成を阻害して鎮痛効果をもたらすことが有力視されています。脳の体温調節中枢に対する内因性発熱物質の作用を抑制する一方、末梢のPGにはほとんど作用しないとされています。そのため抗炎症作用はほとんど期待できない代わりに NSAIDsに伴う4大副作用である胃腸障害、AKI、抗血小板作用による易出血性、アスピリン喘息はアセトアミノフェンではほとんど認められません。

 これらのことから2002年よりわが国でのOTC薬であるタイレノールは日本で初めて「空腹時でも飲める鎮痛解熱薬」になりました。ただし「かぜによる悪寒・発熱時には、なるべく空腹時をさけて服用すること」が付記されたままです。米国ではTPN(total parenteral nutrition)施行時、つまり絶食時の発熱や未熟児の発熱に対しアセトアミノフェンの懸濁液が汎用されていますが、これは解熱に用いる低用量投与では胃障害がないことの裏づけと考えてもよいでしょう。日本ではアセトアミノフェンは添付文書上では解熱目的には1回300~500mg を頓用とし原則として1日2回まで、鎮痛目的には1回300~500mgを4~6時間おきとなっています。

 ただしアセトアミノフェンは用量増加に伴い胃腸障害を起こすことがありうるため、鎮痛用量では空腹時服用は推奨されません。解熱用量でも添付文書上は空腹時の投与は避けることが望ましいとなっています。また別の作用機序によって喘息を誘発することがあるため、喘息患者にはNSAIDsと同様、推奨されません3)。さらにアセトアミノフェンはNSAIDsのようにGFRを速やかに低下させることはないため単独ではAKIを起こさないものの、アセトアミノフェンを含む鎮痛薬の生涯にわたる累積服用量の増加により鎮痛薬腎症と称される乳頭壊死から不可逆性の末期腎不全になり透析導入に至ることがあります4)

 通常、アセトアミノフェンは約60%がグルクロン酸抱合、30%が硫酸抱合され尿中に排泄されますが5)、一部はCYP2E1によって反応性の高い毒性代謝物N-アセチル-P-ベンゾキノンイミン(NAPQI)になりますが、生成されたNAPQIは速やかにグルタチオン抱合されることによって、無毒化されて尿中に排泄されます。しかし7.5g/日以上の大量服用によりグルクロン酸、硫酸による抱合過程が飽和することによって、CYP2E1による代謝が促進されます。それによりグルタチオンが枯渇しやすくなる、あるいはアルコール依存症患者では肝臓のグルタチオン貯蔵がもともと低下しており、しかもCYP2E1が誘導されやすいため活性の高いNAPQIが蓄積して肝のタンパクと共有結合することによって肝細胞壊死を起こします(図1)。 20211011_1.pngわが国ではアセトアミノフェンによる重篤な肝障害は自殺企図や誤飲によるものが多いのですが、初期症状に乏しいため、できるだけ速やかにN-アセチルシステイン(NAC)を投与します。NACはグルタチオンの前駆体となって、解毒作用を発揮します。アセトアミノフェンはTDM対象薬ではないのですが、薬剤性肝障害を起こしやすいため月1回の血中濃度の測定が算定できます。この場合、測定値が分離剤の影響を受けるため血清分離剤入り容器の使用は避ける必要があります。有効治療濃度は解熱剤として2~6µg/mL、鎮痛薬としては5~20µg/mLであり、肝障害を起こす中毒濃度は服用4時間後で200µg /mL、12時間後で50µg /mL以上とされています(図26)

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引用文献
1)Björnsson E, et al: Dig Liver Dis 38: 33-38, 2006
2)Högestätt ED, et al: J Biol Chem 280: 31405-31412, 2005
3)Shaheen SO, et al: Thorax 55: 266-270, 2000
4)Duggin GG: Am J Kidney Dis 28: S39-S47, 1996
5)Martin U, Eur J Clin Pharmacol 41: 43-46, 1991
6)Rumack BH, et al: Pediatrics 55: 871-876, 1975

 



プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)