第 14回 基礎から学ぶ薬剤師塾 Q&A
腸腎連関
心血管病変・腎機能を悪化させる尿毒素は腸内細菌によって産生される

 

チャットによる質問

まつもと薬局本店 岡幸博先生

Q.クレメジン細粒をあえて少ない量1日1~2gで処方されるのですが、効果あるのですか?教えて下さい。

A.アドヒアランス不良を憂慮して、少量投与されているのかもしれませんが、6g投与群とプラセボ群とで行われたRCTのCAP-KD試験ではRAS阻害薬服用のSCr<5mg/dLの460人を対象に56週間のRCTが行われました。エンドポイントは透析導入、腎移植、死亡、SCrの2倍化またはSCr6mg/dL到達でしたが、1次エンドポイントに差はありませんでした(図1:Akizawa T, et al: Am J Kidney Dis 54: 459-467, 2009)。したがって1-2gの投与では効果があるかどうかは疑わしいと思います。

 ただしこの研究のサブ解析ではeGFRの低下率を有意に遅延することができました(図2)。この試験ではおそらくプラセボを作成しやすいアドヒアランス不良の代名詞ともいうべきクレメジンカプセルが用いられましたが、飲みやすい即崩錠を使っていたら、アドヒアランスが改善してもう少しいいデータが出ていたかもしれません。その後の試験でも生存率を改善しないものの、透析導入は有意に遅延することが明らかになりました(Hatakeyama S, et al: Int J Nephrol  2012;2012:376128.doi: 10.1155/2012/376128. Epub 2012 Jan 12)。


日本赤十字社和歌山医療センター 榊本亜澄香先生

Q.最後の研究のヒントのところで、「便秘の強度」とあったのですが、具体的にどのように分類すればよいでしょうか?「便の頻度」での分類、「便の状態」での分類など、いろいろあるかと思っています。

A.便の性状を排便ごとに患者さんに選んでいただいて、スコア化する「Bristol stool scale」が一番有名だと思います(図3)。便秘スコア(constipation scoring system)は様々な方が様々な方法でスコア化していますが表1にその1例を示します。僕は患者さんに便の硬さによって10cmの棒にバツ印を入れていただくVAS scaleを研究に使ったことがあります(図4:平田純生, 他: 透析会誌37: 1967-1973, 2004.)。これらを参考にして、榊本先生もぜひ研究に取り組んでください。


アンケートによるご質問

平成横浜病院 廣瀬先生

Q.体調不良で下痢が続いている患者さんで早くミヤリ菌が定着して欲しいのにいつまでも下痢が続いているケースがあります。せっかくの良い菌が腸内に定着するためのプレバイオティクスの研究で何か効果が出ているものなど報告はありますか?
(この方の満足度は1点: 大いに不満でした)

A.ごめんなさい。「良い菌が腸内に定着するためのプレバイオティクスの研究で何か効果が出ているものなど報告 」を調べようがありません。この質問内容では具体的に何をお知りになりたいのが分かりません。下痢につきましてはストレスによる下痢、潰瘍性大腸炎の下痢など慢性的な下痢を対象とすべきでしょうが、細菌性の下痢、ウイルス性の下痢の予防効果を見るようなプロトコルも可能かもしれませんが、いずれにしても特定した下痢に対して効果があるかどうかの試験プロトコルが必要になってくると思います。定着するかどうかは宿主の病態にもよりますので、漠然と下痢に対して宮入菌C. butyricumが効くかどうかの研究はできないと思います。

 ただし私が講演で話したように小児のCD(Clostridioides difficile)腸炎の予防効果については報告されています(Seki H, et al: Pediatr Int 2003;45:86-90)。最新の総説でもCDの増殖を抑制するプロバイオティクスだけではなく、C. butyricumは、院内感染の原因菌であるClostoridioides difficileだけではなく、胃がんの原因菌であるHelicobacter pylori、抗生物質耐性大腸菌などに広く有効であることが定説になっているように記載されています(Ariyoshi A, et al: Biomedicine 2022; 10: 483. doi: 10.3390/biomedicines10020483.)。

 それによるとC. butyricumの産生する酪酸がCDトキシンを阻害するだけでなく、腸管免疫を介してCDの成長・定着を阻害すること、H. pylori感染には抗生物質による除菌療法時の腸内細菌叢の破壊による下痢に対し、C. butyricumの投与によって嫌気性菌であるBacteroides属とBifidobacterium属の減少を防ぐことなどが記載されています。宮入菌って、地味そうですが、改めてすごい薬だと思いました。


一般社団法人唐津東松浦薬剤師会薬局七山店 高木一範先生

Q.今まで地域ぐるみの取り組みで平田先生が関与された活動があれば教えて下さい。 

A.透析導入患者数を減らす、腎機能低下患者で起こりやすい薬剤性腎障害や中毒性副作用などを防ぐことは、薬剤師の学会を作るだけではなく地域ぐるみでやらないとできないことですので、「腎と薬剤研究会」の設立を地元の腎に興味ある薬剤師の有力者にお願いしました。現在、全国で27か所ある各地の「腎と薬剤研究会」は年2回以上の定期的な講演会を開催しています。おかげで熊本で生まれたCKDシール(平田が作ったのではありません。僕の熊本での仲間たちの発想がオリジナルです)も各地に広がりつつあります。各地の「腎と薬剤研究会」は日本腎臓病薬物療法学会の下部組織ではありません。各地の腎薬が「地域連絡協議会」を通じて我々の学会組織と協力して活動しています。


