【1位】日本腎臓病薬物療法学会誌グリーンブック(特別号改訂4版, 2022)
日本腎臓病薬物療法学会一覧表委員会編集 500ページ以上 学会員には無料で送付されます 。
2022年8月までに日本腎臓病薬物療法学会に入会するとこのグリーンブックだけではなく、腎機能別薬剤投与量POCETBOOK(3版は¥3,960ですが今年改訂される4版はもっと高価になるかも?)が送付されます!
僕が一番重宝している本がこれ1冊。この1冊が手元にあれば「薬についての論文」を安心して書けます。腎機能別用量に関して掲載されている薬物数は本号では2,145品目でおそらく世界最大級です。読書というよりあればとても便利な辞書のような存在と言えるでしょう。
一覧表委員会委員長がいい加減な平田から、まじめで律儀な浦田元樹先生に変り、そして白鷺病院で独自の「透析患者の投薬ガイドライン」を作成している古久保拓先生、そしてわが学会理事長の竹内裕紀先生と平田の4人のメンバーで定期的に「あーでもない、こーでもない」と審議して改定し、会員の皆様からのパブリックコメントをいただくことによって進化を続けている「一覧表」です。2012年1月に日本腎臓病薬物療法学会が設立されて以来、その学会誌 (抄録集以外) には毎号、「腎機能別薬剤投与方法一覧」を薬効群ごとに順番に掲載し、2年間かけて全薬効群の医薬品を掲載しています。そしてそれが2年に1回発刊される腎機能別薬剤投与量POCETBOOK (じほう) に反映されます。
ただしこのグリーンブックの真骨頂は左側ページの「腎機能別薬剤投与方法一覧」ではなく右側ページにあると平田は信じています(図)。右側ページには各薬物のクリアランス、分布容積、尿中未変化体排泄率、バイオアベイラビリティ、蛋白結合率、消失半減期などの薬物動態パラメータに加え、代謝経路、CYPの分子種、CYP阻害・誘導作用、トランスポータの基質および阻害・誘導などの情報、さらには「特記事項」として有効性・安全性に関する情報を濃縮して記載しています。これらの内容は添付文書、インタビューフォームだけではなく様々な論文を参考にして、内容が精査されており、年々、内容が濃くしかも正確になっています。ということはこれ1冊あれば患者様の腎機能や体格を考慮しつつ様々な薬物の個別投与設計が可能になります。TDMにも欠かせませんが、より詳細な情報に関しては古久保拓先生が作成している白鷺病院の「透析患者の投薬ガイドライン」がおすすめです。
僕は「薬物動態」について講演することがよくありますが、実際のところ薬物動態学は得意ではありません。理論的な説明が不得手なのです。でもこれだけの薬物の動態パラメータをインプットしていくうちに、自然とNSAIDsのPBRはほぼ99%に近いので、Vdはアルブミンにトラップされてそんなには大きくならない。だからVdは小さいけれども透析では抜けっこない。ベンゾジアゼピンもPBRに関してはほぼ同じようなもの。だけど投与量が少ないからアルブミンの競合阻害は考えなくていいよね。向精神薬はBBBを通るから脂溶性の高いものが多いので尿中排泄率は一般的には低いよね。でも中にはプラミペキソールのように尿細管のOCTによって尿細管分泌されると、例外的に尿中未変化体排泄率が高いものがあるよね。ということがナチュラルに理解できるようになりました。英文法について教えることはできないけれど英語は話せるような感じです。皆さん、グリーンブックは持っているけど、使っているのはPOCETBOOKだけでは情けないです。右側ページを活用してこそ、薬剤師の真の力をあらわすことができるのですから。またグリーンブックがあれば前述のように論文を書くとき、速やかに薬のコアな情報が得られるのでこれほど重宝するものはありません。重宝さから比較すると僕の場合、①グリーンブック、②PubMed、③医中誌、④UpToDate、⑤グーグル検索の順ではないかと思っています。というか、この一覧表は記憶力の極めて悪い自分自身のために、僕が作り始めたものですから、使いやすいのは当たり前ですけどね。薬剤性腎障害の分類も6ページ以上にわたり載っていますのでこれもお得です。