北見赤十字病院 加藤理愛先生

Q.本日も非常に勉強になるご講演ありがとうございました。病棟担当の薬剤師ですが、便秘の患者さんが多く、医師からよく下剤の相談をされます。アミティーザが効く人もいれば無効で、同効薬のリンゼスに変更したら著効したというような方もいます。どちらも効果がなくモビコールや酸化マグネシウムが効いたという方もいます。この個人差には何か原因あるのでしょうか?
(この方の満足度も1点: 大いに不満でした)

A.それぞれ、薬理作用の異なる下剤ですから、どれが効きやすいかは便秘の原因によると思います。例えば過敏性腸症候群で下痢型の方であればリンゼスがあっているでしょうね。ただし、僕の経験からはモビコールや酸化マグネシウムなどの浸透圧下剤は用量を増やせば効かない人はいないんじゃないかと思っています。


手束病院 楠本倫子先生

Q.第三世代セフェム系の経口薬についてですが、大腸菌などが原因になりやすい膀胱炎に著効例が見受けられます。特に、高齢者や若い女性にもレボフロキサシンより使いやすい様に感じておりますが、先生のご意見をお伺いできればと思います。
(この方の満足度も1点: 大いに不満でした)

A.効いたからいいんじゃなくって、吸収率の低い抗菌薬は腸内細菌叢に悪影響を及ぼします。それによって膀胱炎は治っても、Fが低すぎるため、下痢は良く起こりますし、若年者では腸内細菌叢の変化によっておこる、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、精神神経疾患になれば一生の問題になりかねません。ほかに吸収率の高い抗菌薬がありますし、重症であれば静注製剤を使えば腸内細菌叢に悪影響も低くなると思います。

 レボフロキサシンは膀胱炎を治すには抗菌スペクトルが広すぎます。キノロンはグラム陰性にも陽性にも細胞内寄生菌や結核菌にまで効く原爆のような薬で、投与した後には何も残らないです。こんな抗菌薬は生命を左右する重症感染症のために取っておくべきだと思っていますが、開業医の先生方は好きですね。しっかりした感染症専門医のいる病院では在庫を置かないところもあるそうです。それとキノロンは使いすぎたことによると思いますが、E.coli耐性率が高いです。ただしFが99%と非常に高いのは第3世代セフェムよりはいいですね。膀胱炎では経口剤であればβ-ラクタマーゼ配合ペニシリン、ホスホマイシン、ファロペネムの方がまだましでは?と思っています。


南相馬市立総合病院 中島鉄博先生

Q.経口第三セフェムは動態、原因菌を考慮すると必要な場面はほぼ無いと思いますが、Dr.の中には経口第三セフェムが有効な場面もあり、あえて選択肢を狭めるべきではないっといった記事もありました。実際には経口第三セフェムが使用されている印象があります。どのように捉えるべきでしょうか。宜しくお願い致します。

A.セフジトレンのバイオアベイラビリティ(F)は14%、セフジニルの吸収率は25%といわれていますから、成人用量の1回100mgを投与してもそれぞれ14mg, 25mgを静注投与したのと同じことになります。実質、セフジトレンの1日吸収量は42mgのみでピペラシリンの最大用量4gの1%程度しかないのです!。βラクタム系の静注抗菌薬製剤の成人用量で1回100mg未満のものはないはずですから、これらが本当に効果あったとは思えません。適応のある咽頭・喉頭炎、急性気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎などは本当に抗菌薬が必要でしょうか?神戸大学医学部附属病院の感染症科の岩田健太郎教授のおっしゃる「使った、治った、だから効いた」の「サンタ論法」で認可されたものではないかと思います。


光晴会病院 薬剤科 杉本悠花先生

Q.クレメジンのアドヒアランスが分かる検査項目(採血など)がありますでしょうか?

Aクレメジンは吸収されないので、全身作用を示しません。だからアドヒアランスに影響するような検査データに直接、大きな変化を及ぼしませんので、検査値によってアドヒアランスの良否は分からないと思います。ただし、きっちりと服用していただければ、インドールなどの尿毒素前駆体を吸着し糞便中に排泄できますので、これらの尿毒素濃度を低下させる可能性はあります。また長期的に投与すれば、服用以前と比べて血清Cr値の逆数、あるいはeGFR、CCrの悪化速度を緩やかにする作用は期待できます。

プロフィール

平田純生
平田 純生
Hirata Sumio

趣味は嫁との旅行(都市よりも自然)、映画(泣けるドラマ)、マラソン 、サウナ、ギター
音楽鑑賞(ビートルズ、サイモンとガーファンクル、ジャンゴ・ラインハルト、風、かぐや姫、ナターシャセブン、沢田聖子)
プロ野球観戦(家族みんな広島カープ)。
それと腎臓と薬に夢中です(趣味だと思えば何も辛くなくなります)